73 / 120
第73話【傷薬の納品とモニターの募集】
しおりを挟む
ーーーからんからん。
いつもの冒険者ギルドのドアベルの音が響いた。
「ようこそ!リボルテ冒険者ギルドへ。
本日はご依頼ですか?お食事ですか?」
入ってすぐに案内嬢から声がかかった。
後で聞いた事だが、ここの案内嬢は常連の冒険者はほとんど把握しているらしく、初顔の客が来るとすぐに声かけをする接客指導が徹底されているらしかった。
「あっ、カイザックのギルドで受注した依頼の報告と依頼品の納品をするために来ました」
僕の代わりにシミリが説明してくれた。
まあ、案内嬢もシミリの方を向いていたからその流れになっただけだけど……。
「依頼報告ですね。ありがとうございます。
ではこちらのカウンターにお願いします。
サリー!依頼完了報告対応をお願いね!」
「はい!了解しました。
ではこちらにお掛けください」
サリーとよばれた女性は僕達を窓口カウンターへ案内すると座るように促してから詳細を求めた。
「では依頼書の提示をお願いします。
あと納品物の準備もお願いしますね」
日頃から完了報告の担当なのだろう、手際よく書類の確認と必要書類の準備をこなしていった。
「傷薬の納品ですね、本当に助かります。
最近は鉱山で怪我をする人が多くて薬が品薄になっていたので近隣の街にも依頼を出していたのです。
あと、効果を確かめるためのサンプルはありませんか?
今回の依頼料は依頼書にあったように基本金額をベースに薬の効果で増減させてもらうようになっていますので……」
「ああ、それならこれを使ってもいいですよ。
今回の納品分と同じものですが自分達用に持っていた予備ですので」
僕は鞄から新しい薬の瓶を3本程取り出してサリーに渡した。
「ありがとうございます。
すみません、あなた方を疑う訳ではありませんが、前に効果の低い粗悪品を納品された商人がおられましたのでギルドとしての対応策でこのような依頼内容になっているのです」
僕達がその言葉に頷くとサリーは併設されている酒場に向かって声をかけた。
「お客様の中で怪我をされている方はいらっしゃいませんか!
今から先着順で3名程無料で今回納品された傷薬の効果モニターを募集します!
もしも効果がなければこちらに納品者が居ますので酔いつぶれるまで酒を奢おごってもらって良いですよ!」
(おいおいおい。いきなり何を言い出すんだこの女は!?)
僕が驚いた顔でサリーを見ると、何でもない事のように笑って治験者を募る彼女が言った。
「薬に自信あるんでしょ?
こうでも言わないと誰も初めて見たの商人が持ってきた薬なんて使ってくれませんよ?
前に粗悪品を持ってきた商人は相当な金額の酒を飲まれていたわねー。
まあ、自業自得だけどねー(笑)」
(なるほど、そういうことか。
確かにカイザックでも薬の効果を確認しないと登録も難しいからな。
まあ僕は領主公認のアレがあるからそれほど大変ではないけれどね)
「オルト君、それこそあのプレートを見せたら解決する案件じゃないですか?
領主様公認なんだし……」
「僕もそれは少し考えたんだけど、無理矢理押し通すよりもこの流れを見てみたい気持ちの方が強かったりするんだよ。
郷に入れば郷に従えってね」
「最後の言葉の意味は分からないけどオルト君がそう言うならばそうした方がいいのでしょうね」
「まあ、暫く様子を見るとしようよ」
僕はシミリとの内緒話を済ませるとサリーが募る人達を眺めていた。
ーーー暫く募集を続けていると、すぐに3名の男女が名乗りをあげた。
「では定員になりましたので募集を一旦切ります。
早かった順番に出てきて怪我の箇所と内容を教えてくださいね」
その言葉を聞いた者達が順に声をあげだした。
最初はガッシリとした筋肉を持つ40歳くらいの男性だった。
「最初は俺だ!昨日の鉱山作業で落石に会っちまって左肩をやっちまったんだ。
おかげで腕は上がらねぇし鉱山の仕事も出来ねぇから薬も酒も買う余裕がねぇでかなり困ってるんだ。
なんとかならねぇか?」
「外傷に打ち身ですね。
ならばこの傷薬で対応出来ると思いますよ。
飲むタイプの傷薬ですので一瓶全部飲んでください」
男は言われるとおりに一瓶全部の薬を飲み干した。
「で、こいつはどのくらいで効いてくるんだ?さすがに2~3日では完治は無理だろうな」
「いえ、その程度の怪我ならば数分もあれば完治すると思いますよ」
「「「「「はあっ!?」」」」」
僕の言葉に周りで見物していた人達がいっせいに声をあげた。
「そんな訳ないだろう!
そんな即効性のある薬なんてそれこそ王都でしか手に入らないバカ高い上級ポーションくらいだぞ!?」
「そんな訳ないだろうと言われても、実際もう左肩は痛くないでしょう?」
僕は男の左肩を軽く“ポン”と叩いて完治の確認をした。
「痛っ……くない?本当まじに痛くないぞ!」
男は驚いた顔で左肩をぐるぐると回して完治をアピールしていた。
いつもの冒険者ギルドのドアベルの音が響いた。
「ようこそ!リボルテ冒険者ギルドへ。
本日はご依頼ですか?お食事ですか?」
入ってすぐに案内嬢から声がかかった。
後で聞いた事だが、ここの案内嬢は常連の冒険者はほとんど把握しているらしく、初顔の客が来るとすぐに声かけをする接客指導が徹底されているらしかった。
「あっ、カイザックのギルドで受注した依頼の報告と依頼品の納品をするために来ました」
僕の代わりにシミリが説明してくれた。
まあ、案内嬢もシミリの方を向いていたからその流れになっただけだけど……。
「依頼報告ですね。ありがとうございます。
ではこちらのカウンターにお願いします。
サリー!依頼完了報告対応をお願いね!」
「はい!了解しました。
ではこちらにお掛けください」
サリーとよばれた女性は僕達を窓口カウンターへ案内すると座るように促してから詳細を求めた。
「では依頼書の提示をお願いします。
あと納品物の準備もお願いしますね」
日頃から完了報告の担当なのだろう、手際よく書類の確認と必要書類の準備をこなしていった。
「傷薬の納品ですね、本当に助かります。
最近は鉱山で怪我をする人が多くて薬が品薄になっていたので近隣の街にも依頼を出していたのです。
あと、効果を確かめるためのサンプルはありませんか?
今回の依頼料は依頼書にあったように基本金額をベースに薬の効果で増減させてもらうようになっていますので……」
「ああ、それならこれを使ってもいいですよ。
今回の納品分と同じものですが自分達用に持っていた予備ですので」
僕は鞄から新しい薬の瓶を3本程取り出してサリーに渡した。
「ありがとうございます。
すみません、あなた方を疑う訳ではありませんが、前に効果の低い粗悪品を納品された商人がおられましたのでギルドとしての対応策でこのような依頼内容になっているのです」
僕達がその言葉に頷くとサリーは併設されている酒場に向かって声をかけた。
「お客様の中で怪我をされている方はいらっしゃいませんか!
今から先着順で3名程無料で今回納品された傷薬の効果モニターを募集します!
もしも効果がなければこちらに納品者が居ますので酔いつぶれるまで酒を奢おごってもらって良いですよ!」
(おいおいおい。いきなり何を言い出すんだこの女は!?)
僕が驚いた顔でサリーを見ると、何でもない事のように笑って治験者を募る彼女が言った。
「薬に自信あるんでしょ?
こうでも言わないと誰も初めて見たの商人が持ってきた薬なんて使ってくれませんよ?
前に粗悪品を持ってきた商人は相当な金額の酒を飲まれていたわねー。
まあ、自業自得だけどねー(笑)」
(なるほど、そういうことか。
確かにカイザックでも薬の効果を確認しないと登録も難しいからな。
まあ僕は領主公認のアレがあるからそれほど大変ではないけれどね)
「オルト君、それこそあのプレートを見せたら解決する案件じゃないですか?
領主様公認なんだし……」
「僕もそれは少し考えたんだけど、無理矢理押し通すよりもこの流れを見てみたい気持ちの方が強かったりするんだよ。
郷に入れば郷に従えってね」
「最後の言葉の意味は分からないけどオルト君がそう言うならばそうした方がいいのでしょうね」
「まあ、暫く様子を見るとしようよ」
僕はシミリとの内緒話を済ませるとサリーが募る人達を眺めていた。
ーーー暫く募集を続けていると、すぐに3名の男女が名乗りをあげた。
「では定員になりましたので募集を一旦切ります。
早かった順番に出てきて怪我の箇所と内容を教えてくださいね」
その言葉を聞いた者達が順に声をあげだした。
最初はガッシリとした筋肉を持つ40歳くらいの男性だった。
「最初は俺だ!昨日の鉱山作業で落石に会っちまって左肩をやっちまったんだ。
おかげで腕は上がらねぇし鉱山の仕事も出来ねぇから薬も酒も買う余裕がねぇでかなり困ってるんだ。
なんとかならねぇか?」
「外傷に打ち身ですね。
ならばこの傷薬で対応出来ると思いますよ。
飲むタイプの傷薬ですので一瓶全部飲んでください」
男は言われるとおりに一瓶全部の薬を飲み干した。
「で、こいつはどのくらいで効いてくるんだ?さすがに2~3日では完治は無理だろうな」
「いえ、その程度の怪我ならば数分もあれば完治すると思いますよ」
「「「「「はあっ!?」」」」」
僕の言葉に周りで見物していた人達がいっせいに声をあげた。
「そんな訳ないだろう!
そんな即効性のある薬なんてそれこそ王都でしか手に入らないバカ高い上級ポーションくらいだぞ!?」
「そんな訳ないだろうと言われても、実際もう左肩は痛くないでしょう?」
僕は男の左肩を軽く“ポン”と叩いて完治の確認をした。
「痛っ……くない?本当まじに痛くないぞ!」
男は驚いた顔で左肩をぐるぐると回して完治をアピールしていた。
31
お気に入りに追加
3,233
あなたにおすすめの小説
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
外れスキル【転送】が最強だった件
名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。
意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。
失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。
そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。
貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す
名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる