70 / 120
第70話【襲うからには襲われる覚悟があるのか?】
しおりを挟む
「おいおいおい。
護衛のやつら逃げちまったぜ。
情けないなぁ、いくら俺たちが強そうに見えても依頼主を放り出して逃げるとはねえ。
あんたら運がないなぁ。ぎゃはは!」
護衛に見捨てられた家族は盗賊達に囲まれてどうすることも出来ずに寄り添って震えていた。
「しかし俺たちは運がいいなぁ。
前の狩り場がやばくなったんで移動してきたら直ぐに獲物がかかるたぁ最高だぜ!
金目の物に若い女とくれば、あんたを始末すれば全て俺たちの物だよな。
まあ心配するな金も女も俺たちが有効に使ってやるから安心して死んどけや!」
「やっ止めてくれ!金は渡すから妻と娘には手を出さないでくれ!」
父親の必死の叫びを聞いて盗賊達はニヤニヤと笑いながら言った。
「はぁ?金はもちろん貰うし、女も当然貰うに決まってるじゃねえか。
とりあえずお前はいらないから死んでいいぞ。
壊れて使い物にならなくなったらそっちに送ってやるからよ。ぎゃっはっは」
盗賊達は父親を妻子から引き剥がして地面に放り投げて笑いながら剣で斬った。
「いやぁ!?あなたぁ!!」
「お父さん!お父さん!!」
父親が斬られる所を目のあたりにしてふたりが悲鳴をあげた。
「ミスティ……。サラ……」
父親は妻子の名前を呼びながら気を失った。斬られたショックと出血のために意識が無くなったのである。
「なんだ、呆気ないな。
よし!さっさと奪って足がつく前に移動するぞ!」
「ウインドブラインド」
盗賊達が馬車と妻子を連れて行こうとした時、突然突風が吹いた。
「うおっ!?何だこの風は?
顔にまとわりついて目が開けてられねぇぞ!」
「エクストラヒール!」
慌てる盗賊達をよそに、どこからともなく男の声が聞こえた。
「だっ誰だ!?ぐわっ!?」
「がっ!?ぐはっ!?ぐっ!?げふっ!?」
突風で目が開けられない盗賊達は突然どこからともなく来る攻撃をかわすことも出来ずに次々と打ちのめされていった。
やがて風がおさまった時には十数人いた盗賊達は全員地面に転がって気絶していた。
「大丈夫ですか?」
呆然とする妻子の前にオルトが膝を折って問いかけた。
「あっあなたは一体?……」
いきなり目の前に現れた若い男に戸惑いながらも母親は娘の無事を確認して斬られた夫の元へ走った。
娘もそれを見て父親の側に向かった。
「ああ、あなた!しっかりして!」
「お父さん!お父さん!」
母親は倒れている父親にしがみついて泣き叫んだ。
娘も側で力なく両膝を着いて泣きながらふたりを見つめていた。
「うっ!?」
その時、父親が目を覚ました。
父親は体の違和感に斬られた跡を手で触ったが血は付くものの痛みが無かった。
「なんだ?痛くないぞ?
斬られたはずの傷も無くなっている。
一体なにがどうしたと言うのだ!?」
父親の服は確かに剣で切り裂かれた跡がはっきりと残っており斬られた跡は血のりがべったりと付いていた。
しかし、いくら調べても体には傷ひとつ見当たらなかった。
「良かった、間に合ったようですね」
僕の言葉に三人は何が起こっているのか理解が追い付かずにこちらを見た。
「ああ、いきなりすみません。
僕はCランク冒険者のオルトといいます。
リボルテに向かう途中で盗賊達が馬車を襲っているのが分かったので助太刀をさせて貰いました。
そちらの方は斬られてかなり危険な状態でしたので回復魔法を掛けさせて貰いましたので暫く安静にしていれば大丈夫だと思いますよ」
僕は冒険者プレートを提示して家族を安心させてから直ぐに倒れている盗賊達を集めて全員に拘束系の魔法をかけておいた。
「とりあえずこれで大丈夫かな」
僕が盗賊達の処理を済ませて家族に向き直ると父親が母親に支えられて体を起こしていた。
「この度は本当にありがとうございました。あなたが助けてくれなければ私は殺され、妻と娘は盗賊達の慰みものになっていたでしょう。
このご恩は絶対に忘れません。
あっ!自己紹介がまだでしたね。
私はディールと申します。
こっちが妻のサラでこちらが娘のミスティです」
僕達が話をしている最中に盗賊を制圧した際に安全を知らせる魔道具で無事を確認したシミリが馬車を連れて追い付いてきた。
「オルト君。大丈夫でしたか?」
心配するシミリに手を上げて応えた僕はディールとの話を続けた。
「とりあえず盗賊達は全員捕らえましたが、街まで連れて行って引き渡すにも人数が多すぎて難しいのです。
このまま逃がす訳にもいきませんのでリーダー込み3名程度を残して他は処分しようと思うのですがその旨を役人に説明する際、証明して頂きたいのです。
盗賊とはいえ、無力化した者を処分するのは死体に不自然さが残りますので」
冒険者でもない一般の平民に人を殺す話をしても怖がらせるだけだとは思ったが、いきなり全員始末すると逆に僕が怖がられる可能性が高かったので説明をしておいた。
「それはもちろん説明させて貰いますが、誰がリーダーか分かるのですか?」
僕が安全と判断したのだろう。
ディールは気丈に僕の質問に答えてくれた。
「とりあえず何人か起こして問い詰めますよ。
あ、心配しなくて大丈夫ですよ。絶対に逃がしたり反撃はさせたりはしませんから」
僕はそう宣言すると盗賊の中で装備品の豪華な男を起こした。
護衛のやつら逃げちまったぜ。
情けないなぁ、いくら俺たちが強そうに見えても依頼主を放り出して逃げるとはねえ。
あんたら運がないなぁ。ぎゃはは!」
護衛に見捨てられた家族は盗賊達に囲まれてどうすることも出来ずに寄り添って震えていた。
「しかし俺たちは運がいいなぁ。
前の狩り場がやばくなったんで移動してきたら直ぐに獲物がかかるたぁ最高だぜ!
金目の物に若い女とくれば、あんたを始末すれば全て俺たちの物だよな。
まあ心配するな金も女も俺たちが有効に使ってやるから安心して死んどけや!」
「やっ止めてくれ!金は渡すから妻と娘には手を出さないでくれ!」
父親の必死の叫びを聞いて盗賊達はニヤニヤと笑いながら言った。
「はぁ?金はもちろん貰うし、女も当然貰うに決まってるじゃねえか。
とりあえずお前はいらないから死んでいいぞ。
壊れて使い物にならなくなったらそっちに送ってやるからよ。ぎゃっはっは」
盗賊達は父親を妻子から引き剥がして地面に放り投げて笑いながら剣で斬った。
「いやぁ!?あなたぁ!!」
「お父さん!お父さん!!」
父親が斬られる所を目のあたりにしてふたりが悲鳴をあげた。
「ミスティ……。サラ……」
父親は妻子の名前を呼びながら気を失った。斬られたショックと出血のために意識が無くなったのである。
「なんだ、呆気ないな。
よし!さっさと奪って足がつく前に移動するぞ!」
「ウインドブラインド」
盗賊達が馬車と妻子を連れて行こうとした時、突然突風が吹いた。
「うおっ!?何だこの風は?
顔にまとわりついて目が開けてられねぇぞ!」
「エクストラヒール!」
慌てる盗賊達をよそに、どこからともなく男の声が聞こえた。
「だっ誰だ!?ぐわっ!?」
「がっ!?ぐはっ!?ぐっ!?げふっ!?」
突風で目が開けられない盗賊達は突然どこからともなく来る攻撃をかわすことも出来ずに次々と打ちのめされていった。
やがて風がおさまった時には十数人いた盗賊達は全員地面に転がって気絶していた。
「大丈夫ですか?」
呆然とする妻子の前にオルトが膝を折って問いかけた。
「あっあなたは一体?……」
いきなり目の前に現れた若い男に戸惑いながらも母親は娘の無事を確認して斬られた夫の元へ走った。
娘もそれを見て父親の側に向かった。
「ああ、あなた!しっかりして!」
「お父さん!お父さん!」
母親は倒れている父親にしがみついて泣き叫んだ。
娘も側で力なく両膝を着いて泣きながらふたりを見つめていた。
「うっ!?」
その時、父親が目を覚ました。
父親は体の違和感に斬られた跡を手で触ったが血は付くものの痛みが無かった。
「なんだ?痛くないぞ?
斬られたはずの傷も無くなっている。
一体なにがどうしたと言うのだ!?」
父親の服は確かに剣で切り裂かれた跡がはっきりと残っており斬られた跡は血のりがべったりと付いていた。
しかし、いくら調べても体には傷ひとつ見当たらなかった。
「良かった、間に合ったようですね」
僕の言葉に三人は何が起こっているのか理解が追い付かずにこちらを見た。
「ああ、いきなりすみません。
僕はCランク冒険者のオルトといいます。
リボルテに向かう途中で盗賊達が馬車を襲っているのが分かったので助太刀をさせて貰いました。
そちらの方は斬られてかなり危険な状態でしたので回復魔法を掛けさせて貰いましたので暫く安静にしていれば大丈夫だと思いますよ」
僕は冒険者プレートを提示して家族を安心させてから直ぐに倒れている盗賊達を集めて全員に拘束系の魔法をかけておいた。
「とりあえずこれで大丈夫かな」
僕が盗賊達の処理を済ませて家族に向き直ると父親が母親に支えられて体を起こしていた。
「この度は本当にありがとうございました。あなたが助けてくれなければ私は殺され、妻と娘は盗賊達の慰みものになっていたでしょう。
このご恩は絶対に忘れません。
あっ!自己紹介がまだでしたね。
私はディールと申します。
こっちが妻のサラでこちらが娘のミスティです」
僕達が話をしている最中に盗賊を制圧した際に安全を知らせる魔道具で無事を確認したシミリが馬車を連れて追い付いてきた。
「オルト君。大丈夫でしたか?」
心配するシミリに手を上げて応えた僕はディールとの話を続けた。
「とりあえず盗賊達は全員捕らえましたが、街まで連れて行って引き渡すにも人数が多すぎて難しいのです。
このまま逃がす訳にもいきませんのでリーダー込み3名程度を残して他は処分しようと思うのですがその旨を役人に説明する際、証明して頂きたいのです。
盗賊とはいえ、無力化した者を処分するのは死体に不自然さが残りますので」
冒険者でもない一般の平民に人を殺す話をしても怖がらせるだけだとは思ったが、いきなり全員始末すると逆に僕が怖がられる可能性が高かったので説明をしておいた。
「それはもちろん説明させて貰いますが、誰がリーダーか分かるのですか?」
僕が安全と判断したのだろう。
ディールは気丈に僕の質問に答えてくれた。
「とりあえず何人か起こして問い詰めますよ。
あ、心配しなくて大丈夫ですよ。絶対に逃がしたり反撃はさせたりはしませんから」
僕はそう宣言すると盗賊の中で装備品の豪華な男を起こした。
31
お気に入りに追加
3,236
あなたにおすすめの小説
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す
名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~
名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」
「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」
「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」
「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」
「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」
「くっ……」
問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。
彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。
さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。
「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」
「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」
「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」
拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。
これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる