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第62話【この国の婚姻の結び方】

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 ーーー結局、宿に帰った僕達はお互いが恐縮しまくって何も話が進まなかった。
 仕方がないのでやはり焚き付けた責任をとってもらうために連日ながらゴルドを訪ねることにした。

「度々すみません。
 ゴルドさんはおられますか?」

「ああ、昨日はどうも。
 ええ、今日は急用は無いはずですから奥にいらっしゃると思いますよ。
 何かご用ですか?」

「そうですね。
 出来ればお話をさせてもらいたいので都合をつけて貰えると助かります」

「わかりました。
 ではそちらの休憩室でお待ちください」

 従業員の女性はそう言うとゴルドに伝えに奥へ入っていった。

 ーーー少しして店の奥からゴルドがなにかな資料を持って部屋に入ってきた。

「やあ、多分来るんじゃないかと思っていたよ。
 と言うかあれで来なかったら私はオルト君を“恋愛ヘタレ”認定していたところだ」

「なんですかその恥ずかしい認定は?」

「いや、最近多いんだよ。
 ふられるのが怖くて告白出来ない男が。
 やっぱり男は行動で信頼を勝ち取らないとね。
 この国は一夫多妻が認められているんだから行動しない男は一生独り身になるだけだよ」

 ゴルドは笑いながら持ってきた資料を机にひろげた。

「一応聞いておくけど。
 婚姻の結び方を聞きにきたんだよね?
 違っていたらものすごく恥ずかしい勘違いになるんだが……」

 僕達は顔を見合わせて照れながらも「はい」と返事をした。

「ふー、良かったよ。勘違いじゃなくて。
 じゃあ早速だけど説明していこうか。
 と言っても複雑な儀式は無いんだよ。
 ここのやり方はプロポーズをした方、大抵は男になるんだがペアリングを準備してそれを持って教会に行きリングをはめた手を握り合いながら“誓いの宝玉”にかざすだけでいいんだ。
 大抵はその時に神父が誓いの言葉を宣言するのでならって誓えばいい。
 どうだ簡単だろう?」

「そのペアリングの素材は何がいいのですか?」

 僕はふと前に見せて貰ったゴルドの指輪を思い出して聞いてみた。

「基本的には何でもいいんだよ。
 裕福な人なら『金』にする人もいるし、そうでない人は『銅』にする人もいる。
 見た目と金額的な理由から『銀』を選ぶ人が多いかと思うが気にする事はない」

「なるほど。
 だったらこれでもいいですかね?」

 僕はそう言うと鞄から一組の指輪を取り出した。
 それは、ぱっとした見た目は白いのだが角度を変えると虹色に見える指輪だった。

「そっそれは!?
 初めて見る金属だが一体何の金属なんだい?」

 ゴルドが初めて見る金属に前のめりで見ていると僕がそれに答えた。

「ああ、これはちょっと特殊な方法で作った合金ですよ。
 師匠の秘伝なので作り方は教えられないですけど」

「これが合金だって!?
 何をどう混ぜればこんな金属モノが作れると言うんだ!?」

「まあ、いろいろとあるんですよ」

 僕は内心、まずったかなと思ったがポーカーフェイスで流す事にした。

「本当にオルト君は私の考えが及ばない伝手と技術と知恵を持っているんだね。
 正直言ってシミリさんが羨ましいよ。
 商人として望むほとんどの事がオルト君が居れば解決出来そうなことばかりだからね」

 ゴルドはため息をひとつついてからオルトに言った。

「すまないが今回はオルト君に席を外して貰いたいんだ。
 少しシミリさんと話をさせてくれないか?
 ああ、もちろん引き抜きの話や君達に不利益になる話はないから安心してくれ。
 そのくらいの信用はあるだろう?」

「わかりました。
 では、別室を貸して貰えますか?
 少しやりたい事がありますので」

「うむ。それならば案内させよう。
 話が終わったら連絡するからそれまで待っててくれ」

 ーーーその後、僕は別室で指輪の細工をして時間を潰した。

 僕が席を外した後、シミリはゴルドと話をしていた。
 始めは行商の商人としての心構えから若い女性商人特有の商売の難しさまで後輩を指導する先輩商人としてゴルドは親切に指導していた。

「まあ、商売としてはこんなところか。
 シミリさんも親も商人だったからそれなりに分かっているようだしね。
 じゃあここからが本番だ。
 君に会わせたい人がいるんだ、呼んでくるからこれからの事をいろいろとアドバイスして貰うといいだろう」

 ゴルドはそう言うと奥の部屋に誰かを呼びに行った。

(私に会わせたいひと?
 何かのアドバイスをしてくれるからには私と同業者の女性商人かなにかだろうか?)

 シミリが考え事をしているとゴルドが綺麗な女性を連れて戻ってきた。
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