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第61話【シミリの追及と僕の言い訳】
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「で、さっきの話は何だったのかなぁ?」
あれからゴルドのお店を出た僕達はお酒と塩の仕入れが出来るかの確認をするために何件かのお店をまわっていた。
「リボルテの冒険者ギルドの裏情報とかを教えて貰ったんだよ。
「あそこは鉱山の街だから荒事の好きな冒険者が多いから気を付けろ」とか「何か揉め事や賭け事になったら酒飲み勝負で解決する」とかかな」
「ふーん。本当にそれだけ?
わざわざ私をはずして話をしていたのにそれだけって事はないよねー。
とぼけても駄目だよー。
最近、オルト君は何かを隠してる時は私の目をまっすぐに見ない癖が出てるんだから」
シミリはそう言うと僕の顔をすぐ近くからじっと見つめてきた。
(いや、目をそらすのは何かを隠してるんじゃなくて単に照れているだけなんだよ。
前世で彼女が居たことの無い僕には免疫が皆無なだけなんだよ!)
あっさりと目をそらした僕を見てにんまりと笑ったシミリは後ろに手を組んで振り返り僕の少し先を歩き出しながら追及を強めた。
「そ・れ・で?私には話せない事なの?
あっもしかしてやらしーことを隠してるのかなぁ?」
「そ、そんな事は無いよ。
ただ、ゴルドさんからこれからの仕事と私生活のアドバイスを貰っただけだよ。
決してやましい事は無い!……と思う」
「へー。どんな事をアドバイスされたの?」
シミリの追及は止まらない。
なんとなく話の内容を見透かされているみたいで僕はドキリとしていた。
「本当に聞きたい?
後悔するかも知れないししないかも知れない」
「なにそれ?私はオルト君の非常識に付き合える女よ。
いまさら何を聞いても受け入れる覚悟は常に持ってるつもりよ」
僕は考え事をしながらシミリの後をついていってたので気がつかなかったが、いつの間にか海の見える公園に来ていた。
「オルト君がどうしても言えないと言うならば諦めてもいいんだけどー。
わたし気になって眠れなくなるかもしれないなー。
オルト君が責任とってくれるのかなー」
足をとめて意地悪そうな笑顔で振り向いたシミリはウインクをひとつした。
(シミリには敵わないな。
彼女の笑顔を守れるならそれが僕の幸せなのかもしれない)
「わかったよ。話すから驚かないで聞いてくれよ」
僕達は木陰の草むらに座って話を始めた。
「ゴルドさんの話を要約すると、リボルテの街はカイザックに比べて治安に不安がある事。
特にシミリのような若い独身女性商人はいろいろと狙われる可能性があるという事」
「それで?そのためにオルト君がいるんじゃないの?」
「もちろんそのつもりだけど、ゴルドさんが言うにはあの手この手を使って女性商人から護衛を引き剥がしてその間に強引に契約させたりする奴等もいるらしい。
例えば女性しか入れないところで女性の仲間と協力して契約させるとか、無理やり拐って脅してとか」
「それって犯罪よね?」
「もちろんそうだが契約書を出されたら取り返すのはなかなか難しいらしいんだ。
まあ、僕なら何とかするけどね」
「オルト君なら「お前ら全員皆殺しだー」とかだったりして(笑)」
「そんな訳ないだろ!僕を何だと思ってるんだよ」
僕は「ふー」と息をひとつ吐いてから覚悟を決めてシミリに伝えた。
「ゴルドさんが言うにはその手の奴等をかわす一番の方法は“独身”じゃ無くなる事だそうだ。つまり、その……」
(えーい。ここでヘタるな僕。
次の言葉を言うんだ)
「えっ?それってつまり……」
シミリが先に気がつき顔を赤くする。
「シミリが僕と婚姻をむすんで夫婦になる。そんなのはどうかな?」
前世での恋愛経験なし男の精一杯の言葉であった。
ーーー暫しの沈黙の後、シミリが答えた。
「あーあ。もう少し情熱的な言葉が欲しかったなー」
シミリは真っ赤な顔をうつむき加減で隠しながら軽口をたたいてみたが、次第に目に一杯の涙を溜め込んでオルトの胸に飛び込んだ。
「ありがとう。本当に嬉しい」
その一言だけで僕は理解した。
偶然の流れでシミリの危機を救っただけ、その後は安全な街で別れてそれぞれの道を進むつもりだった。
でも、出来なかった。
出会ってからの短い日々のなかで楽しかった事、悲しかった事、危なかった事、恥ずかしかった事。
手放す事ができない思い出が出来ていた。どうやらそれらは僕だけの感情ではなかったらしい。
「ごめん。気のきいた言葉が出なくて。
でも本当にいいのか?
僕よりいい男は山ほどいると思うけど……」
「馬鹿!オルト君より素敵な人がいる訳ないじゃない!
何処にあれだけの強さを持った人がいるの?
何処にあれだけの知識を持った人がいるの?
何処にあれだけの優しさを持った人がいるって言うの?
私はあなたに助けられてここにいます。
あの時、助けてくれたのがあなただったから今わたしはここにいられるんです」
そしてシミリは宣言した。
「私はオルト君について行きます。
言質はとったから今さら返品はききませんからね!」
涙を拭いたシミリは最高の笑顔で僕を指さしながら高らかに宣言をした。
あれからゴルドのお店を出た僕達はお酒と塩の仕入れが出来るかの確認をするために何件かのお店をまわっていた。
「リボルテの冒険者ギルドの裏情報とかを教えて貰ったんだよ。
「あそこは鉱山の街だから荒事の好きな冒険者が多いから気を付けろ」とか「何か揉め事や賭け事になったら酒飲み勝負で解決する」とかかな」
「ふーん。本当にそれだけ?
わざわざ私をはずして話をしていたのにそれだけって事はないよねー。
とぼけても駄目だよー。
最近、オルト君は何かを隠してる時は私の目をまっすぐに見ない癖が出てるんだから」
シミリはそう言うと僕の顔をすぐ近くからじっと見つめてきた。
(いや、目をそらすのは何かを隠してるんじゃなくて単に照れているだけなんだよ。
前世で彼女が居たことの無い僕には免疫が皆無なだけなんだよ!)
あっさりと目をそらした僕を見てにんまりと笑ったシミリは後ろに手を組んで振り返り僕の少し先を歩き出しながら追及を強めた。
「そ・れ・で?私には話せない事なの?
あっもしかしてやらしーことを隠してるのかなぁ?」
「そ、そんな事は無いよ。
ただ、ゴルドさんからこれからの仕事と私生活のアドバイスを貰っただけだよ。
決してやましい事は無い!……と思う」
「へー。どんな事をアドバイスされたの?」
シミリの追及は止まらない。
なんとなく話の内容を見透かされているみたいで僕はドキリとしていた。
「本当に聞きたい?
後悔するかも知れないししないかも知れない」
「なにそれ?私はオルト君の非常識に付き合える女よ。
いまさら何を聞いても受け入れる覚悟は常に持ってるつもりよ」
僕は考え事をしながらシミリの後をついていってたので気がつかなかったが、いつの間にか海の見える公園に来ていた。
「オルト君がどうしても言えないと言うならば諦めてもいいんだけどー。
わたし気になって眠れなくなるかもしれないなー。
オルト君が責任とってくれるのかなー」
足をとめて意地悪そうな笑顔で振り向いたシミリはウインクをひとつした。
(シミリには敵わないな。
彼女の笑顔を守れるならそれが僕の幸せなのかもしれない)
「わかったよ。話すから驚かないで聞いてくれよ」
僕達は木陰の草むらに座って話を始めた。
「ゴルドさんの話を要約すると、リボルテの街はカイザックに比べて治安に不安がある事。
特にシミリのような若い独身女性商人はいろいろと狙われる可能性があるという事」
「それで?そのためにオルト君がいるんじゃないの?」
「もちろんそのつもりだけど、ゴルドさんが言うにはあの手この手を使って女性商人から護衛を引き剥がしてその間に強引に契約させたりする奴等もいるらしい。
例えば女性しか入れないところで女性の仲間と協力して契約させるとか、無理やり拐って脅してとか」
「それって犯罪よね?」
「もちろんそうだが契約書を出されたら取り返すのはなかなか難しいらしいんだ。
まあ、僕なら何とかするけどね」
「オルト君なら「お前ら全員皆殺しだー」とかだったりして(笑)」
「そんな訳ないだろ!僕を何だと思ってるんだよ」
僕は「ふー」と息をひとつ吐いてから覚悟を決めてシミリに伝えた。
「ゴルドさんが言うにはその手の奴等をかわす一番の方法は“独身”じゃ無くなる事だそうだ。つまり、その……」
(えーい。ここでヘタるな僕。
次の言葉を言うんだ)
「えっ?それってつまり……」
シミリが先に気がつき顔を赤くする。
「シミリが僕と婚姻をむすんで夫婦になる。そんなのはどうかな?」
前世での恋愛経験なし男の精一杯の言葉であった。
ーーー暫しの沈黙の後、シミリが答えた。
「あーあ。もう少し情熱的な言葉が欲しかったなー」
シミリは真っ赤な顔をうつむき加減で隠しながら軽口をたたいてみたが、次第に目に一杯の涙を溜め込んでオルトの胸に飛び込んだ。
「ありがとう。本当に嬉しい」
その一言だけで僕は理解した。
偶然の流れでシミリの危機を救っただけ、その後は安全な街で別れてそれぞれの道を進むつもりだった。
でも、出来なかった。
出会ってからの短い日々のなかで楽しかった事、悲しかった事、危なかった事、恥ずかしかった事。
手放す事ができない思い出が出来ていた。どうやらそれらは僕だけの感情ではなかったらしい。
「ごめん。気のきいた言葉が出なくて。
でも本当にいいのか?
僕よりいい男は山ほどいると思うけど……」
「馬鹿!オルト君より素敵な人がいる訳ないじゃない!
何処にあれだけの強さを持った人がいるの?
何処にあれだけの知識を持った人がいるの?
何処にあれだけの優しさを持った人がいるって言うの?
私はあなたに助けられてここにいます。
あの時、助けてくれたのがあなただったから今わたしはここにいられるんです」
そしてシミリは宣言した。
「私はオルト君について行きます。
言質はとったから今さら返品はききませんからね!」
涙を拭いたシミリは最高の笑顔で僕を指さしながら高らかに宣言をした。
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