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第59話【笑顔の裏の意図と勉強代】
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「すみませーん!
ゴルドさんはこちらに居ますか?」
僕達は先日ゴルドと会ったカイザック港店の案内所で所在を尋ねた。
「ああ、オルト様とシミリ様ですね。
旦那様は今、打ち合わせ中ですがお約束でしたか?」
「いえ、アポイントメントも取らずにいきなり来て申し訳ないのですが、ゴルドさんにアドバイスをして欲しい案件がありましたので時間が取れないかな?と……」
「アポ?アポなんとかはよく分かりませんが旦那様は今の打ち合わせが終われば時間は取れると思いますが、予約を取っておきましょうか?」
(しまったな。
こちらの世界ではアポイントメントと言う言葉は無かったか。
普通に「連絡もしないでいきなりですみません」とかにすれば良かったかな)
顔には出さないが内心焦りながらも予約をお願いした。
「本当ですか?よろしくお願いします。
ではそれまで店舗の商品を見させてもらいますね」
僕達は今回の行商で馬車に積み込む商品を何にするかゴルドに相談するつもりだった。
初めて出会った時もゴルドは行商からの帰りだったのでノウハウは僕達よりかなり詳しいだろう。
ーーー半刻ほどして店の奥からゴルドが姿をみせた。
先ほどの女性が予定を取ってくれたのだろう。
「お待たせしましたかな?
お二人とも先日はありがとうございました。
おかげさまでお好み焼きはゴルド亭の新名物として急速に認知されてきました」
「それは良かったです。
今日は商人としての先輩であるゴルドさんに行商についての注意点と商人ギルドでのやり取りについての第三者的な意見をお聞かせ願いたいと思い伺いました。
よろしくお願いします」
僕達は商人ギルドでのやり取りの内容と今現在準備している内容をゴルドに説明して意見を待った。
それを聞いたゴルドは少し考えて込んでいたが『うん』とひとつ頷くと僕達に少し待つように言ってから奥の部屋に入って行った。
従業員が飲み物を運んできた頃、ゴルドは幾つかの資料を抱えて戻ってきた。
「お待たせしました。
では、先ほどの内容についてお話ししましょう。
先ずは商人ギルドでのやり取りについてですが、報酬額はまあ妥当と言えるでしょう。
10日の距離と馬車に半分程度の荷物の運搬。
ただ、私どもに同じ内容で依頼したらおそらく今回の依頼料の3割増しは要求するでしょうけど」
「妥当だけど安く請けすぎと言う事ですか?」
僕はゴルドの言う意味がわからずに反射的に質問をしていた。
「そうですね。距離と荷量からすると妥当だと言えばわかりますかな?」
(距離と荷量からすると妥当?
あと別の要素と言えば……あっ!)
「酒か!酒は樽ごとは運べないから瓶かめに入れる。
瓶かめは陶器だから割れる可能性がある。
そのリスクの代金が入っていないと言う事か!」
「ご名答。よく気がついたね。
この問題を解決しなければ余計なリスクを抱えたまま行商の旅に出る事になる。
副ギルマスのラックは悪い人ではないのだが、やはりギルドの経理関係を任されているから余計な上乗せ報酬は控えたかったのだろう。
まあ気がつかなかったとはいえ、報酬を値切っている訳では無いし、契約も完了しているから今回は勉強だと思っていい運搬方法を考えてみるんだね」
(さすがに方法までは教えてくれないが先に弱点が分かった事は大きい。
人には言えないがいざとなれば移動中は収納鞄アイテムバッグに入れておけば安全だしな。
まあ一応何か考えておこう)
僕が頷いたのを見るとゴルドは飲み物に手を伸ばして一口飲んでから続けた。
「あと、ここからは本当に想像の範囲だがオルト君達にこの依頼を出した本当の目的は別にあると思うんだよ。
私が独自に集めた情報だとリボルテの街では鉱山の事故で怪我人が多く出ていて傷薬を作る薬師や治癒師が不足しているらしいんだよ。
普通ならば冒険者ギルド経由で依頼が入るんだがオルト君、最近冒険者ギルドに顔を出してないだろ?
まあ、君は依頼があってもわざわざ10日も離れた街まで調薬に出向かないだろう?
ラックは冒険者ギルドともよく連絡を取り合っているらしいからその辺は当然知っていたはずだ。
だから今回、行商とはいえ別の街に遠征すると聞いて話をふったんじゃないかな?」
(なるほど。ゴルド氏の話は辻褄があっている。
ああ、だから商品とは別で書状もあるのか、たぶん向こうのギルドで僕が薬師だから調薬の依頼を出して作って貰えとか書いてあるんだろう)
「なるほど、理解しました。
そんな裏情報があったんですね。
それならそうと言ってくれれば良かったのに……」
僕が不満を吐き出しているとゴルドが擁護をしてきた。
「まあ、ラックは商人ギルドの所属だからな。
表立って冒険者ギルドの依頼を斡旋する訳にはいかないんだよ」
それを聞いていたシミリが横から意見を言ってきた。
「いろいろと面倒なんですね。
でも、オルト君。今の話だと冒険者ギルドにはリボルテの街の調薬依頼が出ていると言う事ですよね。
どうせ行商で行くのですから先にそれを請けて行けば報酬も功績ポイントも稼げるんじゃないかな?」
「はっはっは、そういう事だよ。
そうやって依頼を複数受けられるのも商人と冒険者のペアである君達の利点でもあるんだよ」
その時、従業員がお好み焼きを持って来たので話が一時中断した。
「せっかくですのでこれを食べてからもうひとつの案件についてお話ししましょう」
ゴルドはそう言うと美味しそうにお好み焼きを頬張っていった。
ゴルドさんはこちらに居ますか?」
僕達は先日ゴルドと会ったカイザック港店の案内所で所在を尋ねた。
「ああ、オルト様とシミリ様ですね。
旦那様は今、打ち合わせ中ですがお約束でしたか?」
「いえ、アポイントメントも取らずにいきなり来て申し訳ないのですが、ゴルドさんにアドバイスをして欲しい案件がありましたので時間が取れないかな?と……」
「アポ?アポなんとかはよく分かりませんが旦那様は今の打ち合わせが終われば時間は取れると思いますが、予約を取っておきましょうか?」
(しまったな。
こちらの世界ではアポイントメントと言う言葉は無かったか。
普通に「連絡もしないでいきなりですみません」とかにすれば良かったかな)
顔には出さないが内心焦りながらも予約をお願いした。
「本当ですか?よろしくお願いします。
ではそれまで店舗の商品を見させてもらいますね」
僕達は今回の行商で馬車に積み込む商品を何にするかゴルドに相談するつもりだった。
初めて出会った時もゴルドは行商からの帰りだったのでノウハウは僕達よりかなり詳しいだろう。
ーーー半刻ほどして店の奥からゴルドが姿をみせた。
先ほどの女性が予定を取ってくれたのだろう。
「お待たせしましたかな?
お二人とも先日はありがとうございました。
おかげさまでお好み焼きはゴルド亭の新名物として急速に認知されてきました」
「それは良かったです。
今日は商人としての先輩であるゴルドさんに行商についての注意点と商人ギルドでのやり取りについての第三者的な意見をお聞かせ願いたいと思い伺いました。
よろしくお願いします」
僕達は商人ギルドでのやり取りの内容と今現在準備している内容をゴルドに説明して意見を待った。
それを聞いたゴルドは少し考えて込んでいたが『うん』とひとつ頷くと僕達に少し待つように言ってから奥の部屋に入って行った。
従業員が飲み物を運んできた頃、ゴルドは幾つかの資料を抱えて戻ってきた。
「お待たせしました。
では、先ほどの内容についてお話ししましょう。
先ずは商人ギルドでのやり取りについてですが、報酬額はまあ妥当と言えるでしょう。
10日の距離と馬車に半分程度の荷物の運搬。
ただ、私どもに同じ内容で依頼したらおそらく今回の依頼料の3割増しは要求するでしょうけど」
「妥当だけど安く請けすぎと言う事ですか?」
僕はゴルドの言う意味がわからずに反射的に質問をしていた。
「そうですね。距離と荷量からすると妥当だと言えばわかりますかな?」
(距離と荷量からすると妥当?
あと別の要素と言えば……あっ!)
「酒か!酒は樽ごとは運べないから瓶かめに入れる。
瓶かめは陶器だから割れる可能性がある。
そのリスクの代金が入っていないと言う事か!」
「ご名答。よく気がついたね。
この問題を解決しなければ余計なリスクを抱えたまま行商の旅に出る事になる。
副ギルマスのラックは悪い人ではないのだが、やはりギルドの経理関係を任されているから余計な上乗せ報酬は控えたかったのだろう。
まあ気がつかなかったとはいえ、報酬を値切っている訳では無いし、契約も完了しているから今回は勉強だと思っていい運搬方法を考えてみるんだね」
(さすがに方法までは教えてくれないが先に弱点が分かった事は大きい。
人には言えないがいざとなれば移動中は収納鞄アイテムバッグに入れておけば安全だしな。
まあ一応何か考えておこう)
僕が頷いたのを見るとゴルドは飲み物に手を伸ばして一口飲んでから続けた。
「あと、ここからは本当に想像の範囲だがオルト君達にこの依頼を出した本当の目的は別にあると思うんだよ。
私が独自に集めた情報だとリボルテの街では鉱山の事故で怪我人が多く出ていて傷薬を作る薬師や治癒師が不足しているらしいんだよ。
普通ならば冒険者ギルド経由で依頼が入るんだがオルト君、最近冒険者ギルドに顔を出してないだろ?
まあ、君は依頼があってもわざわざ10日も離れた街まで調薬に出向かないだろう?
ラックは冒険者ギルドともよく連絡を取り合っているらしいからその辺は当然知っていたはずだ。
だから今回、行商とはいえ別の街に遠征すると聞いて話をふったんじゃないかな?」
(なるほど。ゴルド氏の話は辻褄があっている。
ああ、だから商品とは別で書状もあるのか、たぶん向こうのギルドで僕が薬師だから調薬の依頼を出して作って貰えとか書いてあるんだろう)
「なるほど、理解しました。
そんな裏情報があったんですね。
それならそうと言ってくれれば良かったのに……」
僕が不満を吐き出しているとゴルドが擁護をしてきた。
「まあ、ラックは商人ギルドの所属だからな。
表立って冒険者ギルドの依頼を斡旋する訳にはいかないんだよ」
それを聞いていたシミリが横から意見を言ってきた。
「いろいろと面倒なんですね。
でも、オルト君。今の話だと冒険者ギルドにはリボルテの街の調薬依頼が出ていると言う事ですよね。
どうせ行商で行くのですから先にそれを請けて行けば報酬も功績ポイントも稼げるんじゃないかな?」
「はっはっは、そういう事だよ。
そうやって依頼を複数受けられるのも商人と冒険者のペアである君達の利点でもあるんだよ」
その時、従業員がお好み焼きを持って来たので話が一時中断した。
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