このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~

夢幻の翼

文字の大きさ
上 下
50 / 120

第50話【薄利多売ではなく暴利薄売】

しおりを挟む
「うーん。どうするかな」

(商人ギルドに登録する際には、おそらく素材鑑定をされるだろうからこの辺りでは入手出来ないレア素材を使っていると表示されたら面倒だ。
 いっそ未登録で売ってやろうか……)

 僕が唸りながら考え事をしているといつの間にかシミリが部屋に備え付けのティーセットで紅茶を淹れてくれていた。

「オルト君。
 ひとりで悩まないの!私はパートナーなんでしょ。
 相談するのが当たり前じゃないの?」

 シミリは怒ったような拗ねたような態度で僕の頬をツネってきた。

「いてててて、悪かったよ。
 そうだよな商売の事なんだからシミリの意見を優先させるべきだったな。
 シミリどうしたら良いと思う?」

「登録自体は領主様から貰った『アレ』があるから問題ないと思うけど、素材が常備仕入れられないとなると最初に作れるだけ作って『今までに手に入れた素材で作ったが、素材が無いから今後は素材が入り次第作る』とでも言えばいいかな?」

 シミリの前向きな発言に僕はちょっとばかり悪のりをして思い付いた案を話した。

「そうだな。
 ならば一度飲んだら一年くらい飲まなくてもいい薬にして割高な価格設定で貴族や豪商を対象にした『暴利薄売』的なやつを作ってみるかい?」

「それ!いいですね……と言いたいですけど、それこそ効果の証明が大変ですよね。
 貴族相手に嘘をついたとなれば不敬罪にとられるかもしれないですし……」

(まあ、それが一番のネックになるよな。それを解決する方法があるとすれば……)

「そうだ!いっそのこと領主に売りつければいいんじゃないか?(奥様の美容にどうですか?)とか飛び付いてくると思うんだけど」

「案としては『アリ』だと思いますが、いくらお嬢さんを治したオルト君の薦めでも病気ではなく美容薬でしかも飲むタイプは怪しすぎていきなり奥様には飲ませられないでしょう。
 もしかしたら侍女さんかメイドさんに試されるかもしれないですけど……」

「それはそれでいいんじゃないか?でも、そこまでするならばもう『万能型』ではなくて『個別特化型』の方が楽かもしれないな」

「個別特化型?」

「うん。普通、悩みは人によって違うだろ?
 例えば『痩せたい』とか『色白になりたい』とか『胸が大きくなりたい』とか……。
 そんな体の悩みをサポートする相談治療をそれなりの金額で引き受ける。
 効果がなければ返金するとかで美容にこだわりのある貴族婦人や娘をターゲットにしたらどうかな?」

「その最初のターゲットが領主家というのですね。
 まあ、他の貴族や豪商との伝手がない今はそれしかないかもしれないですけど、本当にいいのですか?
 あの領主家とはあまり深く関わらないのでは無かったのですか?」

「まあ、そうなんだけれど定期的にセーラ嬢の様子を見るために領主邸に行かないといけないからね。
 そのついでに広告塔として使えないかなと思っただけだよ」

「領主様を広告塔がわりとはオルト君らしいですね。
 でも、それでこそオルト君とも言えるかもしれないですね。
 やりきれる自信があるんでしょ?
 いいですよ。私が交渉してあげますからオルト君の好きなようにしてみてください。
 でも、その前に……」

「その前に?」

「私の相談にものってください!」

 シミリは顔を真っ赤にしながら涙目で下から覗きこんで『お願い』をしてきた。
 もちろん僕がそれを断れるはずもなく、コクコクと頷くばかりだった。

   *   *   *

「じゃあ本格的に営業に行く前の練習という事でいいかな?」

 シミリがコクコクと頷く。

 僕的にはシミリはバランスの良い体型をしていると思っていたのでコンプレックスを持っているとは全く思ってなかった。
 まあ、彼女なりに考えた事なので強く反対はしなかった。

「それでシミリはどういったものをお望みかな?何でも言ってみてよ。
 何でも出来るとは言わないけれど出来るだけ希望に沿った薬を作るから」

「ほっ本当にいいの?私オルト君になんにも返せないよ?」

「いいから、いいから。
 ただ、僕は今のシミリは十分魅力的だとは思うけどね」

「えっ!?そっそうかな?でも背も低いし、むっ胸も小さいし、肌の色だって・・・」

「誰にだってコンプレックスはあるものだよ。
 でもどれかひとつでも改善することによって自分に自信が持てるようになるならばそれは良いことだと僕は思うから遠慮せずに言ってみてね」

「うん、分かったわ」

 シミリは目を閉じて少しの間考えていたが決心がついたのか僕の目をしっかりと見ながら答えた。

「色々考えたけどやっぱり少しでもいいから胸が成長すると自分に自信が持てる気がするの」

(男の僕にはもうひとつ女性の胸に対する評価が分からないのだが、そこまで拘るからには期待に応えてやるしかないだろう。
 まあ、お試し薬で感想を聞いてから定着薬を使う流れでやってみるか)

「分かったよ。じゃあ早速作るから、変えたい部分を具体的に教えてくれ」

 デリカシーの皆無な発言をした僕を顔を真っ赤にしたシミリが恨めしそうにプルプルと震えながら見ていた。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

処理中です...