42 / 120
第42話【市場散策と値切り交渉】
しおりを挟む
「さて、何処から見て回るかな。
ゴルドさんの商会にも顔を出しておきたいけど他国の商品も気になるよな」
「そうですね。どんな珍しいものがあるかドキドキしますね」
二人とも既に観光モードに入ってしまっている事には気がつかないで店先の商品を順に見て行った。
「なるほど、今はこんな物が主流なんですね。
あ、こっちも新しい物が並んでる」
シミリが熱心に見ていたのは化粧品だった。
(やはり女の子なんだな。
ああいった物は女性に人気があるから結構安定した商売になると思うんだよな。
そう言えば前に試しで作った物があったな。
後でシミリに見て貰おうかな)
「シミリ、気になる商品があったかい?試してみたい商品があったらどんどん言ってくれて大丈夫だよ?」
僕達の会話を聞いていた店主は僕達が観光で彼女の買い物に同行している彼氏と見てすかさず商品のアピールをしてきた。
「いらっしゃい。兄さん可愛い彼女だね。
彼女が見ている商品は私の国で一番売れている化粧品で何処に行っても品薄状態なんだよ。
私は今回カイザックの人達にも是非試して貰いたいと取引先に無理を言って在庫をかき集めて来たんだ。
だから今回買い損ねたら次はいつ頃入荷するか分からない商品なんだよ」
店主はそう言って積んである箱を指差してから続けた。
「この商品はあとこの箱分だけだから、全部で大体30個くらいかな。
多分、今日中には全部売り切れるんじゃないかな?買うなら今しかないよ。
確かに安い物じゃないけど、彼女にプレゼントしてみてはどうだい?
可愛い彼女がもっと可愛いくなる事間違い無しだよ」
(口の上手い商人だな。まあ、カップルの彼女を誉めて彼氏に買わせる手法は常套手段だからな)
シミリはじっくりと商品を見て説明文を読み、見本を少し手に付けてから匂いを嗅いでみて最後に僕の顔を見て言った。
「とりあえずこの化粧品は欲しいですね。
買ってもいいですか?」
「ああ、もちろんいいぞ。
そんなに良い商品だったのかい?それとも何か良いことを思い付いたのかい?」
シミリはにっこり笑うと僕の耳元でこっそりと囁いた。
「これは持って帰って成分分析をしたいのです。
私の勘になりますがお肌にとってあまり良くない成分が入っているはずです。
オルト君ならばもっと安全で効果の高い商品が作れるはずなので、化粧品のシェアを貰っちゃいましょう。
この国の品質レベルが低いからと粗悪品を持って来られても迷惑ですからね」
(あれ?使ってみたいから買う訳ではないのか。
確かに化粧品は嵩張らずに価格が高めで需要が見込めるから店舗を持たない僕達には向いているんだけど、それよりなんか商品の品質で怒ってるみたいだし。
ここは任せてみるか)
「分かったよ。他には何かないかい?」
「そうですね。このお店はいいですので次は食料品のお店を見てみたいですね」
「分かったよ。店主、この化粧品はいくらだい?あまり吹っ掛けないでくれよ。
この後の買い物が出来なくなるからね」
念のためぼったくりの牽制を入れておいてから交渉するのが僕のやり方だ。
「価格はひとつ銀貨三枚だが、いいのかい?
彼女へのプレゼントを値切る彼氏は懐が狭いと言われないかい?」
店主も牽制球を投げてきた。
暗に値引きはしないと言っているようだ。
「はははは。彼女はそんな事を気にするタイプじゃないよ。
むしろどれだけ商品の価値を見極められて交渉出来るかを僕に課してくる最高の彼女なんだ。
せっかくだからこの商品も本当の価値を見積もらせて貰うよ」
僕はそう言いながら化粧品を手にとってこっそりと鑑定スキルを使った。
【化粧品:肌に塗りつけるクリームタイプの化粧品。効能:****。素材:****。成分:****。注意事項:続けて使うと肌荒れが酷くなる事あり注意。原材料費:小銀貨二枚】
(シミリも指摘していたけどあまり良い素材を使っていないみたいだな。
原材料が小銀貨二枚の商品を銀貨三枚で売ろうとは舐めてるな。
製品化とここまでの輸送費で銀貨一枚が正当な価値かな)
「店主。なかなか吹っ掛けてくれるじゃないか。
この化粧品の原価は小銀貨二枚ってところで売り値相場は銀貨一枚ってところだろう?
観光客相手だと思ってボろうとしても僕には分かるんだよ」
「なっなぜそれが分かるんだ?あっ!」
正解を言い当てられた店主が盛大に自爆した。
「兄さんは鑑定士か何かかい?分かったから大きな声は出さないでくれ。
他の客に聞こえたらうちは大損害を出してしまう。
他には言わないと約束してくれるなら銀貨一枚に値引きする。
どうだい?頼むよ」
(まあ、この店主も商売だ。
価値を知らない者から相応の対価を得るためにわざわざカイザックまで来たんだから邪魔するのも悪いだろう。
……但し、今だけだけどね)
「分かった、交渉成立だな。
それじゃあ代金銀貨一枚だ。
ありがとう、約束は守るよ」
「あっああ。約束だぜ」
僕達は焦りまくる店主に一応の礼を言ってから次の店を探して散策を続けた。
ゴルドさんの商会にも顔を出しておきたいけど他国の商品も気になるよな」
「そうですね。どんな珍しいものがあるかドキドキしますね」
二人とも既に観光モードに入ってしまっている事には気がつかないで店先の商品を順に見て行った。
「なるほど、今はこんな物が主流なんですね。
あ、こっちも新しい物が並んでる」
シミリが熱心に見ていたのは化粧品だった。
(やはり女の子なんだな。
ああいった物は女性に人気があるから結構安定した商売になると思うんだよな。
そう言えば前に試しで作った物があったな。
後でシミリに見て貰おうかな)
「シミリ、気になる商品があったかい?試してみたい商品があったらどんどん言ってくれて大丈夫だよ?」
僕達の会話を聞いていた店主は僕達が観光で彼女の買い物に同行している彼氏と見てすかさず商品のアピールをしてきた。
「いらっしゃい。兄さん可愛い彼女だね。
彼女が見ている商品は私の国で一番売れている化粧品で何処に行っても品薄状態なんだよ。
私は今回カイザックの人達にも是非試して貰いたいと取引先に無理を言って在庫をかき集めて来たんだ。
だから今回買い損ねたら次はいつ頃入荷するか分からない商品なんだよ」
店主はそう言って積んである箱を指差してから続けた。
「この商品はあとこの箱分だけだから、全部で大体30個くらいかな。
多分、今日中には全部売り切れるんじゃないかな?買うなら今しかないよ。
確かに安い物じゃないけど、彼女にプレゼントしてみてはどうだい?
可愛い彼女がもっと可愛いくなる事間違い無しだよ」
(口の上手い商人だな。まあ、カップルの彼女を誉めて彼氏に買わせる手法は常套手段だからな)
シミリはじっくりと商品を見て説明文を読み、見本を少し手に付けてから匂いを嗅いでみて最後に僕の顔を見て言った。
「とりあえずこの化粧品は欲しいですね。
買ってもいいですか?」
「ああ、もちろんいいぞ。
そんなに良い商品だったのかい?それとも何か良いことを思い付いたのかい?」
シミリはにっこり笑うと僕の耳元でこっそりと囁いた。
「これは持って帰って成分分析をしたいのです。
私の勘になりますがお肌にとってあまり良くない成分が入っているはずです。
オルト君ならばもっと安全で効果の高い商品が作れるはずなので、化粧品のシェアを貰っちゃいましょう。
この国の品質レベルが低いからと粗悪品を持って来られても迷惑ですからね」
(あれ?使ってみたいから買う訳ではないのか。
確かに化粧品は嵩張らずに価格が高めで需要が見込めるから店舗を持たない僕達には向いているんだけど、それよりなんか商品の品質で怒ってるみたいだし。
ここは任せてみるか)
「分かったよ。他には何かないかい?」
「そうですね。このお店はいいですので次は食料品のお店を見てみたいですね」
「分かったよ。店主、この化粧品はいくらだい?あまり吹っ掛けないでくれよ。
この後の買い物が出来なくなるからね」
念のためぼったくりの牽制を入れておいてから交渉するのが僕のやり方だ。
「価格はひとつ銀貨三枚だが、いいのかい?
彼女へのプレゼントを値切る彼氏は懐が狭いと言われないかい?」
店主も牽制球を投げてきた。
暗に値引きはしないと言っているようだ。
「はははは。彼女はそんな事を気にするタイプじゃないよ。
むしろどれだけ商品の価値を見極められて交渉出来るかを僕に課してくる最高の彼女なんだ。
せっかくだからこの商品も本当の価値を見積もらせて貰うよ」
僕はそう言いながら化粧品を手にとってこっそりと鑑定スキルを使った。
【化粧品:肌に塗りつけるクリームタイプの化粧品。効能:****。素材:****。成分:****。注意事項:続けて使うと肌荒れが酷くなる事あり注意。原材料費:小銀貨二枚】
(シミリも指摘していたけどあまり良い素材を使っていないみたいだな。
原材料が小銀貨二枚の商品を銀貨三枚で売ろうとは舐めてるな。
製品化とここまでの輸送費で銀貨一枚が正当な価値かな)
「店主。なかなか吹っ掛けてくれるじゃないか。
この化粧品の原価は小銀貨二枚ってところで売り値相場は銀貨一枚ってところだろう?
観光客相手だと思ってボろうとしても僕には分かるんだよ」
「なっなぜそれが分かるんだ?あっ!」
正解を言い当てられた店主が盛大に自爆した。
「兄さんは鑑定士か何かかい?分かったから大きな声は出さないでくれ。
他の客に聞こえたらうちは大損害を出してしまう。
他には言わないと約束してくれるなら銀貨一枚に値引きする。
どうだい?頼むよ」
(まあ、この店主も商売だ。
価値を知らない者から相応の対価を得るためにわざわざカイザックまで来たんだから邪魔するのも悪いだろう。
……但し、今だけだけどね)
「分かった、交渉成立だな。
それじゃあ代金銀貨一枚だ。
ありがとう、約束は守るよ」
「あっああ。約束だぜ」
僕達は焦りまくる店主に一応の礼を言ってから次の店を探して散策を続けた。
33
お気に入りに追加
3,236
あなたにおすすめの小説
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す
名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~
名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」
「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」
「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」
「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」
「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」
「くっ……」
問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。
彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。
さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。
「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」
「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」
「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」
拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。
これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる