上 下
12 / 120

第12話【襲撃準備とこれからの予定】

しおりを挟む
 ゴロツキのリーダーは武器の準備をしながら伝達係の部下に指示を出していた。

「かなり腕が立つらしいから人数を集めとけ。
 俺が奴を襲いやすい所へ誘導するからそこで殺るぞ。
 ああ、女には傷をつけるなよ価値が下がるからな」

 僕達が商会を離れて宿に向かう頃、金で雇われたゴロツキ冒険者達は襲撃する作戦をたてていた。

 シミリを連れ去る役目だった男達はオルトに叩きのめされて殆どが戦線離脱状態であった為に警戒レベルを上げて確実に殺すつもりだった。

 しかし僕達が宿に帰る道に襲える場所は無く、宿に見張りを付けて明日以降に持ち越す事になっていた。

「ちっ、しかたねぇ。
 旦那にはそう報告して宿の見張りをしっかりしとけよ。
 奴等が出かけたら隙をみて女を拐え。
 女を人質にして奴を殺すぞ!」

「「へい!分かりやした!」」

 その頃、僕達は宿に着いて宿主と交渉していた。

「彼女も泊まるからもう一部屋用意してもらえないかな?」

 宿主は僕の言葉に少女を見ると驚いたように少女に聞いた。

「あんたファウクス商店の娘さんのシミリちゃんじゃないか?
 なぜこんな所に……ってすまない両親があんな事になってしまったからだよね。
 あのゼクス商会のクソ野郎、こんな小さな村の商店を潰してまで支店を広げる事はないだろうに……」

(ああそうだよな。
 それほど大きくない村で唯一つだった商店が潰されて大手の支店が開店したら誰がやったか予想もつくよな)

「ああ、すまない。
 部屋の追加だったね。隣の部屋でいいかい?」

「ああ、ありがとう。
 シミリもそれでいいかい?
 それで後で話したい事があるから夕食の後で少しいいかな?」

「私は……オルト君と同じ部屋で大丈夫です。
 助けられたのに宿まで用意されたらお返しするものが私にはありませんから……」

「気にしなくてもいいよ。
 さすがに女の子と同室はいらない詮索をされる事になるからやめておこうよ」

「分かりました。
 オルト君がそれで良いならそうさせて貰います。
 ありがとうございます」

 僕達は夕食を食べた後、僕の部屋でこれからの事を話しあった。

「予定より1日早くなったけど僕は明日この村を出るつもりだ。
 おそらくだけどゼクス商会のあのタヌキは君の事を諦めてないように思うし、僕が金貨を持っていたのを見てゴロツキをけしかけてくる可能性もある。
 どちらにしても村に留まるのは得策じゃないと思うんだ」

「それならば何処に行くの?」

「まずは隣街のエーフリの街に行こうと思ってる。
 僕はちょっと訳ありでステータスを提示したくないから街の移動や生活費を得るために冒険者登録をしようと思ってるんだ。
 多分Fランクでの登録になると思うけど、実際僕はランクなんてどうでもいいんだ。
 冒険者カードなんてただの証明書がわりに使うだけだから」

 僕は持っていた水筒の水を一口飲んでから話を続けた。

「そこでだが、シミリはどうしたい?
 この村に身を寄せる親類や知り合いがいれば良いが恐らく難しいだろうし、あのタヌキがまたちょっかいをかけてくる可能性だってある。
 君さえ良ければ僕と一緒に隣街まで行くかい?あまりお金が無いから徒歩での移動になるけどね」

 僕はシミリに言いながらふと気になった事を聞いてみた。

「そう言えば、シミリはステータスプレートによる職業は何だったの?
 それとも、もしかしてまだ発行してない?」

「私は少し前に15歳を迎え、両親が亡くなる直前にステータスプレートの発行はしています。
 私の天職は“商人”でした。
 奇しくも両親と同じ職業を与えられた事を喜んでいたばかりだったのに……」

「すまない。辛い事を聞いてしまった。
 商人ならばエーフリの街に行けば仕事は何かあるかも知れないから街の仕事斡旋場に行ってみないか?」

「うん、そうする。
 駄目でも大きい街なら何か仕事はあると思うもの。
 オルト君、私もエーフリに連れて行ってください」

 シミリはそう言うと持ち物の中から僅かばかりのお金と金の指輪を取り出した。

「これが今の私の全財産になるの、この指輪は父の形見であり商売人の証です。
 この指輪をお互いにはめて照合しなければ正規の商取引は成立しません。
 それは商会であろうと行商人であろうと変わりません。
 勿論ですが商人の天職がない人間がはめても効果はありません」

「そんな物があるんだね。
 なるほど……分かったよ、それらはシミリが持っていてくれ。
 きっと何処かで役に立つはずだから」

(そうか、あのタヌキがシミリを欲しがったのは商人の称号と商売人の証だったか。
 確かにこの世界では商人の天職を受けた者しか商店の店主は出来ない。
 あいつはシミリを借金と圧力で支配下に置いて支店のお飾り店主に使うつもりだったに違いない。
 体で払って貰うとか言うから別の事を考えたじゃないか……)

「それじゃあ明日の朝食を食べたら村を出るからね。
 エーフリには基本的に歩きで行くから今夜はゆっくり休んでおいてね」

「旅の準備はどうするの?私何も持ってないんですけど……」

「ああ、それについては僕が準備しておくから大丈夫だよ。じゃあおやすみ」

 その後、僕は宿の店主にエーフリまでの道程や街での情報をチップを払って収集しておいた。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

処理中です...