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第5話【厄介事の遭遇率と見ぬふりが出来ない性格】

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 僕は獣道をくだって半刻ようやく街道までたどり着いた。

 探索魔法を展開すると一番近い村に行くには街道を右に、左に行けば少し遠く3日くらいかかりそうだがそれなりに大きな街があるようだった。

 僕は当初の予定どおり小村に行って服を調達するために街道を右手に進みながら先ほど襲ってきた盗賊達から迷惑料として失敬した僅かな小金を数えながら考えていた。

(目立たないようにする為にはお金の使い方や服装に注意するべきだな。
 あまり大金を持っていると思われたら不必要に狙われたり通報されるかもしれないからな)

 僕はそう思いながら小村に向かって歩いていると少し先で誰かの怒鳴り声と叫び声が聞こえて来た。

「おい!何でこんな所にCランク級の魔獣が居るんだよ!?」

「ちくしょう!あとちょっとの距離なのに!なんとしてでも馬車を守るんだ!!」

 どうやら馬車が何かに襲われているようだったが探索魔法では盗賊等の類いではなく大型の獣みたいな気配だった。

(まだまだ探索魔法は精度が良くないな。 

 色々と試しながら訓練して精度を上げていかないと使いものにはならないぞ)

 僕はそんな事を思いながら木の影から声のする方の様子をそっと伺った。

(状況の確認も無しに飛び込んでも武器を持っていない状態では不自然過ぎるし、魔法で対処するとしてもこの世界では攻撃魔法は一般的ではないかもしれないので迂闊に他人に見せるのもはばかれるだろう。
 先ほど倒した盗賊達は攻撃魔法を見てかなり動揺していたしな)

 僕は護衛らしき人達が自力で解決してくれるのを期待しながら戦いを見ていたが状況は好転するどころかどんどん厳しい状況に追い込まれて行った。

(ああ、これはかなりマズイ事になりそうだな)

 僕が周りの状況を探索すると虎に角が生えたような獣の周りには小型の狼に似た獣が6頭ほどで取り囲み獲物を襲うタイミングをはかっていた。

 どう見てもかなり劣勢で馬車を守っている護衛達の疲労と怪我が見る間に増えていった。

 このままでは長くは持たないと判断した僕は覚悟を決めた。

(仕方ない、攻撃魔法で倒して彼らを助けた後で口止めをするしかないか……)

 僕は周りの護衛を巻き込まないように殺傷力は低いが制御しやすく連射しやすい魔法を使う事にした。

「ウィンドバレット!連射!」

 この攻撃魔法は空気を圧縮した弾をぶつける魔法で殺傷力はストーム系に比べると格段に落ちるが連射が出来る事と狙いをつける精度が格段に高くなる利点があるため今回のような場面ではかなり有効な魔法と言えた。

「ぎゃうん!?」

 攻撃魔法は馬車の周りを囲んでいた狼に着弾して次々と弾き飛ばしていった。

 弾き飛ばされた狼は半数が気絶し、半数は戦意を失って逃走を始めた。

(ああっ!攻撃魔法の威力が足りずに半分逃してしまった!)

 僕は少し後悔したが、逃げた奴は仕方ないので放っておいて角虎をどうにかするのが先決だとばかりに僕は馬車と角虎の傍に走り込んで護衛の一人に叫んだ。

「助太刀します!今からアイツを押さえ込むから止めをお願いします!」

 僕はそう叫ぶと護衛達の返事を待たずに捕縛魔法を展開した。

「アイスバインド!!」

 僕の力ある言葉に空気中の水蒸気が急速に冷やされ角虎の四足を凍りつかせた。

「ぐおぉぉぉぉぉ!!」

「今だ!僕が押さえてる間に止めを!!」

 いきなりの展開に一瞬呆けていた護衛達だが一人が我にかえり攻撃したかと思うと次々に武器を手に切りかかっていった。

「がぁっっっ!!」

 時間にしておよそ3分。

 護衛達の渾身の攻撃を受け続けた角虎はついに力尽き大地にひれ伏した。

「やったぞ!俺達は助かったんだ!」

 大物を倒し力が抜けた護衛達はその場にへたりこんだ。

 それを見た僕は安心して先ほど気絶させた狼に止めの魔法を放っていた。

「皆さん大丈夫でしたか?」

 その後、探索魔法で先ほど逃げた狼が近くにいない事を確認した僕は護衛の一人に話しかけた。

「ありがとう、助かったよ。

 今のは『魔法』かい?」

 僕は少し迷ったが他にいい言い訳が思い付かなかったので軽く頷いて肯定した。

「そうか、あれだけの攻撃魔法は初めて見たよ。見たところまだ若いしその身なりは何か訳ありかな?
 おっと助けて貰っておいて自己紹介がまだだったな。俺はこの馬車の護衛のリーダーでデルターという冒険者でランクはDだ」

 デルターという青年は自己紹介をしてから僕に優しく聞いてきた。

「僕はオルトです、先日まで山奥で祖父と暮らしていたが先日祖父が亡くなってから生活していくために山を降りて仕事を探す事にしたのだけど山奥に籠っていたので普通の仕事をこなす自信も無いし、力には少しばかり自信かあったから冒険者が向いているんじゃないかと思い街へ向かってた所で皆さんに会ったんです」

「そうだったのか、どうりで強いくせにボロボロの服を着ているなと感じていたんだ。
 だがこの先は街ではなく村だ、街に行くならば反対側に数日のところにあるぞ」

 デルターが親切に教えてくれる。

「それは分かっているけど、実は冒険者になるための登録の仕方が分からないんだ。
 身なりもこんなボロボロの服を着ていたら街に入れてくれないかもしれない。
 だから村で身なりを整えて情報を集めてから街に行こう思ってたんだ」

 僕は適当になんとなく辻褄が合うように話しを作って答えてみた。

 正直なところ怪しい事この上ないが全て正直に話す訳にはいかないので仕方ないだろう。

「そうか、君も色々と苦労してるんだな。そうだ!助けて貰ったお礼に幾つか有益な情報を話してやろう。
 どうせ村まで行くのだろう?俺達に同行して行けば村の入り口で要らない詮索に遭わずにすむぞ。
 ああ、俺達の依頼主には話しをつけておくから心配しなくて良いからな」

 デルターはそう言うと馬車に向かい依頼主に僕の事を説明し、同行の了解を得たので一緒に村へ向かうことになった。

 僕はデルターや他の仲間達に知りたかった情報をどんどん質問していたが、半刻ほどで村に到着したため時間が足りなかったので村の宿屋兼食堂で詳しい話を聞くことになった。
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