荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第196話【ノエルのお店とこれからの事】

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「お店、どうなってるのかな?」

 僕に気を遣いながらもノエルがそうつぶやくのを聞いて僕は彼女に話をする。

「君をカード化して連れ出した当初の話であれば暫くはギルドが面倒を見てくれる話になっていたと思うけどあれからかなりの日数が経っているし、当然ながらノエルの父親への報告も行っているだろうから物資も止まって休業をしているんじゃないかな?」

 僕はそう言ってふと王都に寄ったのにノエルの実家へ連絡をいれていなかったことに気がついた。

「そういえば王都にも寄ったのにノエルさんの実家には顔を出さなかったのはまずかったかな?」

「いえ、あのタイミングで顔を出していれば色々と時間をとられていたでしょうから寄らなくて正解だったと思います」

「すまないな。
 この騒動が落ち着いたら必ず顔を出すようにするから」

 僕はノエルにそう言って謝るとふたりでお店へと歩いて行く。

「この辺りも地神の影響が多く見られるんだな」

「そうですね。
 もしかすると私のお店も被害を受けているかもしれませんね」

「あまり酷い状態でなければいいけどね」

 ノエルの言葉に僕はそう答えると優しく微笑む。

「あ、見えて来ました。
 外観は大きく崩れたりした様子はありませんね」

 お店にたどり着いたノエルは建物の状態を見てほっと息を吐いた。

「やっぱり閉めているみたいだけど中には入れるのかな?
 そういえば家の鍵ってどうなってるんだろうか?」

 僕は店の目の前まで来てから肝心なことを思い出して慌てる。

「しまったな、あの事件の時この店の管理をギルドマスターに任せてきたからギルドが持っているのかもしれない。
 しっかりと聞いておけば良かった」

 僕のボヤきにノエルはクスクスと笑いながら手のひらに乗せた鍵を僕に見せてくれる。

「ああ、それでしたらさっき返して貰いましたよ。
 ほら、ここにありますよ」

「いつの間に?」

「ギルドマスターからお店を見てくるように言われた時に渡されました」

「そうか、全く気がつかなかったよ」

 僕の言葉に微笑みながらノエルはお店の鍵を開ける。

 かちゃり

 ドアは特に歪んでいることもなく普通に開く事が出来て僕とノエルは目線をあわせてほっとする。

「とりあえず入ってみましょう。外観は大丈夫でも棚の商品は落ちているかもしれませんから」

 ノエルはそう言って先に店の中に入ると大きなため息をつく。

 中はあの事件があった時の配置のままで棚に綺麗に並べられていた商品の多くは床に散乱していた。

「やっぱり揺れはかなり強かったみたいですね。これは片付けるのが大変ですね」

 床に散乱した商品のひとつを手にノエルが寂しそうな表情をみせる。

 そんなノエルを見て僕は彼女にあえて明るく話しかける。

「片付けならば僕の得意分野だな。こっちの端から種類別にカード化していくから必要なものだけケースに纏めておいてくれたら後で整列もやってあげるよ」

「ありがとう。それならば思ったよりも早く片付くかもしれませんね」

 笑顔を見せるノエルに僕はほっと胸を撫で下ろして商品のカード化を始めた。

 ◇◇◇

「だいたい片付いたようだね」

 小一時間もした頃には店の中にあった商品のほとんどをカード化することが出来ていた。

「何もなくなっちゃいましたね」

「そうだね。とりあえず壊れていたものは避けておいたから確認をして欲しいな。必要なものは配置を指示してくれたらいつでもカードから開放してあげるから」

 僕の言葉にノエルはうなずいたが少し考えて僕に言う。

「この商品達は暫くカード化したままで置いておこうと思うの。今はこんな時だからどうせお店の再開もすぐにはできないと思いますし、ミナトさんもまだまだやりたい事があるのでしょう?」

 ノエルはそう言って僕の考えを見透かしたような表情をする。

(まったく、ノエルには敵わないな)

「君がそう言ってくれるのならばそうさせて貰うよ。先ずはロギナスの町で僕たちに出来る事をしていこう。それに目処がたったら次の事をゆっくりと考えていこうと思う」

「ええ、それでいいわ」

 ノエルの言葉に僕はカード化して何も無くなった部屋を見ながら再開を心の中で誓った。

「さて、ギルドに行くのは明日だとして今日はどこに泊まろうか?
 宿もまだ見てきていないから営業をしているかを確認してこようかな」

 僕がそう言って部屋から出て行こうとするとノエルが引き止める。

「待ってください。
 泊まりならこの建物で良いのではないですか?」

「え? でも荷物は全てカード化してしまっ……」

 僕はそう言いかけて、まだお店の中しか片付けていない事に気がついた。

「まだ奥の私の部屋がありますよ。さすがの私でもお店の中では寝泊まりをしていませんから……」

 ノエルはそう言うとカウンターの中から続く奥へ扉の鍵を開いた。

「ここから奥の部屋は今まで他の誰にも見せたことはありません。
 それこそ家族にも……です」

 ノエルの言葉に僕は急に緊張をしてきて落ち着かない様子で辺りを見回す。

「ふふふ。
 そんなに緊張しなくてもごく普通の部屋ですよ」

 ノエルが僕の前を歩いていて突然振り向いたと思うとそう言っていたずらっぽく笑顔を見せる。

「あ、でもお店があんなだったからきっと私の部屋もぐちゃぐちゃになってるかもしれませんね。
 せっかく綺麗にしているところを見せたかったのですけど……」

 そう言ったノエルは部屋の前で僕の肩に手を置くと「少しだけ反対を向いて待っていてください」とクルリと僕の身体を反転させてからさっと自分の部屋に入っていった。
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