荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第190話【王都ギルドからの依頼】

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「エルガーでは食料が足りていないのは聞いているか?」

「ええ、ノーズから食料を送れるように手配をしてきましたのでそれは知っています」

「なら話は早い。
 王都って所は国の中心だから人が集まり食料も集まる。
 その過程で保存出来る食料に関してはかなりの貯蓄を持っているものだ。
 今回はその一部だが他所に回せる物を確保してあるのでそれを運んで欲しい」

 ランスロットは直ぐにそう言うと部下に指示を出して貯蔵庫への連絡をさせる。

「それは僕たちが直接運んだ方が良いですか?
 それとも特殊なカード化をしてギルド便で送れるようにした方が良いですか?」

 ここからならば途中の道の処理をしながらでも2日もあればエルガーにはたどり着けるだろうがギルド便を使えばカード化さえ済ませれば半日かからずに送ることが出来るのでその判断をランスロットにしてもらうことにした。

「カード化にかかる時間はどのくらいだ?」

「荷物の総量次第ですが一括してで良ければすぐにでも。
 一山ごとに小分けするならば数十分くらいですかね」

「なに?
 そんなに早く出来るのか?」

 ランスロットは信じられないといった表情でキリュウを見る。

「ワシでは無理ですな。
 しかし、ミナト殿ならば可能かと」

「僕たちが馬車でエルガーに向かうとしても依頼の道中の片付けがありますので早くても2日はかかります。
 対してギルド便ならば半日もかからないですが向こうで開放をしてもらう事になります」

「分かった。
 ミナト殿にはすまないがギルド便で送れるようにカード化を頼む。
 キリュウを付けるので後の処理がやりやすいようにしてくれ」

「久しぶりにミナト殿のスキルを見られるのですな。楽しみですな」

 キリュウはそう言うと僕をギルドの裏手から大きな倉庫へと案内してくれた。

「おおっ。
 これはなかなかの量ですね」

「通常の馬車だと50台分はあるかと。
 ただ、この全てをエルガーに送るわけにはいかないので出来れば馬車1台分ごとにカード化してもらえると助かるのじゃが。
 そうすれば必要な時に必要な分だけ送る事が出来ますからの。
 それに……」

「それに?」

「ワシも出来るから分かっておるが、カード化すれば劣化もせんから保管しておくのに都合もいいし、送りすぎたので戻すとなった時でも簡単に手続きが出来るからの」

「ただ、問題はそのカード化が出来る人が居ないってことなんですね。
 キリュウさんも一応劣化防止はつけれるでしょうけど一回で出来る容量がそれほど多くないですからね」

「はっはっは。
 これでもワシは王都一のカード収納使いなんじゃがな。
 まあ、ミナト殿からすればひよっこ同然かもしれんが」

「まあ、それは仕方ないでしょう。
 メインスキルとサブスキルの上限限界の差なんですから。
 まあ、話していても進みませんからさっさと片付けてしまいましょうか」

 僕はキリュウに指示を貰いながら一山ごとに開放限定付きのカード化を施していった。

  *   *   *

「――とりあえずこれで全部ですか?」

「まさか、ほんの1時間程で全てのカード化が終わるとは思わかなかったぞ」

 カード化された援助物資を見ながらランスロットがそう驚きの声をあげる。

「さすがワシの師匠じゃの。
 あれだけの量をカード化するのは他の者には出来ん芸当だからの」

 驚くべランスロットの横でキリュウは上機嫌にそう言って笑う。

「これで当面は大丈夫だと思いますので必要とされている街へ送ってください」

「至急の対応、恩に着る。
 これで必要な街へ早急に支援物資を送ることが出来る。
 この後、ギルドの受付で報酬を受け取って欲しい」

 ランスロットは僕にお礼を言うとキリュウに対して早急にエルガーの街へ送るように指示を出した。

「それではミナト殿。
 ワシはこれから急ぎの仕事に入るのでここで失礼するが、また落ち着いたら是非とも王都へ来られてくだされ」

「ああ、今は僕たちも急ぎの旅の途中だが落ち着いたらそうさせて貰うよ」

 キリュウの言葉にそう返した僕はノエルと共にギルドの受付に行き、ランスロットの言うとおりの報酬を受け取ってからギルドを出た。

「さて、報告に依頼も完了したからエルガーに向けて出発しようか」

「それは構いませんけど、今からですと中途半端な場所での野営もあり得るかもしれませんよ」

 預けておいた馬車を受け取り王都の門へと向かいながら僕はノエルとこの後の予定を話し合っていた。

「元々、道中の片付けをしながら進むのだから予定通りに行くとは思ってないよ。
 だけど少しでも早くロギナスに戻りたいだろ?」

「それはもちろんそうなのですけれど……」

「なら、それで行かないか?
 うまく進めれば明日の夜にはエルガーに着くし、あそこの街への支援物資は食料だし渡してしまえば直ぐにでも出発出来るだろうから一泊して次の日の朝出ればもしかしたらその日のうちにロギナスまでたどり着けるかもしれないからね」

 僕の提案にノエルは一瞬嬉しそうな表情となるが直ぐに真剣な表情となり僕に忠告する。

「私のために急いでくれるのは嬉しいけれど、早る気持は足元を掬われる可能性があるわ。
 それにエルガーだって食料品渡して即さようならとはいかないのでは無いですか?
 王都と同じく道中の報告も必要ですしロギナスの情報も一番近い街ですから入ってきているでしょう。
 ノーズで聞いたものとずれている可能性だってありますし、慌てて戻っても何も出来なかったり準備不足だったりは後悔してしまいますよ」

 本当は少しでも早く戻りたいであろうノエルにそう言われては僕は首を縦にふるしか無かった。
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