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第189話【素材の提供と調薬の依頼】

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「失礼しますぞ」

 そう言って部屋に入って来たのは先日食堂で顔をあわせたキリュウだった。

「ああ、知り合いとはキリュウさんの事でしたか。
 そう言えば何か僕と話したい事があると言われていましたね」

 僕はキリュウに向きなおりそう言って握手を求めた。

「話というのは他でもない。
 現在この地に起こっている地神による各地の被害についてなのだが、もう聞いているかもしれんが王都では元々住んでいる人数が多く怪我をした者もそれに比例するように多くなっているのじゃよ」

「つまり、薬が足りていないという事ですね」

「まあ、そうなるな。
 ミナト殿のおかげでノーズから多くの薬を含む物資が送られて来たのでひとまず危機的なレベルは回避出来ているのじゃがやはりそれでもまだ足りぬのじゃよ」

「そうですか。
 それほどの怪我人が溢れているのですね」

「まあ、命に関わるほどの怪我をしている者はそれほど多くはないのだが軽、中程度の怪我人がまだまだ多く見られ薬屋には連日多くの患者が詰めかけているそうじゃ」

「それは大変ですね」

「そこで、ミナト殿はこれからエルガーやロギナスに向かわれるとお聞きしましたのでそれぞれのギルドに融通出来るほどで良いのでカード化してギルド便にて送って欲しいのじゃ」

「それは構いませんがどうしてキリュウさんがそのような話を?」

「ワシもギルド職員でギルド便の責任者になるからの。
 外部からの輸送が絡めば要請を受けないといけないんじゃよ」

「それは大変ですね、わかりました各街に行った際はギルドに報告して手伝える事があればやっておきますね」

 僕がそう言ったとき横で聞いていたノエルが思い出したように告げる。

「そういえば前に魔導具を使った傷薬を作りませんでしたか?
 いろいろあって高品質のものは多量生産が難しいと断念しましたが軽度の怪我ならばあれでもそれなりの効果は期待出来そうですけど……」

「ああ、あれか。
 だけどあの時作ったものは配ってしまったから今はそれほど多く持ってはいないよ」

「でも材料だけはかなりありましたよね?」

「ああそうだ、素材だけはかなりの量を買ってカード化しておいたから作る時間さえあればいけるかもしれないな」

 僕とノエルが前に魔導具を使って作った傷薬の話をしていたら話がみえないキリュウが不思議そうな顔で聞いてくる。

「すまないが、話がよく理解出来ていないんだが……。
 傷薬を作るとかなんとか言ってたようじゃが何の話なんじゃ?」

「ああ、それは僕たちが隣国へ旅をしていた際に手に入れた魔導具を使い調薬をした時のことですね。
 傷薬の素材を準備出来れば調薬師が居なくても初級回復薬程度ならば作ることが出来る代物ですよ」

 僕がこれまでの経緯を説明してポーチから魔導具のカードを取り出してキリュウに見せる。

「いや、すまんが全く理解出来なかったんじゃが、もっと分かりやすくはならんか?」

 僕は今まで見たことのないものを話だけで想像しろと言われても普通は無理なのを忘れて最も簡単な説明方法を失念していた。

「実際に目の前で作れば良いではないですか?」

「そうか、それもそうだな」

 ノエルの指摘に僕はそう言って調薬の魔導具と素材をカードから取り出す。

「じゃあ一度作ってみますので見ていてください」

 僕はキリュウにそう言って魔導具に次々と素材を入れていく様子を驚いた様子で見つめるキリュウの目の前でソレは完成をする。

「こんな具合です。
 あ、知っていると思いますが当然ながら僕は調薬スキルは持っていませんよ」

 そう言って完成した初級回復薬をキリュウに手渡した。

「こ、これは。
 こんなに簡単に薬が出来るならば調薬師の負担も減らせるだろう。
 素材もそう多くはないのでこれならばワシらでもなんとかなりそうじゃな」

 実際に調薬をするのを見てキリュウは感心した様子で魔導具を眺める。

「これはどこで手に入れられたか聞いても良いかの?」

「これはアランガスタの職人が作ったものですので詳しい事はお話出来ませんがギルドを通して打診をすればもしかしたら上手く取り寄せられるかもしれません。
 しかし、今欲しいのに何十日も先のことを見せられても仕方ないですよね」

 僕はそう言って魔導具をそのまま置いた後で素材のカードも一緒に取り出して横にそえる。

「とりあえず今僕が持っている必要な素材を置いておきますので早急に調薬をお願いします。
 それとこれを……」

 僕はそう言って以前仕入れたまま実際には使うことの無かった、いや出来なかった大量の芋のカードを取り出してキリュウ言う。

「この芋はある製法で成分を抽出させると薬の材料となるのです。
 ただ、作るには調薬スキルが必要なのでこのギルドに所属している調薬師にこのレシピを見せて試してみてください」

 僕はそう言うと調薬に必要なレシピを書いたメモをキリュウに渡すと彼は驚いた表情でそれをランスロットに渡すとそれを見た彼はすぐに僕たちに告げた。

「このような情報をタダで頂くわけにはいきませんので登録の手続きをして頂きます。
 本来ですと商業ギルドへの登録となるのでしょうが冒険者ギルドでも調薬師に伝手はありますのでそちらで試してみたいと思います」

「試作もまだなので大変かと思いますが是非成功させてくださると嬉しいですね。
 ああ、僕たちはこの後にエルガーに向けて出発するつもりだから、もしエルガーに運ぶ荷物があれば言ってください」

 僕はランスロットとキリュウにそう言うと出された紅茶を一口飲んでランスロットの回答を待った。
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