183 / 201
第183話【可愛いヤツ】
しおりを挟む
「本当にそんな事が可能なのか?」
僕の説明を聞いたディアルはとても信じられないとばかりに唸りをあげる。
「ミナトさんならば可能だと思いますよ」
横で一緒に話を聞いていたロセリがそう発言をする。
「ううむ。
ロセリくんがそう言うならばきっと出来るのだろう。
まあ、どちらにしても誰かがやらなければならない事だから出来る可能性の高い者に頼むのは筋が通っている。
ならばここは君にお願いをしてみることにするのが最善策なのだろう」
ディアルはそう言うと依頼書を持ってこさせて僕たちに説明をしてくれた。
「まあ、簡単に言うと馬車が通行出来るように倒木や崩れた岩なんかを片づけて欲しいこととギルド便では届けられなかった物資を運んで欲しいというのが主な依頼内容だ。
優先度は荷物の運搬だが馬車が通れなければ運べないので結局のところ同時に対応としか言えないのが苦しいところだ」
「荷物はどこにありますか?」
「ギルドの巨大倉庫に山積みになっている状態だ。
少なく見積もっても普通の馬車ならば50台は必要になるだろう」
「それらの荷物は街別に分けてありますか?」
「ああ、もちろん。
そうでなければ運ぶ無駄が出てしまうからな」
「それならばロギナスまでの通り道である王都とエルガーにロギナスの3箇所分の荷物は全て引き受けます。
ザザリアに関しては王都までならば引き受けますがそれより南側には行く時間がないので他の方にお願いしてください」
僕がこれからの進め方を考えながらディアルに提案すると呆れた表情をされてしまった。
「いや、今までの私の話を聞いていたのかね?
荷物は少なくとも馬車50台は必要だと言ったはずだが?」
「そうですね。
確かにそう聞いています」
「ならば何故そう出来ない事を先ほどから言っているのかね?」
「いえ、出来るからそう言っているだけなんですが……。
とりあえずその荷物がある倉庫へ連れて行ってもらえませんか?」
ディアルはまだ信じられないといった表情をしていたがロセリがうなずくのをみて「わかった、案内しよう」と言ってソファから立ち上がった。
「――こっちだ。
このへやに積み上げられている物資は全部送り出すつもりで置いてあるから街ごとに積み込んで行けば良いだろう」
僕が案内された倉庫には大小さまざまな物資が配送先別に積み上げられていた。
「わかりました。
ここにある物資の目録を見せてください。
それに突き合わせながら全てカード化していきます」
「全て!?
かなり大きな物もありますし、数も半端な量じゃありませんよ!?」
僕の説明に先に反応したのはディアルではなくロセリの方だった。
「ロセリさんが驚くのも無理はないけどこれが僕の存在価値だからね」
僕はそう言いながらリストを片手に置かれている品物ひとつひとつをカード化していった。
「て、手伝います!」
ロセリがそう言って品物に手をかけるがそれを僕は引き止めた。
「ロセリさんは今、ギルド便に必要な物資のカード化でかなりの魔力を消費していますのでここで無理をする必要はありませんよ」
「ですが!」
「大丈夫です。
僕だって倒れるまでスキルを酷使したりはしませんから。
直ぐ側でノエルも見ていてくれてるので心配はしなくても良いですよ」
話をしている間にも倉庫を埋め尽くしていた救援物資は半分近くをカードの姿に変え、側に控えていたノエルがそれをきちんと整理をしていた。
「もう、こんなに……。
ミナトさんはいったいどれだけの魔力量を持っているのですか?」
ロセリは自分を基準に考えて僕の魔力量の多さに圧倒されてそう聞いた。
「さあ?
人よりは多めだとは思ってるけど正確に測ったことはないからわからないよ」
次々と大きな品物もカード化していくのを見てロセリは僕に質問を投げかける。
「このカード化したものをギルド便で送ってしまえばそれで済むのではないでしょうか?」
当然の問である。
「もちろんそれでもいいと思うよ。
但し、相手側が開放出来る細工をしておかなければならないけれどね」
「条件圧縮ですね?」
「その通りです。
このまま相手側に送っても受け取った側が開放出来なければ全く意味がないですからね。
例えばこんな感じですね。
条件圧縮」
スキルを追加したカードからは淡い光が漂いカードに特殊な模様が浮かび上がっている。
「これは私でも開放出来るようにされたのですね」
ロセリはそう言うとカードを持ってスキルを使った。
「開放」
ロセリがスキルを使うと自分では圧縮出来なかったサイズの品物が目の前に現れる。
「やはりミナトさんは素晴らしいです」
ロセリが目を輝かせながら僕の手を自らの手でギュッと握って称賛を送ってくる。
それは愛とかではなく強烈な尊敬や崇拝の感情だったが熱を帯びた視線に側にいたノエルが反応して慌てて間に入ってきた。
「ちょっ、ロセリさん近すぎ!
ミナトさんから離れてください!」
「え?
ミナトさんはカード収納スキルを持つ人たち皆の先生ですよ?
敬愛の念を持って接することは当然ではないのですか?」
ロセリはさらりと正論でノエルを論破しようとするが心穏やかでないノエルは思わず僕の背中に抱きつき顔を埋め込んで「ゔー」と唸る。
「ロセリはそんなんじゃないからそう唸るなよ」
(可愛いヤツめ)
ロセリから手を離した僕は背中にくっついているノエルに苦笑しながらそのままの状態でカード化を続ける。
「なんか妬けちゃいますね」
恥ずかしくて背中に顔を埋めたままのノエルを見てロセリはそう呟いた。
僕の説明を聞いたディアルはとても信じられないとばかりに唸りをあげる。
「ミナトさんならば可能だと思いますよ」
横で一緒に話を聞いていたロセリがそう発言をする。
「ううむ。
ロセリくんがそう言うならばきっと出来るのだろう。
まあ、どちらにしても誰かがやらなければならない事だから出来る可能性の高い者に頼むのは筋が通っている。
ならばここは君にお願いをしてみることにするのが最善策なのだろう」
ディアルはそう言うと依頼書を持ってこさせて僕たちに説明をしてくれた。
「まあ、簡単に言うと馬車が通行出来るように倒木や崩れた岩なんかを片づけて欲しいこととギルド便では届けられなかった物資を運んで欲しいというのが主な依頼内容だ。
優先度は荷物の運搬だが馬車が通れなければ運べないので結局のところ同時に対応としか言えないのが苦しいところだ」
「荷物はどこにありますか?」
「ギルドの巨大倉庫に山積みになっている状態だ。
少なく見積もっても普通の馬車ならば50台は必要になるだろう」
「それらの荷物は街別に分けてありますか?」
「ああ、もちろん。
そうでなければ運ぶ無駄が出てしまうからな」
「それならばロギナスまでの通り道である王都とエルガーにロギナスの3箇所分の荷物は全て引き受けます。
ザザリアに関しては王都までならば引き受けますがそれより南側には行く時間がないので他の方にお願いしてください」
僕がこれからの進め方を考えながらディアルに提案すると呆れた表情をされてしまった。
「いや、今までの私の話を聞いていたのかね?
荷物は少なくとも馬車50台は必要だと言ったはずだが?」
「そうですね。
確かにそう聞いています」
「ならば何故そう出来ない事を先ほどから言っているのかね?」
「いえ、出来るからそう言っているだけなんですが……。
とりあえずその荷物がある倉庫へ連れて行ってもらえませんか?」
ディアルはまだ信じられないといった表情をしていたがロセリがうなずくのをみて「わかった、案内しよう」と言ってソファから立ち上がった。
「――こっちだ。
このへやに積み上げられている物資は全部送り出すつもりで置いてあるから街ごとに積み込んで行けば良いだろう」
僕が案内された倉庫には大小さまざまな物資が配送先別に積み上げられていた。
「わかりました。
ここにある物資の目録を見せてください。
それに突き合わせながら全てカード化していきます」
「全て!?
かなり大きな物もありますし、数も半端な量じゃありませんよ!?」
僕の説明に先に反応したのはディアルではなくロセリの方だった。
「ロセリさんが驚くのも無理はないけどこれが僕の存在価値だからね」
僕はそう言いながらリストを片手に置かれている品物ひとつひとつをカード化していった。
「て、手伝います!」
ロセリがそう言って品物に手をかけるがそれを僕は引き止めた。
「ロセリさんは今、ギルド便に必要な物資のカード化でかなりの魔力を消費していますのでここで無理をする必要はありませんよ」
「ですが!」
「大丈夫です。
僕だって倒れるまでスキルを酷使したりはしませんから。
直ぐ側でノエルも見ていてくれてるので心配はしなくても良いですよ」
話をしている間にも倉庫を埋め尽くしていた救援物資は半分近くをカードの姿に変え、側に控えていたノエルがそれをきちんと整理をしていた。
「もう、こんなに……。
ミナトさんはいったいどれだけの魔力量を持っているのですか?」
ロセリは自分を基準に考えて僕の魔力量の多さに圧倒されてそう聞いた。
「さあ?
人よりは多めだとは思ってるけど正確に測ったことはないからわからないよ」
次々と大きな品物もカード化していくのを見てロセリは僕に質問を投げかける。
「このカード化したものをギルド便で送ってしまえばそれで済むのではないでしょうか?」
当然の問である。
「もちろんそれでもいいと思うよ。
但し、相手側が開放出来る細工をしておかなければならないけれどね」
「条件圧縮ですね?」
「その通りです。
このまま相手側に送っても受け取った側が開放出来なければ全く意味がないですからね。
例えばこんな感じですね。
条件圧縮」
スキルを追加したカードからは淡い光が漂いカードに特殊な模様が浮かび上がっている。
「これは私でも開放出来るようにされたのですね」
ロセリはそう言うとカードを持ってスキルを使った。
「開放」
ロセリがスキルを使うと自分では圧縮出来なかったサイズの品物が目の前に現れる。
「やはりミナトさんは素晴らしいです」
ロセリが目を輝かせながら僕の手を自らの手でギュッと握って称賛を送ってくる。
それは愛とかではなく強烈な尊敬や崇拝の感情だったが熱を帯びた視線に側にいたノエルが反応して慌てて間に入ってきた。
「ちょっ、ロセリさん近すぎ!
ミナトさんから離れてください!」
「え?
ミナトさんはカード収納スキルを持つ人たち皆の先生ですよ?
敬愛の念を持って接することは当然ではないのですか?」
ロセリはさらりと正論でノエルを論破しようとするが心穏やかでないノエルは思わず僕の背中に抱きつき顔を埋め込んで「ゔー」と唸る。
「ロセリはそんなんじゃないからそう唸るなよ」
(可愛いヤツめ)
ロセリから手を離した僕は背中にくっついているノエルに苦笑しながらそのままの状態でカード化を続ける。
「なんか妬けちゃいますね」
恥ずかしくて背中に顔を埋めたままのノエルを見てロセリはそう呟いた。
5
お気に入りに追加
882
あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界を服従して征く俺の物語!!
ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。
高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。
様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。
なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる