荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第183話【可愛いヤツ】

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「本当にそんな事が可能なのか?」

 僕の説明を聞いたディアルはとても信じられないとばかりに唸りをあげる。

「ミナトさんならば可能だと思いますよ」

 横で一緒に話を聞いていたロセリがそう発言をする。

「ううむ。
 ロセリくんがそう言うならばきっと出来るのだろう。
 まあ、どちらにしても誰かがやらなければならない事だから出来る可能性の高い者に頼むのは筋が通っている。
 ならばここは君にお願いをしてみることにするのが最善策なのだろう」

 ディアルはそう言うと依頼書を持ってこさせて僕たちに説明をしてくれた。

「まあ、簡単に言うと馬車が通行出来るように倒木や崩れた岩なんかを片づけて欲しいこととギルド便では届けられなかった物資を運んで欲しいというのが主な依頼内容だ。
 優先度は荷物の運搬だが馬車が通れなければ運べないので結局のところ同時に対応としか言えないのが苦しいところだ」

「荷物はどこにありますか?」

「ギルドの巨大倉庫に山積みになっている状態だ。
 少なく見積もっても普通の馬車ならば50台は必要になるだろう」

「それらの荷物は街別に分けてありますか?」

「ああ、もちろん。
 そうでなければ運ぶ無駄が出てしまうからな」

「それならばロギナスまでの通り道である王都とエルガーにロギナスの3箇所分の荷物は全て引き受けます。
 ザザリアに関しては王都までならば引き受けますがそれより南側には行く時間がないので他の方にお願いしてください」

 僕がこれからの進め方を考えながらディアルに提案すると呆れた表情をされてしまった。

「いや、今までの私の話を聞いていたのかね?
 荷物は少なくとも馬車50台は必要だと言ったはずだが?」

「そうですね。
 確かにそう聞いています」

「ならば何故そう出来ない事を先ほどから言っているのかね?」

「いえ、出来るからそう言っているだけなんですが……。
 とりあえずその荷物がある倉庫へ連れて行ってもらえませんか?」

 ディアルはまだ信じられないといった表情をしていたがロセリがうなずくのをみて「わかった、案内しよう」と言ってソファから立ち上がった。

「――こっちだ。
 このへやに積み上げられている物資は全部送り出すつもりで置いてあるから街ごとに積み込んで行けば良いだろう」

 僕が案内された倉庫には大小さまざまな物資が配送先別に積み上げられていた。

「わかりました。
 ここにある物資の目録を見せてください。
 それに突き合わせながら全てカード化していきます」

「全て!?
 かなり大きな物もありますし、数も半端な量じゃありませんよ!?」

 僕の説明に先に反応したのはディアルではなくロセリの方だった。

「ロセリさんが驚くのも無理はないけどこれが僕の存在価値だからね」

 僕はそう言いながらリストを片手に置かれている品物ひとつひとつをカード化していった。

「て、手伝います!」

 ロセリがそう言って品物に手をかけるがそれを僕は引き止めた。

「ロセリさんは今、ギルド便に必要な物資のカード化でかなりの魔力を消費していますのでここで無理をする必要はありませんよ」

「ですが!」

「大丈夫です。
 僕だって倒れるまでスキルを酷使したりはしませんから。
 直ぐ側でノエルも見ていてくれてるので心配はしなくても良いですよ」

 話をしている間にも倉庫を埋め尽くしていた救援物資は半分近くをカードの姿に変え、側に控えていたノエルがそれをきちんと整理をしていた。

「もう、こんなに……。
 ミナトさんはいったいどれだけの魔力量を持っているのですか?」

 ロセリは自分を基準に考えて僕の魔力量の多さに圧倒されてそう聞いた。

「さあ?
 人よりは多めだとは思ってるけど正確に測ったことはないからわからないよ」

 次々と大きな品物もカード化していくのを見てロセリは僕に質問を投げかける。

「このカード化したものをギルド便で送ってしまえばそれで済むのではないでしょうか?」

 当然の問である。

「もちろんそれでもいいと思うよ。
 但し、相手側が開放出来る細工をしておかなければならないけれどね」

条件圧縮コンデストですね?」

「その通りです。
 このまま相手側に送っても受け取った側が開放出来なければ全く意味がないですからね。
 例えばこんな感じですね。
 条件圧縮コンデスト

 スキルを追加したカードからは淡い光が漂いカードに特殊な模様が浮かび上がっている。

「これは私でも開放出来るようにされたのですね」

 ロセリはそう言うとカードを持ってスキルを使った。

開放オープン

 ロセリがスキルを使うと自分では圧縮出来なかったサイズの品物が目の前に現れる。

「やはりミナトさんは素晴らしいです」

 ロセリが目を輝かせながら僕の手を自らの手でギュッと握って称賛を送ってくる。

 それは愛とかではなく強烈な尊敬や崇拝の感情だったが熱を帯びた視線に側にいたノエルが反応して慌てて間に入ってきた。

「ちょっ、ロセリさん近すぎ!
 ミナトさんから離れてください!」

「え?
 ミナトさんはカード収納スキルを持つ人たち皆の先生ですよ?
 敬愛の念を持って接することは当然ではないのですか?」

 ロセリはさらりと正論でノエルを論破しようとするが心穏やかでないノエルは思わず僕の背中に抱きつき顔を埋め込んで「ゔー」と唸る。

「ロセリはそんなんじゃないからそう唸るなよ」

(可愛いヤツめ)

 ロセリから手を離した僕は背中にくっついているノエルに苦笑しながらそのままの状態でカード化を続ける。

「なんか妬けちゃいますね」

 恥ずかしくて背中に顔を埋めたままのノエルを見てロセリはそう呟いた。
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