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第179話【混乱するアランガスタ王都】

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「これは一体どうしたことなのでしょうか?」

 王都の門の前に到着した僕たちの前には慌てて街を離れようとする人波で溢れかえっていた。

「ちょっと早くしてちょうだい!」

「ダルべシアはまだ大丈夫なのか?」

「金は払う!
 誰かダルべシアに向かう馬車は居ないか!」

 街を離れようとする者たちはこぞってダルべシアへと向かおうとしているように見える。

「何かあったのでしょうか?」

 その様子を見ていたノエルが心配そうに僕にそう問いかけてくる。

「正直、情報が無さすぎてなにも答えられないよ。
 おそらくだけど、さっきの揺れが原因のひとつじゃないかとは思うようにけれど確証は無いからまずはギルドに行ってみよう」

「そうですね。何が起きているのか分からなければ何もしようが無いですもんね」

 僕はノエルの手を握りしめて商業ギルドへと走り出した。

「おい!
 まだ手配は出来ないのか!?」

「早くしてよ!
 また揺れたらどうするつもりよ!」

 商業ギルドに着いた僕たちはここでも起こっている群衆らを目の当たりにする。

「落ち着いてください!
 アランガスタの王都はまだ大した被害は出ていませんし今、無理にダルべシアへ行っても受け入れられる人数は限られているうえ、この混乱に乗じて野盗が活発化する可能性が高いですので十分な準備無しに出発するのはおすすめ出来ません!」

 ギルドの職員が大声でパニックになりかけている群衆に向けて叫んでいた。

「やはりさっきの大きな揺れで民衆が危機感を持っているようだな」

「周りの話を聞いている限りダルべシアは大丈夫のようですね。もう少し情報が欲しいですのでギルドの職員に聞いてみましょう」

 ノエルは辺りを見回して比較的人が集まっていないギルド職員を捕まえた。

「すみません。私はグラリアン出身の商人ですがダルべシアへ商売で行っていてこちらに戻ってきたばかりでこの騒ぎを見て驚いています。
 状況の把握をしたいので分かる範囲でいいので教えてください」

「グラリアンの方ですか?
 あちらは今大変な事になっていると聞いています。
 地神様が現れて国全体が揺れ、多くの街道が寸断されているようで馬車では街ごとの行き来が出来なくなっているそうです」

「街の状況は分かっているのですか?」

「国境砦にグラリアンからの伝令が来たことによりそのような状況が伝わっているだけで実際に見てみないと詳しい状態は分かりません」

「そう……ですよね」

「グラリアンの行商人の方なんですよね?
 つい先程アランガスタ王都商業ギルドからグラリアンに向けた支援物資の輸送依頼が出ています。
 もちろん一人に託すではなく各地に向かうために複数の方にお願いしたいのですが国境から一番近いノーズの町までの輸送依頼を受けてもらえませんか?」

 ギルド職員はそう言ってノエルをカウンターへと案内して依頼書を提示した。

【支援物資の輸送依頼:食料品および治療薬をノーズの町まで運ぶこと。
 依頼期限:3日以内
 報酬額:運ぶ量によって変動、馬車1台分につき金貨2枚。最高額は金貨40枚、最低額は金貨2枚】

「ノーズの町で良いのですね?」

「はい。
 ノーズからは各主要町へはギルド便を使って荷物を運ぶ技術を確立させているそうなので支援物資はノーズで大丈夫と聞いています」

「そうか、その手があったな。
 馬車での輸送移動が出来なければ各町が孤立してしまうが情報共有や物資共有が可能ならば各町で対応することが出来るだろう。
 しかし、ロセリさんが頑張っているのだろうけど一人で賄える数ではないだろうから早く駆けつけてあげないといけないな」

「では、引き受けると言う事で良いですね?」

 ノエルが念のため僕に確認をするがもとより受ける気しかなかったようで僕がうなずくとノエルはすぐに職員に依頼の手続きをするように促した。

「ありがとうございます。
 こんな状況ですのでエンダーラ方面に向かう依頼を引き受けてくれる商人や護衛の冒険者がほとんど居なくて困っていたのです。
 それで馬車の規模はどのくらいなのでしょうか?」

「その前に最大どのくらいの物資を運ぶ予定なのか聞いて良いですか?」

「今のところでは馬車20台分といったところですね。
 あ、もちろんあなた一人に頼むわけではありませんので心配しないでください」

「馬車20台分ですか……ミナトさん、いけますか?」

 ノエルは少し考えて僕の方を見てからそう聞いてくる。

「問題ないよ」

 僕がそう答えるとノエルは職員の方を向いて答える。

「私たちが全て引き受けても問題ないならば引き受けます」

「え?
 馬車20台も引き連れた大商隊なのですか?
 いや、それでも今も商品が多数馬車に乗っているでしょうに、大丈夫なのですか?」

 ギルド職員は驚きの表情で僕たちにも確認の視線を送ってくる。

「大丈夫だと思いますよ。
 馬車は1台ですが僕のカード収納スキルを使えば問題なく運べるはずですから」

「カード収納スキル!?
 あの使えないスキルですか?」

「ははは、まだこの辺りではその認識なのですね。
 しかし、グラリアンではギルド便での輸送に使われるくらいには浸透しているスキルですよ。
 とにかく急ぐならば荷物の所に案内してください」

「わ、分かりました。
 とりあえず依頼の処理をしてからご案内しますのでお待ちください」

 ギルド職員は半信半疑ながらも依頼書の手続きをして僕たちを倉庫へと案内してくれた。
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