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第161話【夕食会への招待】

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「わあっ 凄い!」

 指定された部屋のドアを開けると予想していたよりも広い空間が目に飛び込んできてノエルは思わず感嘆の声をあげていた。

「これはかなり良い部屋を紹介されたみたいだね。
 部屋の中に飾ってある装飾品が日頃見る部屋に置いてあるものと比べても高級品ばかりだよ。
 こんなものを惜しげもなく飾ってあるけど盗難対策は大丈夫なんだろうか?」

「ミナトって変な心配をするんだね。
 こういう部屋に泊まるのはそれなりに地位とお金を持っている人ばかりだからそんな心配はしなくていいわよ」

「僕は普通の平民だからね」

「ふふふ。あなたはじゅうぶん普通じゃないと私は思うんだけどね」

 ノエルは僕と軽いやり取りを終えて部屋にあるベッドに腰をおろしてから思い切り後ろに寝転んだ。

「うわっ ふかふか!」

 またもやノエルの驚嘆の声が部屋に響くと僕は苦笑いをしてからもう一つのベッドに腰をおろしてみた。

「ああ、確かにふかふかだから家用に欲しくなる寝具だね。
 一般には販売してないかもしれないけれどどこで買える聞いてみるのも良いかもしれないね」

「ベッドなんか買っても持って帰れるわけな……いこともないのかミナトならばそれも出来ちゃうんだったわね。
 ならせっかくだから大きなダブルベッドを頼んじゃう?」

 ノエルは少しいじわるそうな表情で僕にそう言った。

「そうだね。
 それはいい考えだと思うよ」

 僕は内心は恥ずかしく思ったがノエルのいじわるにちょっとだけお返しをしてやろうと彼女の言葉に同意をする発言をした。

「っ!?」

 僕の言葉は予想外だったようでノエルのほうが頬を赤くしてうつむいてしまう。

「ははは、まあ本当に出来るかどうかは聞いてみないとわからないから明日のお楽しみにするとしよう」

「うー、いじわる」

 頬を膨らませながらノエルは涙目で僕に抗議をしてベッドにうつ伏せで寝たふりをした。

 ――コンコン。

 僕たちの話が終わったころ、突然ドアがノックされて外から女性の声が声が聞こえた。

「すみません。
 ロロシエル商会の方から手紙がきていますがお渡ししても良いでしょうか?」

「あ、はい。
 今ドアを開けますね」

 僕はベッドから立ち上がるとドアを開けて声の主を招き入れる。

「こちらになります。
 伝言はミナト様に渡して欲しいとだけ言われていましたので詳細は手紙を読んでくだされば分かるかと思います」

「ああ、ありがとう」

「では、私はこれで失礼しますので何かありましたら受付まで連絡してください」

 彼女はそう言ってお辞儀をすると部屋から出ていった。

「トトルさんからみたいだし多分ロロシエル商会の主人と会う予定が決まったんだろう」

 僕は渡された手紙の封を切って中身を確認した。

「なんて書いてあるの?」

「……僕たちふたりを明日の夕食に招待したいとなってるね」

「夕食ならそれまでは自由にして良いのよね?
 せっかくだから街を見て歩きたいな」

 ベッドから起き上がり僕から手紙を受け取って内容を読んだ彼女はそう言って笑う。

「その前にベッドが注文出来るかを聞かなくても良いのかい?」

「あ、そうね。
 でもベッドだけじゃなくてこのお布団も重要なんだからね」

 ノエルはそう言ってまたふかふかな布団の上に寝転んだ。

「あ、夕食と言えばそろそろそんな時間だね。
 この宿、ベッドは最高だったけど食事はどうだろうね」

「宿のベッドがこれだから期待してもいいんじゃないかな?」

 僕はそう答えながらノエルと共に1階の食堂へと降りていく。

「あ、ミナトさんちょうど良かった今からお呼びしようと思っていたんです」

 1階に降りたタイミングで女性の店員にそう声をかけられた僕たちは一番奥の席に案内され席に座る。

「この宿はどんな料理が人気ですか?」

「肉ならばムム鳥の揚げ物やツノボアのステーキ、野菜ならば赤丸グミやケーラル菜あたりですね。
 あ、ですがおふたりの食事メニューは既に指示を受けていますので残念ながらお選びすることは出来ません。
 しかし、必ず満足のいく食事を提供しますので期待していてくださいね」

(どおりでテーブルにメニューらしきものが無かったのか。まあ、お任せってのも何が出るのか分からなくて期待してしまうな)

 僕がそう思っていると「こちら前菜になります」と言って一品目の料理が運ばれてきた。

(ま、まさかこれは噂に聞いたことがあるコース料理ってやつなのか?)

 僕がそう考えているとノエルが先に食べ始めたようで「このお料理見た目も凄く綺麗だけど味も凄く美味しいわよ」と目を輝かせて感想を言ってくる。

「うおっ!?
 こいつは本当に美味いな。
 はじめからこのレベルの料理が出るとかこの後が末恐ろしいことになりそうだな」

 僕がそう言うとノエルもそれに同意して覚悟を決めて次の料理を待った。

   *   *   *

「――これが最後のデザートになります。
 明日の朝は軽めの食事を準備しておきますので起きられたら食堂にお願いします。
 では、食事がお済みになりましたら自由にお部屋に戻られて大丈夫です。
 では失礼します」

 店員の女性はそう言うとお辞儀をして個室のドアを閉めてから厨房へと戻っていった。

「予想以上に美味しい料理でしたね。
 この宿でこのレベならば明日のロロシエル商会に招かれている夕食会は一体どうなるのかしらね」

「まあ、僕としては料理よりも話の内容が気になるのだけど、予想としてはお礼と商会関係者にカード収納スキル持ちが居たらレベリングの手ほどきをして欲しいと言われるかもしれない。
 後は商会へのスカウト打診もあるかもしれない」

「もし、破格の条件を提示されたらどうるすの?」

「スキルのレベリングならば受けるかもしれないけれど商会への所属は断るよ。
 僕が所属するのは君だけだからね」

 僕がそう断言するとノエルは嬉しそうに笑ってくれた。
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