155 / 201
第155話【ダルべシア国境関所】
しおりを挟む
「お待たせしてすみませんでしたね。
ではダルべシアに向けて出発するとしましょう」
次の日の朝、待ち合わせ場所にはトトルが他の御者仲間に指示を出しながら僕たちにも馬車へ乗り込むように伝える。
「結局あの盗賊たちの正体は分かったのですか?」
馬車に乗り込みながら僕はふと疑問になっていた件を質問する。
「確証はありませんが大方の予想どおり商売敵からの妨害行為のようでした。
しかし、少々度が過ぎていますので証拠を集めて領主様に上申しようと思っています」
「そうですか。
どこの国でも商売敵というものは何とかして優位に立とうと画策してくるものですからね。
でしたら今回襲撃が失敗したことにより再度盗賊たちを差し向けてくるか別の方法で妨害してくるかもしれないですね」
「はい。
ですのでリスクの高いルートを避けて極力安全性の高い場所にて休憩をとるように配慮して進む予定です。
なので当初より数日時間がかかるかもしれませんことお詫びします」
「わかりました。
僕たちの旅は急ぐものではありませんので気にせず安全性を優先してください」
「ありがとうございます。
ではこれからの予定をお伝えしておきます。
本来ならばベリルを出発してダルべシアの国境関所を通過し、右手の道からマーグの街経由で進む予定でしたが、もし邪魔が入るならばその手前にある少しばかり視界の悪い休憩場所での可能性が高いですので今回はもう一つの左手からの大回りルートを選択しました。
こちらは中継地点に小さいながらも村がありますので野営より安全性が高いと判断さしたからです」
馬車を走らせはじめたトトルが御者台からそう説明をする。
「まずはダルべシアへの国境を越えますので関所へ向かいます。
そこでは身元の確認と商人であれば運んでいる品物のリストを提示しなければなりません。
品物の内容と量によって税が幾らかはかかりますが、だからといって詐称すると追加で税を徴収される上にあまりに酷いと商会の許可を取り消されることもありますので正直に申請をします。
ああ、もちろんミナト殿に預けている品物もちゃんと申請しますので安心してください」
トトルはそう言った後でちらりとこちらを見て微笑んだ。
「商品の通行税ですよね。
僕の国からアランガスタへ入る時はそういったものは無かったと思うのですけどダルべシアが特別なのですか?」
僕は疑問に思ったことをトトルに尋ねる。
「そうですね。
ダルべシアは国が商売をする環境を整備してくれていますので他国に比べると通行税の事を計算しても儲けられるので通行税を出し渋るダルべシアの商人はいないですね。
そう言ったことからも商人にとってダルべシアは特別であると言っても良いでしょう」
「なるほど、税はしっかり取るけどそれを使って商売に必要なものを整備してくれているのか。
なかなか面白い政策を取っている国なんですね。
ならば、商売人にとってはダルべシアは良い国なんですね?」
「まあ、だからこそ激戦区になっていて商売敵もそれなりに出てきてしまうのが玉に傷なんですが……」
「それでも商人ならば商売で挑むべきで通商妨害は商人として一線を越えてしまっていますよね?
証拠がなければ大丈夫だとでも思っているのでしょうか?」
「……かもしれませんね。
とんでもない話ですが」
トトルと僕は先日の盗賊襲撃の話をしながらダルべシアの情報も彼から仕入れた。
「そろそろ関所が見えて来ますよ。
すみませんが預けていた品物をカードのままで良いので出しておいて頂けませんか?」
「はい。
いつでも取り出せるようにしていますので安心してください」
僕はそう言ってからあることに気がついた。
「そうだ。
今回僕たちはどこかの街で売るためにいろいろと仕入れてきたけれどそれらについても申請をしなければならないのでしょうか?」
「ダルべシアの国に属する街や村で品物を売るつもりならば申請をするべきですがあなた方が商売をするにはまず大きな街で個人商人の登録が必要となります。
それまでは今までに仕入れた品物を店などに売ることは控えたほうが良いでしょう」
「店などにというと個人ならば大丈夫なんですか?」
「大量の品物、もしくは高額な品物でなければ個人間の取り引きくらいでは問題にはならないでしょうし、そもそも大量の品物を馬車も無く持ち歩く前例がありませんから売るかどうかも分からない品物にわざわざ税を払う必要はありませんよ」
「そういった場合はどうすれば良いのでしょうか?」
「とりあえず今回は申請をせずにおいてどこかの街で品物を大量に売りたいことがあればその街の商人ギルドに登録申請をすればその時点で税が発生しますのでそこで一時金を支払えば安心して売ることが出来ますよ」
「なるほど。
わかりました、今回はそうさせてもらいます」
僕がノエルに視線を向けると隣で話を聞いていた彼女は「わかりました」と軽くうなずいて了承した。
「あ、あれがダルべシア国境関所です。
今は混んでいないようですので比較的スムーズに越えられると思いますよ」
そう告げるトトルの前方には小さいながらも砦と大きな門が見えてきた。
ではダルべシアに向けて出発するとしましょう」
次の日の朝、待ち合わせ場所にはトトルが他の御者仲間に指示を出しながら僕たちにも馬車へ乗り込むように伝える。
「結局あの盗賊たちの正体は分かったのですか?」
馬車に乗り込みながら僕はふと疑問になっていた件を質問する。
「確証はありませんが大方の予想どおり商売敵からの妨害行為のようでした。
しかし、少々度が過ぎていますので証拠を集めて領主様に上申しようと思っています」
「そうですか。
どこの国でも商売敵というものは何とかして優位に立とうと画策してくるものですからね。
でしたら今回襲撃が失敗したことにより再度盗賊たちを差し向けてくるか別の方法で妨害してくるかもしれないですね」
「はい。
ですのでリスクの高いルートを避けて極力安全性の高い場所にて休憩をとるように配慮して進む予定です。
なので当初より数日時間がかかるかもしれませんことお詫びします」
「わかりました。
僕たちの旅は急ぐものではありませんので気にせず安全性を優先してください」
「ありがとうございます。
ではこれからの予定をお伝えしておきます。
本来ならばベリルを出発してダルべシアの国境関所を通過し、右手の道からマーグの街経由で進む予定でしたが、もし邪魔が入るならばその手前にある少しばかり視界の悪い休憩場所での可能性が高いですので今回はもう一つの左手からの大回りルートを選択しました。
こちらは中継地点に小さいながらも村がありますので野営より安全性が高いと判断さしたからです」
馬車を走らせはじめたトトルが御者台からそう説明をする。
「まずはダルべシアへの国境を越えますので関所へ向かいます。
そこでは身元の確認と商人であれば運んでいる品物のリストを提示しなければなりません。
品物の内容と量によって税が幾らかはかかりますが、だからといって詐称すると追加で税を徴収される上にあまりに酷いと商会の許可を取り消されることもありますので正直に申請をします。
ああ、もちろんミナト殿に預けている品物もちゃんと申請しますので安心してください」
トトルはそう言った後でちらりとこちらを見て微笑んだ。
「商品の通行税ですよね。
僕の国からアランガスタへ入る時はそういったものは無かったと思うのですけどダルべシアが特別なのですか?」
僕は疑問に思ったことをトトルに尋ねる。
「そうですね。
ダルべシアは国が商売をする環境を整備してくれていますので他国に比べると通行税の事を計算しても儲けられるので通行税を出し渋るダルべシアの商人はいないですね。
そう言ったことからも商人にとってダルべシアは特別であると言っても良いでしょう」
「なるほど、税はしっかり取るけどそれを使って商売に必要なものを整備してくれているのか。
なかなか面白い政策を取っている国なんですね。
ならば、商売人にとってはダルべシアは良い国なんですね?」
「まあ、だからこそ激戦区になっていて商売敵もそれなりに出てきてしまうのが玉に傷なんですが……」
「それでも商人ならば商売で挑むべきで通商妨害は商人として一線を越えてしまっていますよね?
証拠がなければ大丈夫だとでも思っているのでしょうか?」
「……かもしれませんね。
とんでもない話ですが」
トトルと僕は先日の盗賊襲撃の話をしながらダルべシアの情報も彼から仕入れた。
「そろそろ関所が見えて来ますよ。
すみませんが預けていた品物をカードのままで良いので出しておいて頂けませんか?」
「はい。
いつでも取り出せるようにしていますので安心してください」
僕はそう言ってからあることに気がついた。
「そうだ。
今回僕たちはどこかの街で売るためにいろいろと仕入れてきたけれどそれらについても申請をしなければならないのでしょうか?」
「ダルべシアの国に属する街や村で品物を売るつもりならば申請をするべきですがあなた方が商売をするにはまず大きな街で個人商人の登録が必要となります。
それまでは今までに仕入れた品物を店などに売ることは控えたほうが良いでしょう」
「店などにというと個人ならば大丈夫なんですか?」
「大量の品物、もしくは高額な品物でなければ個人間の取り引きくらいでは問題にはならないでしょうし、そもそも大量の品物を馬車も無く持ち歩く前例がありませんから売るかどうかも分からない品物にわざわざ税を払う必要はありませんよ」
「そういった場合はどうすれば良いのでしょうか?」
「とりあえず今回は申請をせずにおいてどこかの街で品物を大量に売りたいことがあればその街の商人ギルドに登録申請をすればその時点で税が発生しますのでそこで一時金を支払えば安心して売ることが出来ますよ」
「なるほど。
わかりました、今回はそうさせてもらいます」
僕がノエルに視線を向けると隣で話を聞いていた彼女は「わかりました」と軽くうなずいて了承した。
「あ、あれがダルべシア国境関所です。
今は混んでいないようですので比較的スムーズに越えられると思いますよ」
そう告げるトトルの前方には小さいながらも砦と大きな門が見えてきた。
4
お気に入りに追加
882
あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

異世界を服従して征く俺の物語!!
ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。
高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。
様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。
なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる