荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

文字の大きさ
上 下
153 / 201

第153話【買い物デート③】

しおりを挟む
 待つこと30分程で息を切らしたシェリルが僕よりも少し年上に見える男性を連れてお店に戻ってきた。

「ごめんなさい!
 なかなか彼が捕まらなくって遅くなっちゃいました」

 僕の顔を見るとシェリルが全力で頭を下げながらそう謝る。

「ま、まあ大丈夫ですよ。
 それよりも彼を紹介してもらえますか?
 カード収納スキルをお持ちなんですよね?」

 僕はシェリルと一緒に訪れた男性に声をかけて尋ねた。

「私はシェリルさんの知り合いで商人をしているドットと申します。
 所持しているスキルはメインに商人スキルでサブでカード収納スキルを有していますがカード収納スキルは使える場面もなくレベル1のままの死にスキルとなっております」

 ドットと名乗った男性から聞くところによると予想どおりの答えが帰ってきて僕は内心苦笑いをする。

「そうですか。
 確かにカード収納スキルはレベルが低いとほとんど使い物にならないとの認識が一般的ですからね。
 しかし、努力してレベルを上げられた人の中には馬車荷車1台程度のものをカード化出来るようになった人もいますので死にスキルとして放置するのはかなりもったいないことですよ」

「なんと!?
 馬車荷車1台ですか?
 それは相当なアドバンテージになりますね。
 その方はどのくらいの期間でそこまで上げられたのでしょうか?」

「専属の講師が付きっきりで鍛えて約1年ってところですかね。
 ただ、その時はギルドの全面協力を得て各地の精鋭が集められた結果でしたけどね」

 実際は精鋭ではなく各地の余裕がある人材がほとんどだったが今ではそれぞれが責任者として頑張っているのでそうしておいた。

「講師が付きっきりで1年ですか……。
 まあ、そのくらいでそこまで使いこなせるようになられたのならば言われるとおり精鋭の皆さんだったのでしょうね。
 しかし、今の私ではそれだけの訓練をする時間も講師をお願いするお金もありませんのでなかなか難しい話になりますね」

「そうですね。
 今現在レベル1との事ですが、シェリルさんの依頼したい品物をカード化するのにはレベル3程度が必要となってきます。
 これは効率よく鍛えていけば1ヶ月もすれば達することの出来るレベルになります。
 実のところレベルは4からが大変になりサブの5レベルは相当長い期間鍛錬しないと達することは厳しいでしょう。
 ですので、もし鍛えてみたいと言われるのであればレベル3になるまでの訓練方法をお教えすることが出来ます」

「ほ、本当ですか!?」

「はい。
 ですが、僕たちは明日にはこの街を出発することになっていますので訓練のやり方を教えるだけです。
 それは単純な事を延々と繰り返す地味な方法ですので見てる人がいないと辞めたくなるかもしれませんし、なかなか結果が出なければ更に放り出したくなるかもしれません。
 それでも挑戦してみますか?」

 実際に僕が1か月間付いて見れるわけではないので先にそう念をおしておいた。

「是非ともお願いします」

 ドットは僕の提案に即座にそう答えて頭をさげた。

「あの、お礼は如何ほどになりますか?」

 さすが商人だけあって情報を得るにはお金が必要だと認識しており、すぐに報酬の話をきりだした。

「そうですね。
 この街で評判の良い薬屋を教えてくれたらそれで良いですよ」

「薬屋……ですか?
 どうしてまた?」

「いや、もともと旅の備えとして薬を買おうと思って薬屋を探していたのですがこの店の看板を見て薬屋と勘違いをして入ったのがこの店との縁で話をしているうちに今の状態になったのですよ。
 それであなたにコツを教えて試してもらっている間に当初の目的である薬屋に行ってみようかと考えていたんです」

「なるほど、それではこの店を出て目の前の通りを右方向へ3分程進んだところにあるイヤースという薬屋が品揃えも良くて評判もいいですね」

「意外と近いところにあったのですね。
 では、これから訓練のやり方を教えるので銅貨を10枚準備してください。
 その後は……」

 訓練の方法を一通り説明した僕はドットに銅貨の出し入れをしばらく続けるように言ってからノエルと共におすすめの薬屋に向かった。

「――お、ここかな?」

 僕たちは言われたとおりに歩いてきたので意外とすぐにお店は見つかったが、ふと看板を見るとやはり薬瓶のような図柄の看板でシェリルの工房と似たようなものだった。

「やっぱりこのマークは薬屋のマークだよな」

「ですよね」

 僕はノエルとそう話して苦笑いをしながら薬屋のドアを開けた。

「いらっしゃいませ。
 イヤース薬屋へようこそ。
 本日はどのような薬をお探しですか?」

 店に入ってすぐに店員にそう声をかけられた。

「このお店ではどのような薬を取り扱っているのでしょうか?」

 商売の交渉はノエルの担当なので僕は彼女の後ろにさがって話を黙って聞くことにした。

「傷薬から痛み止め薬までいろんな種類の薬を揃えていますよ。
 薬も服用タイプから塗布タイプまで多種多様に使い分けることによって用途にあわせたおすすめをしています。
 特にこの店で人気のものはこちらになっています」

 それらの商品の説明を順番に聞いたノエルは「では、あれとそれとこれを50個ずつお願いします」と言って料金を支払った。

「ご、50ずつですか?
 まとめてのお買い上げありがとうございます。
 在庫はありますが、かなりの重量になりますけれど馬車などで来店されているのでしょうか?」

「いえ、歩きですが全て持ち帰りますので準備をお願いします」

 店員の言葉に僕がノエルの後ろからそう答える。

「いえ、しかし本当にかなりの重量になりますよ?」

 店員が心配して再度確認をするが僕は表情を変えずに「大丈夫です」と答えた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

処理中です...