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第140話【トトルの手腕とスキルの有用性】
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結局のところあの後、もう2台分の荷物をカード化して運ぶことになった。
予定外の荷物を運べるようになったのでトトルは出発の時間を2時間ほど遅らせてまで商品をかき集めてきていた。
「――いや、凄いですね。
あの短時間にこれほどの量を集めてくるなんて」
トトルは今回、時間劣化のないカード収納の特性を活かした品物を相場より高く大量に買い込んで国に持ち帰る決断をしていた。
「まあ、量に関しては相場より高値で引っ張りましたから一気に集まっただけですよ。
ですが、多少高値で買い取ってもダルべシアで売ればそれ以上の利益が出るのは確実ですからね。
今回限りってのが非常に残念で仕方ないですが旦那様にも喜んでもらえるように私の権限で動かせる最大金額まで使ってしまいましたので絶対に失敗は許されないんですけどね」
最初からクールな御者長に見えていたトトルだったが商売がうまく行きそうで顔が自然とほころんでいた。
「――それでは出発しますのでお二人には私の馬車にお乗りください。
道中にも少々伺いたいお話もありますので」
トトルはそう言うと僕とノエルを自らの馬車の御者後ろにある座席に乗るように促した。
「よいしょ……。
ノエルお手をどうぞ」
僕がノエルに手を貸しながら乗り込むのを確認するとトトルは後ろに控える部下の御者たちに指示を出して王都を出発した。
「目的地のダルべシア王都へは順調に進んで約10日ほどかかる予定です。
そして道中は途中で2つの町と1つの村に立ち寄ることになり、基本的に商隊の食料品はそこで補充することになるのですがそこでは王都で仕入れた商品を卸す商店があります。
本来ならば限りがある商品ですが今回はミナト殿のおかげで予定以上に納めることが出来ますよ」
トトルは前を見ながら僕にそう言って笑った。
「次の町までどのくらいかかるのですか?」
「次の町はアランガスタの国境付近にあるベベルの町になります。
ベベルはここから約2日の距離にあり鍛冶の盛んな町で各地の商人が多く買い付けに訪れる町として有名です。
私どもはダルべシアへの通り道にあたるので王都からの品物が売れて荷台に空きが出来れば仕入れて進む事が多くありますね」
「なるほど、それは是非とも市場を覗いてみたいですね」
「ははは、そう焦らずとも好きなだけ見る時間はとれるさ」
そう言う馬車を進ませながらトトルは僕との会話を楽しんでいる様子だった。
「ノエルは雑貨屋だから武器や防具などが中心である鍛冶の店にはあまり興味はわかないだろうけどどんなものにもヒントはあると思うから一緒にまわってみよう」
僕は新たな町の情報に顔をほころばせながらノエルにそう伝えた。
* * *
「――今日はここで野営をすることになる」
特に問題なく旅を進めたトトルの商隊は予定していた場所で野営の準備を始める。
崖を背にして馬車を並べて停めてその側で各御者たちが夕食の準備をする姿がみえた。
「皆さん夕食は各自で準備されているんですね」
「うちの商隊はそうだな。
他では料理専門の者がついてきて皆に振る舞う商隊もあるようだが少なくとも3日1回は町に寄る旅の私たちはそこまで重要視していないのだよ」
「なるほど、いろいろなやり方があるんですね。
ところで、始めに話したとおりに夕食は1品準備させてもらいますね」
僕はそう言ってポーチから数枚のカードを取り出してそれぞれの御者たちのもとへ向って歩いていった。
「どうぞ夕食の一品に食べてください」
僕はそう言って御者の人たちにボア肉の炒めものを差し出した。
「いや、すまないな。
旅の途中での食事は簡易的なものばかりだからちゃんと調理されたものがひとつあると無いのでは雲泥の差だよ。
しかし、リーダーから聞いてはいたが凄いスキルだね。
この料理は王都の店で作ってもらったものをカード化していたものなんだろ?
作りたての料理をリスク無しで何処にでも運べるなんて誰も考えたりしなかった事なんだからな。
おっと自己紹介がまだだったな、俺はトトルさんの補佐をやっているリーグだ」
「ご丁寧に、僕は旅をしているミナトといいます。
本当に特別なスキルではなくてカード収納をメインに婚約者と商売の仕入れ旅をしているところなんです。
そこで今回はダルべシアへ向かうのにこちらの商隊に同行させてもらってるんですよ」
「なるほどな。
確かにあんたのカード収納ならば各地の品物を仕入れて帰るのも容易だろうしな。
今まで気にしてなかったやり方だから興味深いよ」
リーグは僕のスキルを見て感心しながら渡されたボア肉の炒めものに口を運んだ。
「ん、うまいな。
これは冷めた料理を温め直してるんじゃなくて出来たてがそのままで出てきてるだな。
こんなスキルがあれば商売の幅が広がるだろうな、羨ましいことだ」
リーグはそう言いながら食事を頬張りだしたので僕は軽く会釈をしてほかの御者たちにも同じものを配ってまわった。
「――さて、全員に配り終えたから僕たちも食事にしようか」
御者と同行している護衛の者たちに食事を配り終えた僕はノエルと一緒に焚き火をしている側にテーブルセットを開放して食事の準備をする。
旅の途中でテーブルセットなんかを使って食事をするなど普通の商人からすれば無駄な事をしているように見えたが、だからこそカード収納がより際立って有能なスキルだと認識させることとなった。
予定外の荷物を運べるようになったのでトトルは出発の時間を2時間ほど遅らせてまで商品をかき集めてきていた。
「――いや、凄いですね。
あの短時間にこれほどの量を集めてくるなんて」
トトルは今回、時間劣化のないカード収納の特性を活かした品物を相場より高く大量に買い込んで国に持ち帰る決断をしていた。
「まあ、量に関しては相場より高値で引っ張りましたから一気に集まっただけですよ。
ですが、多少高値で買い取ってもダルべシアで売ればそれ以上の利益が出るのは確実ですからね。
今回限りってのが非常に残念で仕方ないですが旦那様にも喜んでもらえるように私の権限で動かせる最大金額まで使ってしまいましたので絶対に失敗は許されないんですけどね」
最初からクールな御者長に見えていたトトルだったが商売がうまく行きそうで顔が自然とほころんでいた。
「――それでは出発しますのでお二人には私の馬車にお乗りください。
道中にも少々伺いたいお話もありますので」
トトルはそう言うと僕とノエルを自らの馬車の御者後ろにある座席に乗るように促した。
「よいしょ……。
ノエルお手をどうぞ」
僕がノエルに手を貸しながら乗り込むのを確認するとトトルは後ろに控える部下の御者たちに指示を出して王都を出発した。
「目的地のダルべシア王都へは順調に進んで約10日ほどかかる予定です。
そして道中は途中で2つの町と1つの村に立ち寄ることになり、基本的に商隊の食料品はそこで補充することになるのですがそこでは王都で仕入れた商品を卸す商店があります。
本来ならば限りがある商品ですが今回はミナト殿のおかげで予定以上に納めることが出来ますよ」
トトルは前を見ながら僕にそう言って笑った。
「次の町までどのくらいかかるのですか?」
「次の町はアランガスタの国境付近にあるベベルの町になります。
ベベルはここから約2日の距離にあり鍛冶の盛んな町で各地の商人が多く買い付けに訪れる町として有名です。
私どもはダルべシアへの通り道にあたるので王都からの品物が売れて荷台に空きが出来れば仕入れて進む事が多くありますね」
「なるほど、それは是非とも市場を覗いてみたいですね」
「ははは、そう焦らずとも好きなだけ見る時間はとれるさ」
そう言う馬車を進ませながらトトルは僕との会話を楽しんでいる様子だった。
「ノエルは雑貨屋だから武器や防具などが中心である鍛冶の店にはあまり興味はわかないだろうけどどんなものにもヒントはあると思うから一緒にまわってみよう」
僕は新たな町の情報に顔をほころばせながらノエルにそう伝えた。
* * *
「――今日はここで野営をすることになる」
特に問題なく旅を進めたトトルの商隊は予定していた場所で野営の準備を始める。
崖を背にして馬車を並べて停めてその側で各御者たちが夕食の準備をする姿がみえた。
「皆さん夕食は各自で準備されているんですね」
「うちの商隊はそうだな。
他では料理専門の者がついてきて皆に振る舞う商隊もあるようだが少なくとも3日1回は町に寄る旅の私たちはそこまで重要視していないのだよ」
「なるほど、いろいろなやり方があるんですね。
ところで、始めに話したとおりに夕食は1品準備させてもらいますね」
僕はそう言ってポーチから数枚のカードを取り出してそれぞれの御者たちのもとへ向って歩いていった。
「どうぞ夕食の一品に食べてください」
僕はそう言って御者の人たちにボア肉の炒めものを差し出した。
「いや、すまないな。
旅の途中での食事は簡易的なものばかりだからちゃんと調理されたものがひとつあると無いのでは雲泥の差だよ。
しかし、リーダーから聞いてはいたが凄いスキルだね。
この料理は王都の店で作ってもらったものをカード化していたものなんだろ?
作りたての料理をリスク無しで何処にでも運べるなんて誰も考えたりしなかった事なんだからな。
おっと自己紹介がまだだったな、俺はトトルさんの補佐をやっているリーグだ」
「ご丁寧に、僕は旅をしているミナトといいます。
本当に特別なスキルではなくてカード収納をメインに婚約者と商売の仕入れ旅をしているところなんです。
そこで今回はダルべシアへ向かうのにこちらの商隊に同行させてもらってるんですよ」
「なるほどな。
確かにあんたのカード収納ならば各地の品物を仕入れて帰るのも容易だろうしな。
今まで気にしてなかったやり方だから興味深いよ」
リーグは僕のスキルを見て感心しながら渡されたボア肉の炒めものに口を運んだ。
「ん、うまいな。
これは冷めた料理を温め直してるんじゃなくて出来たてがそのままで出てきてるだな。
こんなスキルがあれば商売の幅が広がるだろうな、羨ましいことだ」
リーグはそう言いながら食事を頬張りだしたので僕は軽く会釈をしてほかの御者たちにも同じものを配ってまわった。
「――さて、全員に配り終えたから僕たちも食事にしようか」
御者と同行している護衛の者たちに食事を配り終えた僕はノエルと一緒に焚き火をしている側にテーブルセットを開放して食事の準備をする。
旅の途中でテーブルセットなんかを使って食事をするなど普通の商人からすれば無駄な事をしているように見えたが、だからこそカード収納がより際立って有能なスキルだと認識させることとなった。
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