荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

文字の大きさ
上 下
122 / 201

第122話【情報の対価と契約】

しおりを挟む
「……とりあえず首輪の製作者がガーレンだと仮定したとしてどうするつもりだ?」

 考え込んでいたゾラが僕たちにそう問いかける。

「どうするもなにも見つけ出して首輪を解除させるしかないだろう」

「まあ、そうだろうがヤツはおそらくドウマ村に居るはずだ。
 当然知っているだろうがドウマ村には国の役人と特定の商人しか入ることが出来ない。
 村人でさえも自由に出入りが出来ないんだから他国の者が入る許可なんてものは出るはずがないぜ」

「……なにか手はないのか?」

「俺だけならば入ることは出来るだろうが一度戻ってしまえば今度は出ることが困難になるからな。
 そうだな、可能性があるのは商人に金がなにかを握らせて忍び込むことだが、ばれたら最悪の場合は処刑もありうるからやるならばそれなりの覚悟が必要だな」

「それは最後の手段だな。
 他になんとか向こうから出でこさせる方法はないのか?」

「そうだな……。
 俺がギルドを通して指名依頼を出せば打ち合わせの時に接触出来るかもしれんな」

「なるほど、それに同行すれば何とかなりそうだが僕たちはドウマ村がどこにあるかも知らないぞ。
 いったいどこで接触することが出来るんだ?」

「……その情報はタダではだせないな」

 ゾラは話の受け答えに僕が対応していることに不満がある様子で情報に対する対価を求めてくる。

「なにが望みだ?」

「こう見えて俺は魔道具士だからそれなりに金はあるんだよ。
 だから金よりも珍しいものが欲しいんだよ。
 それが食い物だろうと魔道具であろうと何でもいい、俺を唸らせるものがあればヤツとの繋ぎはなんとかしてやるさ」

「あんたが驚けばなんでもいいのか?」

「ああ、だが並大抵のものじゃあ満足はしないからよく考えて持ってくるんだな」

 ゾラはそう言って腰をあげようとした。

「まあ、そう急ぐことはないでしょう。
 とりあえずいくつか出すからそれを見て答えを出しても遅くはないと思うがどうですか?」

「あ? どこにそんなものを持って……。
 ああ、そういえばあんたはカード収穫もちだったな」

「ええ、ですから手持ちのものから貴重なものや珍しいものを出しますよ」

 僕はそう言ってポーチから数枚のカードを取り出した。

「まずは食べ物からいってみますか?
 これはノーズベリーといってこの国ではあまり流通していない希少な果物です」

「ほう、ノーズベリーか。
 確かに希少ではあるがある程度金を出せば手に入れることは出来るからもちろん俺も食べたことはあるぜ」

 ゾラはノーズベリーを見てそう答える。

「では、こちらはどうですか?
 金色マースという魚です」

「ほう、これは見事な金色の魚だ。
 しかし、金色ではないがこれと同じ魚はこの国にもいるぜ、もっとも泥臭くて食えたものじゃないがな。
 ひょっとして旨いのか? その魚は」

「僕の出身であるロギナスの町では美味だと評判の魚ですよ」

「ふ、ふん。
 いくら旨いといっても所詮は魚だろう?
 色が変わっている程度では俺は驚かんぞ」

 ゾラは金色マースに興味はあるようだがまだ飛びつくほどのものではなかったようで我慢を決め込んでいた。

「――では、とっておきをお見せしましょう。
 あ、ですがこれはまだ世間には公表していない技術ですので口外はしないでください」

 僕はそう言ってある魔法を封じ込めたカードをゾラに手渡した。

「魔法のカードです」

「魔法のカード?
 なんだそれは?」

「そのままですよ。
 魔法を封じ込めたカードです。
 例えば、今渡したものはライトの魔法を封じ込めたもので魔法のスキルを持たない僕でも使うことができます」

「は? そんな便利なものがあったらもっと世の中に知れ渡っているだろう。
 嘘をつくならもっとありそうなものを考えるんだな」

 ゾラはそう言って全く信用をしない。

「まあ、当然そうなるでしょうけどこれを見ても同じことが言えますか?」

 僕はそう言うとライトの魔法が封じ込められたカードを開放した。

開放オープン

 次の瞬間、目を覆うほどの光の球が僕の手から浮かび上がり頭の上あたりをふよふよと光を放ちながら漂っていた。

「どうです?
 これでも信じられないですか?
 ちなみに僕の持つスキルはカード収納と鑑定なので当然魔法は使えませんよ」

「なっ! なんだこれは!?
 魔法をカードに封じ込めるだって!?
 そんな理論は聞いたことがないぞ……いやまて、魔道具にだって魔法を付与することは出来るのだからカードに封じ込めるぐらい出来るのか?
 いやいや、魔道具は魔石に……」

 ゾラは目の前でおきた現象に対して理解が追いつかずに魔道具士としての興味が先走って深く考え込んでしまう。

「ちょっと見せすぎましたかね?」

 ゾラの様子にやりすぎたかとマリアーナに同意を求めると彼女は苦笑しながら「そうかもしれないけどインパクトはあったと思うわよ。どう転ぶかはわからないけれど」と返した。

「……これはいったいどういった原理なんだ?」

 しばらく考え込んだ末、どうにも理解できなかったゾラは僕にそう問いかけた。

「さあ?
 僕にもわかりませんよ。
 スキルを鍛えていたらいつの間にか出来るようになっていたので原理とか理論とかでは説明出来ないものだと思います。
 まあ、神様が与えてくれたスキルに関するものですから僕たちが考えて理解できるものではないのかもしれないですね」

「むう。
 確かにそういうものかもしれん。
 俺たちが作る魔道具は魔石に魔力を入れるときに効果や魔法を付与するのが一般的だがよく考えるとそれが出来るのは魔道具士のスキルをもつ者だけだからな。
 そうするとあんたみたいなカード収納スキルのみの特別なものだと考えればある意味納得できる」

 ゾラはそう結論づけてニヤリと笑った。

「いや、面白いものを見せてもらった。
 確かに俺が今まで見てきたものの中では一番驚いたものだったな。
 ……いいぜ、約束は守ってやるよ。
 だが少しばかり準備が必要だし、この街ではヤツに会うことは出来ねぇ」

「では、どこに行けば会うことが出来るんですか?」

「……とりあえず王都へ行くしかないな。
 その後は……まあ、おいおい話せるところまでは教えてやるよ。
 ところで王都へ向かうための馬車は持ってるのか?
 なければ手配をしなきゃならないが」

「馬車ならばあるわ。
 もともとこの街に来るときに使ったものが宿に置いてあるからそれを使えばいいわよ」

 マリアーナがそう答えたので僕がゾラに「いつ頃までに出発の準備をすればいい?」と尋ねた。

「……そうか。
 どうせ急ぐんだろ?
 明日……いや仕事の調整があるから3日後だ。
 それまでに出発出来る準備をすませておけ、言っておくが俺はついていって依頼を出すだけだ移動の準備とかはそっちに全て任せるからな」

「ああ、わかった。
 3日後の朝に迎えにくるからよろしく頼む」

 僕はゾラにそう言うと彼の家を出てマリアーナと共に旅の準備をするために市場へと向かった。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...