荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第115話【子爵との交渉】

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「ふむ。
 本当に素晴らしい品ばかりだね」

 僕が納品した食材を確認しながらオルードが唸るようにそう告げる。

「これらはどうやって集められたのですかな?」

「そうですね。
 ノーズベリーはニードルに来る前にノーズの街にて購入したものをカード化しています。
 ぐるぐる草は東の森で採取してグレートボアも同じく東の森にて確保してギルドの解体チームに解体を頼んだものになります。
 そして、すずなり芋は南地区の農場で収穫の手伝いをして分けて貰ったものですね」

「なるほど。
 どれも素晴らしい品質のもので調理をするのが今から楽しみだよ」

 オルードはそう言いながら近くに控えていた部下に伝言をしてから僕に向き直り真剣な表情で告げる。

「これだけの食材をたった2日で揃えるのは並大抵のことじゃあないだろう。
 しかも、ギルドからの納品ではなく君が自ら持ち込んだということは何か要望があるんだろう?」

 オルードは僕を見ながらそう言い切った。

「ああ、みなまで言うな。
 おそらく俺が聞いてもあまり意味のないことだろうから旦那様に直接お聞きしてみな。
 いま、旦那様と面会が出来るように手配をしているところだ」

 オルードは驚いたことに僕の意図を汲んでくれて子爵様につなぎをたててくれていた。

「料理長。
 先ほどの件、許可が出ましたので応接室へ向かうようにとのことです」

「おう、すまないな。
 ――ってことだから応接室へ行ってみてくれ、そこの奴に案内をさせよう」

「一緒に行かないのですか?」

「あんたの話には少しばかり興味はあるがこれだけの食材を目の前にして調理をしないのは俺にはできねぇんだよ。
 まあ、今回の件は旦那様には報告済だから報酬の件を言われるだけだろう。
 その時に聞きたいことがあるならば聞いてみるといいだろう。
 あと、旦那様は珍しいものがお好きだから何か持ってたら出せばその場で買い取りをしてくれるだろうし、気に入られればまた仕事をもらえるだろうよ。
 俺としてはあんたとはうまくつき合いたいから、まあうまくやってくれよ」

 オルードはそう言って豪快に笑った。

「――こちらが応接室となります。
 紅茶をお出ししますので少々お待ちください」

 僕を案内してくれた男性はそう告げると控えていたメイドの女性と入れ代わった。

「どうぞ」

 言われるままに座った椅子前にあるテーブルに紅茶が運ばれてくる。

「ありがとうございます」

 僕はお礼を言ってから紅茶に口をつける。

(あ、美味い。
 さすが貴族家で出される紅茶だな。
 いつもの食堂などで飲むものとは香りも味も数段レベルが違っていた)

 待つこと数分、入口のドアが開き壮年の男性と初老の男性が入ってきた。

「この街を治めているガーレットだ。
 この度は我が家からの食材納品依頼をこなしてくれたこと感謝している」

 目の前に座った壮年の男性はそう言って優しく微笑む。

「こちらこそ依頼を出してくださり、ありがとうございました」

 僕はそういってガーレット子爵へと頭をさげる。

「そう固くならなくてもよい。
 正直、今回の食材依頼はだいぶ無茶振りをしていたようだしオルードに聞くと品質も最高のものばかりだそうだな。
 特に以前も用意してもらったノーズベリーは収穫から相当時間が経過しているだろうに最高品質のまま持ち込んだそうじゃないか。
 聞けば『運び屋』なるものをしているそうだから特別な運送方法でもあるのか?」

 ガーレット子爵は興味津々とばかりに僕に質問をなげかけてくる。

「それは秘密で……と言いたいですけど、隣の国では数は少ないですがすでに周知の事実としてあるものなのでお話ししますが、カード化で劣化を抑えることが出来る事がわかったのです。
 ただし誰でも出来るわけではなく、サブスキルの場合はレベル5になった時点で偶然的に使えるようになる可能性があるみたいです。
 そして、僕はその偶然を手にして運び屋を始めたのです」

「ほう。
 それは大変興味深い話だね。
 そのスキルを使えば今まで品質劣化で運べなかったものが運べるようになるのは大きな差別化となるだろう。
 なるほど、これでノーズベリーの品質についての謎はとけたことになるな。
 いや、実に興味深い」

 ガーレット子爵は納得するようにうなずきながら感心した表情で僕を見る。

「ところで私に何か聞きたいことがあるのではないかな?
 オルードからそれらしき話があがっていたが……」

「はい。
 僕は魔道具に大変興味をもっており、こちらの国で作られたものを多く見てきました。
 ギルドで調べたところドウマという村で高度な魔道具が作られていると知りぜひ見学、もしくはその村の職人からお話を聞いてみたいと思っておりました。
 もし、可能なら子爵様の伝手にて紹介をして頂けると嬉しく思います」

 ガーレット子爵は僕の言葉を聞き、あからさまに難しい顔をする。

「ドウマ村の魔道具か……。
 確かにあれは我がアランガスタ国一番の特産品だがその機密性から関係者以外は立ち入ることは制限されている。
 それこそ他国のものがむやみに立ち入れば捕縛され最悪の場合、極刑となるやもしれん。
 興味があるのはわかるが出向くのは無理だと思ってくれ」

「やはりそうなのですね。
 ギルドでも似たようなことは言われてましたので無理やり行こうとは思っていません。
 ですが、村出身の者から話を聞くのは大丈夫ですか?」

「そうだな。
 村の内情や機密性の高い魔道具の作り方については話せないとは思うが簡易な魔道具についてくらいならば良いだろう。
 しかし、この街にそういった者がいるかどうかはわからんぞ」

「それについては少々こころあたりがありますので直接とい合わせてみるようにします。
 もし、交渉か難航するようでしたら子爵様から一言いただければ嬉しく思います」

 僕はそう言いながらカード化してある金色マースを取り出し彼の前に置く。

「これはロギナスの町の特産品となった『金色マース』という魚です。
 臭みなどもなく美味しく食べられると評判ですので是非子爵様にも召し上がって頂きたいと思います」

「ほう。
 また、珍しいものを出してきたな。
 これで私に後ろ盾となってくれということかい?」

「いえいえ、そんな大層なことは考えておりませんよ。
 また、なにかあれば『運び屋』として依頼をしてくださればと思ったまでです」

「なるほど。
 そういうことにしておこうか。
 いいだろう、なにかあれば連絡をするがいい。
 オルードに伝えておくから彼に話をもっていくがいい」

「ありがとうございます」

 僕はガーレット子爵にお礼を言い、オルードに金色マースを渡して依頼完了報告書にサインをしてもらってから屋敷を出た。
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