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第105話【担当受付嬢】
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「いいですよ。
その金額でお売りしますので少し待ってください」
僕はそう言ってポーチからノーズベリーのカードを必要なだけ取り出してテーブルに並べると次々に開放していった。
「これは!?」
「カード収納スキルです。
こちらではあまり馴染みのないスキルのようですが隣の国ではそこそこ認知が進みだしたスキルですよ」
「カード収納スキル……いやまて、確かにそういったスキルが存在するのは知っているがこのサイズのものをカード化するのは不可能なはず。
一体どうやっているんだ?」
そばで見ていた商人の男が自分の理解におよばないことを見せられて混乱をしながらつぶやくがあえてそのことには触れずに商談を進める。
「ではこちらがノーズベリー10個になりますので確認ください。
それと今回は特別にお売りしましたが僕の本職は『運び屋』ですのでなにかありましたら使ってやってください」
「ああ、助かったよ。
代金はギルドから受け取ってくれ。
それと今回の件は旦那様にも伝えておくから運がよければ仕事がもらえるかもしれん。
君の名前を教えてくれるか?」
「僕はミナトといいます。
先ほどこちらのギルドに運び屋として登録したばかりの若輩者ですがお見知りおきください」
僕はノーズベリーを買ってくれた男性に頭をさげてそう告げた。
「まあ、そういうことだから今回はこれで終わりにしよう。
また次の機会にはあんたの商会に頼むことになるから心配するな」
「はい。
そうしてもらえるとうちの面目もたちます」
男性は商人に深々と頭を下げてお礼を言った。
「では、支払いのほうは頼んだぞ」
男性はそう言うと僕の出したノーズベリーをひょいと抱えてギルドから出て行った。
「ふう。
兄ちゃん助かったよ。
あのひとはこの街を治めるガーレット子爵さまの専属料理長のオルードさまだ。
彼が作る料理は素晴らしいものだが素材も妥協がないためかき集めるのが一苦労なんだよ。
もちろん子爵家との取引が出来る優位性や値段的にもかなり美味しいのは間違いないがな」
「やはり貴族の関係者でしたか。
そんな雰囲気はありましたからなんとなくそんな気がしましたよ」
「まあ、オルードさまがああ言ってたからおそらくギルド経由でなにか仕事がもらえると思うからそれをしっかりこなせば多少のコネが作れるだろうよ。
あんたのスキルには少しばかり興味があるが、あまり聞くのもモラルに反するだろうから話してもいいときに教えてくれや。
ああ、俺はゴーシュというみてのとおり商人だ。
また会うこともあるだろうが覚えておいてくれ」
ゴーシュはそう言うとギルドに軽く頭をさげてから出て行った。
「えっと、ミナトさん。
先ほどの報酬……いえ、商品の代金の払い出しがありますので窓口までお願いします」
ふたりが出ていったあとで思い出したように受付嬢がそう言って僕を呼んだ。
「――では、こちらが先ほどの代金となります。
ノーズベリー10個で48000リアラになります」
「ありがとうございます」
「でも、すごいですね。
もともとの仕入れ値がありますからこれ全部が儲けではないでしょうけどギルドに登録していきなりこれだけの金額を受け取るひとなんて見たことありませんよ。
あ、わたしこのギルドの受付を担当しているアリシアといいます。
これからミナトさんの担当になると思いますのでよろしくお願いしますね」
「担当?
このギルドは登録者に受付嬢の担当がつくのが決まりなのかい?」
「はい。
担当受付嬢が不在の時や複数の依頼が重なって対応出来ない場合を除いて固定されています。
そのひとがこなした仕事がポイントになって私たちのボーナスに反映されますんで頑張ってくださいね」
アリシアは僕の両手をしっかりと握りしめながらそう言った。
「ははは、出来るだけ期待に答えられるように頑張ってみるよ」
僕はアリアから商品代金を受け取って帰ろうとしたとき、ふと思い出してノーズベリーをひとつ開放して「どうぞ」と言ってアリシアの前に置いた。
「え?
これノーズベリーですよね?
こ、こんなもの食べたら数日分の食費が飛んでしまいますよ」
「まあ、安くはないですけど原価はそこまででもないと思いますよ。
まあ今回は僕の担当になってくれたお近づきの品とのことで食べてみてください」
「い、いいんですか?
あとで請求してきたりとかお金が払えないなら体で払えとか言わないですよね?」
「僕をなんだと思ってるのですか?
そんなこと言いませんから心配しないでください」
僕は彼女の言動に笑いをこらえながらその様子を観察する。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
はむっ
「お、おいしい。
凄くみずみずしいのに甘みが口いっぱいに広がっていく。
こんな果物初めて食べたわ。
これが噂のノーズベリーなのね」
「喜んでもらえて嬉しいです。
では、これから少しばかり用事があるのでまた明日にでも顔を見せます。
その時に何か仕事があればお願いしますね」
「は、はい。
こちらこそ宜しくお願いしますね」
僕はアリシアに挨拶をすませるとギルドを出て市場に向かった。
* * *
そのころマリアーナは魔道具の調査にのりだしていた。
アルンの処遇については気にはなったがこれ以上ギルドを問い詰めても本人を引き渡さない限り話が進まないと判断して保留とした。
(まあ、ギルドが何か言ってきても知らないと言えば証拠なんか見つかるわけがないし放っておいても問題ないでしょう。
それよりも魔道具をつくる職人を紹介してもらうほうか先だわ)
マリアーナは当初ギルド経由で商会か魔道具士を紹介してもらうつもりだったがアルンの件でいまおおっぴらにギルドであれこれ質問するのは得策ではないと判断していた。
(まずは街の大商店に置いている魔道具の調査をしてそれとなく話を聞き出してみるかな)
マリアーナはそう決めて宿を出て商店の集まる商業区へ向かって歩き出した。
その金額でお売りしますので少し待ってください」
僕はそう言ってポーチからノーズベリーのカードを必要なだけ取り出してテーブルに並べると次々に開放していった。
「これは!?」
「カード収納スキルです。
こちらではあまり馴染みのないスキルのようですが隣の国ではそこそこ認知が進みだしたスキルですよ」
「カード収納スキル……いやまて、確かにそういったスキルが存在するのは知っているがこのサイズのものをカード化するのは不可能なはず。
一体どうやっているんだ?」
そばで見ていた商人の男が自分の理解におよばないことを見せられて混乱をしながらつぶやくがあえてそのことには触れずに商談を進める。
「ではこちらがノーズベリー10個になりますので確認ください。
それと今回は特別にお売りしましたが僕の本職は『運び屋』ですのでなにかありましたら使ってやってください」
「ああ、助かったよ。
代金はギルドから受け取ってくれ。
それと今回の件は旦那様にも伝えておくから運がよければ仕事がもらえるかもしれん。
君の名前を教えてくれるか?」
「僕はミナトといいます。
先ほどこちらのギルドに運び屋として登録したばかりの若輩者ですがお見知りおきください」
僕はノーズベリーを買ってくれた男性に頭をさげてそう告げた。
「まあ、そういうことだから今回はこれで終わりにしよう。
また次の機会にはあんたの商会に頼むことになるから心配するな」
「はい。
そうしてもらえるとうちの面目もたちます」
男性は商人に深々と頭を下げてお礼を言った。
「では、支払いのほうは頼んだぞ」
男性はそう言うと僕の出したノーズベリーをひょいと抱えてギルドから出て行った。
「ふう。
兄ちゃん助かったよ。
あのひとはこの街を治めるガーレット子爵さまの専属料理長のオルードさまだ。
彼が作る料理は素晴らしいものだが素材も妥協がないためかき集めるのが一苦労なんだよ。
もちろん子爵家との取引が出来る優位性や値段的にもかなり美味しいのは間違いないがな」
「やはり貴族の関係者でしたか。
そんな雰囲気はありましたからなんとなくそんな気がしましたよ」
「まあ、オルードさまがああ言ってたからおそらくギルド経由でなにか仕事がもらえると思うからそれをしっかりこなせば多少のコネが作れるだろうよ。
あんたのスキルには少しばかり興味があるが、あまり聞くのもモラルに反するだろうから話してもいいときに教えてくれや。
ああ、俺はゴーシュというみてのとおり商人だ。
また会うこともあるだろうが覚えておいてくれ」
ゴーシュはそう言うとギルドに軽く頭をさげてから出て行った。
「えっと、ミナトさん。
先ほどの報酬……いえ、商品の代金の払い出しがありますので窓口までお願いします」
ふたりが出ていったあとで思い出したように受付嬢がそう言って僕を呼んだ。
「――では、こちらが先ほどの代金となります。
ノーズベリー10個で48000リアラになります」
「ありがとうございます」
「でも、すごいですね。
もともとの仕入れ値がありますからこれ全部が儲けではないでしょうけどギルドに登録していきなりこれだけの金額を受け取るひとなんて見たことありませんよ。
あ、わたしこのギルドの受付を担当しているアリシアといいます。
これからミナトさんの担当になると思いますのでよろしくお願いしますね」
「担当?
このギルドは登録者に受付嬢の担当がつくのが決まりなのかい?」
「はい。
担当受付嬢が不在の時や複数の依頼が重なって対応出来ない場合を除いて固定されています。
そのひとがこなした仕事がポイントになって私たちのボーナスに反映されますんで頑張ってくださいね」
アリシアは僕の両手をしっかりと握りしめながらそう言った。
「ははは、出来るだけ期待に答えられるように頑張ってみるよ」
僕はアリアから商品代金を受け取って帰ろうとしたとき、ふと思い出してノーズベリーをひとつ開放して「どうぞ」と言ってアリシアの前に置いた。
「え?
これノーズベリーですよね?
こ、こんなもの食べたら数日分の食費が飛んでしまいますよ」
「まあ、安くはないですけど原価はそこまででもないと思いますよ。
まあ今回は僕の担当になってくれたお近づきの品とのことで食べてみてください」
「い、いいんですか?
あとで請求してきたりとかお金が払えないなら体で払えとか言わないですよね?」
「僕をなんだと思ってるのですか?
そんなこと言いませんから心配しないでください」
僕は彼女の言動に笑いをこらえながらその様子を観察する。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
はむっ
「お、おいしい。
凄くみずみずしいのに甘みが口いっぱいに広がっていく。
こんな果物初めて食べたわ。
これが噂のノーズベリーなのね」
「喜んでもらえて嬉しいです。
では、これから少しばかり用事があるのでまた明日にでも顔を見せます。
その時に何か仕事があればお願いしますね」
「は、はい。
こちらこそ宜しくお願いしますね」
僕はアリシアに挨拶をすませるとギルドを出て市場に向かった。
* * *
そのころマリアーナは魔道具の調査にのりだしていた。
アルンの処遇については気にはなったがこれ以上ギルドを問い詰めても本人を引き渡さない限り話が進まないと判断して保留とした。
(まあ、ギルドが何か言ってきても知らないと言えば証拠なんか見つかるわけがないし放っておいても問題ないでしょう。
それよりも魔道具をつくる職人を紹介してもらうほうか先だわ)
マリアーナは当初ギルド経由で商会か魔道具士を紹介してもらうつもりだったがアルンの件でいまおおっぴらにギルドであれこれ質問するのは得策ではないと判断していた。
(まずは街の大商店に置いている魔道具の調査をしてそれとなく話を聞き出してみるかな)
マリアーナはそう決めて宿を出て商店の集まる商業区へ向かって歩き出した。
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