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第99話【マリアーナの要求】
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「すみません、逃げるようで悪いのですけど僕はマリアーナさんとの勝負のことや勝ち負けのことの記憶がありませんのでまさに『寝耳に水』状態なのですが……駄目ですよね?やっぱり」
ダメ元で聞いた僕にマリアーナは微笑みながらうなずいた。
「――わかりました。
それでそちらの要求はなんでしょうか?」
すっかり諦めモードになった僕にマリアーナはふたつのことを告げる。
「あなたに聞きたいことは今のあなたに出来ることの情報提供をしてもらいたいこと。
これはギルドの財産でもあるけれど私自身が興味があることだから。
そして要求はあなたの旅にこの先も同行することを許可することね」
「はい?」
マリアーナの予想外の要求に僕は戸惑いながらも彼女に聞き返した。
「スキルについて知りたいというのは理解できますけど僕の旅に同行したいというのはどうしてですか?」
「あなたに興味があるだけ……と言いたいところだけど今回の件はギルドとしても情報の把握をしておかなければならないの。
ザガンが手に入れた『隷属の首輪』はいったいどこから入手できたのか?
まず間違いなく違法な手段だったと思われるけれど確たる証拠がないのよ。
それで兄さ……ディアルギルドマスターと調整をしてこの町『ノーズ』の情報収集は彼が、となりの国『アランガスタ』の一番国境に近い町『ニードル』での情報収集に私が行くことにしたの」
「――それで僕の旅についていくって結論になったのですか。
それならばそうとはじめから説明してくれれば良かっただけだと思うのですがどうしてこんな回りくどいことを?」
僕はため息をついてマリアーナにそう問いかける。
「理由はいくつかあるのですけどあなたに断られないためがひとつ、国境を越えるときに私たちは表向き夫婦を装った方がトラブルになりにくいのですがノエルさんという婚約者がいるあなたにそのような偽装夫婦を演じてもらうのはやりにくいかとの思いから私が見た目の性別ではないことを知ってもらいたかったからですね」
そう言って微笑むマリアーナに僕ははっきりと温泉でのやりとりを思い出した。
「ああ、あれは夢ではなかったんですね。
そうですか、経緯をお聞きしても大丈夫ですか?」
「あら、わたしに興味があるのかしら?
でも駄目ですよ、あなたにはノエルさんがいるのですから」
「いえいえ、もともとマリアーナさんにそのような感情は持っていませんでしたからそれがはっきりしただけで大丈夫ですよ」
「あら、それは残念ですね。
まあ良いでしょう、やはり気になるところでしょうから。
ただし、これから話すことは他言無用にてお願いしますね」
マリアーナは僕がうなずくのを見ると椅子に腰掛けてから話をはじめた。
「――もともと、私は子供のころから女顔と言われていたんだけど、それを利用してある事件を調べるため女装をして潜入捜査をしたの。
で、それがことのほかうまくいったことにより今の地位についたのです。
で、そのときに普通の姿に戻っていれば良かったのだけどロギナスってこの町から離れてるし、ちょっといたずらで女装したまま自己紹介をしてしまって後には引けない雰囲気になって今に至るってわけなの」
「なるほど、ではマリアーナさんの名前は偽名なのですね?
本名は……聞かないでおきましょう、なんだか聞くのが怖いですから。
それで最後にひとつだけ聞いておかなければならない重大なことがあります」
「な、なにかしら?」
僕の鬼気迫る押しにマリアーナが若干ひき気味に答える。
「あなたはノーマルですか?」
僕は彼女の顔をじっと見ながら真剣にそう問う。
「……ぷっ!
あはは、なんだ、いやですよ。
そんなのあたりまえじゃないですか。
確かに私は経緯はともかくこの外観に満足してますけど身も心もノーマルですよ。
まあ、こんな格好ですので彼女とかはつくれませんが彼氏が欲しいなんて思ったことは一度もありませんよ」
マリアーナの答えに僕は心底ほっとして「わかりました。その言葉を信じます」と言ってうなずいた。
「それで、具体的にはどうするつもりなんですか?
結局のところ僕もザッハさんに任せっきりだったので詳しい話は知らないですし、もともとディアルさんに依頼してアランガスタへ向かう商人か商隊に紛れ込ませてもらうのかと思ってましたけど」
「そうね、もともとはそんな話だったのだけれど私が調査に向かうことに決めてからはそんな危ない橋を渡る案はやめてギルド経由で正式に魔道具の作成を依頼する名目で行くことにしたの。
で、私がその責任者であなたも一時的なギルド職員かつ私のパートナー役として同行することになるわ」
「護衛はどうするんですか?
まさか今のままダランさんたちに頼む訳にはいかないでしょうしギルドで募集をかけてくれるんでしょうか?」
僕の心配にマリアーナは少し困った表情で話を続ける。
「それがあまり多くの人数で国境を越えるのは得策ではないので国境付近までは数人の護衛をつけますがアランガスタへ入る門より私たちふたりで向かうことになります」
「ふたりでですか?」
「ええ、心配なのは理解できますが先日の盗賊たちが言っていたようにアランガスタの国では盗賊狩りが行われているようで危険はそう高くないとの情報があるのです。
それに、こう見えて私もそれなりに強いですので盗賊の2~3人くらいなら大丈夫ですよ」
マリアーナはその華奢な外見からは想像がつかないけれど炎魔法の使い手としての能力は確かにあった。
「わかりました。
確かに僕も向こうへ着いたら単独行動をするつもりでいろいろと準備をしてきてますので多少なりとも役にたてると思いますよ」
「ならば決まりですね。
出発は明日の朝。
馬車はノーズまで来た馬車よりもひとまわり小さいものを手配してあるわ。
それじゃあ私はいまからサーラさんたちに今後の行動について指示をだしておきますのでミナトさんは先に休んでおいてくださいね」
「ありがとうございます。
でも、僕ももう少し旅の準備確認をしてから休ませてもらいますよ」
僕は部屋から出て行こうとしているマリアーナにそう伝えてポーチからカードを取り出して必要なものをかためていった。
ダメ元で聞いた僕にマリアーナは微笑みながらうなずいた。
「――わかりました。
それでそちらの要求はなんでしょうか?」
すっかり諦めモードになった僕にマリアーナはふたつのことを告げる。
「あなたに聞きたいことは今のあなたに出来ることの情報提供をしてもらいたいこと。
これはギルドの財産でもあるけれど私自身が興味があることだから。
そして要求はあなたの旅にこの先も同行することを許可することね」
「はい?」
マリアーナの予想外の要求に僕は戸惑いながらも彼女に聞き返した。
「スキルについて知りたいというのは理解できますけど僕の旅に同行したいというのはどうしてですか?」
「あなたに興味があるだけ……と言いたいところだけど今回の件はギルドとしても情報の把握をしておかなければならないの。
ザガンが手に入れた『隷属の首輪』はいったいどこから入手できたのか?
まず間違いなく違法な手段だったと思われるけれど確たる証拠がないのよ。
それで兄さ……ディアルギルドマスターと調整をしてこの町『ノーズ』の情報収集は彼が、となりの国『アランガスタ』の一番国境に近い町『ニードル』での情報収集に私が行くことにしたの」
「――それで僕の旅についていくって結論になったのですか。
それならばそうとはじめから説明してくれれば良かっただけだと思うのですがどうしてこんな回りくどいことを?」
僕はため息をついてマリアーナにそう問いかける。
「理由はいくつかあるのですけどあなたに断られないためがひとつ、国境を越えるときに私たちは表向き夫婦を装った方がトラブルになりにくいのですがノエルさんという婚約者がいるあなたにそのような偽装夫婦を演じてもらうのはやりにくいかとの思いから私が見た目の性別ではないことを知ってもらいたかったからですね」
そう言って微笑むマリアーナに僕ははっきりと温泉でのやりとりを思い出した。
「ああ、あれは夢ではなかったんですね。
そうですか、経緯をお聞きしても大丈夫ですか?」
「あら、わたしに興味があるのかしら?
でも駄目ですよ、あなたにはノエルさんがいるのですから」
「いえいえ、もともとマリアーナさんにそのような感情は持っていませんでしたからそれがはっきりしただけで大丈夫ですよ」
「あら、それは残念ですね。
まあ良いでしょう、やはり気になるところでしょうから。
ただし、これから話すことは他言無用にてお願いしますね」
マリアーナは僕がうなずくのを見ると椅子に腰掛けてから話をはじめた。
「――もともと、私は子供のころから女顔と言われていたんだけど、それを利用してある事件を調べるため女装をして潜入捜査をしたの。
で、それがことのほかうまくいったことにより今の地位についたのです。
で、そのときに普通の姿に戻っていれば良かったのだけどロギナスってこの町から離れてるし、ちょっといたずらで女装したまま自己紹介をしてしまって後には引けない雰囲気になって今に至るってわけなの」
「なるほど、ではマリアーナさんの名前は偽名なのですね?
本名は……聞かないでおきましょう、なんだか聞くのが怖いですから。
それで最後にひとつだけ聞いておかなければならない重大なことがあります」
「な、なにかしら?」
僕の鬼気迫る押しにマリアーナが若干ひき気味に答える。
「あなたはノーマルですか?」
僕は彼女の顔をじっと見ながら真剣にそう問う。
「……ぷっ!
あはは、なんだ、いやですよ。
そんなのあたりまえじゃないですか。
確かに私は経緯はともかくこの外観に満足してますけど身も心もノーマルですよ。
まあ、こんな格好ですので彼女とかはつくれませんが彼氏が欲しいなんて思ったことは一度もありませんよ」
マリアーナの答えに僕は心底ほっとして「わかりました。その言葉を信じます」と言ってうなずいた。
「それで、具体的にはどうするつもりなんですか?
結局のところ僕もザッハさんに任せっきりだったので詳しい話は知らないですし、もともとディアルさんに依頼してアランガスタへ向かう商人か商隊に紛れ込ませてもらうのかと思ってましたけど」
「そうね、もともとはそんな話だったのだけれど私が調査に向かうことに決めてからはそんな危ない橋を渡る案はやめてギルド経由で正式に魔道具の作成を依頼する名目で行くことにしたの。
で、私がその責任者であなたも一時的なギルド職員かつ私のパートナー役として同行することになるわ」
「護衛はどうするんですか?
まさか今のままダランさんたちに頼む訳にはいかないでしょうしギルドで募集をかけてくれるんでしょうか?」
僕の心配にマリアーナは少し困った表情で話を続ける。
「それがあまり多くの人数で国境を越えるのは得策ではないので国境付近までは数人の護衛をつけますがアランガスタへ入る門より私たちふたりで向かうことになります」
「ふたりでですか?」
「ええ、心配なのは理解できますが先日の盗賊たちが言っていたようにアランガスタの国では盗賊狩りが行われているようで危険はそう高くないとの情報があるのです。
それに、こう見えて私もそれなりに強いですので盗賊の2~3人くらいなら大丈夫ですよ」
マリアーナはその華奢な外見からは想像がつかないけれど炎魔法の使い手としての能力は確かにあった。
「わかりました。
確かに僕も向こうへ着いたら単独行動をするつもりでいろいろと準備をしてきてますので多少なりとも役にたてると思いますよ」
「ならば決まりですね。
出発は明日の朝。
馬車はノーズまで来た馬車よりもひとまわり小さいものを手配してあるわ。
それじゃあ私はいまからサーラさんたちに今後の行動について指示をだしておきますのでミナトさんは先に休んでおいてくださいね」
「ありがとうございます。
でも、僕ももう少し旅の準備確認をしてから休ませてもらいますよ」
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