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第98話【マリアーナの秘密】
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「――それでどんな話があるのでしょうか?」
僕の質問に彼女は「あなたから見て私はどうみえる?」とよくわからない質問で返してきた。
「マリアーナさんがですか?
……質問の意味がよくわかりませんが客観的にみてあなたはロギナス斡旋ギルドのサブギルドマスターでかなりのやり手なのだと思っています。
この旅の管理も手際よくこなされてましたし、ノーズに着いてからもスムーズに僕の出国の手続きをしてくれました。
まさに仕事のできる女性だと思いますよ」
「そう……ですか」
僕の回答には満足いかなかったのかマリアーナからの声に元気がない。
「どうかしたのですか?
なにか僕の言葉で気になることがあったのですか?」
後ろを向いたままなのでマリアーナの表情が見えない僕はいま彼女がどんな顔でなにを考えているのか非常に気になりそう聞いた。
「いえ、そんなことはありませんよ。
ミナトさんにそう言って頂けて自信がもてましたわ」
彼女のその言葉に以前から引っ掛かっていたことが頭のなかで駆けめぐる。
(かのじょ?)
その違和感はある事を前提に考えればすべて納得のいく答えがそこにあった。
「すみません。
もしかしたら大変失礼な質問をすることになるかもしれませんがひとつだけお聞きしてもいいですか?」
僕はマリアーナに背を向けたまま彼女にそう問いかける。
「なんでもどうぞ。
あなたの質問には正直にお答えしますわ。
ただし、そのかわりに私の質問にも正直に答えてくださいね」
表情は見えないので声のトーンから真面目な感じがしたので僕は意を決して聞いてみた。
「マリアーナさんはもしかして男性なのですか?」
その答えはすぐには返ってこずに少しの間をおいてから怒るでもなく「どうしてそう思うのですか?」と逆に質問をされた。
「まあ、根拠はいくつかありますけど最初はロギナスのギルドでのギルマスの失言から始まってノーズギルドでのディアルさんとのやりとり、そして温泉に入るのに大浴場では問題がある発言に加えて僕か入っているのを知っていながら堂々と入ってきたこと。
それらの違和感から結論はそうとしか考えられないからです。
もし、全くの勘違いならばありえないほどの失礼をはたらいた事になりますのでその償いはさせてもらいます」
「そうですか。
なるほど理論的には間違っていないのかもしれませんね。
ですが、本当にそう思われますか?
自信がおありならばどうぞこちらを振り返ってその目で確かめてください。
もしもの時には……そうですね責任をとってもらいましょうか」
「せ、責任?」
「ええ、嫁入り前の若い娘の裸を見たとなればどういった責任が良いかわかりますよね?
それともこのまま引き下がりますか?
私はそれでも良いですけど後で私のお願いを聞いてもらいますからね。
さて、どうします?」
(うっ、凄く気になるけどここで賭けに出るのは危険すぎるか?
別にマリアーナさんが男性でも女性でも問題はないのだからここは引くのが正解か?)
僕が迷っているとマリアーナが「あなたの言うとおり私が男ならばあなたの勝ちで間違っていた、若しくはあなたが振り向くのを拒否したら私の勝ちで賭けをしましょう」と突然提案をしてきた。
「そんなに僕に振り向いて欲しいのですか?
わかりました、では覚悟してください」
僕は意を決して振り向こうとしたがノエルの顔がとっさに浮かんで振り向くのをやめた。
(万が一、万が一にもマリアーナさんが女性だったなら責任をとって結婚しろと言ってきた場合の対処方法がいまの僕にはない。
万が一にもノエルを悲しませる可能性があるならば僕はそれを否定しなければならない)
そう思い至った僕はうかつな発言を後悔しながらマリアーナに敗北宣言をした。
「振り向くことはできません。
僕の負けです」
その言葉を聞いたマリアーナは「あなたならばそう判断すると思っていたわ」と言って僕の耳元でささやくように告げた。
「――私は男ですよ」
その声を聞いた僕の頭は真っ白になりそのまま気を失っていた。
* * *
次に気がついたのは宿の部屋でベッドにあお向けに寝かされた状態だった。
「あれ? ここは……」
まだ意識がはっきりしない僕に声がかけられる。
「あ、気がつかれましたかね。
お水をどうぞ、あんなに長く温泉に浸かっていればのぼせて当然ですよ」
首をまわして横をみるとマリアーナが優しく微笑みながら水の入ったコップを差しだしてくる。
「あ、ありがとうございます」
僕はそのコップを受け取り水をぐいと一気に飲み干したあと温泉での記憶を懸命に思い出そうとした。
(たしか温泉に入っていたら何故かマリアーナさんが入ってきて何か約束をしたような気がするんだけどよく思い出せないし、そのとき彼女がなにかとんでもない事を言っていた気もするが……。
だめだ、思い出せない)
僕がコップを握りしめたまま焦点の合わない目で考えごとをしているのをみてマリアーナが声をかけてくる。
「どうかされたのですか?
なにか思いつめているようですが……」
彼女はなにも無かったかのようにいつもの微笑みをしながら心配をする発言をした。
「あの、僕は温泉でのぼせてしまって倒れたような記憶があるのですがマリアーナさんが部屋まで運んでくれたのですか?」
記憶も曖昧であったがなぜかあの場に彼女がいたような記憶もあったので僕は思い切って言葉にした。
「はい、そうですよ。
まさかのぼせていきなり倒れるとは思わなかったので少々あせりましたが私が抱えられる体重でしたので服を着せてから部屋まで運びました。
ミナトさんって筋肉質の割に軽いのですね、びっくりしましたよ」
(いやいや、そんなわけないだろう。
少なくとも女性の力で抱えられるほど僕の体重は軽くないし、もし本当に抱えて来たならば凄い光景だったことだろう)
「それは本当にご迷惑をかけてすみませんでした。
……でも、本当にあの場に居たのですねマリアーナさん」
徐々に鮮明になっていく記憶になぜか汗が出だした僕にマリアーナが言った。
「なんとなく思い出してもらえたようですね。
良かったです、では約束を守ってもらいましょうか」
「約束?」
「はい、私とミナトさんは勝負をして私が勝ちましたのでその報酬を頂きたいと思います」
そう言って微笑む彼女を見ると悪いことを考えている顔をしていた。
僕の質問に彼女は「あなたから見て私はどうみえる?」とよくわからない質問で返してきた。
「マリアーナさんがですか?
……質問の意味がよくわかりませんが客観的にみてあなたはロギナス斡旋ギルドのサブギルドマスターでかなりのやり手なのだと思っています。
この旅の管理も手際よくこなされてましたし、ノーズに着いてからもスムーズに僕の出国の手続きをしてくれました。
まさに仕事のできる女性だと思いますよ」
「そう……ですか」
僕の回答には満足いかなかったのかマリアーナからの声に元気がない。
「どうかしたのですか?
なにか僕の言葉で気になることがあったのですか?」
後ろを向いたままなのでマリアーナの表情が見えない僕はいま彼女がどんな顔でなにを考えているのか非常に気になりそう聞いた。
「いえ、そんなことはありませんよ。
ミナトさんにそう言って頂けて自信がもてましたわ」
彼女のその言葉に以前から引っ掛かっていたことが頭のなかで駆けめぐる。
(かのじょ?)
その違和感はある事を前提に考えればすべて納得のいく答えがそこにあった。
「すみません。
もしかしたら大変失礼な質問をすることになるかもしれませんがひとつだけお聞きしてもいいですか?」
僕はマリアーナに背を向けたまま彼女にそう問いかける。
「なんでもどうぞ。
あなたの質問には正直にお答えしますわ。
ただし、そのかわりに私の質問にも正直に答えてくださいね」
表情は見えないので声のトーンから真面目な感じがしたので僕は意を決して聞いてみた。
「マリアーナさんはもしかして男性なのですか?」
その答えはすぐには返ってこずに少しの間をおいてから怒るでもなく「どうしてそう思うのですか?」と逆に質問をされた。
「まあ、根拠はいくつかありますけど最初はロギナスのギルドでのギルマスの失言から始まってノーズギルドでのディアルさんとのやりとり、そして温泉に入るのに大浴場では問題がある発言に加えて僕か入っているのを知っていながら堂々と入ってきたこと。
それらの違和感から結論はそうとしか考えられないからです。
もし、全くの勘違いならばありえないほどの失礼をはたらいた事になりますのでその償いはさせてもらいます」
「そうですか。
なるほど理論的には間違っていないのかもしれませんね。
ですが、本当にそう思われますか?
自信がおありならばどうぞこちらを振り返ってその目で確かめてください。
もしもの時には……そうですね責任をとってもらいましょうか」
「せ、責任?」
「ええ、嫁入り前の若い娘の裸を見たとなればどういった責任が良いかわかりますよね?
それともこのまま引き下がりますか?
私はそれでも良いですけど後で私のお願いを聞いてもらいますからね。
さて、どうします?」
(うっ、凄く気になるけどここで賭けに出るのは危険すぎるか?
別にマリアーナさんが男性でも女性でも問題はないのだからここは引くのが正解か?)
僕が迷っているとマリアーナが「あなたの言うとおり私が男ならばあなたの勝ちで間違っていた、若しくはあなたが振り向くのを拒否したら私の勝ちで賭けをしましょう」と突然提案をしてきた。
「そんなに僕に振り向いて欲しいのですか?
わかりました、では覚悟してください」
僕は意を決して振り向こうとしたがノエルの顔がとっさに浮かんで振り向くのをやめた。
(万が一、万が一にもマリアーナさんが女性だったなら責任をとって結婚しろと言ってきた場合の対処方法がいまの僕にはない。
万が一にもノエルを悲しませる可能性があるならば僕はそれを否定しなければならない)
そう思い至った僕はうかつな発言を後悔しながらマリアーナに敗北宣言をした。
「振り向くことはできません。
僕の負けです」
その言葉を聞いたマリアーナは「あなたならばそう判断すると思っていたわ」と言って僕の耳元でささやくように告げた。
「――私は男ですよ」
その声を聞いた僕の頭は真っ白になりそのまま気を失っていた。
* * *
次に気がついたのは宿の部屋でベッドにあお向けに寝かされた状態だった。
「あれ? ここは……」
まだ意識がはっきりしない僕に声がかけられる。
「あ、気がつかれましたかね。
お水をどうぞ、あんなに長く温泉に浸かっていればのぼせて当然ですよ」
首をまわして横をみるとマリアーナが優しく微笑みながら水の入ったコップを差しだしてくる。
「あ、ありがとうございます」
僕はそのコップを受け取り水をぐいと一気に飲み干したあと温泉での記憶を懸命に思い出そうとした。
(たしか温泉に入っていたら何故かマリアーナさんが入ってきて何か約束をしたような気がするんだけどよく思い出せないし、そのとき彼女がなにかとんでもない事を言っていた気もするが……。
だめだ、思い出せない)
僕がコップを握りしめたまま焦点の合わない目で考えごとをしているのをみてマリアーナが声をかけてくる。
「どうかされたのですか?
なにか思いつめているようですが……」
彼女はなにも無かったかのようにいつもの微笑みをしながら心配をする発言をした。
「あの、僕は温泉でのぼせてしまって倒れたような記憶があるのですがマリアーナさんが部屋まで運んでくれたのですか?」
記憶も曖昧であったがなぜかあの場に彼女がいたような記憶もあったので僕は思い切って言葉にした。
「はい、そうですよ。
まさかのぼせていきなり倒れるとは思わなかったので少々あせりましたが私が抱えられる体重でしたので服を着せてから部屋まで運びました。
ミナトさんって筋肉質の割に軽いのですね、びっくりしましたよ」
(いやいや、そんなわけないだろう。
少なくとも女性の力で抱えられるほど僕の体重は軽くないし、もし本当に抱えて来たならば凄い光景だったことだろう)
「それは本当にご迷惑をかけてすみませんでした。
……でも、本当にあの場に居たのですねマリアーナさん」
徐々に鮮明になっていく記憶になぜか汗が出だした僕にマリアーナが言った。
「なんとなく思い出してもらえたようですね。
良かったです、では約束を守ってもらいましょうか」
「約束?」
「はい、私とミナトさんは勝負をして私が勝ちましたのでその報酬を頂きたいと思います」
そう言って微笑む彼女を見ると悪いことを考えている顔をしていた。
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