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第68話【レベル3になる意味】
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「皆さん集まったようですので休憩を兼ねて少しミーティングをしたいと思います」
食堂に集まった僕たちの前に手早く紅茶の入ったカップとお菓子が置かれていく。
お菓子は前に買ってカード化しておいたもので紅茶はオールが大至急で準備してくれたものだ。
「アーファさんからは先ほど水のカードを見せてもらいましたがナムルさんはどんな感じでしたか?」
僕は出された紅茶に口をつけながらナムルにそう問いかける。
「あ、えっと……。
一応ですが一枚出来ています」
ナムルはそう言って一枚のカードを僕の前に置く。
【水のカード:きれいな水】
「これを作る過程でなにか気がついた事は無かったですか?」
「気がついたこと……ですか?
そうですね。
いつもよりも魔力消費が多かったような気がします。
ですが、スキルを使った時の抵抗感といいますか負荷は減ったような気もしました」
「そうですね。
魔力消費が多いのは出来る事の最大値でスキルを使っているからだと思います。
負荷が減ったのはレベルが上がったのと単純にスキルを使い慣れてきたからだと思います。
この方法は効率が素晴らしく良いので少ない回数でもより多くの経験値を稼げるため今回の研修には向いていると思いますよ」
僕はそう言って笑いかけると「では、僕の知っているカード収納スキルの内容等についてお話をしましょう」と言葉を続けた。
「基本的な事はふたりとも知っているでしょうから省きますが……そうですね、レベル3になるとできる事から話しましょうか。
レベルが3になるとまずカード化できる容量が増えます。
これはレベルが上がるごとに増えますので特に目新しいことはありません。
次にギルドにある本の中から僕の読んだ範囲ですが、カード収納スキルについてはあまり詳しく記録されておらず自分の分かる範囲で調べたことのひとつに『カード開放条件の更新』があります」
「カード開放条件の更新……ですか。
言葉を聞いただけではどんなものか分かりませんが詳しく聞いても良いですか?」
こういった話にはすぐにナムルが反応してくる。
「その説明の前にナムルさんにひとつ聞いておきたいのですけど、カード収納スキルでカード化されたものってどうやって元に戻してますか?」
「えっ?
それはスキルで開放すれば元に戻りますよね?
今までもそうやってきましたよね?」
「そうですね。
では……『誰』がそれを開放させていましたか?」
「それは当然、カード化した本人ですよ」
僕の質問の意図がつかめないままにナムルは当たり前と思っていた答えを言う。
その答えに満足さした僕は「そうですか?」と言ってナムルがカード化した水のカードを手に取りボソリとつぶやいた。
「所有権共通化」
僕の言葉にカードが一瞬だけ淡い光を放つとカードの裏側に模様があらわれた。
「これでレベル3以上のカード収納スキルを持つ人ならばこのカードを開放する事が出来ます。
これからそれを証明してみせますね」
僕はそう言うとタライの上で開放のスキルを発動させた。
「開放」
――ぱしゃ
コップ一杯分の水がカード化を解かれてタライを濡らすとその光景が信じられないとばかりにナムルが驚愕の表情でその場に立ち上がった。
「ま、まさかそんな事ができるなんて……。
いやいや、それはミナトさんのレベルが高いから出来たんですよね?」
「いえ、これはやり方さえ知っていてレベルが3になれば誰にでも出来ることです。
それに、この事実があるからこそ今回の企画が成立しているのですよ。
考えてみてください、これが出来なくてはカード化して送り出したものを受け取った側はどうやって元に戻すのですか?」
「あっ!」
僕の指摘にナムルは全てを理解して声をあげた。
「な、ならば関係のないカード収納スキル持ちの人がカードを持ち逃げしても開放出来てしまうということですよね?
それってマズくないですか?」
「確かにそうですね。
ですから『やり方を知っていれば』と言ったのです。
一般的にはギルドの書物にも書かれていませんでしたしスキルも不遇扱いでレベルを3まであげる人も少ないでしょうからやり方はギルドの部門担当者のみが知り得る情報として管理すれば良いかと思います。
それでもまだ不安ならばもう少しレベルが必要ですが開放にキーワードを埋め込む方法もあります。
ただ、こちらはサブスキルの方にはレベル的に難しいかもしれませんのであまり一般的ではないかもしれません」
僕はそう言うとカード化してあるケーキをポーチから取り出してスキルを使う。
「――暗号圧縮・アルデンテ」
僕のスキルに反応してカードに魔法陣が刻まれる。
「これでキーワードの言葉を知っていればいつもの開放スキルで元に戻せますよ。
それとこの方法の良いところはレベルが低くても開放出来るところです。
開放に必要な魔力も一緒に埋め込んでますので開放する側に負担がありません。
ただ、経験値も入りませんが……。
という訳アーファさん、これを開放してみてください。
いつもの開放に加えてキーワードのアルデンテを追加してくださいね」
「えっ? 私ですか?」
突然振られたアーファは驚きながらも僕からカードを受け取ってスキルを使う。
「開放・アルデンテ」
アーファがスキルを発動させるとカードが淡く光を放ってからお皿に乗ったケーキが現れた。
「本当に私にも開放出来た……」
アーファは出てきたケーキをしげしげと見つめながらそうつぶやいた後で「ところでアルデンテってなんですか?」と聞いてきたので僕は「なんとなくキーワードっぽいでしょ?」と意味の明言を避けた。
「まだ上のレベルになれば出来ることが増えていきますが、おふたりのレベルが3になったら次のステップにします。
まだ出来ないことを次々と話しても現実味がありませんので……。
なにか質問はありますか?」
「これはもしかして私たち数人で完結出来る内容ではないのでは?」
ナムルが難しい表情を崩さずにそうつぶやく。
「もちろんそうですよ。
あくまでも僕たちはこの流通革命の先導者として後進の道を作っているにすぎません。
だいたいがこんな大規模な革命を1年たらずでしかも数人でやり遂げるなんて有り得ない話なんです。
今回の検証でやれる目処がたてばギルドが主催となり国を動かして本格的なカード収納スキル持ちの育成が始まるでしょう。
そうなればこれまで虐げられていたカード収納スキル持ちの人たちの地位向上につながるはずです」
「それは素晴らしいことです。
ぜひやり遂げましょう」
僕の言葉に共感したナムルはそう言って僕と固い握手を交わした。
その横でアーファがケーキを美味しそうに堪能していたことは見なかったことにした。
食堂に集まった僕たちの前に手早く紅茶の入ったカップとお菓子が置かれていく。
お菓子は前に買ってカード化しておいたもので紅茶はオールが大至急で準備してくれたものだ。
「アーファさんからは先ほど水のカードを見せてもらいましたがナムルさんはどんな感じでしたか?」
僕は出された紅茶に口をつけながらナムルにそう問いかける。
「あ、えっと……。
一応ですが一枚出来ています」
ナムルはそう言って一枚のカードを僕の前に置く。
【水のカード:きれいな水】
「これを作る過程でなにか気がついた事は無かったですか?」
「気がついたこと……ですか?
そうですね。
いつもよりも魔力消費が多かったような気がします。
ですが、スキルを使った時の抵抗感といいますか負荷は減ったような気もしました」
「そうですね。
魔力消費が多いのは出来る事の最大値でスキルを使っているからだと思います。
負荷が減ったのはレベルが上がったのと単純にスキルを使い慣れてきたからだと思います。
この方法は効率が素晴らしく良いので少ない回数でもより多くの経験値を稼げるため今回の研修には向いていると思いますよ」
僕はそう言って笑いかけると「では、僕の知っているカード収納スキルの内容等についてお話をしましょう」と言葉を続けた。
「基本的な事はふたりとも知っているでしょうから省きますが……そうですね、レベル3になるとできる事から話しましょうか。
レベルが3になるとまずカード化できる容量が増えます。
これはレベルが上がるごとに増えますので特に目新しいことはありません。
次にギルドにある本の中から僕の読んだ範囲ですが、カード収納スキルについてはあまり詳しく記録されておらず自分の分かる範囲で調べたことのひとつに『カード開放条件の更新』があります」
「カード開放条件の更新……ですか。
言葉を聞いただけではどんなものか分かりませんが詳しく聞いても良いですか?」
こういった話にはすぐにナムルが反応してくる。
「その説明の前にナムルさんにひとつ聞いておきたいのですけど、カード収納スキルでカード化されたものってどうやって元に戻してますか?」
「えっ?
それはスキルで開放すれば元に戻りますよね?
今までもそうやってきましたよね?」
「そうですね。
では……『誰』がそれを開放させていましたか?」
「それは当然、カード化した本人ですよ」
僕の質問の意図がつかめないままにナムルは当たり前と思っていた答えを言う。
その答えに満足さした僕は「そうですか?」と言ってナムルがカード化した水のカードを手に取りボソリとつぶやいた。
「所有権共通化」
僕の言葉にカードが一瞬だけ淡い光を放つとカードの裏側に模様があらわれた。
「これでレベル3以上のカード収納スキルを持つ人ならばこのカードを開放する事が出来ます。
これからそれを証明してみせますね」
僕はそう言うとタライの上で開放のスキルを発動させた。
「開放」
――ぱしゃ
コップ一杯分の水がカード化を解かれてタライを濡らすとその光景が信じられないとばかりにナムルが驚愕の表情でその場に立ち上がった。
「ま、まさかそんな事ができるなんて……。
いやいや、それはミナトさんのレベルが高いから出来たんですよね?」
「いえ、これはやり方さえ知っていてレベルが3になれば誰にでも出来ることです。
それに、この事実があるからこそ今回の企画が成立しているのですよ。
考えてみてください、これが出来なくてはカード化して送り出したものを受け取った側はどうやって元に戻すのですか?」
「あっ!」
僕の指摘にナムルは全てを理解して声をあげた。
「な、ならば関係のないカード収納スキル持ちの人がカードを持ち逃げしても開放出来てしまうということですよね?
それってマズくないですか?」
「確かにそうですね。
ですから『やり方を知っていれば』と言ったのです。
一般的にはギルドの書物にも書かれていませんでしたしスキルも不遇扱いでレベルを3まであげる人も少ないでしょうからやり方はギルドの部門担当者のみが知り得る情報として管理すれば良いかと思います。
それでもまだ不安ならばもう少しレベルが必要ですが開放にキーワードを埋め込む方法もあります。
ただ、こちらはサブスキルの方にはレベル的に難しいかもしれませんのであまり一般的ではないかもしれません」
僕はそう言うとカード化してあるケーキをポーチから取り出してスキルを使う。
「――暗号圧縮・アルデンテ」
僕のスキルに反応してカードに魔法陣が刻まれる。
「これでキーワードの言葉を知っていればいつもの開放スキルで元に戻せますよ。
それとこの方法の良いところはレベルが低くても開放出来るところです。
開放に必要な魔力も一緒に埋め込んでますので開放する側に負担がありません。
ただ、経験値も入りませんが……。
という訳アーファさん、これを開放してみてください。
いつもの開放に加えてキーワードのアルデンテを追加してくださいね」
「えっ? 私ですか?」
突然振られたアーファは驚きながらも僕からカードを受け取ってスキルを使う。
「開放・アルデンテ」
アーファがスキルを発動させるとカードが淡く光を放ってからお皿に乗ったケーキが現れた。
「本当に私にも開放出来た……」
アーファは出てきたケーキをしげしげと見つめながらそうつぶやいた後で「ところでアルデンテってなんですか?」と聞いてきたので僕は「なんとなくキーワードっぽいでしょ?」と意味の明言を避けた。
「まだ上のレベルになれば出来ることが増えていきますが、おふたりのレベルが3になったら次のステップにします。
まだ出来ないことを次々と話しても現実味がありませんので……。
なにか質問はありますか?」
「これはもしかして私たち数人で完結出来る内容ではないのでは?」
ナムルが難しい表情を崩さずにそうつぶやく。
「もちろんそうですよ。
あくまでも僕たちはこの流通革命の先導者として後進の道を作っているにすぎません。
だいたいがこんな大規模な革命を1年たらずでしかも数人でやり遂げるなんて有り得ない話なんです。
今回の検証でやれる目処がたてばギルドが主催となり国を動かして本格的なカード収納スキル持ちの育成が始まるでしょう。
そうなればこれまで虐げられていたカード収納スキル持ちの人たちの地位向上につながるはずです」
「それは素晴らしいことです。
ぜひやり遂げましょう」
僕の言葉に共感したナムルはそう言って僕と固い握手を交わした。
その横でアーファがケーキを美味しそうに堪能していたことは見なかったことにした。
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