荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

文字の大きさ
上 下
49 / 201

第49話【交渉と恋のゆくえ】

しおりを挟む
「マグラーレ様にお願いしたい事は2つあります」

 僕はそう言うとこの企画の書類をテーブルに広げた。

「この企画のキモは王都斡旋ギルド魔道具部門が開発し、使用の権利を持ちギルド便として使用されている魔道具『ゴーレム伝書鳩』と今は不遇職扱いをされている『カード収納スキルの所持者』にあります。
 ランスロットギルドマスターには各地のギルド職員にカード収納スキル持ちが居ないかの確認とその人たちが僕の研修を受けられる体制をつくって頂きたいです。
 そして、マグラーレ様には集めた研修生を指導する施設の貸与をお願いしたいと思います。
 これは出来れば王都ではない方が良いかと思いますのでロギナスの町に準備して頂けると嬉しく思います」

「ふむ。
 研修生は何人くらい必要なのかね?」

 すでに頭の中でイメージを膨らませ始めたランスロットが僕のお願いに質問で返してくる。

「各町のギルドに最低でもひとり配置出来る人数……と言いたいですけど僕もそれほど多くの人を指導するのは大変ですのでこの国の中心的な街だけでも配置するとしたら何人になりますか?」

「そうだな。
 王都にエルガー、ロギナス、ザザリア、ノーズ……くらいか。
 あとは比較的小規模な町や村になるから最低限で5人だな」

 僕の知っている町の名前も出たが知らない町の名前もいくつか聞かれた。

「ふん。
 5人くらいの研修ならばロギナスにある施設を借りてやろう。
 それこそギルドに斡旋してもらえばいいだろう。
 それであとひとつは何だ?」

「もうひとつは当然……」

 僕はそう言うとノエルを一目見てからマグラーレに伝えた。

「この企画がうまくいった時にはノエルさんとの婚約を認めて頂きたいです。
 そのためにも今の婚約者候補の方にはまだ保留としておいてください。
 いきなり解消させると原因追及される可能性が高いですので……」

「そうだな。
 もし、本当にうまくいってマグラーレ商会に多大な利益をもたらした場合は娘の婚約者として迎え入れてやろう。
 お前のやろうとしている事が現実すれば間違いなくテンマ運送は荷物運送分野は壊滅的に落ちこむだろうからな。
 お前もそれでいいな?」

 マグラーレは僕の質問に答えた後、娘に向かってそう問いかけた。

「お父様……」

 マグラーレの言葉にノエルは涙ぐみながらうなずいた。

   *   *   *

「――では人材の確保とロギナスへの移送手配をお願いします」

「わかった。
 だが、最終的には1年の期間を設けるが半年後に一度成果の確認を行うぞ。
 その時点で全く芽がないならばこの企画は白紙に戻させてもらう。
 ギルドも慈善事業をしている訳ではないからな」

 ランスロットはそう言うとすぐに人選をするためにギルド職員のスキル情報が記載されている書類を持ってこさせた。

「基本的には各街から1人ずつ出せれば良いのだがそう都合良く1年間も研修のために移動出来る者が集まる訳がない。
 たしかロギナスのギルドにはスキル持ちが居たはずだから向こうに戻ったらそいつから指導してやってくれ。
 ああ、研修指示書はギルド便で送っておいてやるからザッハのやつに話せばすぐに対応するだろう。
 のこりのメンバーは1月以内に選抜してロギナスへ向かわせる事にする。
 ――そんなところか?」

「……ついでに研修できる施設の準備も頼んでおいてくれ。
 一応、言った手前使用料くらいは面倒をみてやろう」

 マグラーレはランスロットにそう言うとサラサラと一筆書いてランスロットに渡した。

「そうか、ならばあわせてザッハに伝えておいてやるとしよう。
 ……よし、今回の話はこのくらいだな。
 明日には水槽の準備を済ませておくから魚のカード開放が済んだらさっそく準備にかかってくれ。
 ああ、帰りの馬車はギルドから出してやるからそれで戻るがいいだろう」

「馬車の代金はいくらになりますか?
 さすがに無料ただって訳には行かないでしょう?」

「代金?
 まあ無料ただってのが気になるのならばお前さんのスキルを活用してエルガーとロギナスにギルドからの荷物を運んでくれれば相殺した事になるかな」

 ランスロットはそう言うと運ぶ荷物のリストの確認を職員に指示した。

「わかりました。
 では明日、ギルドに顔を出しますのでそのあたりをまとめておいてください。
 宜しくお願いします」

 僕はソファから立ち上がってふたりにお辞儀をしてから部屋を出た。

「ミナトさん!」

 部屋を出てギルドのホールを出口に向かって歩く僕をノエルが呼び止める。

「これから時間はありますか?」

 おそらく僕が部屋を出てから父親の許可をとって追いかけてきたのであろう肩で息をしながらも深呼吸をして僕にそう問いかける。

「ええ、僕のほうは特に急ぎの用事はありませんがノエルさんこそ大丈夫なんですか?」

「はい。
 父にもミナトさんと夕食までは一緒に行動しても良いとの許可を貰ってきましたから」

「わかりました。
 では何処か落ち着ける場所かお店を教えてください」

 僕はそうノエルに伝えると「とりあえずギルドからは出ましょうか」と彼女の手を引いてギルドを後にした。

「この通りの先に個室のある紅茶屋があるの。
 結構感じのいいお店で紅茶にデザートも美味しいのよ」

「ノエルさんのおすすめのお店ですか……それは楽しみですね」

 僕はノエルに微笑みながら並んで歩く。

「あの……手を繋いでてもいいですか?」

 ギルドを出る時に繋いでいた手はあの後すぐに離したけれど今度はノエルの方から手を繋ぐ事を提案され、僕は嬉しく思いながらもノエルに言った。

「申し出は凄く嬉しい事なんですけど僕はまだノエルさんの正式な婚約者候補にさえなれていないのに王都の街で手を繋いで歩いていたら何かとまずいんじゃないかと思うんです」

 僕の指摘にノエルはハッとした表情となりすぐに僕に対して誤った。

「ミナトさんの言われるとおりですね。
 こうやって一緒に出かけるのをお父様に許された事でもうミナトさんとの事を認めて貰ったのと思い込んでいました」

 そう言って落ち込むノエルに僕は優しく笑いかけて「そう落ち込まないでくださいロギナスなら王都ほど人が多くありませんし、それに1年後には堂々と手を繋いで歩けるようになりますから」と言い切った。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...