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第45話【父と娘と御者と護衛】
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「ノエルです。
ただいま戻りました」
ノエルはミナトと別れた後、実家に戻り父親の執務室へ呼ばれていた。
「うむ。
たかだか5日間とはいえ、今回はトラブルが複数回あったと聞いた。
怪我が無くてなによりだったな。
また、ロギナスの店で起こった事件に関してはロギナスギルド内の安全管理部門に厳しく抗議をしておいた。
あのような者たちを街に招き入れた罪は決して軽くないと。
ひとつ間違えればお前はそこで殺されていた可能性があるのだからな」
マグラーレはそうノエルに言うと「では報告をしてもらおうか」と机上の書類整理をする手を止めてノエルの方へ向き直った。
「――なるほど。
件の彼に強盗から守ってもらった事はギルドからの報告でもあがっている。
そのことは非常に感謝しているがお前との婚姻を認めるかどうかは別問題だ。
お前の婚姻は好きだ嫌いだの感情で決めるつもりは一切考えていない。
わたしが判断するのはマグラーレ商会にとって彼の存在が有用かどうかという事だけだ。
お前にも伝えているはずだがお前の婚約者候補にはザガンというテンマ運送の跡取りがあがっている。
奴はまだまだひよっこだがバックにいる父親のネットワークは無視出来るものではない。
そもそも、この婚約話は向こうから打診してきたもので何かの催しの際にお前を見かけて気に入ったそうだ。
だが、その話が来た時点ではお前はまだ17歳と見習いに毛が生えた程度だったので今すぐには無理だと延期を申し入れたのだ」
「その返事はいつまで延ばせるのでしょうか?」
「お前が支店をやりくり出来るようになって5年間……つまりあと2年だな。
だが、その時にはお前と相手の年齢も考えて婚約ではなく婚姻となるだろう」
「そんな!?
では、私には選択権はないと言われるのですか?」
「そうだ!
……と言いたいが、今回ギルドを介して件の彼を調査したがどうもはっきりしない報告があがってきてな、わたしの商売人としての勘が安易に切り捨てるなと言ってるのだ。
正直、こんな事は初めてのことでよく分からないのだが一度会って話してから判断しても良いのではないかと思ってな。
まあありえない事だろうが、もし件の彼がテンマ運送の跡取りよりも価値を示すことが出来たならばお前の婚約者候補として奴と勝負をさせてやろう。
どうだ?
わたしに紹介するくらいなのだからそのくらいの自信はあるのだろう?」
マグラーレが娘にそう聞くとノエルはにっこりと微笑むと「当然です。私の相手は彼以外にありません」と父親にはっきりと宣言した。
「それは楽しみだ。
お前のその自信が本物である事を期待しているぞ。
……話は以上だ。
今日はゆっくり休め、明日の昼過ぎにギルドにて件の彼に会えばわかるだろう」
マグラーレの締めの言葉にノエルは「わかりました」とお辞儀をして執務室を後にした。
「――娘にあそこまで言わせる男か……。
くくく、久しぶりに商人の血が騒ぎ立てやがる……」
マグラーレは口元に笑みを浮かべながら今回の旅に同行したアルフと銀の剣のリーダー、ヤードを報告のために執務室へと呼び出した。
「旦那様、お呼びだそうで」
「ヤードです。報告に来ました」
ふたりは執務室のマグラーレの前に立ち質問に答えるべく彼の顔を見据える。
「今回の旅、トラブルが多くあったとの報告を受けたが原因は分かっているのか?」
「直接的な原因は不明であり、不運な事柄が重なったものと推測します」
まず、アルフィードがそう答える。
「自分も同意見です。
まず盗賊に関しては他領から流れてきた者で実力も取るに足らないレベルでした。
この地を主に活動している盗賊団ならば少なくともマグラーレ商会のマークがついた馬車を襲うなどといった愚策は起こすとは思えません。
また、霧の滝で遭遇したレッドボアは正に不運としか言えないものでしたが誰かの差し金等の可能性は非常に低いでしょう。
あんな猛獣を思い通りに操れる者などいるはずがありませんから」
ヤードはありのままに事を淡々と報告する。
「そうか……。
わかった、ならば件の彼についてわかる範囲で報告をしてくれ」
「はっ、ミナトさまのスキル構成は『カード収納』と『鑑定』で間違いないようです。
これはロギナスのギルドへ正式な依頼として情報開示を求めたので虚偽は無いでしょう。
レベルに関してはギルドへの報告義務が無いため正確にはわかりませんでしたが仕事の実績からどちらもそれなりのレベルに達しているものと推測します」
アルフィードがギルド経由で仕入れた情報を報告するとヤードは道中に起こった事の中から重要と思われる内容を話し出した。
「彼の収納スキルについてですが、最大の特徴は『時間劣化をしない』事にあるかと思います。
道中で渡された食事はあたかもたった今調理されたばかりと言える物をいとも簡単に提供されました。
それと、カード化出来る容量も一流で約3メートル程ある巨木をなんなくカード化していました。
自分はこれほど有用にカード収納スキルを使いこなす者には出会った事がありません」
ふたりの報告を聞きながらマグラーレは「ふむ」と考えを巡らせてからアルフィードに問いかけた。
「お前は今の情報から見て彼はテンマ運送のザガンと比べて我が商会にとって有用であると思うか?」
「……そうですね。
まだはっきりとは有用であるとは言えません。
しかし、まだこちらの知り得ない隠し玉を持っている可能性は十分に考えられますので明日の面会の時にお聞きになられれば良いかと思います」
「ヤード、お前はどうだ?」
「自分は今の時点でもザガンより面白い存在だと思いますよ。
今まで馬鹿にされがちだった底辺職のカード収納をメインに持ちながら実績をあげる事によってロギナスのギルドマスターからの信頼を勝ち取っていました。
それと、先ほどは言いそびれましたが盗賊を討伐した際に彼は水魔法のアイスニードルを使っています」
「はあっ!?
彼のスキル構成はカード収納と鑑定と報告を聞いたはずだか?」
「はい。
自分も最初はカード収納と水魔法の変形スキル構成だと思ったのですが本人に確認したところ魔法はカード収納の応用で発動したと言われました」
「なんだと?
ますます訳がわからん奴だな。
まあいい、明日会ってみれば分かるというもの。
わたしの目を見てものが言えるか楽しみだ。
わかった、報告ご苦労だった。
今日はゆっくり休んで明日の面会にはわたしの後ろにて話しを聞くがよい」
「わかりました。
では失礼します」
マグラーレの言葉にふたりは頭を下げてから執務室を後にした。
ただいま戻りました」
ノエルはミナトと別れた後、実家に戻り父親の執務室へ呼ばれていた。
「うむ。
たかだか5日間とはいえ、今回はトラブルが複数回あったと聞いた。
怪我が無くてなによりだったな。
また、ロギナスの店で起こった事件に関してはロギナスギルド内の安全管理部門に厳しく抗議をしておいた。
あのような者たちを街に招き入れた罪は決して軽くないと。
ひとつ間違えればお前はそこで殺されていた可能性があるのだからな」
マグラーレはそうノエルに言うと「では報告をしてもらおうか」と机上の書類整理をする手を止めてノエルの方へ向き直った。
「――なるほど。
件の彼に強盗から守ってもらった事はギルドからの報告でもあがっている。
そのことは非常に感謝しているがお前との婚姻を認めるかどうかは別問題だ。
お前の婚姻は好きだ嫌いだの感情で決めるつもりは一切考えていない。
わたしが判断するのはマグラーレ商会にとって彼の存在が有用かどうかという事だけだ。
お前にも伝えているはずだがお前の婚約者候補にはザガンというテンマ運送の跡取りがあがっている。
奴はまだまだひよっこだがバックにいる父親のネットワークは無視出来るものではない。
そもそも、この婚約話は向こうから打診してきたもので何かの催しの際にお前を見かけて気に入ったそうだ。
だが、その話が来た時点ではお前はまだ17歳と見習いに毛が生えた程度だったので今すぐには無理だと延期を申し入れたのだ」
「その返事はいつまで延ばせるのでしょうか?」
「お前が支店をやりくり出来るようになって5年間……つまりあと2年だな。
だが、その時にはお前と相手の年齢も考えて婚約ではなく婚姻となるだろう」
「そんな!?
では、私には選択権はないと言われるのですか?」
「そうだ!
……と言いたいが、今回ギルドを介して件の彼を調査したがどうもはっきりしない報告があがってきてな、わたしの商売人としての勘が安易に切り捨てるなと言ってるのだ。
正直、こんな事は初めてのことでよく分からないのだが一度会って話してから判断しても良いのではないかと思ってな。
まあありえない事だろうが、もし件の彼がテンマ運送の跡取りよりも価値を示すことが出来たならばお前の婚約者候補として奴と勝負をさせてやろう。
どうだ?
わたしに紹介するくらいなのだからそのくらいの自信はあるのだろう?」
マグラーレが娘にそう聞くとノエルはにっこりと微笑むと「当然です。私の相手は彼以外にありません」と父親にはっきりと宣言した。
「それは楽しみだ。
お前のその自信が本物である事を期待しているぞ。
……話は以上だ。
今日はゆっくり休め、明日の昼過ぎにギルドにて件の彼に会えばわかるだろう」
マグラーレの締めの言葉にノエルは「わかりました」とお辞儀をして執務室を後にした。
「――娘にあそこまで言わせる男か……。
くくく、久しぶりに商人の血が騒ぎ立てやがる……」
マグラーレは口元に笑みを浮かべながら今回の旅に同行したアルフと銀の剣のリーダー、ヤードを報告のために執務室へと呼び出した。
「旦那様、お呼びだそうで」
「ヤードです。報告に来ました」
ふたりは執務室のマグラーレの前に立ち質問に答えるべく彼の顔を見据える。
「今回の旅、トラブルが多くあったとの報告を受けたが原因は分かっているのか?」
「直接的な原因は不明であり、不運な事柄が重なったものと推測します」
まず、アルフィードがそう答える。
「自分も同意見です。
まず盗賊に関しては他領から流れてきた者で実力も取るに足らないレベルでした。
この地を主に活動している盗賊団ならば少なくともマグラーレ商会のマークがついた馬車を襲うなどといった愚策は起こすとは思えません。
また、霧の滝で遭遇したレッドボアは正に不運としか言えないものでしたが誰かの差し金等の可能性は非常に低いでしょう。
あんな猛獣を思い通りに操れる者などいるはずがありませんから」
ヤードはありのままに事を淡々と報告する。
「そうか……。
わかった、ならば件の彼についてわかる範囲で報告をしてくれ」
「はっ、ミナトさまのスキル構成は『カード収納』と『鑑定』で間違いないようです。
これはロギナスのギルドへ正式な依頼として情報開示を求めたので虚偽は無いでしょう。
レベルに関してはギルドへの報告義務が無いため正確にはわかりませんでしたが仕事の実績からどちらもそれなりのレベルに達しているものと推測します」
アルフィードがギルド経由で仕入れた情報を報告するとヤードは道中に起こった事の中から重要と思われる内容を話し出した。
「彼の収納スキルについてですが、最大の特徴は『時間劣化をしない』事にあるかと思います。
道中で渡された食事はあたかもたった今調理されたばかりと言える物をいとも簡単に提供されました。
それと、カード化出来る容量も一流で約3メートル程ある巨木をなんなくカード化していました。
自分はこれほど有用にカード収納スキルを使いこなす者には出会った事がありません」
ふたりの報告を聞きながらマグラーレは「ふむ」と考えを巡らせてからアルフィードに問いかけた。
「お前は今の情報から見て彼はテンマ運送のザガンと比べて我が商会にとって有用であると思うか?」
「……そうですね。
まだはっきりとは有用であるとは言えません。
しかし、まだこちらの知り得ない隠し玉を持っている可能性は十分に考えられますので明日の面会の時にお聞きになられれば良いかと思います」
「ヤード、お前はどうだ?」
「自分は今の時点でもザガンより面白い存在だと思いますよ。
今まで馬鹿にされがちだった底辺職のカード収納をメインに持ちながら実績をあげる事によってロギナスのギルドマスターからの信頼を勝ち取っていました。
それと、先ほどは言いそびれましたが盗賊を討伐した際に彼は水魔法のアイスニードルを使っています」
「はあっ!?
彼のスキル構成はカード収納と鑑定と報告を聞いたはずだか?」
「はい。
自分も最初はカード収納と水魔法の変形スキル構成だと思ったのですが本人に確認したところ魔法はカード収納の応用で発動したと言われました」
「なんだと?
ますます訳がわからん奴だな。
まあいい、明日会ってみれば分かるというもの。
わたしの目を見てものが言えるか楽しみだ。
わかった、報告ご苦労だった。
今日はゆっくり休んで明日の面会にはわたしの後ろにて話しを聞くがよい」
「わかりました。
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