荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第18話【終わらない泥抜きと町への帰還】

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「――おい、どうした?
 まだ泥抜きとやらは終わらないのか?」

 鑑定結果からまだ泥抜きが終わっていない事を知った僕は「ええ、どうやらまだ5時間はかかるようですね」と答えた。

「5時間だと!? そりゃ無理だ。
 そんなに待ったら日が沈んでしまうぜ。
 どうするんだ?」

「ええ、ですからこのままの状態で持って帰って町で続きをしたいと思います。
 幸い今の時間にそれなりに魚は捕まえられましたし、この状態のままカード化すれば簡単に持ち運びが出来ますからね」

 僕はそう言うと大鍋ごとカード化してウエストポーチに仕舞うと帰る準備を始めた。

「……相変わらずなんて言ったらいいか分からねぇが常識はずれの収納スキルという事だけは間違いねぇな」

 ダランはそうぼやきながら頭を掻いた。

「――では、帰りましょうか。
 町に戻ったらギルドに素材を納品して報酬を貰ったらおふたりに今回の報酬をお支払いしますので帰り道の護衛も宜しくお願いしますね」

 カード収納のスキル調査がうまく行ったのに加えて新たな食材の可能性に期待しながら僕達は帰りの道を急いだ。

「おう、お疲れさん。
 森の湖に行ったんだって?
 道中にいつもと違う獣が出たとかは無かったか?」

 ロギナスの町にたどり着いた僕達に門兵の男性が声をかけてきた。

 僕もここから出たのは2度めだがダラン達は何度も出入りしているので門兵にも仲の良い顔見知りの人が居るようで挨拶がてらに周りの情報収納をしていた。

「いや、別に変わったところは無かったよ。
 前回はボアが出たから儲かったが今回はたいした獣が出なくて儲け損ねたけどな」

「何いってんだ、怪我なく帰ってくるのが一番大事だろ?
 それに今回は護衛依頼なんだから獣なんて出ない方がいいに決まってるだろ?」

 ダランの言いくちに門兵の男性がため息をついてそう諭す。

「分かってるよ。
 言ってみただけだって。
 それに、森の湖あたりで護衛依頼に失敗するようじゃあいつまで経っても駆け出しの看板が外れないからな。
 依頼を安全確実にこなすのが大事なのはよく分かってるさ」

 ダランは両手を広げて軽く首を振る少々大げさなリアクションをしながら軽口を吐いた。

「もう、お兄ちゃん。
 ブラッドさんにはいつもお世話になってるんだからそんな言葉使いをしたら駄目でしょ!」

 ダランと門兵の男性……ブラッドの会話に後ろで聞いていたサーラがダランの背中を突きながら注意をする。

「わ、わかってるよ。
 べつに俺はブラッドさんを軽視してる訳じゃないのはお前も知ってるだろ?」

「知ってるからこそ言葉遣いに気をつけてって言ってるの。
 ブラッドさんが優しいから問題になってないだけで私達みたいな若い駆け出しがベテラン門兵のブラッドさんに失礼な事を言ってるといざという時に困ることになるのよ」

 いつもは俺様なダランだが妹のサーラが怒りだしたらタジタジになるのを温かい目で見守るブラッドが「おいおい、依頼人を待たせたままじゃ駄目だぞ」と話を切ってくれたので僕達はお礼を言ってから町へ入りギルドへと向った。

 ――からんからん。

 ギルドのドア鐘が鳴ると受付嬢達の視線が集まり、担当の者が手すきならば声をかける流れになっていた。

「ミナトさん、お疲れ様でした。
 依頼の方は大丈夫でしたか?」

 僕達の姿を確認したサーシャが笑顔で迎えてくれる。

「はい。ミナモソウ100個確かに採取してきました」

 僕はウエストポーチからカードを1枚取り出して見せながらニッと笑った。

「それはお疲れ様でしたね。
 では、完了報告書を書いて頂きますのでカウンターの方へお願いします」

 今回は依頼の品物がそれほど多くないためカウンターで報告をする事になり、僕達はサーシャの担当カウンターへと向った。

「――開放オープン

 カウンターで僕は採取してきたミナモソウの入った保存箱を開放してサーシャに中身の確認をお願いした。

「……98、99、100。
 はい、確かに100個ありますね。
 ミナトさんは前回の功績によりギルド鑑定の免除を受けられてますので数だけの確認とさせてもらいました。
 では、こちらが依頼の報酬となります」

 サーシャはそう言うと2万リアラをカウンターに置いた。

「ありがとうございます。
 では、僕からダランさん達の護衛依頼に対する報酬として2万リアラをお渡ししますね」

 僕はそう言うとダランに報酬のお金を渡す。

「本当にいいのか?
 今回は特に戦闘も無かったし、今回の採取依頼の報酬額と同等の額だぜ?
 いくらなんでも貰い過ぎだと思うが……」

「良いですよ。前も言いましたけど元々、僕が自分の検証のために護衛をして貰いたいと言ってたところにサーシャさんの好意で依頼を追加してもらったんですから僕としては護衛料がまるまる浮いたようなものですよ。
 まあ気にせずに貰ってください、また今後も依頼をお願いするかもしれませんので……」

「そ、そうか?
 ならば今回はそうさせてもらうとしよう。
 また何かあれば相談にのるから言ってくれよ」

 ダランの言葉に僕は「ならば、サーラさんにもう少し協力をして貰えると助かりますね」と言って水魔法での協力を要請した。

「あ、さっきの検証の続きですね。
 良いですよ。
 私も結果が気になりますので喜んで協力させて貰いますね」

 サーラはダランが何か言う前にそう言って協力を了承した。

「まあ、サーラがそう言うならば俺からは特に文句はないさ。
 もともと今回の報酬が多すぎたし、俺も検証の結果が気になるからな。
 じゃあ続きはどこでやるんだ?
 宿の中庭でも借りてやるのか?」

 ダランがそう言ってるのをサーシャが不思議そうな顔で聞いてきた。

「何の話をしてるのですか?」

「ああ、湖で魚を捕まえたんですけどダランさん達に泥臭くて不味いと言われたのでちょっと泥抜きをしてみようとしてたんです。
 ただ、思ったよりも時間がかかるようで現場では出来なかったので持ち帰って続きをしようってなったんですよ」

 僕の説明にサーシャは少し考えて聞いた。

「その魚ってマースですよね?
 どう料理しても泥臭くて誰も食べないと言われる。
 もしかして美味しく食べる方法があるんですか?」

「いえ、まだわからないですね。
 ただ、泥臭いのを軽減する方法を知っているのでそれを試している段階ですのでうまくいったらもしかして……といったレベルです」

 そう言う僕にサーシャはまた考え込んで「うーん。でも……、いや、もしかしたら……」と呟いて「少し待ってもらって良いですか?」と言い残してギルドの奥へと入って行った。
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