荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

文字の大きさ
上 下
5 / 201

第5話【レベルアップと仕事のある日常】

しおりを挟む
 ――その後、結局僕は依頼された公共施設の清掃を一人でやりきった。

 元々この仕事は僕のようにスキルレベルが低くてまともな仕事にありつけない人達に対してギルドが仕事を斡旋するために作った仕事らしく、そもそも応募する人がほとんど居なかったのだ。

 おかげで時間はかかったがそれなりに報酬も貰えたのは大きかった。しかも掃除をするにあたり僅かながらスキルのレベルが上がったのだ。

【カード収納レベル2:カード化出来る容量が少しだけ増えた】

【鑑定レベル2:鑑定対象の名前が分かるようになった】

 実はあれからギルドで色々とスキルについて教えて貰っていて収納スキルはコイン1枚をカード化しては戻す作業を繰り返して集中力が途切れてきたらやめて掃除をするを繰り返していると3日程でレベルがあがった。

 鑑定スキルも同じようなものだがこちらは掃除をしながら色々な物を鑑定しまくる事によりレベルが上がった。

「素晴らしいですね。こんなに早くスキルレベルが上がるなんて。
 この調子で鑑定レベルが3になれば斡旋出来る仕事も増えますので頑張ってください。
 ――で、今日も別の施設の清掃依頼を受けられますか?」

 そして今日のサーシャも笑顔で清掃作業ざつようを斡旋してくれたのだった。

   *   *   *

 ――鑑定レベルが3になった。

【鑑定レベル3:鑑定対象の真偽が分かるようになった】

 鑑定レベルが3になった事でギルドから鑑定依頼が来るようになった。多くの偽物の中から本物を探す依頼なのだが普通では全く見分けがつかないのでひとつずつ鑑定をしていかなければならなく、すぐに頭が痛くなる日々が続いた。

 ――鑑定レベルが4になった。

【鑑定レベル4:鑑定対象の詳細が分かるようになった】

 鑑定レベルが上がる度に頼まれる依頼が増えてきている。それに伴って報酬も上がってきているがはっきり言って報酬を使う暇などないに等しいくらいに忙しい。もしかしてギルドの仕事も全部こちらに投げているんじゃないか?と思えるくらいだ。

 内心苦笑いをしながらも仕事をくれるギルドに感謝していた。

 そして、メインスキルであったカード収納スキルの方は……。

「――じゃあこの荷物を西区のノエルさんに運んでください」

 西区のノエルさんとは雑貨屋を営んでいる娘さんで斡旋ギルド経由で荷物を定期的に仕入れているそうで主に近隣の大きな町からの品物を取り扱っていると聞いている。

「おお、今回は結構な量になりますね」

 僕はカウンターに積み上げられた荷物を見て感想を口にする。

「ええ、最近となりのエルガーの街で人気の雑貨の注文が多く入ったそうで急遽きゅうきょ発注したものだそうですよ」

「へー、そうなんですね。
 じゃあスキルでカード化しちゃいますね」

 僕はそう言うとカウンターに置かれている荷物の入った箱に手を添えてスキルを使っていった。

「――カード収納ストレージ

 量があるので一度に全部をカード化することは出来なかったが箱ひとつにつき一枚のカードに変換されていった。

「――いつ見ても凄い光景ね。
 ついこの前までは手のひらに乗る程度の物しか変換出来なかったのに、もうこのサイズの荷物まで出来るようになったのですね。
 仕事で使うとはいえ頑張って鍛錬をしてきたのは素晴らしい事ですね」

「ありがとうございます。
 そういえば使っていて思ったのはメインスキルの方がサブスキルよりも成長が早いみたいです。
 これって常識なんですかね?」

「そうですね。
 数値化した経験値が見える訳ではないので確実ではないですけどそういった内容は報告されています。
 ですが、ほとんどの方はメインスキルばかり使うのでそう感じるだけとも言われていますね」

 サーシャは頬を手を添えながら首を少し傾げて微笑む。

「それにしても今まで収納スキルレベルをまともに上げた人を見たことが無いですから知らなかったけれど使いこなせれば便利なスキルなんですね」

「そうですね。まあ、まだまだ荷物運びの域を越えてはいないですけどね。
 おっと、全部で7箱分ですね。
 では、今からすぐに持っていきますので夕方には完了報告を持ってきますね」

「はい。宜しくお願いします」

 僕が荷物をカード化して肩がけ鞄に入れるとサーシャは笑顔で送り出してくれた。

   *   *   *

 ――からんからん。

 ノエル雑貨店のドア鐘の音が鳴る。

「ノエルさん、ギルドからのお届け物です」

「あ、ミナトさん。
 いつもありがとうございます。
 待っていたんですよ」

 ノエルの笑顔にドキッとするが親しい人にはよく見せる彼女の性格なのだと知り、過度の期待を飲み込みながら笑顔で返す。

「今回も結構な量になってますけどこんなに仕入れて大丈夫なんですか?」

 僕は鞄からカード化した品物を取り出しながら余計な心配をしてしまう。

「実は今回の分は予約でほとんど売れてしまうんです。
 てすから、実際にお店の在庫として置いておけるのはほんの僅かな個数だけなんですよ」

「それは失礼しました。
 ノエルさんは商売上手なのでしたね」

 僕が少し大げさにお辞儀をすると「クスッ」とノエルが笑ってくれた。

(今日のノエルさんも可愛いな)

「それで、お届けした品物はどこに置きますか?
 いつもの棚では入り切らないでしょうし……」

「お店売りの分は棚に、予約分は奥の在庫部屋にお願い出来ますか?」

「はい、良いですよ。
 一箱分を商品棚に、残りは在庫部屋ですね」

 僕は指定された場所にカード化した商品を置いて手を添えたままキーワードを唱える。

「――開放オープン

 僕の言葉に反応したカードが淡い光を放ちながら元の箱に戻っていく。

「はぁ……。
 いつ見ても見事なスキルですね。どうしてこんな有用なスキルが不遇扱いなのか私には理解できません」

 荷物の搬入を側で見るノエルは心底羨ましそうに僕のスキルを褒めてくれた。

「ギルドのサーシャさんにも同じような事を言われましたけど、サブスキルだとレベルアップも遅いし、カード化出来る量も多くないから使い勝手が悪いイメージが浸透しているのだろうと説明されたんですよ」

「私みたいに商売をやっている非力な女性には神のスキルにしかみえないですけどね。
 あ、今回も配送ありがとうございました。
 完了報告書にサインをしておきましたのでギルドで支払いを受けてくださいね」

 ノエルはそう言うと満面の笑みを浮かべながら僕に完了報告書を手渡してくれた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

異世界営生物語

田島久護
ファンタジー
相良仁は高卒でおもちゃ会社に就職し営業部一筋一五年。 ある日出勤すべく向かっていた途中で事故に遭う。 目覚めた先の森から始まる異世界生活。 戸惑いながらも仁は異世界で生き延びる為に営生していきます。 出会う人々と絆を紡いでいく幸せへの物語。

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

処理中です...