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第39話【大切な人への贈り物 その一】
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紅茶で気分を落ち着けた僕はふたりに錬金術の課題を出した。
「ふたりとも錬金術の基礎はしっかりと身についているみたいだから複雑な応用錬金術について教えるつもりだったけど」
「「だったけど?」」
「ちょっと良いことを思い付いたから、ふたりには課題を出そうと思うんだ」
僕はそう言いながら素材棚から幾つか素材を取り出して机の上に置いた。
「まず、ふたりとも良く知ってると思うけど『魔力球』そして『魔力液』さらに『定着石』だ。ベースにする素材はこの棚から選んでも良いし、在庫があるかは分からないけどシールに言えば異空間収納アイテムボックスにあるか調べてくれるから必要な素材は出して貰ってくれ」
僕はシールにその旨を伝えるとふたりに課題内容を告げた。
「課題の内容は『贈り物』だ。
今回は僕からふたりに贈り物をしようと思う。
それを作る間にふたりからも僕に今出来るレベルで何かを作ってみて欲しい。
そしてこの研修が終わった時にも同じ事をしたいと思っている。期間は一週間だ。
メイシスは自分の工房で、ララはこの工房の錬金釜を使うといい。
僕は別に宛があるからそこで作るから心配しなくていい。何か質問はあるかい?」
僕はふたりの顔を見ながら問いかけた。
ちょっと考えていたメイシスが質問をしてきた。
「今の私に出来る事はあまり多くはないのですけどどんな物でもいいのですか?」
「うん。今回は品物の出来で良し悪しを決めるとかじゃないからメイシスが僕にプレゼントしたいと思える物なら何でもいいんだ。
日頃使うものでもいいし、特別な時に使うものでもいい。
それこそ、変わった食べ物でも何でもいいんだ」
「それってタクミが喜ぶ物を考えるのが課題って事?
それとも私達が今作る事が出来る最高の錬金術品の方がいいの?」
ララも何か考えがある様子だが的外れな事を防ぐためにどんどん質問をしてきた。
「そうだね。課題がテストならば今出来る最高の錬金術品なんだろうけれど、それは僕の講習が終わってから改めてって事にするから今回のテーマは贈り物だから相手が喜ぶ物がいいな」
僕がそう言うとふたりは僕の顔をじっと見ると考え込んでしまった。
「僕の顔を眺めていても欲しい物は書いてないからね。
でも少しだけヒントをあげよう。
僕は男だからね、どうしても男目線で物を考えてしまうんだよ。
対してふたりとも女性だから僕とは違う目線で錬金術品が創れる可能性があると思うんだ。
その辺りを考えてくれると嬉しいかな」
「そうなんだ。じゃあ逆に私が喜ぶ物ってタクミに分かるの?女の子の気持ちに鈍感な感じがするけど?」
ララは少し意地悪な質問を投げかけて僕の動揺を誘ってきたが僕は平然とした態度で「任せておけ」と強がった。
「よし、ふたりとも今日一日しっかりと何を作るか考えて明日から一週間、食事の時以外は工房に籠って試行錯誤してみるといい。
最後に言っておくけど実力以上に良く見せようと無理をすると逆にどんどん劣化していくのも錬金術の常だ。
魔力操作を誤らないように頑張ってくれ。
僕もふたりが喜ぶ物を創れるように努力するよ」
「「はい。分かりました!」」
「よし、錬金術ウィークの始まりだ」
そう宣言した僕は、久しぶりの錬金術浸けにわくわくしていた。
* * *
ーーーララ編。
『タクミが喜ぶ物……。女性視点で考える……』
部屋に戻ったララは何を創るのが一番いいのか悩んでいた。
正直、ララの錬金術レベルはかなりのものでこの国の錬金術士としてはすでに最上級レベルであったが、如何せん『知識』が足りなくて自分で何かを創造する力が不足していた。
『大体タクミは私が作れるものは何だって作れるんだからプレゼントと言っても難しすぎるわよ!
装飾品なんてものは論外だと思うし、女の子らしく着飾ったわたしってやったらめっちゃ叱られそうだし……。
ああ!頭がパーンってなりそうだわよ。
そうだ!ちょっと街に出てみるのもいいかも知れないわね、一人で出るとうるさいからセジュさんに頼んでみよう』
ララはセジュに頼み込んで一緒に街へネタ探しに出かけることにした。
服屋、雑貨屋、ケーキ屋、ネタ探しと言いながら普通にウィンドウショッピングを楽しむふたりだったがふとあるものが目にとまりララの中で確信になった。
「これに決めた。セジュさん、何を作るか決めましたよ。
材料を買うのでもう少しだけ付き合ってくださいね」
その後、ララはいくつかの商店を回り必要な材料を購入すると試作品の作成に入った。
『よし!なかなか良い感じに仕上がってきたわね。
もう少し調整が必要かと思うけど、今手に入る材料だとこれが限界かも知れないわね。
ちょっと味見をして……。
うん、久しぶりに作った割にはなかなか良いんじゃないかな?タクミ喜んでくれるかな?』
今回ララが選んだものは『竜族異世界料理ドラゴンスープ』であった。
『男を落とすには胃袋を掴むべし!と世間では常識とまで言われているらしいから料理錬金でタクミが絶対に食べた事のない私の世界の料理を作ってびっくりさせてやるわ』
ただ、私の世界でしか集められない材料が幾つかあったので代替えの材料を探すのに時間がかかったのが大変だったけど何とか満足いく物が出来た。
『よし!これで勝負よ!タクミ待ってなさいよ!』
* * *
ーーーメイシス編
『うーん。何を作ろうかしら……』
メイシスは自分の工房に戻り、錬金釜を前に頭を悩ませていた。
『基本的にタクミ様に教えて貰ったものは駄目だろうし、そもそもタクミ様にプレゼントするものを考えなければいけないのだから大変ですわね。
ララさんは何を作るのでしょうか?彼女の錬金力ならかなりの物が出来るでしょうからアイデアで勝負しないと勝ち目はないでしょうね』
メイシスは何故かララと勝負すると勘違いをしていてどちらの品物がよりタクミを喜ばせるかに重点をおいて考えていた。
『そうだ!良いことを思い付いたわ!これならば錬金術としても世間に発表できる品物だし私をもっと魅力的にみせる事が出来てタクミ様も私から目がはなせなくなる事でしょう』
そう思いながらメイシスが作り始めたのは『女性用化粧品』だった。
今までも化粧品はあったが希少な素材を使う割にあまり質が良くなくて広まっていなかった。
メイシス自身も使った事はあるが満足いくものではなく、最近は殆んど使ってなかった。
『今回はファンデーションと口紅にしましょう。
あまり多く作っても後でレシピにする時が大変ですからね』
メイシスは今までの化粧品で不満に思っていた事を錬金術という特別な製造方法で実現させていった。
作り上げた品物はメイシスには素材の入手難度の高さに冷や汗をかきながらも出来上がりには満足していた。
『よし!私はこれを課題として出してみるわ。そして化粧した私をタクミ様に……うふふふふ』
メイシスの妄想は今日も全力全開であった。
「ふたりとも錬金術の基礎はしっかりと身についているみたいだから複雑な応用錬金術について教えるつもりだったけど」
「「だったけど?」」
「ちょっと良いことを思い付いたから、ふたりには課題を出そうと思うんだ」
僕はそう言いながら素材棚から幾つか素材を取り出して机の上に置いた。
「まず、ふたりとも良く知ってると思うけど『魔力球』そして『魔力液』さらに『定着石』だ。ベースにする素材はこの棚から選んでも良いし、在庫があるかは分からないけどシールに言えば異空間収納アイテムボックスにあるか調べてくれるから必要な素材は出して貰ってくれ」
僕はシールにその旨を伝えるとふたりに課題内容を告げた。
「課題の内容は『贈り物』だ。
今回は僕からふたりに贈り物をしようと思う。
それを作る間にふたりからも僕に今出来るレベルで何かを作ってみて欲しい。
そしてこの研修が終わった時にも同じ事をしたいと思っている。期間は一週間だ。
メイシスは自分の工房で、ララはこの工房の錬金釜を使うといい。
僕は別に宛があるからそこで作るから心配しなくていい。何か質問はあるかい?」
僕はふたりの顔を見ながら問いかけた。
ちょっと考えていたメイシスが質問をしてきた。
「今の私に出来る事はあまり多くはないのですけどどんな物でもいいのですか?」
「うん。今回は品物の出来で良し悪しを決めるとかじゃないからメイシスが僕にプレゼントしたいと思える物なら何でもいいんだ。
日頃使うものでもいいし、特別な時に使うものでもいい。
それこそ、変わった食べ物でも何でもいいんだ」
「それってタクミが喜ぶ物を考えるのが課題って事?
それとも私達が今作る事が出来る最高の錬金術品の方がいいの?」
ララも何か考えがある様子だが的外れな事を防ぐためにどんどん質問をしてきた。
「そうだね。課題がテストならば今出来る最高の錬金術品なんだろうけれど、それは僕の講習が終わってから改めてって事にするから今回のテーマは贈り物だから相手が喜ぶ物がいいな」
僕がそう言うとふたりは僕の顔をじっと見ると考え込んでしまった。
「僕の顔を眺めていても欲しい物は書いてないからね。
でも少しだけヒントをあげよう。
僕は男だからね、どうしても男目線で物を考えてしまうんだよ。
対してふたりとも女性だから僕とは違う目線で錬金術品が創れる可能性があると思うんだ。
その辺りを考えてくれると嬉しいかな」
「そうなんだ。じゃあ逆に私が喜ぶ物ってタクミに分かるの?女の子の気持ちに鈍感な感じがするけど?」
ララは少し意地悪な質問を投げかけて僕の動揺を誘ってきたが僕は平然とした態度で「任せておけ」と強がった。
「よし、ふたりとも今日一日しっかりと何を作るか考えて明日から一週間、食事の時以外は工房に籠って試行錯誤してみるといい。
最後に言っておくけど実力以上に良く見せようと無理をすると逆にどんどん劣化していくのも錬金術の常だ。
魔力操作を誤らないように頑張ってくれ。
僕もふたりが喜ぶ物を創れるように努力するよ」
「「はい。分かりました!」」
「よし、錬金術ウィークの始まりだ」
そう宣言した僕は、久しぶりの錬金術浸けにわくわくしていた。
* * *
ーーーララ編。
『タクミが喜ぶ物……。女性視点で考える……』
部屋に戻ったララは何を創るのが一番いいのか悩んでいた。
正直、ララの錬金術レベルはかなりのものでこの国の錬金術士としてはすでに最上級レベルであったが、如何せん『知識』が足りなくて自分で何かを創造する力が不足していた。
『大体タクミは私が作れるものは何だって作れるんだからプレゼントと言っても難しすぎるわよ!
装飾品なんてものは論外だと思うし、女の子らしく着飾ったわたしってやったらめっちゃ叱られそうだし……。
ああ!頭がパーンってなりそうだわよ。
そうだ!ちょっと街に出てみるのもいいかも知れないわね、一人で出るとうるさいからセジュさんに頼んでみよう』
ララはセジュに頼み込んで一緒に街へネタ探しに出かけることにした。
服屋、雑貨屋、ケーキ屋、ネタ探しと言いながら普通にウィンドウショッピングを楽しむふたりだったがふとあるものが目にとまりララの中で確信になった。
「これに決めた。セジュさん、何を作るか決めましたよ。
材料を買うのでもう少しだけ付き合ってくださいね」
その後、ララはいくつかの商店を回り必要な材料を購入すると試作品の作成に入った。
『よし!なかなか良い感じに仕上がってきたわね。
もう少し調整が必要かと思うけど、今手に入る材料だとこれが限界かも知れないわね。
ちょっと味見をして……。
うん、久しぶりに作った割にはなかなか良いんじゃないかな?タクミ喜んでくれるかな?』
今回ララが選んだものは『竜族異世界料理ドラゴンスープ』であった。
『男を落とすには胃袋を掴むべし!と世間では常識とまで言われているらしいから料理錬金でタクミが絶対に食べた事のない私の世界の料理を作ってびっくりさせてやるわ』
ただ、私の世界でしか集められない材料が幾つかあったので代替えの材料を探すのに時間がかかったのが大変だったけど何とか満足いく物が出来た。
『よし!これで勝負よ!タクミ待ってなさいよ!』
* * *
ーーーメイシス編
『うーん。何を作ろうかしら……』
メイシスは自分の工房に戻り、錬金釜を前に頭を悩ませていた。
『基本的にタクミ様に教えて貰ったものは駄目だろうし、そもそもタクミ様にプレゼントするものを考えなければいけないのだから大変ですわね。
ララさんは何を作るのでしょうか?彼女の錬金力ならかなりの物が出来るでしょうからアイデアで勝負しないと勝ち目はないでしょうね』
メイシスは何故かララと勝負すると勘違いをしていてどちらの品物がよりタクミを喜ばせるかに重点をおいて考えていた。
『そうだ!良いことを思い付いたわ!これならば錬金術としても世間に発表できる品物だし私をもっと魅力的にみせる事が出来てタクミ様も私から目がはなせなくなる事でしょう』
そう思いながらメイシスが作り始めたのは『女性用化粧品』だった。
今までも化粧品はあったが希少な素材を使う割にあまり質が良くなくて広まっていなかった。
メイシス自身も使った事はあるが満足いくものではなく、最近は殆んど使ってなかった。
『今回はファンデーションと口紅にしましょう。
あまり多く作っても後でレシピにする時が大変ですからね』
メイシスは今までの化粧品で不満に思っていた事を錬金術という特別な製造方法で実現させていった。
作り上げた品物はメイシスには素材の入手難度の高さに冷や汗をかきながらも出来上がりには満足していた。
『よし!私はこれを課題として出してみるわ。そして化粧した私をタクミ様に……うふふふふ』
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