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第38話【成長させたララと成長させなかったメイシス王女】
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その日は、差し込む朝日が眩しくて目が覚めた。
珍しく寝坊をしてしまった僕は『近頃は精神的にくるイベントが重なっていたからだろう』と頭を振りながらヘッドから起きた。
「おはようございます。タクミマスター。
かなりお疲れの様子でしたので少し遅めの朝食にしようと準備してましたの。
皆さんお揃いですが今から朝食にされますか?」
『皆さん?誰か来てるのかな?でも朝食を一緒に食べる客は予定には無かったと思うんだけどな』
考えても分からなかったのでとりあえず行ってみる事にした。
「分かったよ。直ぐに着替えて行くようにするからちょっと待ってて貰ってくれ」
「了解しました。伝言は伝えておきますの。後、着替えはこちらに準備してありますの」
「ありがとうミルフィ。よろしく」
僕はミルフィに頼むと着替えてから食堂に向かった。
「おはようございます。タクミ様、今日はゆっくりでしたのですね。
わたくし今日から錬金術の真髄に迫れるかと思うとあまり眠れなかったのです。
タクミ様、いえ『師匠』とお呼びした方が宜しかったのですよね。今日からよろしくお願いします」
「ああ、メイだったのか。朝食を一緒するクライアントは居なかったと思ってたから誰だろう?と思ってたんだよ。
こちらこそよろしく。頑張ってレベルアップしていこう」
「メイと呼んでくださるのですね。嬉しいですわ。
ですがタクミ様。ひとつお聞きしたい事があるのですが……」
メイシスは僕の方から視線をそらしてある人物の方を見て言った。
「あなたは王宮での錬金術指導の時にいらっしゃった方ですよね?
そう言えばその方も確か『ララ』と呼ばれていたと記憶しておりますけれど。
こちらの『ララ』さんとはどういった関係なのでしょうか?
そしてどうして今ここにあなたがいらっしゃっるのでしょうか?」
メイシスの正面でニコニコしながら朝食を食べているララを見て僕は全てを察した。
やはり彼女には僕の考えを見越して成長するなどと言う高度な駆け引きは無駄だと痛感させられた。
仕方がないので僕はメイシスに説明するはめになった。
「ーーーと言うわけで、昨日までのララも今日のララも同一人物と言う訳なんだ」
メイシスは信じられないといった顔でララを見て自分を見て最後に僕を見た。
「結局のところ『ララちゃん』は『ララさん』になったと言う事ですのね。
妹みたいに思ってたけど一日で姉になってしまったのですね」
現実では三女の為、姉ふたりに遠慮して暮らしてきたメイシスは同じ錬金術の弟子としてララが妹みたいに思えていたらしく、急に成長して女らしくなったララにショックを受けてしまったようだった。
「メイ様。元気を出されて下さいませ。もう4~5年もすればメイ様もあのくらいには成長する可能性はあるのですから……」
ショコラがすかさずフォローを入れると「そうかな?」と自分を納得させていた。
その姿があまりにも痛ましかったので僕は思わずメイシスに言ってしまった。
「ならメイシスも自分の成長した姿になってみるかい?」
その言葉を聞いたメイシスの顔が一転輝き始めた。
「そんな事が私にも出来るの!?」
食いつくメイシスに僕は「いや、出来ないよ」と返してしまった。
「なんですの!?それは!タクミ様は出来ない事をおっしゃる方では無いと信じていたのにこの仕打ちは酷いですわ!」
「いや、僕の言い方が悪かった。
僕が出来ないと言ったのはララみたいに効果をずっと維持させる事が出来ないと言いたかったんだ。
つまり少しの間、具体的には長くて一日ぐらいならば体感出来る魔道具を作る事は出来るんだ。
メイシスがそれを望むならば作ってもいいと思ったんだけどどうしたい?」
メイシスは少し考え込んでいたが僕の顔を伺うと質問に答えた。
「やめておきますわ。確かに私自身が成長した姿を見てみたい気持ちが無いと言うのは嘘になりますけど、直ぐに戻る事が分かっていますし未来の自分はこれからの努力次第でいくらでも良くなると思えば今見るべきでは無いと思ったからですわ。
それにタクミ様は今の私を受け入れて下さっていると思っておりますから……」
「うん。メイシスならばきっとそう言うと思っていたよ。
ララもメイシスも自分らしさを持ってその姿があるんだから、急がずに一緒に成長して行こう」
「はい!」
メイシスは笑顔で返事を返した。
「ーーーなに?私も成長しない方が良かったの?やっぱりタクミはロリ……」
「だぁー!もうそのネタはおしまいだって言っただろ!ララもメイシスも二人とも綺麗だし可愛いからそんなにアピールしなくても良いから!」
「ミルフィ!ふたりには食事の後で応用錬金の講義をするから工房で準備を頼むよ」
ふたりから散々いじられた僕は怒る訳にもいかずにミルフィに指示を出してさっさとその場から退散した。
珍しく寝坊をしてしまった僕は『近頃は精神的にくるイベントが重なっていたからだろう』と頭を振りながらヘッドから起きた。
「おはようございます。タクミマスター。
かなりお疲れの様子でしたので少し遅めの朝食にしようと準備してましたの。
皆さんお揃いですが今から朝食にされますか?」
『皆さん?誰か来てるのかな?でも朝食を一緒に食べる客は予定には無かったと思うんだけどな』
考えても分からなかったのでとりあえず行ってみる事にした。
「分かったよ。直ぐに着替えて行くようにするからちょっと待ってて貰ってくれ」
「了解しました。伝言は伝えておきますの。後、着替えはこちらに準備してありますの」
「ありがとうミルフィ。よろしく」
僕はミルフィに頼むと着替えてから食堂に向かった。
「おはようございます。タクミ様、今日はゆっくりでしたのですね。
わたくし今日から錬金術の真髄に迫れるかと思うとあまり眠れなかったのです。
タクミ様、いえ『師匠』とお呼びした方が宜しかったのですよね。今日からよろしくお願いします」
「ああ、メイだったのか。朝食を一緒するクライアントは居なかったと思ってたから誰だろう?と思ってたんだよ。
こちらこそよろしく。頑張ってレベルアップしていこう」
「メイと呼んでくださるのですね。嬉しいですわ。
ですがタクミ様。ひとつお聞きしたい事があるのですが……」
メイシスは僕の方から視線をそらしてある人物の方を見て言った。
「あなたは王宮での錬金術指導の時にいらっしゃった方ですよね?
そう言えばその方も確か『ララ』と呼ばれていたと記憶しておりますけれど。
こちらの『ララ』さんとはどういった関係なのでしょうか?
そしてどうして今ここにあなたがいらっしゃっるのでしょうか?」
メイシスの正面でニコニコしながら朝食を食べているララを見て僕は全てを察した。
やはり彼女には僕の考えを見越して成長するなどと言う高度な駆け引きは無駄だと痛感させられた。
仕方がないので僕はメイシスに説明するはめになった。
「ーーーと言うわけで、昨日までのララも今日のララも同一人物と言う訳なんだ」
メイシスは信じられないといった顔でララを見て自分を見て最後に僕を見た。
「結局のところ『ララちゃん』は『ララさん』になったと言う事ですのね。
妹みたいに思ってたけど一日で姉になってしまったのですね」
現実では三女の為、姉ふたりに遠慮して暮らしてきたメイシスは同じ錬金術の弟子としてララが妹みたいに思えていたらしく、急に成長して女らしくなったララにショックを受けてしまったようだった。
「メイ様。元気を出されて下さいませ。もう4~5年もすればメイ様もあのくらいには成長する可能性はあるのですから……」
ショコラがすかさずフォローを入れると「そうかな?」と自分を納得させていた。
その姿があまりにも痛ましかったので僕は思わずメイシスに言ってしまった。
「ならメイシスも自分の成長した姿になってみるかい?」
その言葉を聞いたメイシスの顔が一転輝き始めた。
「そんな事が私にも出来るの!?」
食いつくメイシスに僕は「いや、出来ないよ」と返してしまった。
「なんですの!?それは!タクミ様は出来ない事をおっしゃる方では無いと信じていたのにこの仕打ちは酷いですわ!」
「いや、僕の言い方が悪かった。
僕が出来ないと言ったのはララみたいに効果をずっと維持させる事が出来ないと言いたかったんだ。
つまり少しの間、具体的には長くて一日ぐらいならば体感出来る魔道具を作る事は出来るんだ。
メイシスがそれを望むならば作ってもいいと思ったんだけどどうしたい?」
メイシスは少し考え込んでいたが僕の顔を伺うと質問に答えた。
「やめておきますわ。確かに私自身が成長した姿を見てみたい気持ちが無いと言うのは嘘になりますけど、直ぐに戻る事が分かっていますし未来の自分はこれからの努力次第でいくらでも良くなると思えば今見るべきでは無いと思ったからですわ。
それにタクミ様は今の私を受け入れて下さっていると思っておりますから……」
「うん。メイシスならばきっとそう言うと思っていたよ。
ララもメイシスも自分らしさを持ってその姿があるんだから、急がずに一緒に成長して行こう」
「はい!」
メイシスは笑顔で返事を返した。
「ーーーなに?私も成長しない方が良かったの?やっぱりタクミはロリ……」
「だぁー!もうそのネタはおしまいだって言っただろ!ララもメイシスも二人とも綺麗だし可愛いからそんなにアピールしなくても良いから!」
「ミルフィ!ふたりには食事の後で応用錬金の講義をするから工房で準備を頼むよ」
ふたりから散々いじられた僕は怒る訳にもいかずにミルフィに指示を出してさっさとその場から退散した。
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