錬金魔法士と精霊達の気ままな工房ライフ

夢幻の翼

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第35話【メイシス王女の成人披露会 その一】

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「錬魔士タクミ様。本日はよろしくお願いします。
 わたくしは本日の進行を努めさせて頂く『ゴルド』と申します。
 進行上で何か不明な点は何でもお聞きください」

 今日はメイシス第三王女殿下の成人披露パーティーに合わせて国王陛下から報奨の伝達が執り行われる予定になっている。
 順番としては①国王陛下挨拶、②メイシス第三王女殿下の成人宣言、③メイシス王女による錬金術のパフォーマンス、④タクミ錬魔士への叙爵発表、⑤メイシス王女の側近精霊の披露、の順番らしい。
 僕の出番は叙爵式と側近披露になる。
 メイシス王女の錬金術披露のサポートはララに任せたし、ふたりでかなり打ち合わせをしていたから何とかやってくれるだろう。

「ああ、ありがとう。
 僕の出番はまだ先だから暫くは裏方でサプライズ料理の準備をしてるよ。
 何かしてないと落ち着かないんだ」

「いえいえ、タクミ様にはお召し物の着替えをして頂く必要がありますのでそのまま奥の控え室においでください。
 部屋に着付け係がおりますので分からない事は聞いてください。それではどうぞ」

 僕はゴルドに促されて着替えのある控え室に向かった。
 部屋には貴族が着る正装が用意され従者が準備に追われていた。

「錬魔士様、お待ちしておりました。
 こちらの服をお召しになり呼び出しがあるまでこちらでお待ちください。
 そろそろ式が始まりますので半刻くらいかと思います」

 僕は言われるままに着替えると従者に髪をセットしてもらいながら出番を待った。

 その頃、大広間では国王陛下のお話が始まっていた。

「皆の衆、今日は我が娘メイシスの成人披露パーティーへの出席、遠路遥々ご苦労であった。
 この度メイシスが15歳となり成人するにあたり、皆に通知したき事柄があるゆえ心して聞くように」

 国王陛下はメイシス王女を傍に呼び寄せ皆に聞こえるように宣言した。

「メイシスはこの度、成人の義を迎える過程で魔力診断の儀式を受け上級錬金術士としての才能があるとの報告を受けた。
 皆も知っておる通り我が国の錬金術士レベルは王宮錬金術士でさえも満足いくレベルには達していない。非常に残念な事である。
 そこで私は娘を3ヶ月間専門の家庭教師をつけて才能を伸ばして貰った。
 この後で娘の錬金術レベルが今現在どのくらいなのか皆の目で確かめて欲しいと思う。出来るなメイシス!」

「はい、お父様。この国の良き未来のためにも精一杯やらせて頂きます!」

 メイシスは国王陛下に向かって臣下の礼をとると直ぐに従者に錬金術に必要な道具の搬入を指示して自らも助手として控えに居るララに連絡をとった。

「ララさん、よろしくお願いしますわ」

 程なく準備は終わり、メイシス王女の錬金術披露が始まった。
 手始めは『料理錬金』でタクミから教わったこの国にはない料理を作り、お菓子やケーキといった見映えのするものを次々と作り上げていった。

「どうぞ皆さんでご試食ください!飲み物は係りの者がお渡ししております。
 それらをお試し頂いている間に少々時間のかかる錬金術を行いますのでグラスを片手で結構ですので観覧を願います」

 メイシス王女とララは今回の目玉錬金術の準備に入った。
 作るのは当然『部位欠損蘇生薬』だ。
 この薬はまだ身内にしか公表していないのでかなりのインパクトになるはずだ。

「それでは今から私が錬金術の勉強中にたどり着いた今までに誰も作れなかった薬を皆さんの目の前で作ります。
 まだ未公開の錬金術ですのでレシピの詳細は伏せますが錬金術の腕が上がれば錬金術士ならば作れる事を証明するものとなるでしょう」

 メイシス王女はララから素材を受け取り錬金釜に入れると何度も特訓した薬を作り始めた。
 そして問題なく薬は完成した。

「出来ましたわ!」

 メイシス王女は錬金釜から取り出した液体をガラスの薬瓶に入れ皆の前に掲げた。
 液体は濃い赤色をしており、何の薬か分からない周りの者は首を傾げていた。

「これは傷薬の一種ですが特殊な効果を併せ持つ画期的な薬です。
 効果を見てもらう為に今日はある方に来て頂きました。
 本来ならばこのような皆さんの前にて治療するものでは無いのですが効果を信じて頂くためにあえてお願い致しました。
 それでは宜しくお願いします」

 そこに現れたのは、この城の兵士達だったが全員体の一部を失った者ばかりだった。

「彼らは過去の戦や王族や貴族の護衛任務中に勇敢に戦いながらも部位欠損の大怪我をおった人達です。
 彼らは今は事務方の職務についていますが欠損部の痛みに悩まされているそうです。
 私は国のために、そして王族や貴族の安全の為に戦った彼らを救いたいと思い錬金術の研鑽を重ねてこの薬にたどり着きました」

 周りの者は半信半疑でメイシス王女の話を黙って聞いていたがひとりが王女に質問した。

「まさかその薬で傷が治るとおっしゃるのですか?
 部位欠損してかなりの時間がたっている傷口でも?」

 メイシス王女はニコリと微笑むと「効果の程は皆さん自身でお確かめください」と告げてララと共に兵士達の傷口に薬をかけていった。

「おおっ!?何と言うことだ!俺の!俺の右腕がある!?」

「俺もだ!左足が治ってる!?」

 次々に兵士達から感嘆の声がそして涙ながらの嗚咽があがっていった。

「メイシス王女殿下。ありがとうございます!
 もはや私には守りたいものさえ守れないままかと諦めていましたがこれでまた守りたいものを全力で守れるようになれます!
 本当にありがとうございました!」

 周りの貴族達が目の前の奇跡を信じられないといった目で唖然としているのを尻目にメイシスは追い討ちをかけた。

「この薬は見ての通り部位欠損蘇生薬です。
 まだ素材の安定確保が確立されていないのと作れるレベルの錬金術士が殆んど居ない現状では皆が簡単に手に出来る訳ではないですが部位欠損は完治するとの希望になると考えていますわ」

 メイシス王女は怪我の完治した兵士達を労いながら周りの貴族達に宣言した。

「以上が私の錬金術士としての実力ですわ。いかがだったでしょうか?」

 メイシス王女の言葉の意味が理解されるごとに周りの貴族達から称賛の声が次々に上がった。
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