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ミツオと祖父母
しおりを挟むミツオはずっと祖父母と暮らしています。
ほかの家族はいません。
わたしがここに来た時からそうであり、いまもそれは変わりません。
ほかの家庭とは、少し違っているのかもしれませんが、わたしは機械なので、あまり詳しく聞いても良く分からないでしょう。
ただ、わたしに分かることは、ミツオも祖父母も毎日楽しく暮らしている、ということだけです。
万葉の里で、みんないつも笑顔で暮らしていました。
近くの家には、ミツオと同年代の子供はいませんでした。
ミツオの友達は、宇陀の自然とわたしだけです。
家のそばに流れる川には、たくさんの魚がいました。
魚もミツオの友達です。
たまにトンビがミツオに話しかけてきました。
最初は気にもとめなかったミツオですが、何度か話しかけられているうちに、トンビもミツオの友達になりました。
縁側で祖母がお茶を淹れました。
近くの茶畑で採れた、とても香りの良いお茶です。
祖父が湯呑みに鼻を近づけ、香りを楽しんでから、美味しそうに飲みました。
ミツオも祖父と同じようにお茶の匂いを嗅ぎ、湯呑みに口をつけ、ひとくち飲みました。
しかし、祖父のように、美味しそうな表情にはなりませんでした。
苦そうに顔をしかめているミツオを見て、祖父母は顔を見合わせて笑いました。
その笑いにつられて、ミツオも笑ってしまいました。
はるか高い空の上で、トンビも笑っていました。
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