エスとオー

ケイ・ナック

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二人との出会い

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高校二年の時、オレはいつも学校帰りに馴染なじみの喫茶店に寄っていた。

その日も友達と喫茶店でしゃべっていると、ひとりの男がふらりとオレたちのテーブルに近づいてきた。

そして、「よう、久しぶり!」と言って、オレの友達に話しかけた。

友達は「よう、江州田やんけ! 久しぶりやのう」と言い、
「こいつ、中学校のツレやねん」と、オレに紹介してくれた。

その時の江州田は、ジージャンにジーンズというラフな、というか、ちょっとダサい服装だった。

しかし、し目がちな顔からは、親しみやすい一面ものぞかせていた。

オレは直感的に、こいつとはすぐに親しくなる、と感じた。

そして、その直感通り、一ヶ月後には、江州田の家に遊びに行っていた。

江州田はその時、ヤマハGT50という、小さなトレールバイクに乗っていた。




江州田の家の前。

「こいつはミニトレっていう愛称あいしょうなんや。ちっちゃいけど、けっこうパワーあるで」
と、江州田はGT50のことをオレに教えてくれた。

「これは二代目のミニトレで、モノサスっていうサスペンションが付いたモデルなんや。どや?かっこええやろ」
と江州田は夢中に話していた。

オレはその頃、友達のホンダ・カブを借りて、たまに乗っていたくらいなので、他のバイクはあまり良く知らなかった。

人見知りが激しく、伏し目がちの江州田だけど、バイクの話をしている時は、まったくその傾向が見られなかった。

「おまえも何かバイクをうたらどうや? 一緒に走れへんか?」
と江州田が言ったので、
「ああ、近いうちにスクーターでも買おうと思ってるんや」
とオレは答えた。

その時、江州田の母親が自転車で帰ってきた。

そして、江州田をにらみながら、
「もうすぐ御飯やで」と言った。

江州田は、それまでのキラキラした目ではなく、少し暗い表情で
「ああ、わかった」と言った。




高校三年になると、オレはバイトを始めた。

友達に紹介されたうどん屋の出前持ちだった。

そのうどん屋で同じようにバイトしていたのが王崎だった。

王崎はオレよりも体が大きく、がっちりしていたので、重いものも平気で持っていた。

オレは細くて、筋力もなかったので、最初は配達にとても苦労していたけど、王崎がいろいろと要領ようりょうを教えてくれた。

王崎は誰とでも親しくなれる社交性を持っていて、オレもすぐに仲良くなった。


王崎と江州田が親しくなるのも早かった。

江州田の家に王崎を連れて行くと、人見知りの江州田ともすぐに話がはずんだ。

オレたちは、週末は必ず一緒に遊んでいた。

そして、高校を卒業してからも三人で頻繁ひんぱんに会うようになっていった。





高校三年の時に買ったタクトと、江州田のミニトレで、あちこち良く走りに行った。

時には奈良の山を越え、そして時には神戸の海まで走った。

江州田はメカに強かったので、バイクのことをいろいろと教えてもらった。


王崎が一緒の時は、王崎のゴルフに乗って、三人で良くドライブをした。

ドライブ中には、いつも江州田がダビングしてきた洋楽を聴いた。

オレはその頃、あまり洋楽は知らなかったが、江州田の影響で、少しずつ洋楽が好きになっていった。


話のつきないオレたちは、毎週あてもなく、洋楽を聴きながら、深夜のドライブにきょうじていた。


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