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はじけた恋の泡
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王崎の不安をよそに、オレらはしょっちゅう会っていた。
当然、恋人としての仲も深まっていった。
オレの部屋には、ミユキの服が増えていった。
週に一度は、オレの部屋に泊まっていたからだ。
ミユキがオレの部屋に持ち込む物は、服だけではなかった。
ある日、どこかで買ってきた小さなサボテンを窓際に置いた。
それはとても小さくて、直径三センチほどの、丸いサボテンだった。
ミユキはそれをいつも眺めていた。
まるで、自分の分身か何かのように。
最初は、あまり気に止めなかったけど、そのうちオレも、そのサボテンが可愛いらしくなってきた。
オレは一生懸命働いた。
毎日が充実していた。
相変わらず、ミユキとは意見がぶつかった。
良くけんかもした。
しかし、よけいに愛は深まっていくようだった。
ミユキのいない生活は、もう想像できないようになっていた。
空が曇り、風が強く吹いたある日の午後、ドアをノックされたので出てみると、ふたりの中年男が立っていた。
よれよれの安物スーツを着て、鋭い目付きで、こちらを睨んでいた。
どう見ても、セールスマンには見えなかった。
その日は前日からミユキが泊まっていた。
柄の悪そうな中年男のひとりが、
「ミユキは来ているよな」と笑顔で言った。
優しい声音が怖かった。
この人たちは、何なのだろう。
ミユキとどんな関係があるのだろう。
しかし、オレは怖くて何も言えなかった。
そんな異様な空気を察したミユキが戸口に出てきた。
「あんたら何しに来たん? ここ調べたんか?」と言った。
オレは、
「あ、あの、ミユキ、この人たちは?」と言うのが精一杯だった。
ミユキは着ている服を整えて、
「ちょっと待ってて。あとで説明するから」と言って、ふたりの男と出て行った。
これは、どういうことなんだ。
ミユキはいったいどうなるのだろう。
オレはすぐに王崎に連絡した。
王崎は、
「詳しいことはユキが説明する」
と言ったので、急いで王崎の家に行った。
タクトを飛ばして行くと、すでにユキも来ていた。
彼女の話はこうだった。
ユキの遊び仲間のひとりが、年下の女の子を連れてきた。
何度か一緒に遊んでいるうちに仲良くなった。
それがミユキだった。
しかし、ミユキはどんな女の子なのか、ユキは良く知らなかった。
ミユキの素性を良く知らないまま、オレに紹介してしまったということだった。
実はミユキは家出をしていた。
そして、彼女の家は、普通の家庭ではなかった。
反社会的な職業の家庭だった。
それが分かった時には、もうオレたちは恋人になっていた。
「ごめん、中村くん」
ユキはオレに謝った。
でも、ユキを責めても仕方がない。
そのあと、どうやって帰ったのか、オレは覚えていない。
これまでの楽しかった時間が消えていくのだ。
おそらく、もうオレたちは会えないのだと思った。
そして、その時のオレの確信どおり、二度とミユキに会うことはなかった。
当然、恋人としての仲も深まっていった。
オレの部屋には、ミユキの服が増えていった。
週に一度は、オレの部屋に泊まっていたからだ。
ミユキがオレの部屋に持ち込む物は、服だけではなかった。
ある日、どこかで買ってきた小さなサボテンを窓際に置いた。
それはとても小さくて、直径三センチほどの、丸いサボテンだった。
ミユキはそれをいつも眺めていた。
まるで、自分の分身か何かのように。
最初は、あまり気に止めなかったけど、そのうちオレも、そのサボテンが可愛いらしくなってきた。
オレは一生懸命働いた。
毎日が充実していた。
相変わらず、ミユキとは意見がぶつかった。
良くけんかもした。
しかし、よけいに愛は深まっていくようだった。
ミユキのいない生活は、もう想像できないようになっていた。
空が曇り、風が強く吹いたある日の午後、ドアをノックされたので出てみると、ふたりの中年男が立っていた。
よれよれの安物スーツを着て、鋭い目付きで、こちらを睨んでいた。
どう見ても、セールスマンには見えなかった。
その日は前日からミユキが泊まっていた。
柄の悪そうな中年男のひとりが、
「ミユキは来ているよな」と笑顔で言った。
優しい声音が怖かった。
この人たちは、何なのだろう。
ミユキとどんな関係があるのだろう。
しかし、オレは怖くて何も言えなかった。
そんな異様な空気を察したミユキが戸口に出てきた。
「あんたら何しに来たん? ここ調べたんか?」と言った。
オレは、
「あ、あの、ミユキ、この人たちは?」と言うのが精一杯だった。
ミユキは着ている服を整えて、
「ちょっと待ってて。あとで説明するから」と言って、ふたりの男と出て行った。
これは、どういうことなんだ。
ミユキはいったいどうなるのだろう。
オレはすぐに王崎に連絡した。
王崎は、
「詳しいことはユキが説明する」
と言ったので、急いで王崎の家に行った。
タクトを飛ばして行くと、すでにユキも来ていた。
彼女の話はこうだった。
ユキの遊び仲間のひとりが、年下の女の子を連れてきた。
何度か一緒に遊んでいるうちに仲良くなった。
それがミユキだった。
しかし、ミユキはどんな女の子なのか、ユキは良く知らなかった。
ミユキの素性を良く知らないまま、オレに紹介してしまったということだった。
実はミユキは家出をしていた。
そして、彼女の家は、普通の家庭ではなかった。
反社会的な職業の家庭だった。
それが分かった時には、もうオレたちは恋人になっていた。
「ごめん、中村くん」
ユキはオレに謝った。
でも、ユキを責めても仕方がない。
そのあと、どうやって帰ったのか、オレは覚えていない。
これまでの楽しかった時間が消えていくのだ。
おそらく、もうオレたちは会えないのだと思った。
そして、その時のオレの確信どおり、二度とミユキに会うことはなかった。
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