DUEL [デュエル]

ケイ・ナック

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リーダー

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目の前を高級セダンのパトカーが通過した。

静かに、そして優雅ゆうがに走り去って行った。

「あれが最新のパトロールカーなのか。ポリスの連中は相当そうとうリッチなんだな」

「そりゃそうだろう。政府と有力企業にくっついていれば、何だって手に入るさ」

いつまでっても青信号にならない横断歩道の前で、数人のウォーカーが話していた。

「こんな世の中、間違っているよな。なぜオレたちだけがしいたげられるんだ。ちくしょう!」
と、ひとりのウォーカーがき捨てるように言った。

「まぁ、そうなげくな。リーダーを信じていればいい。 リーダーはいつか、この世界をひっくり返すつもりだからな」

「それはどんな作戦なんだ?」

「首をる、としか聞いていない。 どういう意味なのか良く知らないが、まぁ、いずれわかるだろうよ」

横断歩道の信号が青に変わり、とぼとぼとウォーカーたちは歩き出した。






町外れの酒場、奥のテーブルで手紙を読んでいる男がいた。

バーテンが、ウォッカの入ったグラスを男のテーブルに置いた。

ひととおり読み終えると、男の目がキラリと光った。

「よし、作戦を実行する日が決まった」
と言って、ウォッカをのどに流しこみ、ふうーっと息を吐いた。

バーテンは不敵ふてきな笑みを浮かべてテーブルから離れて行った。



手紙には、自動車企業がもよおすパーティーの日付と、開催場所が書かれてあった。

差出人さしだしにんは不明であった。


男はグラスを置き、手紙をバッグに入れた。

そして代わりに小さな熊のぬいぐるみを取り出した。

男はしばらく無言で、そのぬいぐるみを見つめていた。





次の日、自動車企業が開催するパーティー会場を二人の男が見つめていた。

「リーダーが言った場所はここだな。 この敷地に入るには、あのゲートしかなさそうだな」

「ということは、ここに来るやつはみんな、この前の道路を通るわけだ」

厳重に警備された会場には、部外者は入れない。

ターゲットを射止いとめるには、この前の道路しかなさそうである。

ひとりのウォーカーが、ショルダーバッグにひそませたかくしカメラで、あたりを撮っていた。


「それにしても、リーダーはパーティーの情報など、どこから手に入れているんだ?」

「さぁ、オレにはわからない。おそらく企業かポリスの内部に情報源があるんじゃないか」


会場前の道路は一本道となっていて、ふだんは車の往来は少なそうだった。


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