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対決
しおりを挟む「今日もまた轢いちまったぜ」と車から降りてきた男は言った。
「車が汚れて仕方ねぇよ」と言いながら、電子タバコを投げ捨てた。
ほかの男がこう言った。
「やつらは命を賭けてるバカ野郎さ」
「ふん、頭がイカれてんだよ」
どうして、こんな交通ルールになったのか。
それは、歩行者の信号無視があとをたたず、事故が起きても歩行者は責任を取らなくて良かったからだ。
それに、たとえ運転者がルールを守っていても、轢いてしまうと運転者が責任を取らされていた。
業を煮やした運転者と、保険会社がルール変更を国に訴えた。
そして、とうとう、交通ルールが変更された。
『信号無視の歩行者は轢いても構わない』ことになった。
それにより、歩行者側(ウォーカー)と、車側(ドライバー)の戦いが始まった。
「パパ、ウォーカーは死にたいの?」
ホリデイの昼下がり、公園で親子が遊んでいた。
十歳くらいの女の子が父親と話をしていた。
「マリー、死にたい人間などおりゃせんよ」
「じゃあなぜ、パパの車に飛びこんでくるの?」
「あいつらはバカ野郎なのさ、マリー」
「そうなの? ふーん」
「マリーにはまだ分からんさ」
「わたしが大人になって、車を運転したら、パパのようにやってもいいの?」
「あぁ、そうだよ、マリー。パパのように轢き殺していいんだよ」
「分かったわパパ、愛してる」
ホリデイの昼下がり、平和な時間が流れていた。
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