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~指名手配白豚聖女 メリル編~

8.国を滅ぼしてでも、メリルは護るから

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「白豚聖女を捕えに行った王子が王宮の前で伸びてただと!!?」



皇帝陛下の側近のフィール・セルデンは怒りを隠しきれず、報告してきた部下に大声を上げていた。


「はい。かなりボロボロの状態で…。そ…それも…、記憶を全て消されているようで…何も覚えていないようです。ただ酷く怯えていまして─…」

「くそ、使えない男だ。早く生贄を捧げなければいけないと言うのに─…!!!」


フィール・セルデンは拳を壁に打ち付けた。

早く…
早くしないと…この国が滅んでしまう─…



「最終手段だ。あの者を呼べ─…」



そう余裕のない様子で命令したのであった──



◆◆◆




クロさんがディロス・マーメルに何か魔法をかけて情報を聞きだし、記憶を全部消してからロブ・ロードの様に魔法で何処かへ転移させていた。

クロさんが聞きだした情報では、ディロス・マーメルはセヴォン帝国皇帝に命令され、私を攫うべく動いていたようだ。

詳細は知らされず、駒として使われていたみたいで、情報はそれ以上得られなかった。


「メリルのことは綺麗さっぱり忘れてもらったから。」


そう微笑むクロさんは、少し怖かった──。



『生贄』とは一体何なんだろうか─…。

セヴォン帝国皇帝が動いているということは…
危険はまだまだ続くのだろうか─…


「メリル、大丈夫だよ。国を滅ぼしてでも、メリルは護るから」


そう満面の笑顔で言ってくるクロさんに、少し恐怖を覚える。
クロさんならやりかねない──


「く、クロさん…なるべく…平和にお願いします」

「ふふ。メリルのことになると手加減できないからなぁ」


魔力が有り余っているクロさんが本気を出したら…本当にこの国滅びるんじゃ…
怖い想像をしてしまう。


「私も!クロさんを護ります!これでも、聖女ですから!」


瘴気も食せる食い意地張った聖女ですけどね!!
もし…クロさんが暴走しても、私が絶対に止めて見せます!!


「ふふ。頼りにしてるよ」


そう言ってクロさんは優しく微笑んだ──。


◆◆◆




「ふーん…。『成り損ない』がね、幸せになれると思ってるのかな…。思い知らせてあげなきゃね──」




水晶に移る黒猫と少女の姿を見ながら、暗闇で男が不気味に笑う──




「それにしても…瘴気を食らう白豚聖女か…。面白いねぇ…。是非遊んでみたいなぁ…─」




男の手元には

宮廷からの依頼書が乱暴に置かれていた──



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