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第124話「親友の真の姿」
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場所は地上の東京都。時刻は午前にもかかわらず、地上を照らす太陽の光は姿を消して、真夜中のような暗さだった。宇宙に太陽がなくなったこの世界の地球には永遠の暗闇だけが残されいる。
そんな暗闇の中で、東京湾に面した海運で用いられるコンテナや自動車などの機械が大量に放置されているところに楓の姿はあった。
楓は一つの倉庫の前で足を止めた。その倉庫だけははまるで楓が入ってくることを予測していたかのように扉が開いており、他の倉庫は閉じている。その扉の向こうにいる人物を楓はずっと感じてきた匂いで確信していた。
その倉庫に入る前に、内ポケットからルーカスからもらった拳銃を取り出してから、両手で構え腰を低くして一歩一歩慎重に歩を進める。外は真っ暗で倉庫の中も扉の前にある明かりを除けばその周辺を照らす光は一切ない。ゆえに、倉庫の中もまるで奈落のように真っ暗だった。
楓は倉庫内に積んである荷物や機械の陰に隠れながら中を捜索する。そして、匂いをたどりながら慎重に目標に近づいていく。やがて、その匂いは強くなった。
楓は暗闇の空間に向けて銃を突きつけた。その動きには一切の迷いも感じさせないほど素早かった。しかし、銃を向けたはずの楓の額に冷たい金属の円筒形の感触を感じた。
暗闇に包まれていた倉庫は、電気がついて今の状況があらわになる。
ALPHAのカラーである白のスーツに身を包み、片目は朱色の瞳、そしてもう片方はルイと同じように澄んだ青い瞳をしている。ツーブロックで短髪のスポーティーな髪型はALPHAに行っても変わらない。
「引けよ、引き金。お前は死なないんだから引き金を引いたらルイもいないし、幹部クラスも全員死んだ。ALPHAはもう壊滅だろ」
竜太は楓が突きつけた銃を自ら掴んで自分の額に押し当てた。そして、楓が竜太に銃を突きつけている手が震えていることも知っていた。だから、しっかりと狙いが定まるように銃を掴んでいた。
「ほら、これでもう外さないだろ。撃てって、まだ俺は不死身じゃないんだぜ、止めるなら今だけだ」
しばらく待ったが楓は引き金を引くことができず、竜太は楓の銃を取り上げて放り投げた。
「つくづく甘いよなお前は。今、俺を殺せば不死身がもう一体増えることもなかった。そうやってお前は大事なもんを失っていくんだ」
竜太はリボルバー式の拳銃のハンマーを引き、なんの躊躇いもなく楓の額を撃ち抜く。静まり返った倉庫内で大きな破裂音だけが響き渡っている。
「俺は何も迷わないぜ、楓」
白い肌に風穴のように空いた穴と口から赤い液体がこぼれ落ちる。そして、竜太は悠然と銃口から立ち上がる煙を吹いた。
視界が歪んで思わず地面に膝をついた楓に目線を合わせるように竜太はしゃがみ込んで、問いかける。
「死なないとわかってて脳をぶち抜かれる気分はどんな感じなんだ? 死への恐怖を克服した先には何があんだよ」
竜太はスーツの内ポケットから小さな小瓶を取り出した。その中には赤い液体が入っており、神原の実験装置で神原が実験室の混乱に乗じてこっそり抽出した不死身化する薬だった。
「どうせくるだろうと思っててよ。記念すべき日をお前の前でやろうと思ってたんだよ」
「それだけはやっちゃダメだ! それだけは…」
楓が言いかけた時、竜太はその声が鬱陶しそうに楓を蹴り飛ばし、楓は転がってコンテナに体を打ち付けた。
「俺が不死身の吸血鬼になったらALPHAの思う壺だってか?」
竜太は小瓶の蓋を開けて一気に中に入った液体を飲み干そうと傾けた時、その小瓶目掛けて弾丸が飛んできて、竜太はそれを腕で受け止めた。赤い弾丸の威力が強く、腕が関節の可動域とは逆に曲がっている。
「そういえば神原が言ってたな。混血が力に目覚めただとか、どうりでルイをやれるわけだ。鬼化していなければ腕ごと薬も消し飛んでたかもな」
鬼化した竜太の姿はルイにそっくりだった。額から出た2本の角は鬼としての禍々しさよりも芸術のような美しさを思わせる。そして、瞳は白目の部分が黒く染まり、ビー玉のような朱色と澄んだ青がよく映えている。
竜太はその小瓶に入った液体を改めて全て飲み干し、瓶を片手で握りつぶした。
「俺の頭を吹っ飛ばせば止められたんだろうが、それができないのがお前なんだよな」
不死身の薬を飲み干した竜太の体は鬼化した時のように身体中に泡が発生して、皮膚がまるでゴムのように伸び縮みして、大きなものではそのまま皮膚の下を弾けて飛び出してきそうなほどで、皮下を何かがうごめいているように思えた。
そして、皮下で起こっていた大きな波はやがて収まり、竜太はそれらを全身で感じ取ったかのように「ほう」と一つ息を吐いた。
「永遠の生とはこんな気分になるんだな、なんでもできるような気がする」
竜太はうちポケットから拳銃を取り出して、自分のこめかみに押し付けた。ここでもなんの躊躇いもなく、すぐに引き金を引いた。
血と脳がコンクリートの床に飛び散って、竜太のこめかみに大きな穴を開けたが、その傷はみるみるうちに修復して、まるで何も起こらなかったかのように元に戻っていく。
竜太は自分が不死身になったことを実感し、満足げに頷いた。
そして、今度は誰もいないコンテナの方へ声をかけた。
「出てこい」
何も聞こえて来なかったが竜太が苛立って今度は声をさらに張って言った。
「おい、いい加減出てこい!」
「は、はい。竜太様」と即答だった。
コンテナの影に隠れて2人のやりとりをこっそり見ていた神原は竜太に急に呼び出されて、飛び上がりそうなほど驚いていた。そして、竜太の元へ腰を低くして「これは、これは」手をこねながらあくまで低姿勢を維持しながら言った。
「つ、ついに、やったのですね。ルイ様と同じで鬼化しても大きな肉体の変化がないことから、鬼化への適合度が高い竜太様なら不死身の吸血鬼として力を最大限に引き出せると思われます。お、大垣みたいな馬鹿とは比べ物になりませんよ」
「大垣さんか。やっぱり、あの人には裏があったんだな」
「し、しかし、素晴らしい完成度です。私が想像していたよりも遥かに適合してらっしゃる」
神原は薬に適合した竜太の姿を見てずっと抑えていたのかついに抑えきれなくなって、急に息を荒くして興奮気味に早口で喋り始めた。
「お、大垣の馬鹿に僕の実験は理解できないんですよ。だらしないALPHAの幹部クラスは全員やられてしまいましたので、ついに不死身化に成功した竜太様こそがALPHAのボスにふさわしいのです。というのも、貴方様こそがALPHAのボスにふさわしいお方だと、ずっと私は思っていたのです。ルイは使えないし、ボスにふさわしい器ではありません。それに比べ竜太様は、元人間にもかかわらずここまで混血に適合し、鬼化も何百年もかけてようやく適合したルイとは違って一回で鬼化も不死身も適合した竜太様は…」
「喋りすぎだ、神原」
「へ?」
神原は自分の額が撃ち抜かれていることにようやく気がついた。耳を指すような弾けるような音が倉庫に響いて、神原の頭を貫通した弾丸は後ろのコンテナにも穴を開けた。竜太は打ち終えた銃をそのままスーツの内ポケットへしまった。
額から勢いよく飛び出す血に神原は大慌てし始めた。
「や、やだぁ。死にたくない死にたくない! 薬、薬どこ!! ああ、この元クソ人間が適合したら細胞を移植して僕も不死身になろうと思ったのにクソクソクソ! 夜な夜な、お前が眠っている間や落とした髪の毛を使って細胞を僕の体に移植してた馴染ませてたんだぞ! 僕の努力を返せ! 実験体の分際で! 人間の分際で、この僕にこんなことしていいと思ってるのか! この裏切り者! 覚えてろよ! 地獄へ行って呪ってやる!! キッー!!!」
怒りのあまり茹タコみたいに顔を真っ赤にした神原は、その言葉を最後に電池が切れたかのようにその場に倒れて動かなくなって、そして今度はイカみたいに真っ白になった。
「俺は不死身の力さえ手に入れられればそれでいい。ALPHAの目的なんぞに興味はない。人がヴァンパイアを全滅させるのか、ヴァンパイアが人を全滅させるのかなんてどうだっていいのさ。だって、不死身の力を手に入れれば結果がどっちになろうと関係ないだろ? なあ、楓」
竜太は楓に同意を求めようとしていた。額の穴がようやく治癒して、動けるようなった楓は激しい頭痛でよろつく足で立ち上がり、竜太を睨みつける。
「竜太、ごめん。僕は竜太をこれから酷い目に合わせないといけないかもしれない」
楓の真っ赤に染まる瞳が竜太を睨みつける。
「覚悟してよ」
そんな暗闇の中で、東京湾に面した海運で用いられるコンテナや自動車などの機械が大量に放置されているところに楓の姿はあった。
楓は一つの倉庫の前で足を止めた。その倉庫だけははまるで楓が入ってくることを予測していたかのように扉が開いており、他の倉庫は閉じている。その扉の向こうにいる人物を楓はずっと感じてきた匂いで確信していた。
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ALPHAのカラーである白のスーツに身を包み、片目は朱色の瞳、そしてもう片方はルイと同じように澄んだ青い瞳をしている。ツーブロックで短髪のスポーティーな髪型はALPHAに行っても変わらない。
「引けよ、引き金。お前は死なないんだから引き金を引いたらルイもいないし、幹部クラスも全員死んだ。ALPHAはもう壊滅だろ」
竜太は楓が突きつけた銃を自ら掴んで自分の額に押し当てた。そして、楓が竜太に銃を突きつけている手が震えていることも知っていた。だから、しっかりと狙いが定まるように銃を掴んでいた。
「ほら、これでもう外さないだろ。撃てって、まだ俺は不死身じゃないんだぜ、止めるなら今だけだ」
しばらく待ったが楓は引き金を引くことができず、竜太は楓の銃を取り上げて放り投げた。
「つくづく甘いよなお前は。今、俺を殺せば不死身がもう一体増えることもなかった。そうやってお前は大事なもんを失っていくんだ」
竜太はリボルバー式の拳銃のハンマーを引き、なんの躊躇いもなく楓の額を撃ち抜く。静まり返った倉庫内で大きな破裂音だけが響き渡っている。
「俺は何も迷わないぜ、楓」
白い肌に風穴のように空いた穴と口から赤い液体がこぼれ落ちる。そして、竜太は悠然と銃口から立ち上がる煙を吹いた。
視界が歪んで思わず地面に膝をついた楓に目線を合わせるように竜太はしゃがみ込んで、問いかける。
「死なないとわかってて脳をぶち抜かれる気分はどんな感じなんだ? 死への恐怖を克服した先には何があんだよ」
竜太はスーツの内ポケットから小さな小瓶を取り出した。その中には赤い液体が入っており、神原の実験装置で神原が実験室の混乱に乗じてこっそり抽出した不死身化する薬だった。
「どうせくるだろうと思っててよ。記念すべき日をお前の前でやろうと思ってたんだよ」
「それだけはやっちゃダメだ! それだけは…」
楓が言いかけた時、竜太はその声が鬱陶しそうに楓を蹴り飛ばし、楓は転がってコンテナに体を打ち付けた。
「俺が不死身の吸血鬼になったらALPHAの思う壺だってか?」
竜太は小瓶の蓋を開けて一気に中に入った液体を飲み干そうと傾けた時、その小瓶目掛けて弾丸が飛んできて、竜太はそれを腕で受け止めた。赤い弾丸の威力が強く、腕が関節の可動域とは逆に曲がっている。
「そういえば神原が言ってたな。混血が力に目覚めただとか、どうりでルイをやれるわけだ。鬼化していなければ腕ごと薬も消し飛んでたかもな」
鬼化した竜太の姿はルイにそっくりだった。額から出た2本の角は鬼としての禍々しさよりも芸術のような美しさを思わせる。そして、瞳は白目の部分が黒く染まり、ビー玉のような朱色と澄んだ青がよく映えている。
竜太はその小瓶に入った液体を改めて全て飲み干し、瓶を片手で握りつぶした。
「俺の頭を吹っ飛ばせば止められたんだろうが、それができないのがお前なんだよな」
不死身の薬を飲み干した竜太の体は鬼化した時のように身体中に泡が発生して、皮膚がまるでゴムのように伸び縮みして、大きなものではそのまま皮膚の下を弾けて飛び出してきそうなほどで、皮下を何かがうごめいているように思えた。
そして、皮下で起こっていた大きな波はやがて収まり、竜太はそれらを全身で感じ取ったかのように「ほう」と一つ息を吐いた。
「永遠の生とはこんな気分になるんだな、なんでもできるような気がする」
竜太はうちポケットから拳銃を取り出して、自分のこめかみに押し付けた。ここでもなんの躊躇いもなく、すぐに引き金を引いた。
血と脳がコンクリートの床に飛び散って、竜太のこめかみに大きな穴を開けたが、その傷はみるみるうちに修復して、まるで何も起こらなかったかのように元に戻っていく。
竜太は自分が不死身になったことを実感し、満足げに頷いた。
そして、今度は誰もいないコンテナの方へ声をかけた。
「出てこい」
何も聞こえて来なかったが竜太が苛立って今度は声をさらに張って言った。
「おい、いい加減出てこい!」
「は、はい。竜太様」と即答だった。
コンテナの影に隠れて2人のやりとりをこっそり見ていた神原は竜太に急に呼び出されて、飛び上がりそうなほど驚いていた。そして、竜太の元へ腰を低くして「これは、これは」手をこねながらあくまで低姿勢を維持しながら言った。
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「喋りすぎだ、神原」
「へ?」
神原は自分の額が撃ち抜かれていることにようやく気がついた。耳を指すような弾けるような音が倉庫に響いて、神原の頭を貫通した弾丸は後ろのコンテナにも穴を開けた。竜太は打ち終えた銃をそのままスーツの内ポケットへしまった。
額から勢いよく飛び出す血に神原は大慌てし始めた。
「や、やだぁ。死にたくない死にたくない! 薬、薬どこ!! ああ、この元クソ人間が適合したら細胞を移植して僕も不死身になろうと思ったのにクソクソクソ! 夜な夜な、お前が眠っている間や落とした髪の毛を使って細胞を僕の体に移植してた馴染ませてたんだぞ! 僕の努力を返せ! 実験体の分際で! 人間の分際で、この僕にこんなことしていいと思ってるのか! この裏切り者! 覚えてろよ! 地獄へ行って呪ってやる!! キッー!!!」
怒りのあまり茹タコみたいに顔を真っ赤にした神原は、その言葉を最後に電池が切れたかのようにその場に倒れて動かなくなって、そして今度はイカみたいに真っ白になった。
「俺は不死身の力さえ手に入れられればそれでいい。ALPHAの目的なんぞに興味はない。人がヴァンパイアを全滅させるのか、ヴァンパイアが人を全滅させるのかなんてどうだっていいのさ。だって、不死身の力を手に入れれば結果がどっちになろうと関係ないだろ? なあ、楓」
竜太は楓に同意を求めようとしていた。額の穴がようやく治癒して、動けるようなった楓は激しい頭痛でよろつく足で立ち上がり、竜太を睨みつける。
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