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第119話「欲求」
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大垣の体に注がれる液体をモラドの人間そして、ヴァンパイアは呆然と見ているしかなかった。
ある程度の量の液体が大垣の体に注入され、また実験室が一瞬の間静まり返った。すると、大垣の体が水が沸騰するように皮膚の下が上下し始めた。
「これか! これが不死身の力なのか。すばらしい、身体中に活力が漲ってくる! これでこの世界は私のものだ!」
大垣の体はみるみるうちに膨れ上がり、それは人間の体の限界を超えていた。体はゴムみたいに膨れ上がり、身長は3m近くにまで膨れ上がって体は真っ赤に染まり始めて上半身が体の3分の2を占めるくらい大きくなり筋肉も増幅していた。まるで、その姿は赤鬼のようだった。
額からは鬼化の証拠か角が2本生えて、牙が口から剥き出してその姿はまさに鬼そのものだった。
天を見上げて大垣は自分が得た強大な力と生に感激した。
「ああ、素晴らしい。不死身の力はこんなにも心地よいものなのか…」
快楽に浸る大垣は何かを言いかけようとしたが充電が切れたように急に何も話さなくなり、首がガックリと項垂れた。
「ヒャッ! ヒャハヒャヒャハハハハ。ヒャッハー!」
急に高笑いし始めたと思うと、大きな体はカエルのように高々と跳躍し、実験室の天井を突き破って外へ出た。
モラド全員も一瞬何が起こったのか分からず天井に空いた大穴を見上げた。そして、状況を飲み込んだ後、鬼竜は汗を滲ませた。
「まずい! 大垣さんを助けないと」
「助けるてどうやって?」とモラドの誰かが言った。
「分からないけど。あれは普通じゃないだろ!? とにかく、上へ行こう」
一同は急いで地下にある実験室から地上へ出て大垣の姿を探した。辺りを見回してみると3mほどある大垣の巨体はすぐに見つけることができた。
今、鬼竜たちがいる場所は東京都の山奥。そして、大垣が向かっていたのは都心。新宿区の方へ向かっていった。その走り方はまるで野生のゴリラのように時には二足歩行で、時には四足歩行でとにかく前へ前へと駆けていった。そして、大垣が向かう先は、多くの戦争で戦っているALPHA、モラドの戦士や避難している人間がいる。
モラドの全員が大垣を追った…。がしかし、鬼竜たちが追いついた時はすでに遅かった。
巨大化した大垣は両手に人間を抱えて、その生き血を酒でも豪快飲むように貪り食っていた。
「大垣さん、何やってるんですか!」
鬼竜が止めに入ったが、その太い腕で鬼竜の体は人形みたいに軽々と弾き飛ばされ、ゴミ置き場に体を投げ飛ばされた。
「***! ********!」
大垣はもはや日本語すら話せないほど別人と化してしまっている。今は食欲を満たすだけの殺戮兵器で自我がなくなり本来の冷静沈着な大垣の姿はどこにもない。
鬼竜を含めモラドのヴァンパイアは何度も大垣を助け出そうと、巨大化した大垣に立ち向かっていったが誰も大垣に傷一つつけることはできずに投げ飛ばされていく。
大垣はまるでバッタみたいに巨体を跳ねて新宿の街をあちこちに飛び回り、人間を捕まえては血を貪り食っていた。時には、人間とヴァンパイアを間違えてヴァンパイア血も貪り食っていたが大垣は何も気にしていないように思えた。
「全く見苦しい。不死身について、たいして研究できていないくせに己の欲求に身を任せて、血を摂取するからこんな醜悪な化け物に成り下がるんだろうね」
大垣と鬼竜たちの先にいたのは、青く澄んだ瞳に絹糸のようなしなやかな銀髪。そして、中性的な顔立ちをした青年。それは、ALPHAのボス、ルイだった。
「おいおい、なんでルイがここにいるんだよ。京骸さんと美波ちゃんはどうした?」
「彼らは今頃、僕らの城で気持ちよく眠ってるんじゃないのかな? 十分に楽しませてもらったよ。この僕が鬼化してまで相手したんだ、モラドにもなかなかの腕の立つ奴がいるんだね、驚いた」
ここにいる力のあるものは、ルイと鬼竜、そして暴走して何を起こすか分からない大垣。この3人が同一の戦場にいる。
そして、ルイは大垣を処分しようとしたが、それを鬼竜は止めた。鋭い爪が鬼竜の刀とぶつかり合う。
「なぜ止める? 彼は力に溺れるあまりこんな醜い姿にまで落ちた。挙げ句の果てに君たちを裏切った」
「でも、大垣さんは俺たちをここまで導いてくれた親父みたいなもんだ。どんな姿になっても、お前の手で殺させはしねぇよ」
「ほう、じゃあ僕とやり合うつもりかな? そんなおもちゃみたいな刀で」
マンホールが吹き飛んで、その砂煙と一緒に2人のヴァンパイアが姿を現した。
「そのおもちゃを使ってたやつを殺せなかったお前の武器はおもちゃ以下か?」
ルイは声のする方を向いた。そこにいたのは、傷だらけの京骸と美波だった。その2人を木並と山本は肩を組んで、ようやく歩けると言った様子だった。
「へえ、生きてたんだ。あれだけ切り刻んでやったのに頑丈だね」
鬼竜はその間に京骸たちの元へ向かい4人の無事を確認した。
「山本くんと木並ちゃんはどうして?」
「木並?」とルイは誰にも聞こえないくらいの声で呟く。
「地下通路で倒れているところを見つけたんです。服装からしてもしかしてと思って。京骸さんたちに鬼竜さんの居場所を教えてもらいました」と山本は話した。
そして、鬼竜が巨大化した怪物の正体を4人に伝える。
「鬼竜、とんでもねぇことになってんじゃん。つっても、ゆっくり話してる暇もないんだろうけどな。時間がない、やるぞ」
「了解です。京骸さん」
京骸と美波は山本、木並の肩から手を話し、再び刀をルイに向けた。
「続きをしようや。ルイ。お前に大垣さんは殺させないし、俺たちはお前を殺す」
ルイは大垣を指差して嘲笑を浮かべる。
「いいよ。君たちもかわいそうだね、組織のトップがバカだと責任を取るのは君らの仕事だ」
5対1。モラドの上位クラス3人を含めてもルイは悠々と攻撃を交わしている。戦いなんてどうでも良いと、ルイは正面の相手よりも1人の少女を見た。
「木並ってことは、彼の子供かな。僕らは先に鬼化の薬が人間に効かないことを木並優豪とかいう人間で実験済みだ。彼は素晴らしい肉体の持ち主だったけど、鬼化の副作用に耐えきれなくて破裂して、肉片になっちゃったな」
ルイは舌を出して口元を舐めた。
「人間にしては素晴らしい肉体だったんだけどねぇ。もったいなかった」
「そんな。お父さんが実験体にされてたなんて。よくも…よくも!」
木並は手に持ったオレンジに輝く刀、陽鉄泉を再び握り直し、ルイに向かって行く。
「やめろ! 木並、お前が戦って勝てる相手じゃないんだ」
奇声を上げながらルイに斬りかかろうと走る木並。そして、ルイに向かって刀を振り下ろすが、ルイは鬼竜や京骸を蹴り飛ばし、木並に向かう。木並の刀はルイの爪でまるで爪楊枝でも弾いてるかの如く、簡単に真っ二つに切断される。
地面に虚しく、光を失った金属が落ちる音が響く。
「そんな…私、お父さんの敵も取れないの…」
簡単に切断された刃先を見つめ、木並は力が抜け落ちたように地面に腰をつけてしまった。ルイが近づいてくる。恐怖のあまり木並は一歩も動けない。
そして、ルイが爪を振りかざした時、汚れ一つ着いていなかった、ルイの白いシャツに赤い模様を盛大に色付けた。
「山本さん…」
「敵の前で、座り込む。優豪さんはお前にそう教えてきたのか?」
木並は正面に立つ山本を見上げながら涙ながら、首を振って否定する。
「木並、俺がお前や鷹橋の見本になれたかどうかは分からない。お前らにとって俺はどうしようもない上司だったかもしれない。ただな、俺はお前たちが俺の部下でよかったって心の底から思ってんだ」
声を出そうとしても声が出ない。木並は、口を開いては閉じてを繰り返して何か言葉を発そうとしているがそれが叶わなかった。木並の手が、山本の肩に触れた時、山本は言った。
「だからさ、絶対死ぬなよ。お前らの未来は俺らにとって宝なんだ。だから、そんな簡単に失おうとしないでくれ」
山本は木並に柔らかい笑顔を見せる、そして、木並の視線の先ではルイが爪の先端を舌で舐めている。
「言い残す言葉はそれでいい?」
そして、木並の視界から山本の姿はいなくなった。
呆然とする木並は駆けつけた美波に抱き抱えられてルイのそばから離れた。
ルイと京骸たちが戦っている時、地上の実験室では神原や烏丸たち、そして楓やタイガたちが眠らされて静まり返っていた。その中で、楓は朦朧とする意識の中である人物に出会っていた。
「おい、起きろ」
ある程度の量の液体が大垣の体に注入され、また実験室が一瞬の間静まり返った。すると、大垣の体が水が沸騰するように皮膚の下が上下し始めた。
「これか! これが不死身の力なのか。すばらしい、身体中に活力が漲ってくる! これでこの世界は私のものだ!」
大垣の体はみるみるうちに膨れ上がり、それは人間の体の限界を超えていた。体はゴムみたいに膨れ上がり、身長は3m近くにまで膨れ上がって体は真っ赤に染まり始めて上半身が体の3分の2を占めるくらい大きくなり筋肉も増幅していた。まるで、その姿は赤鬼のようだった。
額からは鬼化の証拠か角が2本生えて、牙が口から剥き出してその姿はまさに鬼そのものだった。
天を見上げて大垣は自分が得た強大な力と生に感激した。
「ああ、素晴らしい。不死身の力はこんなにも心地よいものなのか…」
快楽に浸る大垣は何かを言いかけようとしたが充電が切れたように急に何も話さなくなり、首がガックリと項垂れた。
「ヒャッ! ヒャハヒャヒャハハハハ。ヒャッハー!」
急に高笑いし始めたと思うと、大きな体はカエルのように高々と跳躍し、実験室の天井を突き破って外へ出た。
モラド全員も一瞬何が起こったのか分からず天井に空いた大穴を見上げた。そして、状況を飲み込んだ後、鬼竜は汗を滲ませた。
「まずい! 大垣さんを助けないと」
「助けるてどうやって?」とモラドの誰かが言った。
「分からないけど。あれは普通じゃないだろ!? とにかく、上へ行こう」
一同は急いで地下にある実験室から地上へ出て大垣の姿を探した。辺りを見回してみると3mほどある大垣の巨体はすぐに見つけることができた。
今、鬼竜たちがいる場所は東京都の山奥。そして、大垣が向かっていたのは都心。新宿区の方へ向かっていった。その走り方はまるで野生のゴリラのように時には二足歩行で、時には四足歩行でとにかく前へ前へと駆けていった。そして、大垣が向かう先は、多くの戦争で戦っているALPHA、モラドの戦士や避難している人間がいる。
モラドの全員が大垣を追った…。がしかし、鬼竜たちが追いついた時はすでに遅かった。
巨大化した大垣は両手に人間を抱えて、その生き血を酒でも豪快飲むように貪り食っていた。
「大垣さん、何やってるんですか!」
鬼竜が止めに入ったが、その太い腕で鬼竜の体は人形みたいに軽々と弾き飛ばされ、ゴミ置き場に体を投げ飛ばされた。
「***! ********!」
大垣はもはや日本語すら話せないほど別人と化してしまっている。今は食欲を満たすだけの殺戮兵器で自我がなくなり本来の冷静沈着な大垣の姿はどこにもない。
鬼竜を含めモラドのヴァンパイアは何度も大垣を助け出そうと、巨大化した大垣に立ち向かっていったが誰も大垣に傷一つつけることはできずに投げ飛ばされていく。
大垣はまるでバッタみたいに巨体を跳ねて新宿の街をあちこちに飛び回り、人間を捕まえては血を貪り食っていた。時には、人間とヴァンパイアを間違えてヴァンパイア血も貪り食っていたが大垣は何も気にしていないように思えた。
「全く見苦しい。不死身について、たいして研究できていないくせに己の欲求に身を任せて、血を摂取するからこんな醜悪な化け物に成り下がるんだろうね」
大垣と鬼竜たちの先にいたのは、青く澄んだ瞳に絹糸のようなしなやかな銀髪。そして、中性的な顔立ちをした青年。それは、ALPHAのボス、ルイだった。
「おいおい、なんでルイがここにいるんだよ。京骸さんと美波ちゃんはどうした?」
「彼らは今頃、僕らの城で気持ちよく眠ってるんじゃないのかな? 十分に楽しませてもらったよ。この僕が鬼化してまで相手したんだ、モラドにもなかなかの腕の立つ奴がいるんだね、驚いた」
ここにいる力のあるものは、ルイと鬼竜、そして暴走して何を起こすか分からない大垣。この3人が同一の戦場にいる。
そして、ルイは大垣を処分しようとしたが、それを鬼竜は止めた。鋭い爪が鬼竜の刀とぶつかり合う。
「なぜ止める? 彼は力に溺れるあまりこんな醜い姿にまで落ちた。挙げ句の果てに君たちを裏切った」
「でも、大垣さんは俺たちをここまで導いてくれた親父みたいなもんだ。どんな姿になっても、お前の手で殺させはしねぇよ」
「ほう、じゃあ僕とやり合うつもりかな? そんなおもちゃみたいな刀で」
マンホールが吹き飛んで、その砂煙と一緒に2人のヴァンパイアが姿を現した。
「そのおもちゃを使ってたやつを殺せなかったお前の武器はおもちゃ以下か?」
ルイは声のする方を向いた。そこにいたのは、傷だらけの京骸と美波だった。その2人を木並と山本は肩を組んで、ようやく歩けると言った様子だった。
「へえ、生きてたんだ。あれだけ切り刻んでやったのに頑丈だね」
鬼竜はその間に京骸たちの元へ向かい4人の無事を確認した。
「山本くんと木並ちゃんはどうして?」
「木並?」とルイは誰にも聞こえないくらいの声で呟く。
「地下通路で倒れているところを見つけたんです。服装からしてもしかしてと思って。京骸さんたちに鬼竜さんの居場所を教えてもらいました」と山本は話した。
そして、鬼竜が巨大化した怪物の正体を4人に伝える。
「鬼竜、とんでもねぇことになってんじゃん。つっても、ゆっくり話してる暇もないんだろうけどな。時間がない、やるぞ」
「了解です。京骸さん」
京骸と美波は山本、木並の肩から手を話し、再び刀をルイに向けた。
「続きをしようや。ルイ。お前に大垣さんは殺させないし、俺たちはお前を殺す」
ルイは大垣を指差して嘲笑を浮かべる。
「いいよ。君たちもかわいそうだね、組織のトップがバカだと責任を取るのは君らの仕事だ」
5対1。モラドの上位クラス3人を含めてもルイは悠々と攻撃を交わしている。戦いなんてどうでも良いと、ルイは正面の相手よりも1人の少女を見た。
「木並ってことは、彼の子供かな。僕らは先に鬼化の薬が人間に効かないことを木並優豪とかいう人間で実験済みだ。彼は素晴らしい肉体の持ち主だったけど、鬼化の副作用に耐えきれなくて破裂して、肉片になっちゃったな」
ルイは舌を出して口元を舐めた。
「人間にしては素晴らしい肉体だったんだけどねぇ。もったいなかった」
「そんな。お父さんが実験体にされてたなんて。よくも…よくも!」
木並は手に持ったオレンジに輝く刀、陽鉄泉を再び握り直し、ルイに向かって行く。
「やめろ! 木並、お前が戦って勝てる相手じゃないんだ」
奇声を上げながらルイに斬りかかろうと走る木並。そして、ルイに向かって刀を振り下ろすが、ルイは鬼竜や京骸を蹴り飛ばし、木並に向かう。木並の刀はルイの爪でまるで爪楊枝でも弾いてるかの如く、簡単に真っ二つに切断される。
地面に虚しく、光を失った金属が落ちる音が響く。
「そんな…私、お父さんの敵も取れないの…」
簡単に切断された刃先を見つめ、木並は力が抜け落ちたように地面に腰をつけてしまった。ルイが近づいてくる。恐怖のあまり木並は一歩も動けない。
そして、ルイが爪を振りかざした時、汚れ一つ着いていなかった、ルイの白いシャツに赤い模様を盛大に色付けた。
「山本さん…」
「敵の前で、座り込む。優豪さんはお前にそう教えてきたのか?」
木並は正面に立つ山本を見上げながら涙ながら、首を振って否定する。
「木並、俺がお前や鷹橋の見本になれたかどうかは分からない。お前らにとって俺はどうしようもない上司だったかもしれない。ただな、俺はお前たちが俺の部下でよかったって心の底から思ってんだ」
声を出そうとしても声が出ない。木並は、口を開いては閉じてを繰り返して何か言葉を発そうとしているがそれが叶わなかった。木並の手が、山本の肩に触れた時、山本は言った。
「だからさ、絶対死ぬなよ。お前らの未来は俺らにとって宝なんだ。だから、そんな簡単に失おうとしないでくれ」
山本は木並に柔らかい笑顔を見せる、そして、木並の視線の先ではルイが爪の先端を舌で舐めている。
「言い残す言葉はそれでいい?」
そして、木並の視界から山本の姿はいなくなった。
呆然とする木並は駆けつけた美波に抱き抱えられてルイのそばから離れた。
ルイと京骸たちが戦っている時、地上の実験室では神原や烏丸たち、そして楓やタイガたちが眠らされて静まり返っていた。その中で、楓は朦朧とする意識の中である人物に出会っていた。
「おい、起きろ」
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