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第31話「過去との対話②」
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いつ以来か小学生の頃の僕が目の前に現れた。
「やあ、久しぶりだね」
一応、年上である僕から話しかける。
「顔つきが変わったね」
「変わったかもね」
「なにか楽しそうだね」
小学生の僕は訝しむような表情を浮かべながら僕に言葉を投げつける。
「うーん…楽しいかもね」
僕はしばらく思案してから彼に答えた。
「高校へ上がっても井上たちから嫌がらせを受けてるのに?」
「そうだね。この前も顔に大痣を作ったよ」
僕は思い出したくないけど苦笑いを浮かべて彼に答える。
「今までと変わらないじゃん。何が楽しいの?」
また僕はしばらく思案する。楽しい理由…。
「自分の居場所を見つけたんだ」
「一人でいることじゃないの?」
「そうだね。僕はずっと、一人でいるつもりだったよ。それが僕にとって正しい選択だと思ってた。でも、みんなと話していて初めて悪い人ばかりじゃないって気づけた」
「それはどんな人?」
僕は彼らの顔を思い浮かべてもう一度思案する。
「うーん。一人は大雑把な性格の男子ともう一人はかっこいい男子、ちょっと天然の女子と僕に似てちょっと不器用だけど頭良い女子だよ」
「君にそんなに友だちが出来たんだね」
「僕もびっくりしてるよ」
「でも、彼らのせいで謹慎になっちゃったね」
「うん」
「そのせいで自分の事をすべて話さなくちゃいけなくなった。ずっと隠してたのに」
「うん」
「彼らに自分を知られたね」
「うん」
「そのせいで、彼らと関わりを持たなくちゃいけなくなった」
「うん」
「嫌じゃないの?」
あっけにとられたような小学生の僕は僕を覗き見るように問いかけた。
「どうかな…嫌…だったかもね」
「嫌だった?」
「今までの僕は嫌だったかもしれない。でも、彼らと話していて感じるんだ。僕はここにいて良いんだって。誰かとつながることで自分がここに存在して良いんだって思えたんだ」
「じゃあ、彼らを内側に入れることが出来たの?」
「うん。おかげで暗闇が一気に眩しくなったし、騒がしくなったよ」
すると、小学生の僕は「へぇ」となにか疑わしいような目で僕を見つめている。
「じゃあ、もう一度訊いていい?」
「いいよ」
「今、幸せ?」
「幸せ…だよ」
断定して良いのか迷ったけど今の気持ちを正直に回答した。
「また楽しそうに笑うんだね」
小学生の僕はまたなにか疑うような目で僕を覗き込むように見ていた。
「僕には君の言う幸せが想像できないな」
小学生の僕はしばらく床を見つめて考え込んで僕の方を向き直った。
「これからも君のことを見ていていいかな?」
「もちろんだよ」
「僕が見えなかったものを見せてくれる?」
「多分…」
「いや、見せてるよ」
「やあ、久しぶりだね」
一応、年上である僕から話しかける。
「顔つきが変わったね」
「変わったかもね」
「なにか楽しそうだね」
小学生の僕は訝しむような表情を浮かべながら僕に言葉を投げつける。
「うーん…楽しいかもね」
僕はしばらく思案してから彼に答えた。
「高校へ上がっても井上たちから嫌がらせを受けてるのに?」
「そうだね。この前も顔に大痣を作ったよ」
僕は思い出したくないけど苦笑いを浮かべて彼に答える。
「今までと変わらないじゃん。何が楽しいの?」
また僕はしばらく思案する。楽しい理由…。
「自分の居場所を見つけたんだ」
「一人でいることじゃないの?」
「そうだね。僕はずっと、一人でいるつもりだったよ。それが僕にとって正しい選択だと思ってた。でも、みんなと話していて初めて悪い人ばかりじゃないって気づけた」
「それはどんな人?」
僕は彼らの顔を思い浮かべてもう一度思案する。
「うーん。一人は大雑把な性格の男子ともう一人はかっこいい男子、ちょっと天然の女子と僕に似てちょっと不器用だけど頭良い女子だよ」
「君にそんなに友だちが出来たんだね」
「僕もびっくりしてるよ」
「でも、彼らのせいで謹慎になっちゃったね」
「うん」
「そのせいで自分の事をすべて話さなくちゃいけなくなった。ずっと隠してたのに」
「うん」
「彼らに自分を知られたね」
「うん」
「そのせいで、彼らと関わりを持たなくちゃいけなくなった」
「うん」
「嫌じゃないの?」
あっけにとられたような小学生の僕は僕を覗き見るように問いかけた。
「どうかな…嫌…だったかもね」
「嫌だった?」
「今までの僕は嫌だったかもしれない。でも、彼らと話していて感じるんだ。僕はここにいて良いんだって。誰かとつながることで自分がここに存在して良いんだって思えたんだ」
「じゃあ、彼らを内側に入れることが出来たの?」
「うん。おかげで暗闇が一気に眩しくなったし、騒がしくなったよ」
すると、小学生の僕は「へぇ」となにか疑わしいような目で僕を見つめている。
「じゃあ、もう一度訊いていい?」
「いいよ」
「今、幸せ?」
「幸せ…だよ」
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「また楽しそうに笑うんだね」
小学生の僕はまたなにか疑うような目で僕を覗き込むように見ていた。
「僕には君の言う幸せが想像できないな」
小学生の僕はしばらく床を見つめて考え込んで僕の方を向き直った。
「これからも君のことを見ていていいかな?」
「もちろんだよ」
「僕が見えなかったものを見せてくれる?」
「多分…」
「いや、見せてるよ」
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