ホンモノの自分へ

真冬

文字の大きさ
上 下
13 / 39

第12話「中間テスト」

しおりを挟む


 朝のHRいつも通り福原は生徒よりも遅刻して教室にノソノソと入ってくる。
「じゃあ、HRを始める」
 この時まで教室中はいつも通りの平和な日常の風景だった。
「俺からの連絡はそうだな…明日、中間テストがあるから皆、気を引き締めるように。いいか、お前えらもう受験は始まってるからな。ちゃんと準備しとけよ」
 急な連絡と煽りを混ぜて福原はそう言った。
 普通の教師はテスト2週間前や1週間前にテストの存在を全体に報告するのだろう。少なくとも僕が今まで出会ってきた教師は皆そうだった。
 しかし、福原は違った。彼はテスト前日になって初めて中間テストの存在を明らかにしたのだ。
「そいじゃ、解散」
 いつも通り、福原がそう言い残して教室を去った後、クラスの反応は大きく分けて2つに分かれた。1つ目はは教師に言われなくとも自分で中間テストの日程を把握して自主的に準備を進めているもの。2つ目はテストの存在など頭の片隅にも存在しておらずテストの自体を忘れていたものだ。
 僕の左隣の席から驚きのあまり絞り出したような声が聞こえた。声の主はテストの存在を今思い出した後者の人間が言った。
「え?え?テストあるの?」
 僕ら5人の中では言うまでもないが、成川だけ後者だった。
 僕はテストの存在を1ヶ月前から知っていた。というか、学校行事はすぐに把握しておくことで人前に出るような自分が目立ってしまうイベントなのかどうかといった不安要素をあらかじめ把握しておくためでもある。
 テストもそのうちの一つだ。点数が低すぎて悪目立ちすような自体は避けたかった。
 宮橋は学級委員長ということもあって学校の行事は把握している、明島も同様だが彼女は2年から予備校に通い始めたらしいのでテストは知っていて当然だ。大場も絶望的な現実を突きつけられ意気消沈している成川を慰めている姿から状況は推測できる。
 
「理奈大丈夫?また赤点取ったらまずくない?」
「赤点?明島、成川の成績知ってるの?」
 成川を慰めていた大場が明島の方を向いた。
「理奈、言っていい?」
 覚悟を決めたように成川が頷く。
「実は理奈1年生の時、学年順位ほとんど最下位だったの。だから殆ど赤点なのよ」
 3人は沈黙した。成川の涙を啜る音だけが虚しく聞こえる。
「そっか。じゃあ、今年でお別れかもな」
 宮橋はトドメを指すようにそう呟いた。
「やめてよ。良太~」
「うちの学校は留年制度はないから大丈夫だよ」
 流石に可哀想だったので僕は本当のことを言った。
 倉西高校はテストで赤点を取っても留年はしないが、放課後や長期休暇にその科目の補修が行われる。でも、大学進学ではテストの点数を考慮して推薦で進学する者もいるためテストの点数は高いに越したことはないけど。
「よかったぁ」
 成川は全開の笑顔を見せ安堵している様子だった。もし留年制度があったら2年生に何故上がれたのか考えなかったのだろうか?という疑問を感じたが余計なことは言わないようにした。
「でも、1日でどうにかできるの?初日は確か数学と英語、日本史でしょ」
 大場は当然そう疑問に思っていた。
 それを聞いた成川は涙を拭いて僕らに懇願した。
「みなさん!今日、私に勉強教えてください!」
「私、予備校あるけどそれまでだったら全然教えるよ」
 明島は即座に快諾していた。
「僕は帰りが遅くならなければそれまで付き合うよ」
「あー。俺、今日は部活なんだよな。しかも、全体練習だから外せないんだよ」
 宮橋が悔しがっていたが、彼の表情から本当に勉強会に参加したかったということが伺える。
 大場は宮橋の発言を聞いて疑問に思った様子だった。
「テスト前日に部活があるの?」
「顧問があれだからテスト前とか関係なしで部活あるんだよ。そのせいでサッカー部のテストの成績はだんだん落ちてるらしい」
「なんかあの顧問だったら納得できるかも」
「だろ」
「樹はどうする?」
 話の流れ的にも大場が僕を誘った。
 断る理由もなかったし、僕も承諾した。
「みんな…ホントに…ありがとう」
成川は一度泣き止んでいたが再び大粒の涙をこぼしていた。

・・・・
 帰りのHRが終わった。
 宮橋は下に着ていたのかいつの間にか部活の練習着になって「お前ら頑張れよ!」と僕らに言い残し、部活の仲間と教室を後にして練習場へ向かっていった。

 4人が取り残され「じゃあ行こっか」と明島を先頭に僕らは教室を後にした。
 よく考えれば4人で行動するのは初めてかもしれない。いつもは殆ど宮橋が喋っていてグループ内をまとめているけど、なんとなく新鮮な光景だった。

 駅前の以前宮橋と2人で話したファミレスに来た。このファミレスは駅前にあるファミレスでは一番価格が安く、24時間営業であることから高校生の中では長時間滞在するには人気のファミレスだ。
 到着したのは時刻は午後4時を回ったあたりだった。
「私、予備校の授業が6時からあるからそれまでだったらなんでも質問して」
「僕もわかる範囲だったらなんでも聞いて。ね、樹」
「うん。僕もできるところだったら教えるよ」
「ありがとう!みんな、早速なんだけど…」
 成川はいつもは軽そうなバックだが、今日は、はち切れんばかりにテキストを詰め込んできていた。普段から相当置き勉していたのだろう。
 その中から明日に行われる数学、英語、日本史のテキストを取り出した。
「これ全部わからないんだよね」
 てへへとでも言いそうな笑顔で絶望的な現実を突きつけてくる。
 問題集を見てみると授業中に解いて答えあわせしたはずのところも真っ白いままで、まるで新品のテキストを僕らに見せた。
「う、うん。頑張ろっか」
 初め、気合十分だった明島も自信を失っている様子だった。

 全員で話し合った結果、各々自分の勉強もあるので3教科の中でそれぞれの得意教科を教えることにした。
 明島が英語、大場が日本史、僕が数学だ。

 課題テストの時は成川は勉強することを決意していたが、その時の決意は数秒と持たなかった。 
 でも、今回は流石に切羽詰まったこの状況では成川は集中していたのだろう。
「ふ~。めっちゃ勉強した。ちょっと休憩」
 大場は時計を確認した。
「まだ、30分しか経ってないよ」
「えーもう疲れたぁ」
 成川は試合放棄したかのようにシャーペンを机に置いて天井を見上げていた。
「いいんじゃない?ちょっと休憩しましょうよ」
「明島がそう言うならいいけど…」

「ねぇ、周と樹ってどのぐらいの成績なの?」
 休憩になった途端、成川は興味津々に僕らに勉強以外の質問をしてきた。
「僕は学年順位だと中の上くらいかな?社会はそこそこ得意だからたまに上位に入ってるけど」
 大場も勉強は比較的できる方らしい。それと大場の成績は初めて聞いた気がする。
「僕は真ん中くらいかな」
 正直、倉西高校はそこそこの進学校ではあるが僕は中学生の時に不登校だったこともあって通知表の成績が悪く、その分のハンデもあって自分より少しレベルを下げた高校を選んだ。
 しかし、当時は学力は高い方だったけど入学後は成績への執着がなったことや高校入学以来、1年ぶりの学校生活で人間関係に疲れていたこともあってあまり勉強する気が起きず、順位は真ん中付近で停滞していた。
「なんか樹、頭良さそうなのに意外!」
「それはメガネしてるからじゃないかな?」
「あ、確かに!そうかもしれない」
 メガネ=頭が良いと思い込んでいそうだから確認してみたらその通りだった。
 成川と話していると本当に裏表のない純粋な人だと改めて思う。
「樹って1年生の時、舞香と同じクラスだったんでしょ?舞香の成績知ってる?」
 成川はまるで自分の成績を自慢するかのように腕を組んで僕に質問してきた。
「うん、知ってるよ」
「なんで知ってるの?」
「成績上位の人は掲示板に張り出されてるからね」
「え?そうなの知らなかった」
 うちの学校では成績上位者は学校で掲示板に名前と順位が張り出される。僕は縁のない事だが、何度か見たことがある。その時に、明島の名前が5位くらいに入っていたことを記憶している。それに、そこに掲示されている名前が明島しか名前を知らなかったので余計に覚えているというのもあるけど。
「明島さん頭いいからね」
 僕がそう言うと明島は謙遜して否定しているようだった。

 すると、明島は時計を確認して「もう行かなきゃ」と予備校の授業があるため帰った。
 明島がいなくなり、僕、大場、成川の3人になった。この3人もまた新鮮な組み合わせだ。
 明島がいなくなって「私も頑張ろ!」と気合を入れ直した成川がまた勉強に再び取り組み始めた。
 その後、明島が抜けた分の英語は僕と大場でなんとか知恵を出し合って教えていた。

 成川も気合を見せ時刻は8時を過ぎた頃だった。
 
 ブーッブーッ。

「周スマホ鳴ってるよ」

「うん」
「もしもし、うん…うん…わかった」

「ごめん、僕そろそろ帰らないと…」
「そっか。もう8時だったんだ。周ありがとうね」
「2人とも頑張って」
「オツカレー」
「うん。お疲れ様」
 そう言うと大場も席を立ち店から出て行った。

「樹は時間大丈夫なの?」
「僕は家がすぐそこだから大丈夫だよ」
「ああ確かにそうだったね」
 2人の気まずさから会話を繋いだのだろうか?以前、成川から僕の住んでいる場所を聞いてきたが忘れているようだった。でも、成川だったら本当に忘れていそうだ。

「もう、そろそろいいかなぁ」
「もう終わったの?」
「まだ半分しか終わってない…」
 ゴールまでの長すぎる道のりに成川は気落ちしている様子だった。
 自力でやって時間内に終わりそうもなく見ていて流石に可哀想に思えたので僕は成川につきっきりで教えることにした。
「僕が教えるからできる限り一緒に進めていこうよ」
「うん。でも、樹の勉強は良いの?」
「まあなんとかなると思う」
 テストの成績なんてどうでも良い。親との約束のために卒業さえできれば僕はそれで満足なので別にそれ以上の何かを求めることはしない。


「樹、これどうやって解くの?」
 成川が僕に見せてきた問題を見てみると僕の苦手な英語長文の和訳だった。
 普段聞き流してきた英語の授業のうろ覚えな記憶と中学生の時に勉強した内容を組み合わせてなんとか考える。
「ちょっと待ってね、うーん…ごめんちょっと考えさせて…」
 明島だったら難なく解いていただろう。大場の援護もなく2人がいなくなった重みを今ひしひしと感じている。

「ここってこう訳すの?」
「それだとこの構文を使ってないから正しい訳じゃないかも…」
「でも、この単語がちょっとわからないんだよな」
「私、単語調べるよ」
「うん、ありがとう」

 2人で必死に単語や文法を調べなんとか回答して一安心していた時だった。

「げっ!こんなのがまだ20ページも続くんだけど」
 成川は先の見えない課題にガックリと項垂れる。
「終わるまで僕も付き合うよ」
 自分がこんな発言をするのに少し驚いているが、ここまで哀れな状況になると流石に放っては置けなかった。

 夜10時を回った時だった
「や、やっと終わった…」
「い、樹。本当にありがとうぉ。私、明日、絶対頑張る」
「終わってよかったよ。明日は頑張ってね」 

 店員さんから夜遅くまでいたため退店を促され僕らは外に出た。
「こんな遅くまで、ほんっとうにありがとう!樹」
 成川は本当に感情豊かな人だ、さっきまで笑っていたと思ったら今度は涙を流している。
「大丈夫だから」
 成川の感情についていけない僕はとりあえず笑顔を作って対応する。笑顔を作っておけば大抵の状況でも相手に合わせられるからだ。

「樹ってやっぱり良いやつなんだね」
「え?」
 人から否定され続けてきた僕には聞き慣れない言葉だったので思わず聞き返した。
「だから、樹って…」
「いや、大丈夫だよ。聞こえてたよ」
 流石に二度も言われると恥ずかしいので成川がもう一度言い切る前に制した。
 その後、成川とは最後にあいさつをして別れた。
 成川はこちらに手を振って駅に吸い込まれるようにして消えていった。

・・・
 中間テストが終わり結果が返された。
 
「成川、結果どうだったんだ?」
 宮橋が赤点回避できたか心配して聞いていた。
「なんと、なんと…」
 一同固唾を呑んで聞いていた。
「4科目赤点回避しました!イェーイ!」
 成川は中間テスト10科目あるうちの4科目の赤点回避をしていた。
 逆に言えば6科目赤点だが、去年、全科目赤点を取った成川にしては大健闘した方だろう。
「やったじゃん理奈!」
 明島は自分のことのように喜んでいる。
 宮橋と大場も成川の戦績を称えている。
 
 すると、4人を置いて離れて見ていた僕の方に明島がやってきた。
「樹君。理奈から聞いたよ。遅くまで勉強見てくれてたんでしょ?」
「うん。そうだね」
「理奈。樹君の事『マジ優男』って感謝してたよ」
「いや、そこまで感謝されることしたわけじゃないよ。テストを受けたのは成川さんだし」
「ううん、そんなことない」
 明島はそう言って首を横に振ってから、はしゃいでいる3人を見つめていた。
 


倉西高校2学年中間テスト結果
天野 樹     197/355
宮橋 良太          6/355
大場 周         105/355
明島 舞香          3/355
成川 理奈      338/355

 

 


 
  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

世界はスキッピー

misuka
ライト文芸
しょーもないけど笑える毎日に生きている

時の舟と風の手跡

ビター
ライト文芸
葛城風は、ブラック企業で心身ともに壊し退職するが、フィアンセとの同棲もうまくいかず婚約を解消する。 住む場を失った風に、祖父が同居を提案する。 かくて100歳の祖父と二人暮らしが始まった。 一見穏やかに見えるが、そうでもない日々。

日当たりの良い借家には、花の精が憑いていました⁉︎

山碕田鶴
ライト文芸
大学生になった河西一郎が入居したボロ借家は、日当たり良好、広い庭、縁側が魅力だが、なぜか庭には黒衣のおかっぱ美少女と作業着姿の爽やかお兄さんたちが居ついていた。彼らを花の精だと説明する大家の孫、二宮誠。銀髪長身で綿毛タンポポのような超絶美形の青年は、花の精が現れた経緯を知っているようだが……。 (表紙絵/山碕田鶴)

アルファポリス収益報告書 初心者の1ヶ月の収入 お小遣い稼ぎ(投稿インセンティブ)スコアの換金&アクセス数を増やす方法 表紙作成について

黒川蓮
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスさんで素人が投稿を始めて約2ヶ月。書いたらいくら稼げたか?24hポイントと獲得したスコアの換金方法について。アルファポリスを利用しようか迷っている方の参考になればと思い書いてみました。その後1ヶ月経過、実践してみてアクセスが増えたこと、やると増えそうなことの予想も書いています。ついでに、小説家になるためという話や表紙作成方法も書いてみましたm(__)m

さくらの花はおわりとはじまりをつげる花

かぜかおる
ライト文芸
年が明けてしばらくしてから学校に行かなくなった私 春休みが終わっても学校に通わない私は祖父母の家に向かうバスに乗っていた。 窓から見える景色の中に気になるものを見つけた私はとっさにバスを降りてその場所に向かった。 その場所で出会ったのは一人の女の子 その子と過ごす時間は・・・ 第3回ライト文芸大賞エントリーしています。 もしよろしければ投票お願いいたします。

無限大の魅力を持つ君と一歩ずつ歩み寄った僕

ぽよ
ライト文芸
登場人物 男: 山口健(やまぐちたける) 女:高島瑠璃子(たかしまるりこ)

夏休みの夕闇~刑務所編~

苫都千珠(とまとちず)
ライト文芸
殺人を犯して死刑を待つ22歳の元大学生、灰谷ヤミ。 時空を超えて世界を救う、魔法使いの火置ユウ。 運命のいたずらによって「刑務所の独房」で出会った二人。 二人はお互いの人生について、思想について、死生観について会話をしながら少しずつ距離を縮めていく。 しかし刑務所を管理する「カミサマ」の存在が、二人の運命を思わぬ方向へと導いて……。 なぜヤミは殺人を犯したのか? なぜユウはこの独房にやってきたのか? 謎の刑務所を管理する「カミサマ」の思惑とは? 二人の長い長い夏休みが始まろうとしていた……。 <登場人物> 灰谷ヤミ(22) 死刑囚。夕闇色の髪、金色に見える瞳を持ち、長身で細身の体型。大学2年生のときに殺人を犯し、死刑を言い渡される。 「悲劇的な人生」の彼は、10歳のときからずっと自分だけの神様を信じて生きてきた。いつか神様の元で神様に愛されることが彼の夢。 物腰穏やかで素直、思慮深い性格だが、一つのものを信じ通す異常な執着心を垣間見せる。 好きなものは、海と空と猫と本。嫌いなものは、うわべだけの会話と考えなしに話す人。 火置ユウ(21) 黒くウエーブしたセミロングの髪、宇宙色の瞳、やや小柄な魔法使い。「時空の魔女」として異なる時空を行き来しながら、崩壊しそうな世界を直す仕事をしている。 11歳の時に時空の渦に巻き込まれて魔法使いになってからというもの、あらゆる世界を旅しながら魔法の腕を磨いてきた。 個人主義者でプライドが高い。感受性が高いところが強みでもあり、弱みでもある。 好きなものは、パンとチーズと魔法と見たことのない景色。嫌いなものは、全体主義と多数決。 カミサマ ヤミが囚われている刑務所を管理する謎の人物。 2メートルもあろうかというほどの長身に長い手足。ひょろっとした体型。顔は若く見えるが、髪もヒゲも真っ白。ヒゲは豊かで、いわゆる『神様っぽい』白づくめの装束に身を包む。 見ている人を不安にさせるアンバランスな出で立ち。 ※重複投稿作品です ※外部URLでも投稿しています。お好きな方で御覧ください。

「月下のキス~あなたの未来と引き換えに、私の胸にバラを穿つ」

水ぎわ
ライト文芸
『私の未来を売りはらう――あなたの未来を守るためなら、後悔は、ない』 井上清春(33歳)は、高級ホテルに勤務する、美貌のホテルマン。幼なじみの岡本佐江(31歳)への長い片思いを実らせ、ようやくあまい婚約期間を過ごす。 だが、清春には佐江にどうしても言えない秘密があった。それは清春の両親が残した、大きすぎる心の傷。 ある夜、決心した清春は、佐江を自分が育ったコルヌイエホテル内のスイートルームへ連れてゆく。 佐江の愛情に支えられて、少しずつ幼いころの悲惨な記憶を語りはじめる。 いっぽう、佐江はあやしいスイートルームの中で、亡くなったはずの清春の母・井上万里子の姿を目にするが……。 複雑な家庭で育った美貌のホテルマン、清春が立ち直る瞬間と、彼を守るために戦う佐江。 未来を失ってでも、だいじな男を守り抜く大人の女性の強さが浮かび上がります。 「美貌のホテルマンの切ない片思い純愛ストーリー 『キスを待つ頬骨シリーズ』 18」 表紙は、西フロイデ様💛

処理中です...