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幸せ
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ーーい。るい……ルイ!
待って、今すごく眠たいの。まだ起きたくない!
頭の中で、聞き覚えのある誰かの声がする。
「ルイ、起きてるんでしょう? そろそろ起きないと、何するか分からないよ?」
え、何するの? でも、本当に眠たいのよ。
そっと頭を撫でられた感触があって、なんだか落ち着く。そのまま撫でてほしいなぁ。そう思って、私はその手にすりっと頭を擦り付けた。
「……分かった。ルイは私の忍耐力を試しているんだね? だけどごめん、私は忍耐力には自信がないんだ」
え、何言ってるの?
頭を撫でていた手がゆっくりと私の頬を撫でる。ちょっとエロい撫でかたに、眉がよった。
そういえば、私ってなんで寝てるんだっけ?
ふわふわと夢と現実の境を行き来していた私の意識が急速に現実へと引き寄せられる。パチっと目が開いた。
「あ、起きたね」
ふにふにと唇をいじる不埒な手の持ち主が目の前に現れる。
「あれ? アル⁇」
「うん」
「ライードの王太子見なかった?」
「ん?」
にっこりと微笑んだアルの表情がピシッと固まるのを私は目にした。あ、コイツなんかやったな? って直感で思ったよね。うん。
「助けてくれたの?」
「……ルイを攫うなんていい神経していると思わない?」
疑問を疑問で返すアル。私はこの現象を見たことがある。それは、助ける+αした時のアルだ。
「ちなみに、何やったかは聞かないほうがいい?」
「いや? 聞いてほしいな」
……やめておこう。私の頭の中の警鐘が警戒アラートを鳴らしている。
「やっぱりやめておく。それよりも、助けてくれてありがとう」
「怖かった?」
「うーん、ちょっとだけ。でも、アルが助けてくれるでしょう? だからそこまで怖くなかったかな」
実は私は商会にいた頃、何度か誘拐された。いずれも国総出の誘拐だったんだけど、全部アルが助けてくれていたのだ。だから今回も信じていた。
「……それ、反則」
「大好きよ、アル」
じわじわと真っ赤になっていくアル。ギュッと私に抱きついてきた。
「私はルイがいなくなったら正気でいられるか怪しい」
少し掠れた声でそう、訴えられれば私の頬もかぁと熱を持つ。肩口に埋められた頭へ、そっと手を伸ばした。今度は私がよしよしと頭を撫でる番。ふわふわのちょっと猫っ毛な金髪は、撫で心地最高。
「私もアルがいなかったら寂しいかなぁ」
「……絶対離さない」
「っ! アル‼︎」
ジュッと首筋に吸いつかれ、いきなりの刺激にビクッと身体が揺れる。そのまま覆い被さられ、両手を上にひと束で纏めて拘束された私は、見てしまった。ギラギラと情欲に濡れる美しい碧眼の瞳を。
「あ、アル? 待って、ゆっくり……ね?」
恐る恐る話しかけるが、美しい獣は凄絶な色気を放つ笑みを浮かべながら私の案を却下した。
「こうなったのはルイのせいだよ。もっと上手に逃げられたはずだよね? 王太子だからって手加減したんでしょ?」
「……ナンノコトデショウ?」
たしかに、私は相手は王太子だからって気持ちがあって油断した。
「私以外がルイを抱くなんて、嫉妬で狂いそうだよ」
誤解を招く言い方をするなぁ‼︎ 心の中で全力で叫ぶ。多分、アルは"if(もしも)"の事が言いたかったんだと思う。
たしかにアルが助けに来なかったらそうなっていたかもしれない。ゾワッと嫌な寒気が全身を襲う。
「アル!」
ギュッと私はその寒気をどうにかしようと、アルに抱きついた。ツイとアルの顔に笑みが浮かぶ。
「ルイ、愛してる」
「ん、私も」
その日のアルは凄かった。足の間にまだ何か挟まっているような感覚がある。それに足腰がたたず、ベットから出られない。
「自重という言葉はアルの中にはないの?」
「ないよ」
私を膝に乗せ、上機嫌なアルに詰るように問いかける。が、清々しいほどはっきりと言われ、諦めた。
その3週間後、私は妊娠している事が判明した。
「ルイ! よくやった‼︎」
「お待ちください」
ガシッと父が抱きついてこようとするのを、笑顔でアルが止めている。
「ルイは今、大事な時期なので」
そう言って私を抱き上げ、サッサと面会室を出てしまった。
「……あれは父よ」
「知ってるよ」
過保護っぷりも酷くなり、最近の私はよくアルにお姫様抱っこで運ばれている。お医者様は多少は運動したほうがいいと進言されてからは、抱っこで運ぼうとするアルを拒否した。
「ルイが転んだらどうするんだ!」
「転ばないし」
珍しく取り乱すアルをなんとか宥めすかしたのは結構苦労した。生まれてくる子供には、そうはならないようにしっかり教え込みたいと思う。
○○○
後に、イオディア王国に1人の姫が誕生する。父親の美貌と母親の美貌を受け継ぎ、奇跡とも呼ばれる"女神の瞳"を宿す子供はアイと名付けられ可愛がられた。
イオディア王国はアルバルトとアイの2代で最盛期を迎えたとされ、歴史に名を残している。
また、アルバルトの伴侶であったルヴィア妃も素晴らしい働きを遺している。
アルバルト王はルヴィア妃を溺愛しており、幸せそうな2人は国民の憧れの的であったらしい。
○○○
「おかあたま!」
ドンっと足に衝撃が走る。足元を見れば、アイがこちらに花束を差し出していた。
「これ、どーしたの?」
「おとうちゃまといっしょにつちゅった!」
まだ舌が発達しておらず、"作った"をきちんと言えないらしい。正直言ってめちゃくちゃ可愛い。
「そーなの? とても綺麗ね」
「でちょー?」
ドヤッとするアイ。ぷくっと小さな鼻を広げて、腰に手を当てている。
「そんなアイにはご褒美がないとね!」
「きょうはペンギンしゃんがいい!」
サッと靴を脱いで、私の足の上に小さな足を乗せてくる。んっ! と両手を伸ばして私と手を繋ぐのを待っているアイ。キラキラと角度によって色を変える瞳に、金髪。目元は私に似ていて、鼻や唇はアルに似ている。
「じゃあ、ペンギンさん始めるよ?」
「うん!」
アイの乗った足をゆっくりと動かして、前に進む。キャッキャとアイの楽しそうな声が部屋に響いた。
「アイ、またペンギンさんしてもらってるの?」
「うん!」
庭に出ていたアルが、私と一緒に遊んでいる様子を見てにまっと相互を崩す。
「じゃあ、後でお父様が高い高いしてあげよう」
「やったー!」
ヒョイっと私の上から降りたアイが、私とアルに手を伸ばした。
「高い高いじゃないの?」
「おさんぽがいい!」
どうやらアイは私たち2人に遊んでもらいたいらしい。
「じゃあ、お散歩しよっか」
「そうだね」
小さいぷくぷくした手を握り、ゆっくりと部屋の外へ出る。立派に整えられた庭は、色とりどりの花や植物が植えられており美しい。アイが遊んでも大丈夫なように、トゲ付きのものは植えられていない。
「幸せだなぁ」
「私もルイとアイがいて、幸せだよ」
「しあわしぇ?」
キョトンとした顔でこちらを見るアイに、アルと私は顔を見合わせて笑った。
「今のアイの気持ちはどう?」
「んー、ぽかぽかしゅる!」
「「それが幸せだよ」」
ーー終ーー
待って、今すごく眠たいの。まだ起きたくない!
頭の中で、聞き覚えのある誰かの声がする。
「ルイ、起きてるんでしょう? そろそろ起きないと、何するか分からないよ?」
え、何するの? でも、本当に眠たいのよ。
そっと頭を撫でられた感触があって、なんだか落ち着く。そのまま撫でてほしいなぁ。そう思って、私はその手にすりっと頭を擦り付けた。
「……分かった。ルイは私の忍耐力を試しているんだね? だけどごめん、私は忍耐力には自信がないんだ」
え、何言ってるの?
頭を撫でていた手がゆっくりと私の頬を撫でる。ちょっとエロい撫でかたに、眉がよった。
そういえば、私ってなんで寝てるんだっけ?
ふわふわと夢と現実の境を行き来していた私の意識が急速に現実へと引き寄せられる。パチっと目が開いた。
「あ、起きたね」
ふにふにと唇をいじる不埒な手の持ち主が目の前に現れる。
「あれ? アル⁇」
「うん」
「ライードの王太子見なかった?」
「ん?」
にっこりと微笑んだアルの表情がピシッと固まるのを私は目にした。あ、コイツなんかやったな? って直感で思ったよね。うん。
「助けてくれたの?」
「……ルイを攫うなんていい神経していると思わない?」
疑問を疑問で返すアル。私はこの現象を見たことがある。それは、助ける+αした時のアルだ。
「ちなみに、何やったかは聞かないほうがいい?」
「いや? 聞いてほしいな」
……やめておこう。私の頭の中の警鐘が警戒アラートを鳴らしている。
「やっぱりやめておく。それよりも、助けてくれてありがとう」
「怖かった?」
「うーん、ちょっとだけ。でも、アルが助けてくれるでしょう? だからそこまで怖くなかったかな」
実は私は商会にいた頃、何度か誘拐された。いずれも国総出の誘拐だったんだけど、全部アルが助けてくれていたのだ。だから今回も信じていた。
「……それ、反則」
「大好きよ、アル」
じわじわと真っ赤になっていくアル。ギュッと私に抱きついてきた。
「私はルイがいなくなったら正気でいられるか怪しい」
少し掠れた声でそう、訴えられれば私の頬もかぁと熱を持つ。肩口に埋められた頭へ、そっと手を伸ばした。今度は私がよしよしと頭を撫でる番。ふわふわのちょっと猫っ毛な金髪は、撫で心地最高。
「私もアルがいなかったら寂しいかなぁ」
「……絶対離さない」
「っ! アル‼︎」
ジュッと首筋に吸いつかれ、いきなりの刺激にビクッと身体が揺れる。そのまま覆い被さられ、両手を上にひと束で纏めて拘束された私は、見てしまった。ギラギラと情欲に濡れる美しい碧眼の瞳を。
「あ、アル? 待って、ゆっくり……ね?」
恐る恐る話しかけるが、美しい獣は凄絶な色気を放つ笑みを浮かべながら私の案を却下した。
「こうなったのはルイのせいだよ。もっと上手に逃げられたはずだよね? 王太子だからって手加減したんでしょ?」
「……ナンノコトデショウ?」
たしかに、私は相手は王太子だからって気持ちがあって油断した。
「私以外がルイを抱くなんて、嫉妬で狂いそうだよ」
誤解を招く言い方をするなぁ‼︎ 心の中で全力で叫ぶ。多分、アルは"if(もしも)"の事が言いたかったんだと思う。
たしかにアルが助けに来なかったらそうなっていたかもしれない。ゾワッと嫌な寒気が全身を襲う。
「アル!」
ギュッと私はその寒気をどうにかしようと、アルに抱きついた。ツイとアルの顔に笑みが浮かぶ。
「ルイ、愛してる」
「ん、私も」
その日のアルは凄かった。足の間にまだ何か挟まっているような感覚がある。それに足腰がたたず、ベットから出られない。
「自重という言葉はアルの中にはないの?」
「ないよ」
私を膝に乗せ、上機嫌なアルに詰るように問いかける。が、清々しいほどはっきりと言われ、諦めた。
その3週間後、私は妊娠している事が判明した。
「ルイ! よくやった‼︎」
「お待ちください」
ガシッと父が抱きついてこようとするのを、笑顔でアルが止めている。
「ルイは今、大事な時期なので」
そう言って私を抱き上げ、サッサと面会室を出てしまった。
「……あれは父よ」
「知ってるよ」
過保護っぷりも酷くなり、最近の私はよくアルにお姫様抱っこで運ばれている。お医者様は多少は運動したほうがいいと進言されてからは、抱っこで運ぼうとするアルを拒否した。
「ルイが転んだらどうするんだ!」
「転ばないし」
珍しく取り乱すアルをなんとか宥めすかしたのは結構苦労した。生まれてくる子供には、そうはならないようにしっかり教え込みたいと思う。
○○○
後に、イオディア王国に1人の姫が誕生する。父親の美貌と母親の美貌を受け継ぎ、奇跡とも呼ばれる"女神の瞳"を宿す子供はアイと名付けられ可愛がられた。
イオディア王国はアルバルトとアイの2代で最盛期を迎えたとされ、歴史に名を残している。
また、アルバルトの伴侶であったルヴィア妃も素晴らしい働きを遺している。
アルバルト王はルヴィア妃を溺愛しており、幸せそうな2人は国民の憧れの的であったらしい。
○○○
「おかあたま!」
ドンっと足に衝撃が走る。足元を見れば、アイがこちらに花束を差し出していた。
「これ、どーしたの?」
「おとうちゃまといっしょにつちゅった!」
まだ舌が発達しておらず、"作った"をきちんと言えないらしい。正直言ってめちゃくちゃ可愛い。
「そーなの? とても綺麗ね」
「でちょー?」
ドヤッとするアイ。ぷくっと小さな鼻を広げて、腰に手を当てている。
「そんなアイにはご褒美がないとね!」
「きょうはペンギンしゃんがいい!」
サッと靴を脱いで、私の足の上に小さな足を乗せてくる。んっ! と両手を伸ばして私と手を繋ぐのを待っているアイ。キラキラと角度によって色を変える瞳に、金髪。目元は私に似ていて、鼻や唇はアルに似ている。
「じゃあ、ペンギンさん始めるよ?」
「うん!」
アイの乗った足をゆっくりと動かして、前に進む。キャッキャとアイの楽しそうな声が部屋に響いた。
「アイ、またペンギンさんしてもらってるの?」
「うん!」
庭に出ていたアルが、私と一緒に遊んでいる様子を見てにまっと相互を崩す。
「じゃあ、後でお父様が高い高いしてあげよう」
「やったー!」
ヒョイっと私の上から降りたアイが、私とアルに手を伸ばした。
「高い高いじゃないの?」
「おさんぽがいい!」
どうやらアイは私たち2人に遊んでもらいたいらしい。
「じゃあ、お散歩しよっか」
「そうだね」
小さいぷくぷくした手を握り、ゆっくりと部屋の外へ出る。立派に整えられた庭は、色とりどりの花や植物が植えられており美しい。アイが遊んでも大丈夫なように、トゲ付きのものは植えられていない。
「幸せだなぁ」
「私もルイとアイがいて、幸せだよ」
「しあわしぇ?」
キョトンとした顔でこちらを見るアイに、アルと私は顔を見合わせて笑った。
「今のアイの気持ちはどう?」
「んー、ぽかぽかしゅる!」
「「それが幸せだよ」」
ーー終ーー
応援ありがとうございます!
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"まだ 少女 と言ってもおかしくない外見の 少女 "
行動も見た目も少女のなら、強調する必要はないような気がします。
ご指摘ありがとうございます😊
楽しく読ませていただきました。
アル、いいぞ、もっとやれ〜、とか思ってしまいました。うふふ(^^)
感想ありがとうございます!