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本編

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「なっ!?」

「はぁ!?」

「ど、どういう事だ」

 貴族達は、扉から出てきたひとりの女を見てポカンと口を開けていた。

『少し化粧室へ行ってもよろしいですか』

 外へと連れだし、さあアイリーンで遊ぼうとした直後にトイレに行きたいと言われた男たち。しかし、まぁ逃げられるわけではないし、いいかと許して待つこと数分。やっと、扉が開いたと思えば見知らぬ女性がいたのだ。

「お待たせしました」

 まるで人形かと思うほど綺麗に整った顔立ちと、すらりとした手足。加えて、たゆんと揺れる豊満な胸に男達は魅了される。美しく波打つ髪は金髪で、瞳の色はサファイヤを連想させるような美しい色合いをしていた。

 誰だこの女性は!? それがその場にいた男達の共通の心境だった。

「あの? お話しするのではなかったのですか?」

 おい、そうだったっけ? いや、違うが…… 美女から放たれた言葉に困惑し、互いに目線で会話をする。

 しかし、こんな美女と話せる機会などない! そう判断した男達は虐める予定だった豚の事など綺麗さっぱり忘れて「ええ、彼方でお話ししましょう」と言うのだった。

「貴女のお名前は?」

 1人の貴族が問えば、美女は可笑しそうに笑う。

「ふふふ、皆さまご存知のはずですよ」


 「え? お前の知り合い?」「いや、俺は知らない」「じゃあ誰だよ?」

 またもや、男達は互いを探り合うようにして目の前の美女の名を思い出そうとするが、誰1人としてその名を思い出すことができなかった。

「まぁ、お忘れになったの? では、思い出したらまたお話ししましょうね。さようなら」

「え」

「あの」

「あ……」

 サッと立ち上がった美女に、男達から残念そうなため息が漏れる。

「では」

 くるりと優雅に身を翻した美女は、そのまま会場の中へと戻っていったのだった。


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