2 / 5
第一章
おばあちゃんの家
しおりを挟む
リコは今年で大学生になる。その折に、近場から通えるということでおばあちゃんの家に引っ越すことになった。
とはいえ、祖母は既に他界しており1人暮らしと何ら変わりない。
車が着かない山奥に家はあり、自転車で通うことになるそうだ。
リコとしてもまぁ、1人暮らしに夢があったし自転車なら中高と慣れているので問題はなかった。
「うわぁ、すごい」
祖母の家は他県で、あまり行ったことがなかったため記憶が朧げだった。
目の前に広がるのはそこそこの広さのある古民家で、縁側もあり庭だってある。時々、親戚の人が業者さんを呼んでいるらしく庭はとても綺麗に整えられていた。
「畳だ! 囲炉裏もある!」
古いから心配だった家の中も、綺麗に掃除がしてありまるで旅館に来たかのような、そんな雰囲気を醸し出していた。
一通り探検してみたが、不安になりそうな場所はなく、キッチンもコンロになっていてついでに釜もあった。お風呂は五右衛門風呂ではなく、現代風のお風呂。檜で作られているらしく、床は石が嵌め込まれておりやはり旅館に止まっているようなそんな気分になる素晴らしい造りだった。
早く入りたいなぁ、リコがそう思うのも仕方のないくらい立派だった。
そして、もう一つ驚いたのが庭が二つある事。
家の正面の庭とは別に、中に入って反対側に向かった所にもう一つ庭があるのだ。そこはツツジが咲いており、これまた綺麗に整えられている。
庭が二つもあるなんて不思議な造りだなぁとリコは思ったがそこは素晴らしかったので、よしとした。
引っ越しが終わった翌日、リコは不思議な出来事に出会うこととなる。
何か男の人の声が聞こえたと思ったら裏口の扉が開けられた音がしたのだ。
「え?」
「すまない、誰かいないだろうか」
「あ、はい!」
慌てて向かえば、平安時代に出てきそうな着物を着た男性が立っていた。よくよく見れば、裾は汚れていて山の中からやってきたことがわかる。
「あの?」
「道に迷ってしまい。もしよければ水を分けてもらいたい」
「ああ、いいですよ」
頭に乗っている不思議な形の帽子といい、何から何まで昔の人です! と言わんばかりの格好に気を取られながらもリコは頷いた。もしかすると、近くで映画の撮影でもしているのかもしれない。
しばらくすると、もう1人の男性もやってきた。見るからに高貴そうな着物を着ている。リコが出ていけば、顔を赤くしながらビックリしていた。
「そ、そそそそそちは、何という格好を!」
何ともなく、ただズボンとTシャツを着ているだけである。どうやら役になりきっているようだ。リコはそう結論付けて、水を用意すべく台所へ向かった。ついでに、あの格好では家の中は厳しいだろうと思い、縁側へ誘導する。ついでに昨日買っていたお楽しみの水羊羹も出した。
2人とも目を見開いて食べていたのが印象的で、何やら相当美味しかったらしい。「天上の食べ物か?」と呟いている姿に、リコは吹き出しそうになったが黙って耐えた。もう少し欲しそうにしていたが、リコの分がなくなるので断る。しばらく寛いでから男の人たちは帰っていった。
「なんだったんだろう?」
首を捻りながらも、リコは片付けをしていく。この近くで撮影しているなら見に行ってみようかな? リコはそう思ってスマホで調べてみたが、どこにも時代劇の撮影をしているという情報はなかった。
またもし会ったら聞いてみよう。リコはそんなことを心の片隅で思ったのだった。
この後不思議な手紙が送られてくることなどこの時のリコにはつゆも知らない。
とはいえ、祖母は既に他界しており1人暮らしと何ら変わりない。
車が着かない山奥に家はあり、自転車で通うことになるそうだ。
リコとしてもまぁ、1人暮らしに夢があったし自転車なら中高と慣れているので問題はなかった。
「うわぁ、すごい」
祖母の家は他県で、あまり行ったことがなかったため記憶が朧げだった。
目の前に広がるのはそこそこの広さのある古民家で、縁側もあり庭だってある。時々、親戚の人が業者さんを呼んでいるらしく庭はとても綺麗に整えられていた。
「畳だ! 囲炉裏もある!」
古いから心配だった家の中も、綺麗に掃除がしてありまるで旅館に来たかのような、そんな雰囲気を醸し出していた。
一通り探検してみたが、不安になりそうな場所はなく、キッチンもコンロになっていてついでに釜もあった。お風呂は五右衛門風呂ではなく、現代風のお風呂。檜で作られているらしく、床は石が嵌め込まれておりやはり旅館に止まっているようなそんな気分になる素晴らしい造りだった。
早く入りたいなぁ、リコがそう思うのも仕方のないくらい立派だった。
そして、もう一つ驚いたのが庭が二つある事。
家の正面の庭とは別に、中に入って反対側に向かった所にもう一つ庭があるのだ。そこはツツジが咲いており、これまた綺麗に整えられている。
庭が二つもあるなんて不思議な造りだなぁとリコは思ったがそこは素晴らしかったので、よしとした。
引っ越しが終わった翌日、リコは不思議な出来事に出会うこととなる。
何か男の人の声が聞こえたと思ったら裏口の扉が開けられた音がしたのだ。
「え?」
「すまない、誰かいないだろうか」
「あ、はい!」
慌てて向かえば、平安時代に出てきそうな着物を着た男性が立っていた。よくよく見れば、裾は汚れていて山の中からやってきたことがわかる。
「あの?」
「道に迷ってしまい。もしよければ水を分けてもらいたい」
「ああ、いいですよ」
頭に乗っている不思議な形の帽子といい、何から何まで昔の人です! と言わんばかりの格好に気を取られながらもリコは頷いた。もしかすると、近くで映画の撮影でもしているのかもしれない。
しばらくすると、もう1人の男性もやってきた。見るからに高貴そうな着物を着ている。リコが出ていけば、顔を赤くしながらビックリしていた。
「そ、そそそそそちは、何という格好を!」
何ともなく、ただズボンとTシャツを着ているだけである。どうやら役になりきっているようだ。リコはそう結論付けて、水を用意すべく台所へ向かった。ついでに、あの格好では家の中は厳しいだろうと思い、縁側へ誘導する。ついでに昨日買っていたお楽しみの水羊羹も出した。
2人とも目を見開いて食べていたのが印象的で、何やら相当美味しかったらしい。「天上の食べ物か?」と呟いている姿に、リコは吹き出しそうになったが黙って耐えた。もう少し欲しそうにしていたが、リコの分がなくなるので断る。しばらく寛いでから男の人たちは帰っていった。
「なんだったんだろう?」
首を捻りながらも、リコは片付けをしていく。この近くで撮影しているなら見に行ってみようかな? リコはそう思ってスマホで調べてみたが、どこにも時代劇の撮影をしているという情報はなかった。
またもし会ったら聞いてみよう。リコはそんなことを心の片隅で思ったのだった。
この後不思議な手紙が送られてくることなどこの時のリコにはつゆも知らない。
1
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
夜半の月 ~目覚めたら平安時代の姫でした~
赤川エイア
恋愛
目覚めたら、そこは平安時代だった――
見事な長い黒髪に、華やかな着物。
鏡を覗きこめば、平安絵巻物で見た姫君の姿。
雅な世界がそこには広がっていた……
何がどうなっているのか分からない。
でも自分は姫になったらしい?
しかも、貴族の中の貴族、左大臣家の姫君だなんて。
令和の京都にいたはずなのに、なんで平安時代なんかにいるの?
「私」は古典が大好きな一学生だったはずなのに。
* * * * * * * * * * *
現代へ戻る方法を探して主人公が奔走する中、
公達の夜這い、天狗の出現、皇族からの結婚の申し込み……
次から次へとふりかかる問題が新たな出会いを生む、平安王朝風恋愛小説。
※この物語はフィクションです。人物名・作品名などは実在のものとは異なります。
※適宜ルビや注を施した箇所があります。
※恋愛はゆっくりめに進みます。
※更新スピードにつきましては、近況報告に記載の通りとなります。
★「小説家になろう」さんでも連載しております。
★監修/白木蘭様
一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。
甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。
だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。
それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。
後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース…
身体から始まる恋愛模様◎
※タイトル一部変更しました。
姉の代わりでしかない私
下菊みこと
恋愛
クソ野郎な旦那様も最終的に幸せになりますので閲覧ご注意を。
リリアーヌは、夫から姉の名前で呼ばれる。姉の代わりにされているのだ。それでも夫との子供が欲しいリリアーヌ。結果的に、子宝には恵まれるが…。
アルファポリス様でも投稿しています。
私の婚約者を狙ってる令嬢から男をとっかえひっかえしてる売女と罵られました
ゆの
恋愛
「ユーリ様!!そこの女は色んな男をとっかえひっかえしてる売女ですのよ!!騙されないでくださいましっ!!」
国王の誕生日を祝う盛大なパーティの最中に、私の婚約者を狙ってる令嬢に思いっきり罵られました。
なにやら証拠があるようで…?
※投稿前に何度か読み直し、確認してはいるのですが誤字脱字がある場合がございます。その時は優しく教えて頂けると助かります(´˘`*)
※勢いで書き始めましたが。完結まで書き終えてあります。
死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。
拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。
一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。
残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。
ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。
大嫌いなアイツが媚薬を盛られたらしいので、不本意ながらカラダを張って救けてあげます
スケキヨ
恋愛
媚薬を盛られたミアを救けてくれたのは学生時代からのライバルで公爵家の次男坊・リアムだった。ほっとしたのも束の間、なんと今度はリアムのほうが異国の王女に媚薬を盛られて絶体絶命!?
「弟を救けてやってくれないか?」――リアムの兄の策略で、発情したリアムと同じ部屋に閉じ込められてしまったミア。気が付くと、頬を上気させ目元を潤ませたリアムの顔がすぐそばにあって……!!
『媚薬を盛られた私をいろんな意味で救けてくれたのは、大嫌いなアイツでした』という作品の続編になります。前作は読んでいなくてもそんなに支障ありませんので、気楽にご覧ください。
・R18描写のある話には※を付けています。
・別サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる