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しおりを挟む「ジュディス、またランスが来ていたぞ」
「そう、それよりも今日は寝具の新調がしたいんだけど……」
ジュディスの目の前に立っている男性は、呆れたような溜息を吐いた。
「お前なぁ、早く騎士科から普通科に変える申請を出せと言うのに何故出さない?」
「だってあっちはあっちで面倒だし。面倒ならこのままでいいかなって思って」
「おお、神よ。我が妹の性格を今からでも遅くないので真逆にしてください……」
ジュディスと同じ金髪金眼の見目麗しい容貌を持つ兄ことユリアスは嘆いた。
ジュディスは性別的には女性だ。
しかし、試験を受ける数日前、ジュディスは自身の長い髪が邪魔だと言って短く切ってしまっていた。そして、それを見た受付の生徒が騎士科へと勝手に受験先を変えてしまったのだ。
その生徒曰く、『普通科を男性が受けることはほとんどないので……』だそう。結果、無駄に優秀だったジュディスはものの見事に騎士科へ合格。慌てて普通科へ変更しようとした両親を『面倒だからいい』と止めて、騎士科へ入学したというわけだ。
「兄さん、もういいから。早く店に行こう」
「……わかった」
どうしてこんな性格になったのか、可愛い妹の頼みは断れないユリアスは渋々男装姿のジュディスと一緒に街へ出かけたのだった。
寮から出たジュディス達は、今度こそジュディスを鍛錬に誘おうと出待ちしていたランスをスルーして馬車に乗り込む。
「おい、リール! ジュディスの横に男がいるぞ!?」
その様子を目撃したランスは目を見開いて凝視しながらちょうど隣を通り過ぎようとした男子生徒に話しかけた。
「そうだな。なぁ、お前本当にあっちじゃないのか?」
呆れ顔のリールに、ランスは不思議そうな顔をしながらも否定した。
「いや、俺はノーマルだ。それよりも、ジュディスの横にいた男が気になる。なぁ、追いかけてみないか?」
「いや、ストーカーにはなりたくないから」
「む、ストーカーではない」
「いや、ストーカーだから。そんなに気になるなら後で聞いてみればいいだろ。それくらい教えてくれるはずだ」
「……そうだな。なんだか胸がもやもやするんだ。何故だ」
リールの目が座る。
「もうお前認めろよ。お前は男が好きでジュディスが好きなんだろ」
「いや、俺は……」
「はいはい、鍛錬に行こうか」
「……そうだな」
この日の会話は、別の生徒によって面白おかしく騎士科の生徒達に拡散された。
「よお! ランスの嫁!」
当然、会話の主役だったジュディスも揶揄われる。普通ならば必死で火消しに走るものだが、ジュディスは違った。
「そこ邪魔」
手持ちの枕を抱え、無表情でそう言い放った。
「え、あ、すまん」
「いや、いいよ。じゃ、実技頑張って」
たじろぐ生徒に、ランスと違い素直に避けてくれたことに満足したジュディスはお礼を言って通り過ぎる。その際、ちょっと、ほんのちょっとだけ微笑みが浮かべられていた。レアといえばレアである。
「あ、あぁ」
色気より食い気ならぬ、火消しより眠気のジュディス。
なまじ中性的な美貌の持ち主であるが故に、タイミングが悪くジュディスが眠たそうにしている時に声をかけた生徒たちは軒並みジュディスに惚れた。
「や、やっぱりあの話は嘘じゃないのか?」
「は?」
「俺、ノーマルだったけど今日からジュディス一筋になるわ」
「はぁ?」
とまぁ、こんな感じで2次被害? が拡大していたのだ。結果、ジュディスがランスの嫁という揶揄いは数日にして鎮火した。
「そう、それよりも今日は寝具の新調がしたいんだけど……」
ジュディスの目の前に立っている男性は、呆れたような溜息を吐いた。
「お前なぁ、早く騎士科から普通科に変える申請を出せと言うのに何故出さない?」
「だってあっちはあっちで面倒だし。面倒ならこのままでいいかなって思って」
「おお、神よ。我が妹の性格を今からでも遅くないので真逆にしてください……」
ジュディスと同じ金髪金眼の見目麗しい容貌を持つ兄ことユリアスは嘆いた。
ジュディスは性別的には女性だ。
しかし、試験を受ける数日前、ジュディスは自身の長い髪が邪魔だと言って短く切ってしまっていた。そして、それを見た受付の生徒が騎士科へと勝手に受験先を変えてしまったのだ。
その生徒曰く、『普通科を男性が受けることはほとんどないので……』だそう。結果、無駄に優秀だったジュディスはものの見事に騎士科へ合格。慌てて普通科へ変更しようとした両親を『面倒だからいい』と止めて、騎士科へ入学したというわけだ。
「兄さん、もういいから。早く店に行こう」
「……わかった」
どうしてこんな性格になったのか、可愛い妹の頼みは断れないユリアスは渋々男装姿のジュディスと一緒に街へ出かけたのだった。
寮から出たジュディス達は、今度こそジュディスを鍛錬に誘おうと出待ちしていたランスをスルーして馬車に乗り込む。
「おい、リール! ジュディスの横に男がいるぞ!?」
その様子を目撃したランスは目を見開いて凝視しながらちょうど隣を通り過ぎようとした男子生徒に話しかけた。
「そうだな。なぁ、お前本当にあっちじゃないのか?」
呆れ顔のリールに、ランスは不思議そうな顔をしながらも否定した。
「いや、俺はノーマルだ。それよりも、ジュディスの横にいた男が気になる。なぁ、追いかけてみないか?」
「いや、ストーカーにはなりたくないから」
「む、ストーカーではない」
「いや、ストーカーだから。そんなに気になるなら後で聞いてみればいいだろ。それくらい教えてくれるはずだ」
「……そうだな。なんだか胸がもやもやするんだ。何故だ」
リールの目が座る。
「もうお前認めろよ。お前は男が好きでジュディスが好きなんだろ」
「いや、俺は……」
「はいはい、鍛錬に行こうか」
「……そうだな」
この日の会話は、別の生徒によって面白おかしく騎士科の生徒達に拡散された。
「よお! ランスの嫁!」
当然、会話の主役だったジュディスも揶揄われる。普通ならば必死で火消しに走るものだが、ジュディスは違った。
「そこ邪魔」
手持ちの枕を抱え、無表情でそう言い放った。
「え、あ、すまん」
「いや、いいよ。じゃ、実技頑張って」
たじろぐ生徒に、ランスと違い素直に避けてくれたことに満足したジュディスはお礼を言って通り過ぎる。その際、ちょっと、ほんのちょっとだけ微笑みが浮かべられていた。レアといえばレアである。
「あ、あぁ」
色気より食い気ならぬ、火消しより眠気のジュディス。
なまじ中性的な美貌の持ち主であるが故に、タイミングが悪くジュディスが眠たそうにしている時に声をかけた生徒たちは軒並みジュディスに惚れた。
「や、やっぱりあの話は嘘じゃないのか?」
「は?」
「俺、ノーマルだったけど今日からジュディス一筋になるわ」
「はぁ?」
とまぁ、こんな感じで2次被害? が拡大していたのだ。結果、ジュディスがランスの嫁という揶揄いは数日にして鎮火した。
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