18 / 22
C
しおりを挟む
「薪に使う木を取ってくるね」
「ええ、いつもありがとう」
1週間に1度ほど、薪の調達にリンは裏手の森へと向かう。ビオラはそれを見送った後、庭の野菜の手入れをするというのが最近の2人の週末の過ごし方となっていた。
しかし、リンが森へ入って数分後、家のドアを叩く者がいた。
「はい」
「スミレ様で間違いはないでしょうか?」
ドアを開ければ、目の前に騎士の格好をした男が立っていた。
「はい?」
「では、こちらに」
訳がわからずポカンとするビオラに、騎士はサッサと動けとばかりに視線を家先に止めてある馬車へと向けた。
国外追放された際、ビオラはこの国の騎士にお世話になっているのだが、いかせんいい思い出がなかった。そのため、少し及び腰になりながらビオラは口を開いた。
「あの、申し訳ありませんが私は騎士様にお世話になるような事はしておりません」
「当たり前です」
「はあ⁇」
さらに訳がわからない返答に、ビオラはとうとうキッと顔を顰めた。
「すみませんが、いきなり人様のお家に来ておいてどういう事なのです? 失礼ではございません? 私が何もしていないというなら、なぜあなた方に従わなければならないのです」
「ほう、随分と様になってるな。あぁ、もう面倒だ。お前もどうせ親に売られた口だろ、ほら、現実を受け止めるんだ。さっさと乗れ!」
「何をなさるの!?」
グイッと腕を引かれて、馬車まで引きずられる。抵抗しようとするが、ビオラの細腕では何も出来なかった。
(リン!!!! 助けて!)
念話でリンへと助けを求めるが、リンは森の中へ入ってしまっている以上、戻ってくるのは時間がかかる。
『ビオラ! 大丈夫か!?』
リンの焦ったような声を聞きながら、ビオラはなすすべもなく馬車へと乗せられ連れ去られてしまうのであった。
「ははっ、本当にうまくいくとは。これであの女が妃になれば俺は大金持ちだ‼︎」
「ならなければ俺がもらうよ」
「おお、プリマキ様」
小躍りする男はガラパで、プリマキと呼ばれた男は村長の息子であった。
「もちろんガラパには金貨10枚をやろう」
「へへ、ありがたい! 今回は協力してくださってありがとうごぜぇます。アンタのおかげでスムーズに事が運んだ」
「いや、いいんだ。あの女、俺に気がないように見えたからな。珍しくて気になっていたんだ」
得意げに話すプリマキ。だが、それは嘘だ。ビオラがプリマキに興味を持っていようが持っていまいが、プリマキはビオラの美貌に目を奪われてしまった。そして、手に入れたいと思うようになったのだ。
村長の息子として何不自由なく過ごしていたプリマキ。手に入らないものはなかった。しかし、夫であるアキと呼ばれた人物のビオラへの愛は深く、ビオラも夫への愛が深そうだった。手に入れるにはどうすれば良いのか? プリマキは必死に考えたのだ。
そして、思いついたのがガラパの話していた妃へ応募すること。
(王子はどんな女にも興味がないと言っていた。ならば、ビオラもすぐに帰されるだろう。その途中で攫えばいい)
と、考えたのだ。
「さ、戻ろう。俺はこっちの道から帰る。ガラパはあっちの道から帰ってくれ」
「へへ、分かったよ」
ニマニマと頬を緩ませるガラパとプリマキは、それぞれ別の道から帰るのだった。
「ええ、いつもありがとう」
1週間に1度ほど、薪の調達にリンは裏手の森へと向かう。ビオラはそれを見送った後、庭の野菜の手入れをするというのが最近の2人の週末の過ごし方となっていた。
しかし、リンが森へ入って数分後、家のドアを叩く者がいた。
「はい」
「スミレ様で間違いはないでしょうか?」
ドアを開ければ、目の前に騎士の格好をした男が立っていた。
「はい?」
「では、こちらに」
訳がわからずポカンとするビオラに、騎士はサッサと動けとばかりに視線を家先に止めてある馬車へと向けた。
国外追放された際、ビオラはこの国の騎士にお世話になっているのだが、いかせんいい思い出がなかった。そのため、少し及び腰になりながらビオラは口を開いた。
「あの、申し訳ありませんが私は騎士様にお世話になるような事はしておりません」
「当たり前です」
「はあ⁇」
さらに訳がわからない返答に、ビオラはとうとうキッと顔を顰めた。
「すみませんが、いきなり人様のお家に来ておいてどういう事なのです? 失礼ではございません? 私が何もしていないというなら、なぜあなた方に従わなければならないのです」
「ほう、随分と様になってるな。あぁ、もう面倒だ。お前もどうせ親に売られた口だろ、ほら、現実を受け止めるんだ。さっさと乗れ!」
「何をなさるの!?」
グイッと腕を引かれて、馬車まで引きずられる。抵抗しようとするが、ビオラの細腕では何も出来なかった。
(リン!!!! 助けて!)
念話でリンへと助けを求めるが、リンは森の中へ入ってしまっている以上、戻ってくるのは時間がかかる。
『ビオラ! 大丈夫か!?』
リンの焦ったような声を聞きながら、ビオラはなすすべもなく馬車へと乗せられ連れ去られてしまうのであった。
「ははっ、本当にうまくいくとは。これであの女が妃になれば俺は大金持ちだ‼︎」
「ならなければ俺がもらうよ」
「おお、プリマキ様」
小躍りする男はガラパで、プリマキと呼ばれた男は村長の息子であった。
「もちろんガラパには金貨10枚をやろう」
「へへ、ありがたい! 今回は協力してくださってありがとうごぜぇます。アンタのおかげでスムーズに事が運んだ」
「いや、いいんだ。あの女、俺に気がないように見えたからな。珍しくて気になっていたんだ」
得意げに話すプリマキ。だが、それは嘘だ。ビオラがプリマキに興味を持っていようが持っていまいが、プリマキはビオラの美貌に目を奪われてしまった。そして、手に入れたいと思うようになったのだ。
村長の息子として何不自由なく過ごしていたプリマキ。手に入らないものはなかった。しかし、夫であるアキと呼ばれた人物のビオラへの愛は深く、ビオラも夫への愛が深そうだった。手に入れるにはどうすれば良いのか? プリマキは必死に考えたのだ。
そして、思いついたのがガラパの話していた妃へ応募すること。
(王子はどんな女にも興味がないと言っていた。ならば、ビオラもすぐに帰されるだろう。その途中で攫えばいい)
と、考えたのだ。
「さ、戻ろう。俺はこっちの道から帰る。ガラパはあっちの道から帰ってくれ」
「へへ、分かったよ」
ニマニマと頬を緩ませるガラパとプリマキは、それぞれ別の道から帰るのだった。
30
お気に入りに追加
395
あなたにおすすめの小説
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます
黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。
ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。
目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが……
つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも?
短いお話を三話に分割してお届けします。
この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。
悪役公爵の養女になったけど、可哀想なパパの闇墜ちを回避して幸せになってみせる! ~原作で断罪されなかった真の悪役は絶対にゆるさない!
朱音ゆうひ
恋愛
孤児のリリーは公爵家に引き取られる日、前世の記憶を思い出した。
「私を引き取ったのは、愛娘ロザリットを亡くした可哀想な悪役公爵パパ。このままだとパパと私、二人そろって闇墜ちしちゃう!」
パパはリリーに「ロザリットとして生きるように」「ロザリットらしく振る舞うように」と要求してくる。
破滅はやだ! 死にたくない!
悪役令嬢ロザリットは、悲劇回避のためにがんばります!
別サイトにも投稿しています(https://ncode.syosetu.com/n0209ip/)
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
悪役令嬢扱いの私、その後嫁いだ英雄様がかなりの熱血漢でなんだか幸せになれました。
下菊みこと
恋愛
落ち込んでたところに熱血漢を投入されたお話。
主人公は性に奔放な聖女にお説教をしていたら、弟と婚約者に断罪され婚約破棄までされた。落ち込んでた主人公にも縁談が来る。お相手は考えていた数倍は熱血漢な英雄様だった。
小説家になろう様でも投稿しています。
完結 振り向いてくれない彼を諦め距離を置いたら、それは困ると言う。
音爽(ネソウ)
恋愛
好きな人ができた、だけど相手は振り向いてくれそうもない。
どうやら彼は他人に無関心らしく、どんなに彼女が尽くしても良い反応は返らない。
仕方なく諦めて離れたら怒りだし泣いて縋ってきた。
「キミがいないと色々困る」自己中が過ぎる男に彼女は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる