【完結】スローン・オブ・ヘブン~シュウマツの歌姫、愛に生きる~

黒幸

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25 エピローグ②

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 そこで考えた。
 卵料理よねっ♪

 卵焼きでしょ。
 オムレツでしょ。
 それにボリュームが大事だ。
 レオは結構、がっつりと食べる派だから。
 サイコロステーキを入れたチキンライスと合わせたオムライスが、ベストと判断した。

「これなら、どう?」

 チャットも概ね、好評のコメントが多い。
 「やればできるんですね」「見た目は正解。見た目は」「おいしそう」と肯定されているのか、否定されているのか、分かりにくいコメントばかりだけど……。
 見た目だけではないんだから。
 ちゃんと隠し味も入れてるのよ?

「オムレツを作ったの」
「へえ。おいしそうだね」
「でしょう? はい、あ~んして」
「!?」

 一口食べたレオの反応がおかしい。
 予想していたのは「おいしいよ。こんなおいしい料理を作ってくれる奥さんがいて」と大絶賛の台詞が止まらない未来だ。
 でも、レオの顔は赤くなったり、青くなったり。
 あら?
 これはお粥の時と同じじゃない?
 顔が忙しいんだから、もう。
 でも、どういうこと?

 隠し味で入れた砂糖と山椒が間違い?
 チャットにそれとなく聞いたら、「それ、もう隠し味じゃないのでは!?」というコメントが大多数だった。
 おかしくない?
 普通に美味しいんだけど。

「レ~オ~。食べるのに集中しないとダメでしょ」
「あ、はい。うん」

 それでも彼の口許を優しく、拭き取ってあげると素直な反応を示してくれる。
 看護のし甲斐がある。
 え? 何?
 看護するにしても密着し過ぎですって?
 チャットが盛り上がってる。
 看護とはこういうものではない。
 そうなの?

 だって、レオが怪我しているのは腕であって。
 足じゅないし……。
 だから、上に乗って「あ~んして」も問題なくない?

「あのさ。あまり、もぞもぞと動かれるとまずいと思うんだ」
「どういうこと? よく分からないけど」

 普段、膝の上に乗っても軽いから、問題ないと言ってたのに。
 もぞもぞと動くとまずいって意味が分からない。
 こういう時こそ、チャットよっ!
 「何か、当たっていませんか」「生き地獄w」って、んんん?

 確かに何かが当たってる。
 レオは筋肉を鍛えてるからじゃない?
 「試しに胸を押し付けるように抱き着いてみてください」「それは名案」ともあった。
 怪我に障らないようにぎゅっと抱き着いてみた。

 当たっていたのが何だか、元気になった気がする……。

「そ、そうね。気を付けるわ」
「う、うん」

 レオが何だか、恥ずかしそうにしてるので、止めておく。
 彼の望むことはしてあげたいけど、嫌がることはしたくないし……。

 片手が今、不自由だから、お手洗いも大変そうじゃない?
 それに気になる。
 「わたしも!」って一緒に入ろうとしたら、断られた。
 レオがわたしを拒否することはない。
 滅多にない。
 絶対にない。
 「それはいいよ」って、言われた。
 相当じゃない?

 これは嫌がっている訳じゃない。
 違うと思う。
 むしろ喜んでいるように見えたし……。
 チャットも盛り上がってたから、正解だとは思うんだけど。
 何か、間違えたかしら?



 看護をしていて、レオの怪我した原因が分かった。
 やはり、例のホムンクルスのせいだった。
 あのホムンクルスは絶対領域(アブソリューターベライヒ)で完膚なきまでに潰した時、光の粒になって四散した。
 そこまでは間違いない。
 案の定、実体の方が持たなかったらしい。

 でも、消える前にとんでもない置き土産を残したってこと。
 実体を構成していたオドを全て、時限爆弾みたいに使ったのだ。
 これはさすがに想定外。
 それで撃たれたのが、高火力の火球と同等の爆発だったって訳。

 咄嗟の判断でレオは利き手ではない左腕でわたしを抱え直した。
 右手一本で爆発をどうにかしようとしたらしい。
 結果があの惨状と怪我だった。

「ねぇ、レオ。これが腕だけじゃなくて、足も怪我していたら、どう? もっと看護ができて……それって素敵なことじゃない?」
「あの、リーナさん……もしもーし?」
「冗談よ、冗談」
「だよね」
「うっふふふふふっ」

 そうは言ったものの全てが冗談じゃないけど。
 実は彼が歩けなかったら、もっと甲斐甲斐しく看護できて、ずっと傍にいられて。
 それって、最高じゃない?
 とも考えてる。
 おおありのありだけど!
 「冗談に聞こえません」「こえー」とチャットでも見透かされている気がするので、やめておこう。

 両腕と両足、全部動かないようにしたら?
 そうよ。
 ベッドから出られなくしたら……。
 それはきっと幸せに……。

 うん、ないかしら?
 レオが嫌がる。
 嫌がることを強制したら、愛じゃないと思う。
 愛は互いに思うことなんでしょ?
 だったら、ダメ。

 後ろ髪を引かれるけど、やらないからねっ!



 お手洗いへの同行を断られたので、お風呂ならいける作戦を発動する時がきた。
 入浴なら、ありでしょ?
 まぁ、お風呂に簡単に一人で入れないようにって、万全の策を施したけど。
 包帯でグルグル巻きにしておいたのだ。
 これなら、無理よねっ☆

 脱ぐのも大変そうだから、全部手伝ってあげた。
 この尽くしている感じが堪らなく、幸せを感じられる。
 「ちょっ!? 待って」と言われてもお風呂だから、全部脱いでもらわなきゃ!

「わたしに任せてっ♪」
「え、ええと。リーナさん。その恰好は一体?」
「水着だけど? 何か、問題あるの?」
「ないけどさ。うん。ないんだけど……困るな」

 お互いにまだ小さかった頃のこと。
 二人でお風呂に入るのが普通だった。
 レオはわたしよりも年下。
 あくまでよく知っている小さな男の子。
 だから、裸であっても可愛らしいものであって。
 お姉さんぶって、彼をきれいきれいしてあげるのが楽しかったのをよく覚えている。

 今も昔も変わらないのはわたしが水着を着ていることだろう。
 もっとも小さい頃はワンピースタイプの水着だったけど。
 今はデザインに凝ったビキニだ。
 アシンメトリーになっていて、白が基調でそれなりに結構、際どいデザイン。
 デザインはアレだけど、可愛いのでお気に入りなのだ。
 レオも絶対、気に入ってくれると思う。
 何か、「困るな」って聞こえた気がするけど、きっと気のせい!

「それって、ううん。何でもないわ」
「…………」

 大人になった彼の体はたくましくて、立派になっていて……。
 引き締まった筋肉とか、もう凄すぎて、目が釘付けになりそう。
 筋肉フェチでもないのにこれはやばいと思う。

 レオもちょっと困り顔になっていた。
 筋肉よりも気になるのが、彼の股の下にある見慣れない生き物だけど。
 少なくともわたしにはそんな生き物は付いてない。

 不思議なのはその生き物が変化? 変形?
 分からないけど、見た目が変わっちゃうところ。
 「何、これぇ!?」って、全力で触ろうとしたら、それ以上に全力をもって阻止された……。
 どうして?

「大きくなるの? 面白いんだけど」

 でも、これは看護の一環だから。
 決して面白がってる訳ではないのよ?
 あくまでレオの体をきれいきれいにしてあげるのが目的。
 だから、そこを間違えないようにしないとねっ。

 だから、たっぷりと泡を付けて、ボディタオルで優しく洗ってあげた。
 全身くまなくね!
 もちろん、股下の不思議な生き物も洗ってあげた。
 レオが変な声を出すから、気になって仕方なかった……。
 洗っているとどんどん、大きくなってくるのが不思議。

「もしかして、痛いの? やめた方がいいかしら?」
「い、いや。途中でやめられるとかえってきついかな」
「んんん?」

 ちょっと何を言っているのか、分からない。
 レオは一体、何と戦っているのかしら?
 何と戦っているのか、全く、想像できない。
 とにかく丁寧に優しく、洗ってあげることにした。

 看護って、楽しい♪
 レオはとてもとても疲れてるようだけど……。



 この手厚くも何とも傍迷惑な看護は一週間続いたという……。
 常識と規格から外れた夫婦の物語は終わらない。
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