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第137話 勇者と竜
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麗央はそうして、ついに白亜の城へと辿り着く。
これといって苦戦をしたり、苦労に見舞われることもない道中だった。
「逆に気持ち悪いんだよなぁ」
それなりに格の高いあやかしをモデルとしたモンスターが数多く、現れていた。
全てをドットで描かれた現実離れ感が強いかくかくとした見た目なのは否めない。
多少はデフォルメもされており、コミカルさがあるのも否めない。
しかし、強さに関しては決して、馬鹿に出来ないのだ。
ワイバーンはリントヴルムと呼ばれる翼ある竜のあやかしがモデルだった。
一対の翼と二足を備えた竜の亜種といったポジションに収まったこのモンスターは、それなりに危険かつ強力な種である。
空を自在に飛ぶことが出来るのはそれだけで強みである。
強靭な二足には猛禽類さながらの恐るべき鉤爪を備え、尾の先には猛毒の棘まで生やしているのだ。
ただ、相手が悪かった。
麗央と対峙するにはあまりに力不足だった。
そして、彼は今、何とも立派な門構えの城門の前に佇んでいる。
城の四方は深い堀に守られていた。
堀は底も見えないほどに昏い水を湛える。
何もかも拒もうとする城の主の意思を伝えようと言わんばかりに……。
「それなのに変なんだよなぁ」
城門へと続く跳ね橋がさも当然といった様子で下ろされている。
まるで麗央を手招きするように妨害もなかった。
こうして城門の前へと誘導されるようにやってきた麗央だったが、門は閉ざされたままだった。
大きな門構えだった。
白亜の城は遠目にはこじんまりとした様子にしか見えない。
ところが実際に門を前にすると考えを改めざるを得なかった。
観音開きの分厚い木製の門扉は金属で補強されている。
その全てに凝った意匠が施されており、さながら美術品と見紛う美麗な門なのだ。
「どうするべきかな」
「開門」と叫んで開けてくれるとは思えない。
力任せに破壊するのも気が引ける。
麗央が小首を傾げ、どうするべきかと思案しようと考え始めたその時、城門が少々耳障りな音を立てながら開き始めたのである。
「これは誘われているな」と麗央は確信した。
彼の中で戦士としての勘がはっきりと告げていた。
二人には決定的に性的な知識が欠如している。
互いに無意識のうちに煽る言動を取ることはあったとしても……。
二戦目のエンディングが間も無く、訪れる。
それは確信ではなく、確定事項だった。
「まあ、そういうことだとは思ったけどさ」
ついに麗央の確信が彼の目の前にはっきりとした形で現れた。
麗央は城門から、ついに白亜の城に足を踏み入れた。
宮殿というよりは神殿と呼んだ方が相応しい。
どこか厳かな雰囲気が漂う石造りの城だった。
『姫』を攫った悪者が立て籠もる場所にはおおよそ不釣り合いである。
そして、彼の前に新たなる脅威が出現する。
いわゆる本丸に相当する館へと足を進めた麗央の前に広がったのが中庭と思しき開けた場所だ。
ユリナの花である百合の咲き誇る花園が広がっており、これまた悪漢の集う場所には似合わない。
そこに天空からゆっくりと舞い降りた新たな脅威を見て、麗央は嘆息した。
美しい竜だった。
光で煌きを見せる何色にも染まっていない純白の鱗はどこまでも美しく、これまでに色々な竜と対峙してきた麗央が見たことのないものだった。
頭部には螺旋を描く一対の角を有し、他を圧する威圧感を出している。
透明感がある薄い紫の色を帯びた大きな目は、麗央を値踏みしているかのようだ。
やがて花園へと降り立った真白き竜が、空気を振るわせる咆哮を上げた。
聞く者の心胆を寒からしめる恐ろしき咆哮だった。
これといって苦戦をしたり、苦労に見舞われることもない道中だった。
「逆に気持ち悪いんだよなぁ」
それなりに格の高いあやかしをモデルとしたモンスターが数多く、現れていた。
全てをドットで描かれた現実離れ感が強いかくかくとした見た目なのは否めない。
多少はデフォルメもされており、コミカルさがあるのも否めない。
しかし、強さに関しては決して、馬鹿に出来ないのだ。
ワイバーンはリントヴルムと呼ばれる翼ある竜のあやかしがモデルだった。
一対の翼と二足を備えた竜の亜種といったポジションに収まったこのモンスターは、それなりに危険かつ強力な種である。
空を自在に飛ぶことが出来るのはそれだけで強みである。
強靭な二足には猛禽類さながらの恐るべき鉤爪を備え、尾の先には猛毒の棘まで生やしているのだ。
ただ、相手が悪かった。
麗央と対峙するにはあまりに力不足だった。
そして、彼は今、何とも立派な門構えの城門の前に佇んでいる。
城の四方は深い堀に守られていた。
堀は底も見えないほどに昏い水を湛える。
何もかも拒もうとする城の主の意思を伝えようと言わんばかりに……。
「それなのに変なんだよなぁ」
城門へと続く跳ね橋がさも当然といった様子で下ろされている。
まるで麗央を手招きするように妨害もなかった。
こうして城門の前へと誘導されるようにやってきた麗央だったが、門は閉ざされたままだった。
大きな門構えだった。
白亜の城は遠目にはこじんまりとした様子にしか見えない。
ところが実際に門を前にすると考えを改めざるを得なかった。
観音開きの分厚い木製の門扉は金属で補強されている。
その全てに凝った意匠が施されており、さながら美術品と見紛う美麗な門なのだ。
「どうするべきかな」
「開門」と叫んで開けてくれるとは思えない。
力任せに破壊するのも気が引ける。
麗央が小首を傾げ、どうするべきかと思案しようと考え始めたその時、城門が少々耳障りな音を立てながら開き始めたのである。
「これは誘われているな」と麗央は確信した。
彼の中で戦士としての勘がはっきりと告げていた。
二人には決定的に性的な知識が欠如している。
互いに無意識のうちに煽る言動を取ることはあったとしても……。
二戦目のエンディングが間も無く、訪れる。
それは確信ではなく、確定事項だった。
「まあ、そういうことだとは思ったけどさ」
ついに麗央の確信が彼の目の前にはっきりとした形で現れた。
麗央は城門から、ついに白亜の城に足を踏み入れた。
宮殿というよりは神殿と呼んだ方が相応しい。
どこか厳かな雰囲気が漂う石造りの城だった。
『姫』を攫った悪者が立て籠もる場所にはおおよそ不釣り合いである。
そして、彼の前に新たなる脅威が出現する。
いわゆる本丸に相当する館へと足を進めた麗央の前に広がったのが中庭と思しき開けた場所だ。
ユリナの花である百合の咲き誇る花園が広がっており、これまた悪漢の集う場所には似合わない。
そこに天空からゆっくりと舞い降りた新たな脅威を見て、麗央は嘆息した。
美しい竜だった。
光で煌きを見せる何色にも染まっていない純白の鱗はどこまでも美しく、これまでに色々な竜と対峙してきた麗央が見たことのないものだった。
頭部には螺旋を描く一対の角を有し、他を圧する威圧感を出している。
透明感がある薄い紫の色を帯びた大きな目は、麗央を値踏みしているかのようだ。
やがて花園へと降り立った真白き竜が、空気を振るわせる咆哮を上げた。
聞く者の心胆を寒からしめる恐ろしき咆哮だった。
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