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第104話 備忘録CaseVIII・ようこそ、南の島へ
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チハルの反応も至極当然なものである。
まず、第一に国外へと簡単に移動が出来ない。
人類に許された基本的な移動手段は陸路だけであると言っても過言ではなかった。
水路を利用する移動手段も沿岸地域で漁を行う程度であれば、問題はない。
注意を払っていれば、未然に防ぐことが出来るからだ。
遠方へ向かうのに海路を使うともなると危険度が格段に跳ね上がる。
だが、環太平洋機構と欧州連邦共和国が管轄する地域であれば、少しばかりは安全な旅が保証されていた。
これは世界を動かす者の思惑とパワーバランスが絡んでおり、管轄下の海がとある者の領域であったからに他ならない。
空路に関してはその限りではない。
世界のどの地域においても低い高度の飛行ではない限り、危険極まりない死の旅となる。
空を領域とする超級の怪異が各地で幅を利かせているせいだった。
その為、簡単に海外へと行くことが出来ないのを知っているからこそ、チハルは現実を受け入れられなかったと言うべきなのだ。
彼女の目の前に広がっている風景はどう見ても南国そのものだった。
ただし、沖縄などの国内の南の島ではないとチハルに感じさせるのに十分な雰囲気である。
「暑い! なんて暑いのよ。こんなところにいたら、死んじゃう」
ようやく我に返ったチハルは照り付ける日差しを避けようと砂浜を離れることにした。
動き始めた彼女に反応したのか、空を飛んでいた鳥が一声鳴き、飛び去っていった。
燦々と照り付ける太陽と白い砂浜だけならば、チハルもここが国内であるとまだ信じられたことだろう。
だが一声鳴いて、飛び去った鳥の姿にチハルは驚き、目を丸くした。
「な、なんなのよ、あれ」
シルエットは鶴やフラミンゴのように見えた。
しかし、そうではないことが誰の目にも明らかだった。
首が二本あったのだ。
チハルは軽く、パニック状態に陥り、砂浜に隣接する森林地帯へと足を踏み入れてしまった。
昼なお暗き密林と言う言葉が実にふさわしい。
熱帯の植物がそこかしこに鬱蒼と生い茂っている。
チハルは気付いていなかったがそこそこに長い時間、砂浜に倒れ伏していた彼女は体内の水分を失っていた。
その状態で急に走り出し、蒸し風呂のような密林に分け入ったのが余計に悪かったのだろう。
途端に意識は朦朧としてくる。
「あいたっ」
今にも意識を失いかねない不安定な状態のまま、ふらふらと覚束ない足取りになったチハルは大きな壁のような物体に激突し、尻餅をついた。
もろにぶつけた額を気にしながら、見上げたチハルの目に信じられないものが入ってきた。
「うんぎゃあああああ」
チハルはそっと意識を手放した。
そうすることしか、彼女に逃げ道はなかったのだ。
まず、第一に国外へと簡単に移動が出来ない。
人類に許された基本的な移動手段は陸路だけであると言っても過言ではなかった。
水路を利用する移動手段も沿岸地域で漁を行う程度であれば、問題はない。
注意を払っていれば、未然に防ぐことが出来るからだ。
遠方へ向かうのに海路を使うともなると危険度が格段に跳ね上がる。
だが、環太平洋機構と欧州連邦共和国が管轄する地域であれば、少しばかりは安全な旅が保証されていた。
これは世界を動かす者の思惑とパワーバランスが絡んでおり、管轄下の海がとある者の領域であったからに他ならない。
空路に関してはその限りではない。
世界のどの地域においても低い高度の飛行ではない限り、危険極まりない死の旅となる。
空を領域とする超級の怪異が各地で幅を利かせているせいだった。
その為、簡単に海外へと行くことが出来ないのを知っているからこそ、チハルは現実を受け入れられなかったと言うべきなのだ。
彼女の目の前に広がっている風景はどう見ても南国そのものだった。
ただし、沖縄などの国内の南の島ではないとチハルに感じさせるのに十分な雰囲気である。
「暑い! なんて暑いのよ。こんなところにいたら、死んじゃう」
ようやく我に返ったチハルは照り付ける日差しを避けようと砂浜を離れることにした。
動き始めた彼女に反応したのか、空を飛んでいた鳥が一声鳴き、飛び去っていった。
燦々と照り付ける太陽と白い砂浜だけならば、チハルもここが国内であるとまだ信じられたことだろう。
だが一声鳴いて、飛び去った鳥の姿にチハルは驚き、目を丸くした。
「な、なんなのよ、あれ」
シルエットは鶴やフラミンゴのように見えた。
しかし、そうではないことが誰の目にも明らかだった。
首が二本あったのだ。
チハルは軽く、パニック状態に陥り、砂浜に隣接する森林地帯へと足を踏み入れてしまった。
昼なお暗き密林と言う言葉が実にふさわしい。
熱帯の植物がそこかしこに鬱蒼と生い茂っている。
チハルは気付いていなかったがそこそこに長い時間、砂浜に倒れ伏していた彼女は体内の水分を失っていた。
その状態で急に走り出し、蒸し風呂のような密林に分け入ったのが余計に悪かったのだろう。
途端に意識は朦朧としてくる。
「あいたっ」
今にも意識を失いかねない不安定な状態のまま、ふらふらと覚束ない足取りになったチハルは大きな壁のような物体に激突し、尻餅をついた。
もろにぶつけた額を気にしながら、見上げたチハルの目に信じられないものが入ってきた。
「うんぎゃあああああ」
チハルはそっと意識を手放した。
そうすることしか、彼女に逃げ道はなかったのだ。
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