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第99話 歌姫の愉悦と勇者の悔恨②
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性知識が無いユリナでも母乳は理解している。
赤子の頃の記憶は霧の彼方にあり、覚えていなくとも母親から与えられたことだけは薄っすらと頭の中にあったからだ。
赤ちゃんがどうやったら出来るのかは知らない。
赤ちゃんがどこから、やってくるのかも知らない。
だが、赤ちゃんがやってきたら、自分が母乳を与えなければならないことだけはぼんやりと理解している。
まだ、その時ではないことも理解していた。
「レーオー。私のおっぱいはまだ、出ないと思うのよね? どう思う?」
「あー、いやー、それはー」
据わった目で上目遣いに見つめられるというよりは睨まれ、麗央はさながら蛇に睨まれた蛙となった。
ユリナはそう言いながら、立派に育ち過ぎた二つの果実を自分の手で軽く揉みしだいている。
バスタオルを巻いただけの姿では今にも中身が零れ落ちそうで非常に危ない。
麗央は眼福とばかりに目を離せないもののユリナの視線は氷のように感じられて、あちらは小さくなった。
「私が言いたかったのは血よ、血」
「ああ、血か。そっちか」
「何だか、残念そうね?」
「そ、そんなことはないさ」
ユリナが本当に言いたかったのは血を与え、己の眷属とする呪法の一種だった。
かつて人手が足りない居城の警備を増やすべく、苦肉の策として現地に生息していた大型の蟻に似た昆虫に己の血を与え、尖兵に変えたことがあった。
大きく強靭な顎を持ち、全身を硬質の皮膚で覆われていた蟻種はユリナの血の呪力で屈強にして、精強なる重装歩兵となった。
新たな獣人の亜種となった彼らはミュルミドンと呼ばれる。
ユリナはこの前例に基づき、ウサギの新たな種を創り出そうと企んだのだ。
ところが麗央が聞き違いを起こしたことで話が妙な風向きになりつつあったのである。
ユリナとしては麗央の弱みに付け込むチャンスとばかりに心の中でほくそ笑んでいる。
「もしかして、飲みたい?」
性的な知識がないだけにたどたどしい手つきで双丘を弄んでいるのが、余計に艶めかしく麗央の目には映った。
そこにユリナの一言が刺さり、麗央は思わず、ガタンと大きな音を立て、立ち上がっていた。
煽ってはみたが、特にこれといったビジョンはなかったユリナは逆に驚き、動きが固まった。
「の、の、飲んでいいのかな?」
「デ、デナイワヨ」
鼻息荒く、目が血走っているように見える麗央の様子にユリナは気圧され、言葉遣いまで片言になった。
「出なくてもいいんだ! 舐めるだけ。ちょっとだけだから!」
「はぇ?」
麗央の言葉をゆっくりと嚙み締めたユリナの顔が羞恥で見る間に真っ赤に茹で上がっていく。
さすがに興奮しつつも真摯な紳士であろうとする麗央は、その場で襲い掛かるような愚かな行為はしない。
それでも鼻息は荒く、興奮していることは傍目にも明らかである。
「ぜぇぇったい、ダメだからぁ!」
ついにはいつの間にやら、『駄目』と反対する人間が変わっていたのである。
赤子の頃の記憶は霧の彼方にあり、覚えていなくとも母親から与えられたことだけは薄っすらと頭の中にあったからだ。
赤ちゃんがどうやったら出来るのかは知らない。
赤ちゃんがどこから、やってくるのかも知らない。
だが、赤ちゃんがやってきたら、自分が母乳を与えなければならないことだけはぼんやりと理解している。
まだ、その時ではないことも理解していた。
「レーオー。私のおっぱいはまだ、出ないと思うのよね? どう思う?」
「あー、いやー、それはー」
据わった目で上目遣いに見つめられるというよりは睨まれ、麗央はさながら蛇に睨まれた蛙となった。
ユリナはそう言いながら、立派に育ち過ぎた二つの果実を自分の手で軽く揉みしだいている。
バスタオルを巻いただけの姿では今にも中身が零れ落ちそうで非常に危ない。
麗央は眼福とばかりに目を離せないもののユリナの視線は氷のように感じられて、あちらは小さくなった。
「私が言いたかったのは血よ、血」
「ああ、血か。そっちか」
「何だか、残念そうね?」
「そ、そんなことはないさ」
ユリナが本当に言いたかったのは血を与え、己の眷属とする呪法の一種だった。
かつて人手が足りない居城の警備を増やすべく、苦肉の策として現地に生息していた大型の蟻に似た昆虫に己の血を与え、尖兵に変えたことがあった。
大きく強靭な顎を持ち、全身を硬質の皮膚で覆われていた蟻種はユリナの血の呪力で屈強にして、精強なる重装歩兵となった。
新たな獣人の亜種となった彼らはミュルミドンと呼ばれる。
ユリナはこの前例に基づき、ウサギの新たな種を創り出そうと企んだのだ。
ところが麗央が聞き違いを起こしたことで話が妙な風向きになりつつあったのである。
ユリナとしては麗央の弱みに付け込むチャンスとばかりに心の中でほくそ笑んでいる。
「もしかして、飲みたい?」
性的な知識がないだけにたどたどしい手つきで双丘を弄んでいるのが、余計に艶めかしく麗央の目には映った。
そこにユリナの一言が刺さり、麗央は思わず、ガタンと大きな音を立て、立ち上がっていた。
煽ってはみたが、特にこれといったビジョンはなかったユリナは逆に驚き、動きが固まった。
「の、の、飲んでいいのかな?」
「デ、デナイワヨ」
鼻息荒く、目が血走っているように見える麗央の様子にユリナは気圧され、言葉遣いまで片言になった。
「出なくてもいいんだ! 舐めるだけ。ちょっとだけだから!」
「はぇ?」
麗央の言葉をゆっくりと嚙み締めたユリナの顔が羞恥で見る間に真っ赤に茹で上がっていく。
さすがに興奮しつつも真摯な紳士であろうとする麗央は、その場で襲い掛かるような愚かな行為はしない。
それでも鼻息は荒く、興奮していることは傍目にも明らかである。
「ぜぇぇったい、ダメだからぁ!」
ついにはいつの間にやら、『駄目』と反対する人間が変わっていたのである。
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